メインコンテンツへスキップ
       

OTC類似薬の一部保険外療養とは―令和9年3月から薬剤費の4分の1を別途負担,対象医薬品・対象外となる場合と計算方法(AI作成)

第1 制度の概要

1 令和9年3月1日から始まる一部保険外療養

令和9年3月1日から,いわゆるOTC類似薬を保険診療で処方された患者は,原則として,通常の窓口負担とは別に,その薬剤費の4分の1を「特別の料金」として支払うことになる。
厚生労働省は,この仕組みを「OTC類似薬の一部保険外療養」と呼んでいる。
OTC類似薬とは,薬局やドラッグストアで処方箋なしに購入できるOTC医薬品(要指導医薬品及び一般用医薬品)との代替性が特に高い医療用医薬品をいう。

根拠は,令和8年6月5日に公布された健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号。以下「改正法」という。)が健康保険法63条2項に加えた6号である。
改正法附則1条4号は,この部分の施行日を「公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日」とし,令和8年9月30日に公布された健康保険法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(令和8年政令第320号)が,これを令和9年3月1日と定めた。
同じ日には,処方箋の様式等を改める省令(令和8年厚生労働省令第143号)と,対象医薬品の要件や特別の料金の額を定める告示(令和8年厚生労働省告示第360号)も公布され,厚生労働省保険局医療課長等は,運用の詳細を示す通知(令和8年9月30日保医発0930第6号)を発出した。

改正法には,後期高齢者医療における金融所得の勘案や出産に係る給付の見直しも含まれている。
金融所得の勘案は確定申告しない金融所得と後期高齢者医療の保険料で,出産に係る給付の見直しは出産無償化はいつから?で説明した。

2 本記事の基準日と資料

本記事は,令和8年11月7日に確認した資料に基づく。
法律の条文は,衆議院の制定法律の本文と,e-Gov法令検索の健康保険法の令和9年3月1日施行の版で確認した。
政令,省令,告示,通知,事務連絡及び対象医薬品の一覧は,厚生労働省の「OTC類似薬の保険給付の在り方の見直しについて(OTC類似薬の一部保険外療養)」のページ(令和8年11月6日更新)に掲載されたものを用いた。
対象医薬品の一覧と,特別の料金の計算に用いる価格は,薬価改定等に伴って更新される。

3 薬剤費の全部が保険から外れるわけではない

一部保険外療養は,対象医薬品の薬剤費のうち4分の1だけを保険給付の対象から外す仕組みである。
残りの4分の3の薬剤費と,診察料・調剤料等の技術料は,保険外併用療養費として保険給付の対象となり,患者はその1割から3割を負担する。
厚生労働省の概要資料(「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(医療保険部会とりまとめ)」。以下「概要資料」という。)は,この関係を,「薬剤費の4分の1」の別途の負担と,1割から3割の「患者の保険内自己負担」とに分けて図示している。

窓口負担が3割の患者の場合,対象医薬品の薬剤費についての負担は,4分の1(25%)に,残り4分の3の3割(22.5%)を加えた約47.5%となる(本記事の試算。端数処理を除く。)。
これまでの3割負担と比べると,その薬剤費についての負担は計算上約1.6倍になる(端数処理を除く。)。
実際の負担額は薬剤料の点数計算や端数処理の影響を受け,第4の3の厚生労働省の例では約1.4倍~1.5倍であり,診察料等の技術料の負担は変わらない。

日テレNEWSは,令和8年9月16日,同日に厚生労働省が示した負担の対象範囲等のとりまとめ案を伝えるニュース映像をYouTubeで公開している。
この映像は,令和8年9月30日の告示・通知の前のものである。

第2 法律と告示の仕組み

1 健康保険法63条2項6号の定義

健康保険法63条2項は,療養の給付に含まれない療養を列挙しており,改正法は,その6号として次の療養を加えた。
「要指導医薬品(医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(昭和三十五年法律第百四十五号)第四条第五項第三号に規定する要指導医薬品をいう。)又は一般用医薬品(同項第四号に規定する一般用医薬品をいう。)との代替性が特に高い薬剤を用いた療養その他の適正な医療の提供を確保しつつ、公平かつ効率的な保険給付を行う必要性に鑑みその要する費用のうち一部を保険給付の対象としないものとする療養として厚生労働大臣が定めるもの(以下「一部保険外療養」という。)」
一部保険外療養は,評価療養,患者申出療養及び選定療養と同じく,保険外併用療養費の支給の対象となる(同法86条1項)。

2 保険外併用療養費の額の計算(86条3項)

一部保険外療養を受けた場合の保険外併用療養費の額は,健康保険法86条3項が定めている。
まず,療養の費用の額(同項1号イ)から,「保険給付の対象としない費用として厚生労働大臣が定めるところにより算定した額」(同号ロ)を控除する。
次に,その控除後の額から,これに窓口負担の割合(同法74条1項各号に定める割合)を乗じた額を控除した残りが,保険外併用療養費となる。
つまり,同号ロの部分は保険給付の対象外として患者が負担し,それ以外の部分には,通常の療養の給付と同じ割合で一部負担が求められる構造である。
厚生労働大臣は,同号イ及びロの定めをしようとするときは,中央社会保険医療協議会に諮問するものとされている(同条4項)。

3 告示第360号が定めた内容

健康保険法63条2項6号の「厚生労働大臣が定めるもの」と,保険外併用療養費の額の算定に関する定めは,令和8年厚生労働省告示第360号によって既存の告示に書き込まれた。
同告示は,評価療養,患者申出療養及び選定療養を定めていた告示(平成18年厚生労働省告示第495号)の題名を「厚生労働大臣の定める評価療養、患者申出療養、選定療養及び一部保険外療養」に改め,その3条で,一部保険外療養を,要指導医薬品又は一般用医薬品との代替性が特に高い薬剤であって別に厚生労働大臣が定めるものの処方又は調剤(別に厚生労働大臣が定める場合を除く。)と定めた。

ここでいう対象医薬品と対象外となる場合は,保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等(平成18年厚生労働省告示第498号)の九の五と九の六に置かれた。
九の五は,対象医薬品を,要指導医薬品又は一般用医薬品と「その有効成分、各有効成分の一日最大分量及び投与経路が同一性を有するもの」としている。
特別の料金の額は,療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等(平成18年厚生労働省告示第107号)の第一の一の三第二号で,対象医薬品の「薬価に四分の一を乗じて得た価格に当該薬価の規格単位ごとに数えた数量を乗じて得た額」とされ,10円未満の端数の処理も定められた。

4 国民健康保険・後期高齢者医療も対象

改正法は,健康保険法だけでなく,船員保険法,国民健康保険法,高齢者の医療の確保に関する法律,国家公務員共済組合法及び地方公務員等共済組合法も改正し,これらの法律のうち一部保険外療養に関する改正規定も令和9年3月1日に施行される(改正法附則1条4号)。
例えば,国民健康保険法36条2項には,健康保険法63条2項6号に規定する一部保険外療養を指す6号が加えられ,高齢者の医療の確保に関する法律64条2項にも,後期高齢者医療給付について同じ趣旨の6号が加えられた。
したがって,会社員等の健康保険だけでなく,国民健康保険や後期高齢者医療の被保険者も対象となる。

5 配慮規定と見直しの検討規定

改正後の健康保険法63条8項は,「厚生労働大臣は、第二項第六号の定めをするに当たっては、所得の状況、病状の程度、治療の内容その他の療養を受ける者の事情を踏まえた療養となるよう配慮するものとする。」と定めている。
後述する特別の料金の対象外となる場合は,告示が「別に厚生労働大臣が定める場合」として定めたものである。

また,改正法附則2条2項は,政府が,軽度の疾病等に係る要指導医薬品等の服用に関する国民の理解と,医師,歯科医師及び薬剤師の理解を深めるための取組の状況,医療用医薬品の要指導医薬品への転用の状況等を勘案し,一部保険外療養に係る厚生労働大臣の定めの在り方等について検討し,その結果に基づいて所要の措置を講ずるものとしている。
厚生労働省の概要資料も,施行後に,受療行動への影響を処方シフトの状況を含めて検証し,必要な見直しを行うとしている。

6 施行日前の処方箋は対象外

改正法附則11条は,健康保険法について,施行日前に行われた療養(薬剤の支給については,施行日前に医師又は歯科医師から処方箋の交付を受けたものを含む。)に係る保険給付は,なお従前の例によるとしている。
保医発0930第6号も,令和9年3月1日より前に対象医薬品が処方され,同日以降に処方箋が薬局に提出された場合(リフィル処方箋や分割指示のある処方箋の2回目以降の調剤を含む。)は,特別の料金の対象とならないとしている。

第3 対象となる医薬品

1 成分・投与経路・一日最大用量で判定する

対象医薬品は,要指導医薬品又は一般用医薬品と成分,投与経路が同一で,一日最大用量が異ならない医療用医薬品である(保医発0930第6号第1の2)。
厚生労働省の概要資料によれば,令和9年3月1日の施行時点の対象は77成分1042品目であり,抗アレルギー薬,鎮痛消炎剤,胃腸薬,去痰薬,皮膚保湿剤等が含まれる。
同資料は,OTC医薬品と医療用医薬品の同一性はメーカー単位ではなく成分単位で比較しているとしており,対象医薬品の一覧には,同じ成分の先発医薬品と後発医薬品がともに掲げられている。

厚生労働省のページが掲げる対象成分には,ロキソプロフェンナトリウム水和物,イブプロフェン,ジクロフェナクナトリウム,フェルビナク,フェキソフェナジン塩酸塩,ロラタジン,エピナスチン塩酸塩,L-カルボシステイン,酸化マグネシウム,ピコスルファートナトリウム水和物,ヘパリン類似物質,白色ワセリン,尿素等がある。

2 主な品目と特別の料金の単価

対象医薬品の一覧(令和8年9月30日の対象医薬品等についての事務連絡の別添1。Excel版)から,よく知られた品目を抜き出すと次のとおりである。
「薬価の4分の1」の欄が,1単位当たりの特別の料金の計算に用いる価格である。

品名規格単位薬価薬価の4分の1
ロキソニン錠60mg60mg1錠10.8円2.7円
ロキソニンテープ100mg10cm×14cm1枚18.2円4.55円
アレグラ錠60mg60mg1錠20.9円5.23円
ムコダイン錠500mg500mg1錠10.8円2.7円
マグミット錠330mg330mg1錠6.3円1.58円
ヒルドイドソフト軟膏0.3%1g17.7円4.43円

3 一覧の更新と確認方法

対象医薬品の一覧は,原則として毎年4月1日に更新され,毎年3月頃に事前に公表される予定である(保医発0930第6号第1の2)。
自分の薬が対象かどうかは,厚生労働省のページに掲載された対象医薬品リスト(Excel版・PDF版)で品名を確かめることになる。
また,処方箋には後述の「一部保険外療養」欄が設けられ,対象医薬品ごとに,特別の料金の対象(「○」)か対象外(「―」)かが記載される。

第4 特別の料金の計算

1 計算式と端数処理

特別の料金は,「対象医薬品の価格の4分の1×投薬全量」で計算する(令和8年9月30日厚生労働省保険局医療課事務連絡「要指導医薬品又は一般用医薬品との代替性が特に高い医療用医薬品の処方又は調剤に係る一部保険外療養における費用の計算方法について」第2の1)。
投薬全量とは,処方箋に基づいて患者に交付される対象医薬品の合計量であり,錠剤の内服薬であれば「1回○錠×1日○回×○日分」となる。
計算した額が10円未満のときは10円に切り上げ,10円以上のときは,5円未満の端数を切り捨て,5円以上10円未満の端数を10円に切り上げる。
同じ処方(院外処方では同じ処方箋)に対象医薬品が複数含まれるときは,合算した額について端数を処理する。
特別の料金の計算では,薬価を診療報酬の点数に換算する手順はとらない。

保険給付の対象となる部分は,薬価から「対象医薬品の価格の4分の1」を控除した価格(保険外併用療養費の算出に用いる価格)を用いて,診療報酬の算定方法の例により薬剤料の点数を算定し,これに10円を乗じて計算する。
患者はその額に自己負担割合を乗じた額を負担し,これと特別の料金を合わせた額が患者負担の総額となる。

2 厚生労働省の計算例

同じ事務連絡の別添は,窓口負担が3割の場合の計算例として次の2つを示している。

項目内服薬の例外用薬の例
条件薬価16.50円の錠剤,1回1錠・1日2回・30日分薬価が1g当たり11.90円のクリーム,25g入り2本
特別の料金(A)4.13円×60錠=247.8円→250円2.98円×50g=149円→150円
保険の対象となる費用(B)60点×10円=600円45点×10円=450円
保険内の自己負担(C)600円×0.3=180円450円×0.3=135円→140円
患者負担の総額(A+C)430円290円

内服薬の例では,特別の料金250円と保険内の自己負担180円を合わせた430円を支払うことになる。

3 負担の変化の目安

厚生労働省の概要資料は,窓口負担が3割の場合の負担のイメージとして,次の例を示している。
同資料によれば,初診料や調剤基本料等の技術料は別に生じ,薬価は同一成分で最も使用されている品目の薬価を使い,OTC医薬品の額は確認できた範囲におけるネット上での最安の額である。

薬(日数)見直し前見直し後(参考)OTC医薬品
解熱鎮痛薬(5日分)50円70円約500円
去痰薬(5日分)50円70円約1,500円
便秘薬(30日分)360円550円約2,000円
抗アレルギー薬(30日分)540円790円約1,000円

4 消費税の扱い

長期収載品の選定療養の特別の料金には,消費税が課税される(前掲の費用の計算方法についての事務連絡第4)。
これに対し,一部保険外療養の特別の料金に対する消費税の取扱いについて,同事務連絡は,「今後の税制改正に係る議論を踏まえ、本年末を目途に追ってお示しする。」としている。
本記事の基準日の時点で,厚生労働省のページの関係通知等の欄には,この点を示す資料は掲載されていない。

第5 特別の料金の対象外となる場合

1 9つの場合

保医発0930第6号は,次の①から⑨までのいずれかに当たる場合は,一部保険外療養の対象とせず,特別の料金を求めないとしている(告示では,保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等の九の六イからリまでに定められている。)。
①18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者への処方又は調剤
②がん又はがん治療に関連して生じた状態への処方又は調剤
③指定難病若しくは小児慢性特定疾病(18歳から20歳までの者に限る。)又は指定難病若しくは小児慢性特定疾病に関連して生じた状態への処方又は調剤
④国の公費負担医療における処方又は調剤
⑤入院時の処方(退院時処方を含む。)
⑥侵襲を伴う検査,処置又は手術に伴う処方又は調剤(当該検査等後,14日以内分の処方又は調剤に限る。)
⑦医師が年間を通じた症状の持続と治療の継続性を確認し,対象医薬品の長期の使用が医療上必要であると認められる場合における処方又は調剤
⑧類似の要指導医薬品又は一般用医薬品において承認されている効能・効果では対応できない状態への処方又は調剤
⑨要指導医薬品又は一般用医薬品の使用が特に困難である場合における処方又は調剤(妊婦,妊娠している可能性がある者又は授乳婦が,代替性が特に高い要指導医薬品又は一般用医薬品を服用できない場合)

このほか,薬剤料が包括される在宅時医学総合管理料等を算定して院内処方を行った場合は,対象医薬品に係る薬剤料が生じないため,特別の料金の対象外となる(同通知第1の4)。
以下,同通知の別紙が示す考え方を,場合ごとに整理する。

2 18歳の年度末までのこども

18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者(厚生労働省のページの表現では「こども」)は,特別の料金の対象外である。
該当するかどうかは処方時に判断し,調剤時に3月31日を過ぎて4月1日以降となっていても,引き続き対象外として扱われる。
4月1日に18歳となる者は,民法143条を踏まえ,前日の3月31日に満18歳になったものとして扱われる。

3 がんの治療中

がんの治療中に,がん又はがん治療に関連して生じた状態に対象医薬品を処方する場合は,対象外となる。
「がんの治療中」とは,単に診断歴があるだけでなく,現に治療行為を伴う診療を継続的に受けている場合,又は治療開始に向けて具体的な治療計画の下で継続的な診療管理を受けている場合をいう。
脳腫瘍,骨肉腫,白血病,悪性リンパ腫等の悪性腫瘍も「がん」に含まれる。

対象外となる例として,同通知の別紙は,がん治療薬の副作用の支持療法(便秘,口内炎,皮膚障害等),がん治療に伴う好中球減少期の発熱や感染疑いへのかぜ薬・解熱鎮痛剤,緩和ケアを挙げている。
他方,がん治療中でも,花粉症,水虫,齲歯等の関連の薄い症状や,便秘,風邪,腰痛等のがん治療に伴わない一般的な症状への処方は,特別の料金の対象となる。
過去に診断歴があるだけで再発なく定期受診している場合,経過観察中で治療行為が終わっている場合,がんの疑いで精査中の場合及び前がん病変の場合も,「がん治療中」に当たらない。
がん治療の終了後は,後遺症に対する処方であっても特別の料金の対象となるが,後述の長期使用等に当たれば対象外となる。

4 指定難病・小児慢性特定疾病

指定難病又は18歳から20歳までの小児慢性特定疾病の患者が,その疾病又はこれに関連して生じた状態に対象医薬品の処方を受ける場合は,対象外となる。
確認は,医療受給者証又は指定難病登録者証,小児慢性特定疾病登録者証によって行う。
当面の間(令和9年度末まで)は,指定難病については,医療受給者証又は指定難病登録者証がなくても,指定難病の診断基準は満たすが重症度基準を満たさない等の理由で特定医療費の支給認定を行わない旨の通知書,臨床調査個人票,又は臨床調査個人票を作成中である旨を記載した書類(同通知の別添様式。いずれも写しを含む。)を示せば,対象外とされる。
医師の紹介状や診療録への記載は,この確認書類としては用いない。
指定難病等に当たらない慢性疾患は,この場合には当たらず,長期使用等の他の場合に当たるかどうかで判断される。

5 国の公費負担医療

国の公費負担医療において対象医薬品を処方又は調剤する場合は,対象外となる。
ここでいう国の公費負担医療は,療養の給付及び公費負担医療に関する費用の請求に関する命令1条1項に規定する公費負担医療に限らず,国が法律等によりその要綱等を定めて実施しているものをいい,地方自治体等が地方単独事業として行っているものは含まれない。
同通知は,主な例として,障害者総合支援法,精神保健福祉法,生活保護法,原爆被爆者援護法,戦傷病者特別援護法,母子保健法,感染症法,石綿健康被害救済法,特定B型肝炎ウイルス感染者給付金等支給特措法等による公費負担医療を挙げている。
国の公費負担医療の対象者であっても,その公費負担医療が助成の対象としていない他の症状に使用する場合は,特別の料金の対象となる。

6 入院中・検査や手術の後

入院時の処方(退院時処方を含む。)は対象外である。
ただし,入院中の患者が他の保険医療機関を受診し,そこで処方又は処方箋の交付を受けた場合は,「入院時」に当たらず,特別の料金の対象となる。

外来で侵襲を伴う検査,処置又は手術を行い,同じ日に,その検査等が主な原因となって生じた症状に対して新たに対象医薬品を処方する場合は,14日以内分の処方に限り対象外となる。
同通知の別紙は,抜歯後の疼痛への鎮痛薬,皮膚生検後の急性疼痛への鎮痛薬,褥瘡のデブリードマン等の後の創傷管理のための外用薬等を例に挙げている。
15日以上の処方を行う場合,14日以内分の処方の後に追加で処方する場合,検査等の翌日以降に処方する場合,大腸内視鏡検査前の下剤のように検査等の実施のために事前に処方する場合,検査等の前から生じていた症状に処方する場合及びリハビリテーションの実施に伴う処方は,特別の料金の対象となる。
検査等の実施中に対象医薬品を使用する場合は,「処方又は調剤」に当たらないため,特別の料金の対象外である。

7 年間を通じた長期使用

医師が年間を通じた症状の持続と治療の継続性を確認し,対象医薬品の長期の使用が医療上必要であると認めた場合は,対象外となる。
内服薬では,年間を通じた継続使用がなされ,年間処方日数がおおむね50週(1年)であることが求められるが,一律に50週の処方実績を求めるものではなく,半年間の使用の継続が確認され,年間を通じた長期使用が医療上必要であると医師が認めていれば,対象外と判断してよいとされている。
半年間の使用歴は,他の医療機関での治療歴や,診療情報提供書,お薬手帳,オンライン資格確認による薬剤情報等で確認でき,一部保険外療養の施行前の服薬歴も考慮することができる。
半年間の使用が確認できない場合は,少なくとも半年間の使用実績が生じるまでの間,特別の料金の対象となる。

外用薬で対象外となるのは,点眼薬を通年性のアレルギー性結膜炎等の治療のため毎日使用する場合,ヘパリン類似物質及び尿素をアトピー性皮膚炎の治療のため毎日使用する場合,ステロイド外用薬を再燃を繰り返すアトピー性皮膚炎へのプロアクティブ療法として使用する場合であって,いずれも年間を通じた継続使用の実績が認められるときに限られる。
当面の間(令和10年度末まで)は,これに加えて,鎮痛消炎外用薬を慢性かつ重度の疾患(例:変形性膝関節症のKellgren–Lawrence分類のGrade4)に年間を通じた疼痛管理として使用する場合と,皮膚保湿剤等を,症状が十分に改善せず,免疫抑制剤等による全身療法を直近1年以内に併用した治療歴がある患者に毎日使用する場合も,年間を通じた継続使用の実績があれば対象外とされる。
これらに当たらない外用薬は,年間を通じて処方されていても特別の料金の対象となる。
外用薬の「年間を通じた継続使用の実績」も,内服薬と同様に一律に年間の処方実績を求めるものではなく,半年間の使用の継続が確認され,年間を通じた長期使用が医療上必要であると医師が認めている状態であれば足りるとされている。

頓服薬は,定期的に処方されていても特別の料金の対象となる。
季節性アレルギー性鼻炎のように特定の期間に限って症状が出る場合や,月に数日など一定の期間に限って反復使用する場合は,複数年にわたり繰り返し使用していても,特別の料金の対象となる。
入院や仕事等で服用が中断しても,処方終了日から1か月以内に同じ病名・症状で処方が再開されれば,継続性は損なわれないものとして扱われる。
中断が1か月を超える場合でも,慢性疾患等で明らかに同一の疾病又は負傷であると推定されるときは,継続性を損なわないものとして扱われる。
年間を通じた継続使用の実績は医療用医薬品の使用歴だけで判断され,同じ成分のOTC医薬品を一時的に服用した期間は考慮されない。

8 OTC医薬品にない効能・効果

OTC医薬品で承認されている効能・効果では対応できない状態に対象医薬品を処方する場合は,対象外となる。
例えば,医療用医薬品のフェキソフェナジン塩酸塩の効能・効果には,アレルギー性鼻炎のほか,蕁麻疹や皮膚疾患(湿疹・皮膚炎,皮膚そう痒症,アトピー性皮膚炎)に伴うそう痒があるが,一般用医薬品の効能・効果は花粉やハウスダスト等による鼻のアレルギー症状の緩和に限られている。
そのため,蕁麻疹等のそう痒を目的に処方する場合は特別の料金の対象外となるが,アレルギー性鼻炎を目的に処方する場合は,他の対象外の場合に当たらない限り,特別の料金の対象となる。
対象外となる効能・効果の一覧は,対象医薬品等についての事務連絡の別添2として公表されている。

アトピー性皮膚炎に伴う皮脂欠乏症等へのヘパリン類似物質は,一般用医薬品の効能・効果である手指のあれ,ひび,乾皮症と実質的に対応するものと整理されており,この場合には当たらず特別の料金の対象となる。
ただし,前記のとおり,毎日使用して年間を通じた継続使用の実績がある場合は,長期使用として対象外となる。

9 妊婦・授乳婦

OTC医薬品の添付文書で,妊婦,妊娠している可能性がある者又は授乳婦について「服用しないこと」等と記載されているものと同じ成分の医療用医薬品を処方する場合は,対象外となる。
該当する医薬品は対象医薬品等についての事務連絡の別添3で示されており,妊婦等と授乳婦とで対象となる医薬品が異なる。
厚生労働省の概要資料は,例としてイトプリドを挙げている。
妊婦等であることの確認は本人の申告(問診票)を基本とし,必要に応じて母子健康手帳等の情報に基づき医師が判断する。

第6 処方箋・薬局・会計での扱い

1 処方箋の「一部保険外療養」欄

令和9年3月1日付けで処方箋の様式が改正され,「一部保険外療養」欄が設けられる。
処方医は,対象医薬品を処方する場合,特別の料金の対象であれば「○」を,対象外であれば「―」を,対象医薬品ごとに記載する。
特別の料金の対象か対象外かの判断は,処方時に保険医療機関・処方医が行う。

薬局の薬剤師は,「○」の記載があれば特別の料金の支払を受け,「―」の記載であれば特別の料金の対象外とする。
対象医薬品が記載されているのに「○」も「―」も記載されていない場合は,処方医に疑義照会を行う。
ただし,患者が18歳に達する日以後の最初の3月31日までの間にある者であるとき,又は妊婦等が代替性の高いOTC医薬品を服用できない場合に当たるときは,年齢等を確認すれば対象外であることが明らかなので,疑義照会を行わずに特別の料金を求めなくてよく,事後に処方医へ報告する。
改正前の様式の処方箋も,当分の間,手書き等で修正して使うことができる。

2 情報提供と同意,処方の考え方

掲示事項等告示の第三の二は,一部保険外療養に関して支払を受ける場合の基準の通則として,「当該療養は、患者への情報提供を前提とし、患者の同意がなされたものに限られるものとする。」と定めている。
保医発0930第6号も,保険医療機関又は保険薬局は,特別の料金の支払を受けるに当たり,代替性が特に高いことから薬剤費の4分の1を特別の料金として支払うことについて説明を行うことが適当であるとしている。
同通知は,この制度は対象医薬品の処方を控えることを意図するものではなく,処方医は,対象医薬品か否かにかかわらず,引き続き個々の患者の症状等に応じて最適な薬剤を処方することとしている。

3 領収書と診療報酬明細書

特別の料金を徴収した保険医療機関又は保険薬局は,保険外併用療養費の一部負担に係る徴収額と,特別の料金に相当する自費負担に係る徴収額を明確に区分した領収書を交付する(令和8年9月30日保医発0930第7号による改正後の「「療担規則及び薬担規則並びに療担基準に基づき厚生労働大臣が定める掲示事項等」及び「保険外併用療養費に係る厚生労働大臣が定める医薬品等」の実施上の留意事項について」第3の32)。
保険医療機関は,対象医薬品を一部保険外療養の対象とせずに処方する場合は,診療報酬明細書にその理由を記載しなければならない(保医発0930第6号第3)。

4 長期収載品の選定療養との関係

対象医薬品が長期収載品(後発医薬品のある先発医薬品)でもある場合,一部保険外療養の特別の料金の対象となるときは,長期収載品の選定療養の特別の料金の対象とならない。
一部保険外療養の対象外となる場合でも,患者が自分の選択で長期収載品を使用するときは,長期収載品の選定療養の特別の料金の対象となる。
同じ医薬品に両方の特別の料金が重ねて課されることはないが,同じ処方箋に一部保険外療養の対象医薬品と別の長期収載品が含まれる場合は,両方の特別の料金が生じることがあり,その場合はそれぞれ別に計算する。
長期収載品の選定療養の仕組みと,令和8年6月からの価格差の2分の1への引上げは,令和6年10月の厚生労働省制度変更の第3で整理している。

第7 財政制度等審議会の建議と給付割合7割の規定

1 建議の提言

財政制度等審議会は,令和7年12月2日の「令和8年度予算の編成等に関する建議」で,薬剤自己負担の在り方の見直しを取り上げた(本文43頁~44頁)。
建議は,効能・効果等が同等であるにもかかわらず,薬局やドラッグストア等で自らOTC薬を購入する場合と医療機関でOTC類似薬の処方を受ける場合との間で自己負担額に格差が生じており,「公平性の観点からも課題がある」とした。
その上で,諸外国の例(医薬品の処方制限,有用性に応じた自己負担割合の設定,定額自己負担)も参考に,必要な医療の保障とのバランスを確保しつつ,OTC類似薬を含む薬剤の自己負担の在り方を見直すべきだとした。

建議は,かつて日本にも薬剤費について別途自己負担を求める仕組みが存在したが,高齢者の1割負担の導入や被用者保険の3割自己負担化の過程で廃止されたことに触れ,平成14年の健康保険法等改正法附則2条との関係も含めて,国民的な議論を喚起することが必要だとしている。
さらに,OTC類似薬に限らず,外来薬剤を広く対象として一定額の自己負担を追加的に求めることも含め,幅広い選択肢を検討し,早急に結論を得るべきだとした。
建議は審議会の意見であり,一部保険外療養の仕組みは,改正法と告示によって設けられたものである。

2 平成14年改正法附則2条1項との関係

健康保険法等の一部を改正する法律(平成14年法律第102号)附則2条1項は,「医療保険各法に規定する被保険者及び被扶養者の医療に係る給付の割合については、将来にわたり百分の七十を維持するものとする。」と定めている。
改正法は,この附則2条を改正していない。

条文の構造からみると,一部保険外療養は,薬剤費の4分の1を「保険給付の対象としない」部分として切り出し,残りの部分には通常の療養の給付と同じ割合で一部負担を求める形をとっている(健康保険法86条3項)。
本記事では,これを,給付割合そのものを引き下げるのではなく,保険給付の対象となる費用の範囲を調整する仕組みと整理する。
もっとも,対象医薬品の薬剤費全体でみれば,3割負担の患者の負担が約47.5%となることは,第1の3で述べたとおりである。

第8 出典・関連記事

1 法令

健康保険法等の一部を改正する法律(令和8年法律第31号)(衆議院)(1条(健康保険法63条,86条),5条(国民健康保険法36条),8条(高齢者の医療の確保に関する法律64条),附則1条4号,2条2項,11条)
健康保険法(e-Gov法令検索)(63条,86条。令和9年3月1日施行の版)
健康保険法等の一部を改正する法律(平成14年法律第102号)(衆議院)(附則2条)
健康保険法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令(令和8年政令第320号)
保険医療機関及び保険医療養担当規則及び保険薬局及び保険薬剤師療養担当規則の一部を改正する省令(令和8年厚生労働省令第143号)
健康保険法等の一部を改正する法律の一部の施行に伴う厚生労働省関係告示の整備に関する告示(令和8年厚生労働省告示第360号)

2 厚生労働省の通知・資料

厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の在り方の見直しについて(OTC類似薬の一部保険外療養)」(令和8年11月6日更新)
厚生労働省「OTC類似薬の保険給付の見直しの実施について(医療保険部会とりまとめ)」
令和8年9月30日保発0930第5号「健康保険法等の一部を改正する法律の一部の施行期日を定める政令の公布について」
令和8年9月30日保医発0930第6号「要指導医薬品又は一般用医薬品との代替性が特に高い医療用医薬品の処方又は調剤に係る一部保険外療養について」
令和8年9月30日保医発0930第7号(実施上の留意事項の一部改正)(第3の32)
令和8年9月30日事務連絡「要指導医薬品又は一般用医薬品との代替性が特に高い医療用医薬品の処方又は調剤に係る一部保険外療養における費用の計算方法について」
令和8年9月30日事務連絡「要指導医薬品又は一般用医薬品との代替性が特に高い医療用医薬品の処方又は調剤に係る一部保険外療養の対象医薬品等について」
同事務連絡の別添1「対象医薬品リスト」(Excel)

3 財政制度等審議会

財政制度等審議会「令和8年度予算の編成等に関する建議」(令和7年12月2日)(本文43頁~44頁)

4 動画

日テレNEWS「【厚生労働省】「OTC類似薬」薬剤費25%追加負担の新制度 「対象」などとりまとめ」(YouTube,令和8年9月16日公開)

5 関連記事

令和6年10月の厚生労働省制度変更
確定申告しない金融所得と後期高齢者医療の保険料
出産無償化はいつから?