メインコンテンツへスキップ
       

平成23年司法試験刑事系第2問(刑事訴訟法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した21項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

本記事は,平成23年司法試験の刑事系科目第2問(刑事訴訟法)について,公式の出題の趣旨と採点実感から独自に抽出した21項目を5段階で整理し,答案案と解説を示すものである。
評価項目と重みは法務省の公式採点基準・項目別配点ではない。

項目内容
対象問題平成23年刑事系科目第2問(PDFの5頁~12頁)
答案の基準時平成23年5月14日の試験実施時。事例は平成22年の捜査・公判。
公式資料出題の趣旨はPDFの12頁~14頁(刑事系科目第2問の節),採点実感はPDFの28頁~31頁を確かめた。逮捕②の読み方に関する司法試験委員会の取扱いも確かめた(第7の1)。
主要事項別件逮捕・勾留,拘束の蒸し返し,報告書全体と添付メールの伝聞性。
評価項目N=21。重み5は6項目,重み合計W=86。独自の分析値。
答案分量5000字以内。下記答案は見出しを含み,空白・改行を除いて4132字。
主要裁判例再伝聞について最高裁昭和32年1月22日判決,証言拒絶と供述不能について最高裁昭和27年4月9日大法廷判決を解説で参照する(第7の3)。
後発の法令・判例試験後の改正・裁判例を当時の答案要求を変更する根拠に用いない。
確認日令和8年11月6日

答案は,別件の法定要件を原則としつつ実質的な令状主義の潜脱を許さない立場を採る。
甲の別件拘束と本件拘束,乙の本件拘束を肯定し,乙の別件拘束末期には必要性を欠く継続の問題が残るとする。
公式資料は特定の結論だけを要求するのではなく,採用した立場と具体的事実に即した一貫した論述を求めている。

重み5は,拘束の判断基準(番号1),前後の拘束の接続(番号10),報告書全体の証拠能力(番号11),遺棄依頼の発言(番号16),殺人告白の再伝聞(番号17),資料2の交信の非伝聞利用(番号20)である。
評価表は第4,答案とその対応は第5を参照。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

一つの行に一つの判定対象を置き,答案にどのような処理があれば充足するかを具体化した。
出典欄の頁は公式PDFの通し頁であり,引用は原文の短い字句に限った。
一般的な記載から具体化したものは「間接」と示し,当該問題の範囲を確かめて対応する記載がない場合だけ「記載なし」とする。

番号5・10・19は,逮捕者の読み,採用した別件逮捕勾留論,共犯者の公判での供述状況に応じた分岐を含む。
相互に異なる構成の結論を全答案へ累積要求しない。
番号21は口頭発言に署名・押印を要求する誤りを回避する注意項目である。
同じ誤りを通常項目と注意項目で二重に減点する趣旨ではない。

2 5段階の重み付けの基準

重み基準
5その設問の判断を大きく分ける核心。
4結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ。
3通常押さえる法的処理・事情の評価。
2論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意。
1補充的な引用・記述範囲の確認。

重要度は重み1~5だけで表示する。
注意という種別だけで重みを決めず,5を一定割合に割り当てることもしない。
重みの合計から公式得点・合格可能性・年度間の難易度を推計することはできない。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

殺人・死体遺棄事件の捜査で,Aの申告したBの私的メールの内容に符合する死体が発見され,甲乙が浮上した。
捜査官は,本件での逮捕には証拠が不十分と考え,甲を別の強盗事件で,乙を万引きで逮捕した。
その後の余罪取調べの内容は甲乙で異なり,両名は釈放と同日に本件で逮捕される。

証拠は,Bのパソコンに保存されたA宛てメールを添付する資料1と,甲の携帯電話から出力した報酬請求・返信を添付する資料2である。
資料1にはBの直接体験,甲乙の殺人告白,遺棄の協力依頼が含まれ,情報の層と発言機能が異なる。

逮捕②の逮捕者の記載については,司法試験委員会が平成23年6月6日に採点上の取扱いを公表している。
司法警察員Pを現認者Qと異なる逮捕者と読む場合も,そうでない場合も,採用した事実を前提として適切に論述すれば評価される。
答案は主にPとQを分けて検討する。

2 設問が求めること

設問立場・対象指定・仮定・除外到達点
1中立的に四つの逮捕と後続拘束を評価。各逮捕・勾留の法定要件と別件拘束論を具体的事実へ適用。有罪判断ではない。個々の拘束の適否と前後関係。
2資料1・2の証拠能力。弁護人は不同意。指定された立証趣旨と証拠の内容に即して情報層を分ける。報告書全体及び各供述の採否・条件。

第4 評価項目と重み

1 設問1(逮捕及び身体拘束)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1別件逮捕・勾留の適法性を判断する基本的立場を示し,事件単位の令状審査と拘束期間制限から理由付ける。512頁・基本的立場の検討要求は明示。事件単位の令状審査・拘束期間制限による理由付けは本記事の具体化。引用:別件基準説と本件基準説28頁・各自の基本的立場を論じる要求は明示。具体的な理由付けは本記事の具体化。引用:各自の基本的な立場
2甲の逮捕①について,写真による犯人識別と共犯者未解明の事情を通常逮捕の嫌疑・必要性へ当てはめる。412頁・写真識別の検討は明示。共犯者未解明からの必要性評価は問題文7頁等に基づく本記事の具体化。引用:店員Wが複数の中から甲の写真を選択29頁・間接。第199条
3甲の強盗勾留について,嫌疑及び罪証隠滅・逃亡の危険と拘束の必要性を逮捕とは別に判断する。412頁・設問1の具体化。甲の供述態度等29頁・間接。勾留の各要件
4甲の自発的供述,15~16日の事情聴取,書面作成拒否,17日以降の毎日約30分の説得を,採用した立場の下で一連の拘束の適法性へ結び付ける。412頁・明示。毎日約30分だけ28頁・間接。個々の事例中に現れた具体的事実
5乙の逮捕②の逮捕者と現認者の関係を明示し,採用した事実の読み方に応じて現行犯又は準現行犯逮捕の要件と必要性を判断する。412頁・明示。現行犯逮捕又は準現行犯逮捕29頁・間接。第212条
6乙の勾留について,同種前歴,逃走,生活状況,被害額,その後の自認・弁償・処罰不希望を拘束の理由・必要性に即して評価する。412頁・勾留につき前歴・生活状況等を明示。逃走・少額被害や18日・20日の事情を勾留理由・必要性へ結び付ける点は本記事の具体化。引用:乙の生活状況等29頁・間接。事例に含まれている具体的事実
7乙が余罪を否定した後に本件の聴取を受けなかった事実を,甲との相違及び別件拘束の評価に位置付ける。312頁・設問1の具体化。一切聴取されなかっ30頁・間接。各事例中に現れた具体的事実
8甲の逮捕③及び後続勾留について,Aの供述,死体,メール等と供述態度を本件の嫌疑・拘束の必要性へ当てはめる。412頁・設問1の具体化。A女の供述やV女の29頁・間接。逮捕及び勾留の各要件
9乙の逮捕④及び後続勾留について,本件を支える資料と乙の供述態度から嫌疑・拘束の必要性を判断する。412頁・設問1の具体化。甲及び乙の供述態度等29頁・間接。逮捕及び勾留の各要件
10先行する別件拘束と本件拘束の関係を採用説に即して説明し,実質的に同一被疑事実の拘束の蒸し返しとなるかを甲乙別に検討する。512頁・明示。実質的に同一被疑事実28頁・間接。各自の基本的な立場

2 設問2(捜査報告書とメール)

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
11両報告書全体を検証結果記載書面に準じるものと捉え,刑訴法321条3項により作成者Pの公判廷での真正作成供述を要すると説明する。513頁・明示。刑事訴訟法第321条第3項29頁・明示。捜査報告書全体について
12資料1添付メール全体をBが作成した供述書とし,殺人・遺棄の事実の真実性を立証するための伝聞証拠と判断する。413頁・明示。メール全体のBの供述29頁・明示。同メールはBの供述書
13Bの死亡を刑訴法321条1項3号の供述不能に当てはめる。313頁・明示。Bの死亡や甲,乙両名が黙秘していること29頁・間接。各要件に照らして検討
14甲乙の黙秘等を踏まえ,Bの直接体験・聴取内容を記すメールの犯罪事実証明上の不可欠性を理由付ける。313頁・明示。Bの死亡や甲,乙両名が黙秘していること29頁・間接。各要件に照らして検討
15供述当時の結婚を前提とした交際関係・秘密の告白等を,供述内容と死体発見状況等との符合にも触れて,Bの特信情況に即して評価する。413頁・明示。当時,A女と結婚を前提に交際してい29頁・間接。各要件に照らして検討
16Bに遺棄の手伝いを求める甲乙の発言は,内心の状態又は共謀の構成事実を示す使用では,内側の発言自体は非伝聞となると理由付ける。513頁・明示。内心の状態を推認させる発言29頁・明示。この点に気付いている答案
17殺人告白はBのメールを外側とする再伝聞であり,刑訴法324条の趣旨を供述代用書面へ及ぼす根拠を述べ,各層の例外を検討する。513頁・明示。第324条第1項が供述代用書面に準用できるか29頁・明示。再伝聞が問題になり得ること
18甲を被告人とする甲発言,乙を被告人とする乙発言は,刑訴法322条1項の不利益事実の承認と任意性を友人への自発的発言に即して判断する。413頁・明示。被告人とする関係では29頁・明示。第322条第1項の適用
19他方の被告人に対する共犯者の発言は刑訴法321条1項3号の要件を検討し,捜査段階の黙秘と公判での供述不能を区別して条件付きで結論を示す。413頁・明示。公判で黙秘しない限りは29頁・明示。同法第321条第1項第3号の適用
20資料2添付の催促と返信は,一連の交信の存在と内容を情況証拠として用いるため非伝聞とし,立証趣旨を存在と内容へ分断せず関与への推認を説明する。513頁・明示。伝聞証拠には該当しない29頁・明示。そのような内容でのメール
21Bが聞いた甲乙の口頭発言について,甲乙本人の署名・押印がないことを理由に内側の供述の証拠能力を否定しない。3記載なし29頁・明示。同人らの署名又は押印がないこと

適用条件:番号5は採用した逮捕者の読み方に応じた類型を評価する。
番号10は採用説から先行拘束と本件拘束を接続することを評価し,実質同一性を否定する説へ肯定説の結論を要求しない。
番号19は他方の被告人への共犯者発言の使用に関する条件である。

3 重みの分布

重み1は0項目,2は0項目,3は4項目,4は11項目,5は6項目である。
総数N=21,重み合計W=3×4+4×11+5×6=86である。
重み5の番号は1・10・11・16・17・20であり,基準の選択,前後段の接続,証拠の情報層と要証事実の区別を左右する。
個々の事実評価を支える重み4とは役割が異なる。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

試験実施時を基準とした答案案であり,指定された二つの設問に答える。
甲乙の拘束の結論は本記事で採用した立場によるもので,唯一の公式解答を示すものではない。
供述者と被告人の関係及び公判で供述を得られるかによる留保を残す。
字数は見出しを含み,空白・改行を除いて4132字である。

2 答案

第1 設問1

1 判断の立場

 逮捕・勾留は事件単位の処分であり,裁判官は特定の被疑事実について嫌疑と拘束の必要性を審査する。
他方,別件と本件の双方を捜査する意図だけで,別件について存在する拘束の理由が失われるわけではない。
そこで,原則として別件の法定要件から拘束の適法性を判断する。
ただし,別件が単なる名目で,実質的に本件のための拘束である場合まで許せば,本件に関する令状審査と拘束期間の制限を潜脱することになる。
拘束の実質は,両事件の関連性・軽重,捜査の重点,取調べの内容・時間・経過,別件の拘束必要性等から判断すべきである。

 本件の捜査目的を重視して一連の拘束を本件基準で判断する考え方もある。
しかし,本件についても捜査する意図のみで別件の適法な拘束まで否定するのは広すぎる。
別件の理由・必要性を具体的に審査し,実質的潜脱を禁ずることにより,事件単位の保障を確保する。

2 甲の逮捕①とその後の拘束

 通常逮捕には,罪を犯したことを疑うに足りる相当な理由と逮捕の必要性が必要である(刑訴法199条,刑訴規則143条の3)。
甲は強盗犯人の1人に酷似し,被害者Wも複数の写真から甲を選び,犯人に間違いないと述べている。
嫌疑は具体的であり,重大な強盗事件で共犯者が未解明であることから,逃亡・通謀による罪証隠滅を防ぐ必要も認められる。
後に起訴するだけの証拠がないと判断されたことは,より低い逮捕時の嫌疑を遡って消滅させない。
逮捕①は適法である。

 12日の勾留についても,前記の嫌疑と共犯者との通謀による罪証隠滅のおそれがあり,重大事件であることを併せれば,60条1項2号,207条1項による理由・必要性がある。
否認それ自体を隠滅のおそれとするのではなく,未解明の共犯関係との結び付きが問題となる。
逮捕翌日の送致・勾留も,法定時間の上限を超えていない。

 Pは本件を解明するため別件を探索した。
しかし,甲の取調べは強盗を中心に行われ,本件の事情聴取は甲が15日に自ら殺人と遺棄を認めたことを契機として15,16日の2日間行われた。
17日以降は強盗の聴取を中心とし,本件については毎日約30分の書面作成の説得にとどまった。
強盗と本件の関連性は乏しく,書面化の説得も本件捜査であるが,強盗自体の拘束必要性があり,その捜査が実際に継続されている。
短時間であれば常に許されるわけではないものの,本件取調べが拘束を全面的に支配したとは認め難い。

 書面作成は強制できず,拒否の意思を尊重すべきである。
本件では甲は拒否を維持し,書面も作成されていない。
与えられた事実上,説得が強制に至ったとまでは認められず,別件が単なる名目となったともいえない。
したがって,採用した立場から,①に続く21日までの身体拘束も適法と解する。

3 乙の逮捕②とその後の拘束

 逮捕者を,万引きを現認したQとは異なるPと読む。
Pが犯行を直接見ていなくても,犯行直後に乙が呼び止められて逃走し,追跡が連続している。
呼び止め・追跡の状況から,犯行と時間的・場所的に接着し,乙が現に罪を行い終わった者であること及び犯人であることが逮捕者に明白と認められる場合には,現行犯逮捕ができる(212条1項,213条)。
また,犯人として追呼されていたとの評価が成り立つ場合は,212条2項1号の準現行犯としても説明できる。
ただし,Pが犯行直後性や追呼を認識し得た事情がなければ,Qの現認をPへ当然に移して適法とすることはできない。
以下では,問題の連続した追跡状況からPも認識できたと解する。

 被害は500円だが,窃盗罪は217条所定の軽微犯罪ではない。
同種前歴に加えて現実に逃走しているから,逮捕の必要性もある。
逮捕②は適法である。
逮捕者を現認者Qと読む場合も,現認・犯行直後性・逃走から同じ結論となる。

 14日の勾留は,現認による強い嫌疑と現実の逃走があり,前歴も踏まえれば,再び逃亡するおそれを否定し難い。
独居であることや黙秘だけで危険を推定すべきではないが,当初は60条1項3号,207条1項の理由・必要性を認める。

 乙は15日に余罪を否定した後,本件の聴取を一切受けていない。
Pが本件目的を有し,本件に関する物証を得たとしても,それだけで別件拘束を本件取調べのための拘束と同視することはできない。
ただし,18日の自認,20日の弁償及び処罰不希望により,少額事件の捜査と処分のために拘束する必要は大幅に減少する。
既に現認証拠もあることに照らすと,具体的な残余の逃亡等の危険を示さず拘束を維持することはできず,20日以降の必要性を欠く継続は違法と解する。

4 逮捕③④とその後の拘束

 本件では,Aの供述に従ってVの死体等が発見され,Bのメール①には甲乙の殺害告白と遺棄の具体的経緯が記され,報酬に関する交信も得られている。
これらを総合すれば,甲乙それぞれの本件嫌疑は具体的である。
重大な共犯事件であり,残る証拠の隠滅や通謀・逃亡を防ぐ必要もある。

 同一被疑事実について拘束を繰り返し,期間制限を実質的に更新することは許されない。
しかし,採用した立場では,甲の前の拘束は実質的にも強盗に関するものであり,乙も本件の継続的な取調べを受けていない。
したがって,③④は本件による初めての逮捕であって,別件中に余罪の聴取をしたというだけで蒸し返しとはならない。
甲が本件について口頭供述したことも,殺人・遺棄の客観的捜査が尽くされたことを意味しない。

 乙の別件拘束の末期に必要性を欠いたとしても,本件について独立した嫌疑・必要性を審査することは妨げられない。
よって③④と23日の勾留は適法と解する。
勾留延長には208条2項のやむを得ない事由が必要であり,単なる自白待ちでは足りない。
23日の勾留請求を起点とする通常10日と延長10日の上限では6月11日が末日となるが,実際の延長理由の審査まで期間内というだけで省略できない。

第2 設問2

1 両捜査報告書全体

 Pは押収した機器を精査し,発見したデータを紙に印刷して報告している。
これは機器中の情報の存在・状態を観察した結果の記録であり,検証結果を記載した書面に準じる。
したがって,321条3項により,作成者Pが公判廷で真正に作成した旨を供述すれば,報告書全体の証拠能力が認められる。
機械的に印刷したことだけで,この段階を非伝聞として省略してはならない。
その上で,添付メールの各供述について別に検討する。

2 資料1のBの供述

 メール①は,Bが知覚・記憶し表現した殺人・死体遺棄の事実が真実であることを立証するために用いられるから,伝聞証拠である(320条1項)。
B自身が作成した供述書であり,PがBの供述を録取した書面ではない。
Aの識別供述,Bがパソコンを専用した事情,保存された送受信記録は,その真正を支える。

 321条1項3号について,Bは死亡しており供述不能である。
甲乙は捜査段階で黙秘している一方,Bは殺害告白の聞き手かつ遺棄の参加者であり,犯人・共謀・実行の経緯を示すメールは犯罪事実の存否の証明に不可欠である。

 Bは事件直後に,結婚を前提とする交際相手Aへ,自己の犯罪関与も含めて秘密を打ち明けている。
捜査機関への責任転嫁を目的とする供述ではなく,信頼関係に基づく私的な告白である。
自己の役割を軽く説明する可能性はあるが,具体的内容がAの供述や死体発見状況とも符合することを併せ,供述を特に信用すべき情況の下でされたと評価する。
よって外側のBの供述は同号により証拠とできる。

3 資料1の甲乙の発言

 死体遺棄を手伝うように依頼する発言は,甲乙が死体を遺棄しようとする内心を示し,Bとの共謀を構成する発言そのものとして用いられる。
内側の依頼内容が過去の事実として真実かを立証するものではないから,この使用では内側の発言は非伝聞である。
ただし,Bがその発言を聞いたという外側の供述は前記の例外を必要とする。

 これに対し,Vを殺害したとの甲乙の発言から殺人の存在を立証する場合,内側でも知覚・記憶・表現の正確性が問題となり,再伝聞となる。
324条が公判供述に含まれる他者の供述について例外を定める趣旨は,供述代用書面に含まれる場合にも妥当するから,同条を類推適用し,各層の例外を満たす必要がある。

 甲に対する甲の発言,乙に対する乙の発言は,それぞれ324条1項の類推により,322条1項に従って判断する。
殺人を認める不利益事実の承認であり,友人Bに遺棄の協力を求める際の自発的発言で,任意性を疑う事情はない。
これらの口頭発言について,本人の署名・押印を要求するものではない。

 甲に対する乙の発言,乙に対する甲の発言は,被告人以外の者の供述であるから,324条2項の類推により321条1項3号の要件が必要である。
捜査中の黙秘だけで公判の供述不能を確定できない。
公判でも供述者が黙秘して供述を得られない場合に,供述不能・不可欠性・特信情況を審査する。
友人への犯罪直後の協力依頼に伴う自発的告白は特信情況を支えるが,共犯者への責任転嫁の可能性も吟味しなければならない。
公判で黙秘しないなら供述不能要件を欠き,この例外により他方の被告人の殺人を立証することはできない。
被告人との関係で採用範囲を区別すべきである。

4 資料2

 立証趣旨は「死体遺棄の報酬に関するメールの交信記録の存在と内容」である。
Bの催促に対し甲が支払を約したという一連の交信が存在したことを情況証拠として用いるのであって,記載された遺棄の事実をその真実性に依存して直接証明するものではない。
通常,関与していない相手からの遺棄報酬の請求に,その報酬を払う旨の返信をするとは考えにくいという推認が働く。
よって添付メールは非伝聞である。

 「存在」だけなら非伝聞,「内容」なら伝聞と切り分けたり,各メールを別々に伝聞例外へ当てはめたりすべきではない。
これは報酬に関する内容で交信した事実の利用だからである。
甲が携帯電話を自分以外使用していないと述べていることや,Bのパソコンにも同じメールが保存されていたことは交信記録の真正を支えるが,これにより報告書全体についてのPの真正作成供述が不要になるものでもない。

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案第1の1は番号1,第1の2は番号2~4,第1の3は番号5~7,第1の4は番号8~10に対応する。
答案第2の1は番号11,第2の2は番号12~15,第2の3は番号16~19・21,第2の4は番号20に対応する。
重み3以下の番号7・13・14・21も,対応する段落で個別に確認する。

重み5のうち,番号1は答案第1の1の基準,番号10は第1の4の蒸し返し,番号11は第2の1の報告書全体,番号16・17は第2の3の依頼と殺人告白の区別,番号20は第2の4の交信の利用に当たる。
第4の重み5・4の項目及び条件付きの項目について,模範解答との対応を次の表に示す。

番号重み評価項目答案の該当箇所・留保
15別件逮捕・勾留の適法性を判断する基本的立場を示し,事件単位の令状審査と拘束期間制限から理由付ける。答案第1の1
24甲の逮捕①について,写真による犯人識別と共犯者未解明の事情を通常逮捕の嫌疑・必要性へ当てはめる。答案第1の2
34甲の強盗勾留について,嫌疑及び罪証隠滅・逃亡の危険と拘束の必要性を逮捕とは別に判断する。答案第1の2
44甲の自発的供述,15~16日の事情聴取,書面作成拒否,17日以降の毎日約30分の説得を,採用した立場の下で一連の拘束の適法性へ結び付ける。答案第1の2
54乙の逮捕②の逮捕者と現認者の関係を明示し,採用した事実の読み方に応じて現行犯又は準現行犯逮捕の要件と必要性を判断する。答案第1の3。逮捕②の現認者・逮捕者の読み分けに応じて対応類型を採用する。両類型の累積要求ではない。
64乙の勾留について,同種前歴,逃走,生活状況,被害額,その後の自認・弁償・処罰不希望を拘束の理由・必要性に即して評価する。答案第1の3
84甲の逮捕③及び後続勾留について,Aの供述,死体,メール等と供述態度を本件の嫌疑・拘束の必要性へ当てはめる。答案第1の4
94乙の逮捕④及び後続勾留について,本件を支える資料と乙の供述態度から嫌疑・拘束の必要性を判断する。答案第1の4
105先行する別件拘束と本件拘束の関係を採用説に即して説明し,実質的に同一被疑事実の拘束の蒸し返しとなるかを甲乙別に検討する。答案第1の4。本件拘束の評価を採用した別件逮捕勾留論に即して行う。実質同一性を肯定しない説に,肯定説の結論を累積要求しない。
115両報告書全体を検証結果記載書面に準じるものと捉え,刑訴法321条3項により作成者Pの公判廷での真正作成供述を要すると説明する。答案第2の1
124資料1添付メール全体をBが作成した供述書とし,殺人・遺棄の事実の真実性を立証するための伝聞証拠と判断する。答案第2の2
154供述当時の結婚を前提とした交際関係・秘密の告白等を,供述内容と死体発見状況等との符合にも触れて,Bの特信情況に即して評価する。答案第2の2
165Bに遺棄の手伝いを求める甲乙の発言は,内心の状態又は共謀の構成事実を示す使用では,内側の発言自体は非伝聞となると理由付ける。答案第2の3前半
175殺人告白はBのメールを外側とする再伝聞であり,刑訴法324条の趣旨を供述代用書面へ及ぼす根拠を述べ,各層の例外を検討する。答案第2の3後半
184甲を被告人とする甲発言,乙を被告人とする乙発言は,刑訴法322条1項の不利益事実の承認と任意性を友人への自発的発言に即して判断する。答案第2の3後半
194他方の被告人に対する共犯者の発言は刑訴法321条1項3号の要件を検討し,捜査段階の黙秘と公判での供述不能を区別して条件付きで結論を示す。答案第2の3末尾。共犯者発言を他方の被告人に対して使用する範囲。公判での黙秘等が確認できる場合と確認できない場合を分ける。
205資料2添付の催促と返信は,一連の交信の存在と内容を情況証拠として用いるため非伝聞とし,立証趣旨を存在と内容へ分断せず関与への推認を説明する。答案第2の4

(2) 設問1

出題の趣旨は,別件基準説・本件基準説等の基本的立場を刑事訴訟法の解釈として示し,四つの逮捕及び後続拘束の各要件を具体的事実へ適用することを求める。
採点実感は,別件逮捕の抽象論だけで法定要件の当てはめを欠く答案を問題としている。

答案はまず基準と潜脱の限界を示し(番号1),写真識別・共犯関係と甲の拘束必要性を結び付けた(番号2・3)。
甲の自発的供述,二日間の聴取,書面拒否,毎日の説得を,採用した基準から評価した(番号4)。
短時間という一点だけで適法とするものではない。

乙については,公式注記に従って逮捕者の読みを明示し(番号5),現実の逃走とその後の弁償等を別の時点の事情として扱った(番号6)。
本件聴取がなかった点を甲との差として位置付け(番号7),後の本件拘束は嫌疑・必要性と蒸し返しを別々に検討した(番号8~10)。
乙の20日以降の継続必要性を否定する評価は本記事の理解であり,公式が指定した結論ではない。

(3) 設問2

出題の趣旨と採点実感は,報告書全体と添付メールを分け,さらに資料1の遺棄依頼と殺人告白を分けることを求めている。
答案は,最初に検証類似の報告書としてPの真正作成供述を要求した上で(番号11),Bの供述書について321条1項3号の要件を検討した(番号12~15)。

遺棄依頼は内心又は共謀を構成する発言の利用として,内側では非伝聞となる(番号16)。
殺人告白は真実性を用いる再伝聞であり,書面へ類推適用する理由を示して(番号17),自己を被告人とする関係の322条1項と,共犯者を被告人とする関係の321条1項3号を区別した(番号18・19)。
公判で供述を得られるかという未確定の条件を,捜査段階の黙秘から確定させない。
口頭発言の署名・押印を求めない点にも注意する(番号21)。

再伝聞の処理について,最高裁昭和32年1月22日第三小法廷判決(昭和30年(あ)第1941号,刑集11巻1号103頁)は,被告人の検察官面前調書に含まれた共同被告人からの伝聞供述について,刑訴法321条1項2号及び324条により,その共同被告人に対する証拠能力を認めた原審の判断を正当としている。
外側と内側の層を分けて例外を検討する処理の参考になるが,私人の作成した供述書の中の発言を,原供述者以外の被告人に対して用いる場面まで直接判断したものではない。
答案が324条を供述代用書面へ類推する理由を示したのはこのためである。

供述不能について,最高裁昭和27年4月9日大法廷判決(昭和26年(あ)第2357号,刑集6巻4号584頁)は,刑訴法321条1項2号前段が掲げる供述不能の事由を,供述者を証人として尋問することを妨げる障害事由の例示と捉え,証人が第一審で証言を拒絶した場合に検察官面前調書を採用した判断を是認した。
この考え方を3号に及ぼし,共犯者が公判で黙秘を続けて供述を得られない場合を供述不能とみる余地がある。
もっとも,判決が直接扱ったのは2号前段の証言拒絶であり,捜査段階の黙秘だけで公判での供述不能を認めることはできず,不可欠性と特信情況も別に検討する必要がある(番号19)。

資料2は,その内容で催促・返信した交信があることを情況証拠として使うため,存在と内容を分断せず非伝聞とした(番号20)。
この推認は,報酬を請求され支払を約した甲の関与に向けたものであり,送受信者として表示されていない乙の関与を資料2だけで直接立証するものではない。
報告書全体の真正作成と,添付の交信の非伝聞性は別の判断である。

(4) 答案の弱点と扱わなかった事項

別件拘束を本件の実質的拘束とみるかは,採用した立場と取調べ経過の評価により結論が分かれる。
甲の二日間の事情聴取やその後の説得を重くみる立場では,拘束及び後の本件拘束について別の結論もあり得る。
乙の逮捕者Pの認識に関する情報は問題文上十分でないため,答案の読み方と留保を維持する必要がある。

資料1の特信情況は,内容が符合したという結果だけでなく,供述当時の外部的情況から判断すべきである。
他方の被告人へ使用する発言には,公判での供述不能等の条件が残る。
本件で請求された報告書と直接結び付かない乙パソコンの捜索や派生証拠の一般論,実体法上の罪責,国賠その他の後続対応は答案の中心から外した。

第6 関連記事

1 同じ年度の司法試験の記事

①平成23年司法試験公法系第1問(憲法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した25項目と5段階の重み付け(AI作成)
②平成23年司法試験公法系第2問(行政法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した31項目と5段階の重み付け(AI作成)
③平成23年司法試験民事系第1問(民法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した38項目と5段階の重み付け(AI作成)
④平成23年司法試験民事系第2問(商法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した36項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑤平成23年司法試験民事系第3問(民事訴訟法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した33項目と5段階の重み付け(AI作成)
⑥平成23年司法試験刑事系第1問(刑法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した28項目と5段階の重み付け(AI作成)

2 同じ科目の別の年度の記事

年度が異なる問題と比較する際も,個々の指定要証事実と法令の基準時を分けて読む必要がある。

①平成24年司法試験刑事系第2問の模範解答と評価項目18個(AI作成)
②平成25年司法試験刑事系第2問(刑事訴訟法)の模範解答と評価項目―22項目と5段階の重み付け(AI作成)

3 本問の論点に関連する山中弁護士ブログの記事

①法務省HPの司法試験・予備試験の資料の所在―年度別の実施・結果・出題趣旨・採点実感のページ一覧(AI作成)
②司法試験の出題法令の基準日―平成18年以降の年度別六法リンク(AI作成)

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

①法務省・平成23年新司法試験論文式試験問題・刑事系科目:PDFの5頁~12頁の第2問を確かめた。

②法務省・平成23年新司法試験論文式試験問題出題趣旨:PDFの12頁の第2問の開始から14頁の選択科目の見出しの直前までを確かめた。

③法務省・平成23年新司法試験の採点実感等に関する意見:PDFの28頁~31頁の刑事系科目第2問を確かめた。

④司法試験委員会・平成23年新司法試験論文式試験刑事系科目第2問について:平成23年6月6日付けの1頁の文書であり,逮捕②の逮捕者を現認者と異なる司法警察員Pと読んだ答案も,そうでない答案も,それぞれの事実を前提に評価するとの取扱いを確かめた。

2 法令

刑事訴訟法は,日本法令外国語訳データベース掲載の刑事訴訟法日本語版(平成23年法律第74号反映版)で,答案に用いた60条,199条,207条,208条,212条,213条,217条及び320条~324条を確認した。
この版は試験後の改正を含むため,日本法令索引の刑事訴訟法の沿革と,試験後の平成23年法律第61号の附則第11条及び同年法律第74号の第2条を照合し,これらの改正が上記の各条を改めていないことを確認した。
この照合は答案に用いた規定に限り,平成23年の試験実施時の刑事訴訟法の全条文を再構成したものではない。

逮捕の必要性に関する刑事訴訟規則143条の3は,日本法令外国語訳データベース掲載の刑事訴訟規則日本語版(平成20年最高裁判所規則第17号反映版)と日本法令索引の規則の沿革で確認した。

窃盗罪の刑法235条は,日本法令外国語訳データベース掲載の刑法日本語版(平成19年法律第54号反映版)と,日本法令索引の刑法の沿革及び平成22年法律第26号の第1条を照合した。
憲法は衆議院掲載の本文の33条,34条及び38条を確認した。

3 裁判例

最高裁昭和32年1月22日第三小法廷判決(昭和30年(あ)第1941号,刑集11巻1号103頁)は,被告人の検察官面前調書中の共同被告人からの伝聞供述について,刑訴法321条1項2号及び324条によりその共同被告人に対する証拠能力を認めた原審の判断を正当とした判決である。
全文PDFの3頁の判示部分を確かめた。

最高裁昭和27年4月9日大法廷判決(昭和26年(あ)第2357号,刑集6巻4号584頁)は,証人が第一審で証言を拒絶した場合に,刑訴法321条1項2号により検察官面前調書を証拠とすることを是認した判決である。
全文PDFの1頁~3頁の該当部分を確かめた。

両判決の法廷・事件番号・判例集の巻号頁は裁判所ウェブサイトの詳細ページで確かめた。
いずれも本問と事案を異にし,私人のメールに含まれた発言や321条1項3号への応用は本記事の解釈として区別している。
別件逮捕・勾留については特定の裁判例に依拠せず,採用した立場の理由と当てはめを第5の答案及び解説に記載した。

4 確認状態

問題,出題の趣旨,採点実感及び司法試験委員会の取扱いは,上記の対象範囲を確かめた。
法令の時点照合は答案に用いた規定を対象とし,法令集全体が試験当時の版であるとするものではない。
評価項目への分割,重み及び答案の具体的評価は本記事独自の分析である。
公式が許容する分岐と,本記事が採った一つの構成を区別している。
試験後の資料は,当時の法状態や答案要求を変更する根拠に使用していない。
確認日は令和8年11月6日である。