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パワハラ被害者の原職復帰―行為者との分離,配置転換,休職・復職及び会社の対応(AI作成)

第1 この記事の対象

1 原職復帰と接触回避を同時に考える

職場のパワーハラスメントについて相談した労働者が,一時的に休業し,又は本来の職場・業務から外れた後,元の職場への復帰を希望することがある。
会社は,その希望を聴くだけでなく,行為者との接触の可能性,健康状態,業務遂行上の配慮,配置転換による不利益及び職場全体の運営を具体的に確認する必要がある。

本記事は,パワーハラスメントが確認された場合を中心に,調査中の申告事案も含め,暫定的な分離,原職復帰,配置転換,休職・復職及び健康情報の取扱いを整理するものである。
事実認定前は「被害者」と確定した扱いをせず,記事中の「相談者」は,言動を受けたとして相談又は申告をした労働者をいう。

2 四つの判断を混同しない

会社は,①問題となる言動の事実認定,②調査中又は調査後の接触回避,③懲戒その他の行為者への措置,④相談者の就業可否及び職場復帰を分けて判断する。
健康上の保護を急ぐ必要があっても,それだけでパワーハラスメントの事実又は因果関係が確定するわけではない。

反対に,事実調査が終わっていないことを理由として,必要な安全確保又は健康上の配慮を先送りしてはならない。
暫定措置は,有罪認定又は懲戒処分を先取りするものではなく,調査と就業環境を確保するための期限付き措置として設計する。

第2 パワハラ防止指針に基づく被害者への配慮

1 会社が検討する措置

厚生労働省のパワーハラスメント防止指針は,パワーハラスメントが生じた事実を確認できた場合,被害者に対する配慮として,関係改善の援助,被害者と行為者を引き離す配置転換,行為者の謝罪,被害者の労働条件上の不利益の回復及びメンタルヘルス不調への相談対応などを例示している。

行為者に対しても,就業規則に基づく必要な懲戒その他の措置に加え,関係改善,配置転換又は謝罪等を検討する。
被害者への配慮と行為者への措置は相互に関係するが,目的と根拠は分けて記録する。

2 被害者だけを長期間外さない

調査中に接触を避けるため,相談者の勤務場所,担当業務又は勤務時間を一時的に変更する場合がある。
もっとも,相談者だけが本来の仕事から長期間外れ,賃金,評価,経験又はキャリア上の不利益を負う状態は避ける必要がある。

本人の希望,接触の危険,業務上の必要性及び代替手段を比較し,行為者側の勤務場所又は担当業務を一時的に変更する方法も検討する。
暫定措置には,目的,開始日,期間,見直し日,給与・評価への影響及び責任者を定める。

3 原職復帰は個別に設計する

「原職復帰」は,元の部署名又は職務名へ戻すことだけを意味しない。
実際の作業場所,勤務時間,休憩場所,連絡経路,指揮命令者,行為者との動線及び二人だけになる可能性を確認する。

同じ部署でも接触を回避できる場合がある一方,別部署でも会議,応援作業又は共用設備を通じて接触が続く場合がある。
組織図だけでなく,実際の業務の流れを基準に復帰計画を作る必要がある。

第3 休職・復職と治療と就業の両立支援

1 令和8年4月から事業主の努力義務がある

労働施策総合推進法27条の3は,事業主に対し,治療を受ける労働者について,症状の増悪等を防ぎ,治療と就業の両立を支援するため,相談対応の体制整備その他の必要な措置を講ずるよう努めることを定めている。
令和8年4月1日から適用された厚生労働省の治療と就業の両立支援指針は,本人の申出を端緒とする支援,主治医・産業医等との連携,就業上の措置及び支援プラン等を示している。

この両立支援と,パワーハラスメント防止指針に基づく被害者への措置は,根拠と対象が同じではない。
もっとも,相談者が治療を受け,又は休業している場合は,両方の枠組みを並行して検討する必要がある。

2 診断書だけで復職可否を決めない

主治医の診断書は,症状,治療,通勤又は就業上の制限を検討する重要資料である。
しかし,主治医による「復職可能」との判断は,職場で求められる全ての業務遂行能力まで回復したことを常に意味するものではない。

会社は,実際の職務,勤務時間,通勤,危険作業,対人接触及び必要な配慮を主治医又は産業医等へ伝え,その意見を踏まえて復職可否と就業上の措置を判断する。
診断書の病名又は発行の有無だけで,職場言動の事実認定や法的な因果関係まで決めない。

3 職場復帰支援プランを作る

厚生労働省の職場復帰支援の手引きは,休業開始から復帰後のフォローアップまでを五つの段階に分けている。
復帰日だけを決めるのではなく,復帰後の業務,勤務時間,避ける作業,接触回避,面談日及び見直し条件を職場復帰支援プランにまとめることが望ましい。

令和8年の治療と就業の両立支援指針も,必要に応じて,就業場所の変更,作業の転換,労働時間の短縮,通院時間の確保並びにフォローアップの方法及び時期を計画に盛り込むとしている。
措置は固定せず,治療経過,業務遂行状況及び本人の意向を確認して見直す。

第4 原職復帰の可否を判断する要素

1 本人の希望

相談者が元の職場への復帰を希望しているか,どの業務を再開したいか,どの接触を避けたいかを具体的に確認する。
「元に戻りたい」という希望と,「従前と全く同じ条件なら直ちに勤務できる」という判断は同じではない。

会社が本人のためと考える措置を一方的に決めず,選択肢と各選択肢の負担を説明し,十分な話合いを行う。
本人が配置転換も検討すると述べたことを,会社が指定する特定の部署,職務又は勤務地への同意と扱わない。

2 接触の危険と分離方法

行為者と相談者が同じ場所で働く場合は,直接の会話だけでなく,指示,承認,引継ぎ,会議,休憩,更衣及び通勤時の接触も確認する。
必要に応じて,連絡を上司経由にする,勤務場所又は時間帯を分ける,担当業務を変更する,面談時に第三者を同席させるなどの方法を組み合わせる。

行為者の異動又は担当変更を選ぶ場合も,処分として行うのか,安全確保又は業務上の配置として行うのかを区別する。
懲戒処分と配置転換を同じ書面で一体化しない方がよい。

3 健康状態と業務の適合性

本人の健康状態については,病名を広く共有するのではなく,通勤,労働時間,作業負荷,夜勤,危険作業,対人接触その他の就業上の制限を中心に確認する。
主治医又は産業医等の意見と,実際の職務内容を対応させる。

元の職務に危険作業又は強い負荷が含まれる場合は,短時間勤務,作業の限定又は段階的な再開を検討する。
一時的な業務軽減を恒久的な評価低下又はキャリア上の不利益へ結び付けないよう,期間と見直し日を定める。

4 配置転換による不利益

相談者を異動させる場合は,賃金,評価,職務内容,専門性,昇進,通勤及び家庭生活への影響を確認する。
保護を目的とする措置でも,相談者だけが不利益を負う運用になっていないかを点検する。

行為者を異動させる場合も,就業規則・雇用契約上の配転命令権,業務上の必要性,不当な動機・目的及び本人の不利益を確認する。
ハラスメントへの対応であることだけから,どの配置転換も当然に有効になるわけではない。

第5 健康情報と職場への説明

1 健康情報の取得を必要な範囲に限る

治療と就業の両立支援指針は,健康情報は機微な情報であり,労働安全衛生法に基づく健康診断で把握した場合を除き,原則として本人の同意なく取得してはならないとしている。
情報を取り扱う者の範囲を定め,第三者への漏えいを防ぐ管理体制も必要である。

主治医へ追加の情報を求める場合は,本人の同意を得た上で,復職可否又は就業上の措置を判断するために必要な事項に絞る。
パワーハラスメント調査のための供述と,健康管理のための診療情報を同じ記録へ混在させない。

2 同僚への説明は業務上必要な事項に限る

勤務時間又は担当業務を変更すると,同僚に一時的な負担が生じることがある。
その場合も,病名や詳細な症状を知らせるのではなく,業務分担,連絡経路,期間及び管理者の支援など,職場運営に必要な事項に限って共有する。

行為者への処分内容,調査で得た供述及び相談者の診療情報を,職場の納得を得るためとして広く説明しない。
必要な情報と,開示してはならない人事・健康情報を分ける。

第6 会社から当事者への説明

1 相談者への説明

相談者には,事実調査の終了,会社が必要と判断した職場環境上の措置,不利益取扱いを行わないこと,復帰に向けた選択肢,接触回避の方法及び再相談先を説明する。
他の労働者に対する懲戒の詳細を無制限に開示する必要はないが,会社が何もしていないとの不安を残さない範囲で,職場環境上の措置を伝える。

直ちに原職へ戻せない場合は,抽象的に「安全のため」とだけ述べず,現在の接触リスク,必要な医学的意見,代替業務,次回の見直し日及び復帰判断の条件を説明する。
期限を定めずに暫定措置を続けない。

2 行為者への説明

行為者には,会社が確認した事実,認定した事項,認定できなかった事項,注意又は処分の内容及び今後求める行動を説明する。
接触回避又は配置転換を行う場合は,その目的,範囲,期間,連絡方法及び違反時の対応も伝える。

相談者の病名,診断内容又は休業理由の詳細を,措置を納得させるために開示しない。
必要な職場ルールを示せば足りる場合は,健康情報を説明理由に用いない。

第7 会社の実務チェックリスト

1 暫定措置と復帰判断

①事実認定,接触回避,処分及び復職可否を分けたか
②相談者の希望と,具体的な職務・勤務場所への同意を区別したか
③行為者との実際の接触経路を確認したか
④相談者だけを長期間本来の業務から外していないか
⑤主治医・産業医等の意見と実際の業務内容を対応させたか

2 計画,情報管理及び見直し

①復帰日,業務,勤務時間,接触回避及び面談日を計画にしたか
②暫定措置又は業務軽減の期間と見直し日を定めたか
③健康情報の取得について本人の同意と利用目的を確認したか
④同僚への説明を業務上必要な範囲に限ったか
⑤復帰後の状況を確認し,必要な措置を見直す担当者を定めたか

会社側の調査,厳重注意及び配置転換の全体像は,同僚間のパワハラが疑われたときの会社対応―優越的な関係,事実調査,暫定分離,厳重注意及び配置転換で説明している。

第8 出典・参考資料

1 法令及び指針

①労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律27条の3・31条
②労働契約法5条
③事業主が職場における優越的な関係を背景とした言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針(令和2年厚生労働省告示第5号)
④治療と就業の両立支援指針(令和8年厚生労働省告示第28号)

2 厚生労働省の実務資料

①心の健康問題により休業した労働者の職場復帰支援の手引き
②治療と仕事の両立について
③配置転換に関する事件(大阪地方裁判所)

法令及び行政資料は,令和8年11月6日に確認した。