第1 この記事の対象と結論(法務省とは関係のない独自の予想)
本記事の評価項目,重み付け,解説及び模範解答は,山中弁護士ブログが問題文と判例から独自に作成した予想であり,法務省とは関係がない。法務省が公表した資料や,今後公表される出題の趣旨,採点実感,採点基準及び配点を示すものでもない。
本記事は,令和8年司法試験の論文式試験のうち,公法系科目第2問(行政法)を対象として,答案に求められると本記事が独自に予想した評価項目を問題文と判例から抽出し,5段階で重み付けをした上で,それらの評価項目を満たす模範解答を示すものである。
令和8年の「出題の趣旨」及び「採点実感」は,本記事の作成時点(令和8年9月28日)では公表されておらず,本記事はこれらを読まずに作成している。評価項目と重みは,いずれも本記事の予想であり,法務省の資料に基づくものではない。
本問は,同居する子(養護者)から十分な食事を与えられないおそれがあるとされた75歳の高齢者について,市が老人福祉法11条1項2号に基づき特別養護老人ホームへの入所措置(本件入所措置)を採った事案で,隣の市の法務担当職員から相談を受けた法律事務所の若手弁護士の立場から,〔設問1〕要綱に基づく緊急一時保護の申請への不応答が行政不服審査法3条の「行政庁の不作為」に当たるか,〔設問2〕養護者である子に本件入所措置の取消訴訟の原告適格が認められるか,〔設問3〕子が提起した国家賠償請求訴訟で,措置の時点の要件(困難性要件・補充性要件)と,その後の措置解除の要件について,双方がどのような主張・反論をするかを検討させるものである。配点割合は20:30:50である。
本記事が独自に予想した評価項目は44項目であり,重み5(設問又は会議録が明示に検討を求め,かつ答案の骨格を成す事項)に当たるのは,要綱の法的性格と老人福祉法11条が申請の仕組みを設定しているか(設問1),最高裁判例の原告適格の判断枠組みと,児童福祉法の親権者との比較及び高齢者虐待防止法14条の評価(設問2),困難性要件と虐待の有無(設問3の時点②),並びに解除の要件の特定と誓約書等の事情の変化をめぐる双方の主張(設問3の時点③)の10項目である。
第5の模範解答は,設問1では審査請求は不適法,設問2ではBの原告適格は否定されるとの結論を採り,設問3では,時点②の要件は満たされていたが,時点③では困難性要件が満たされなくなっていたと評価される余地が大きいとした。答案は,論文式答案で広く使われてきた型(問題提起,規範の定立,当てはめ及び結論の順に書く型)で示し,その後に本記事独自の予想に基づく解説を付けている。
第2 本記事独自の評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
評価項目は,設問の指示,法律事務所の会議録で弁護士H・I及び職員Gが検討を求めた事項,問題文に置かれた具体的な事実,関係法令の資料及び参照すべきと考えられる判例から抜き出し,一つの項目に一つの判定対象だけを入れ,答案に何が書かれていれば満たすのかが分かる形にした。
各項目には,手掛かりとなる問題文の箇所を問題冊子の頁(公法系科目の問題冊子の第2問部分の頁番号)で示し,関係する判例・条文を示した。判例は,最大判平成17年12月7日(小田急線連続立体交差事業認可取消訴訟),最判平成15年9月4日(労災就学援護費不支給処分取消訴訟),大阪高判平成13年6月21日(ホームヘルパー派遣決定処分取消等請求控訴事件),最判平成22年6月3日及び最判平成5年3月11日である。
2 5段階の重み付けの基準
重みは,問題文と判例から本記事が予想したものであり,法務省の配点ではない。出題の趣旨及び採点実感が公表された後には,これらと照合して見直す必要がある。
①重み5:設問又は会議録が明示に検討を求め,かつ答案の骨格を成す事項
②重み4:会議録が示唆する事項,又は最も近い判例の中核の命題に当たる事項
③重み3:問題文の具体的な事実から導かれる中核の理由付け
④重み2:補強の事項,又は典型的な誤りになると予想される事項
⑤重み1:設問の限定の遵守など,控えめな事項
第3 本問の概要
A(75歳)は,判断能力に問題はないが両腕の機能に障害があり,要介護3の認定を受け,子Bの手助けで介護サービス契約を締結して居宅サービスを利用していた。Bは約10年間,Aと同居して介護していた。
Aは令和7年11月20日に意識障害で緊急搬送され,低ナトリウム血症と診断された。同年12月10日,担当医はAとBに,Aには尿に塩分が出やすい症状があるが普通の食事なら問題はなく,原因は自宅での食事と思われると説明し,塩分を控え目にしているというBに対し,塩分を控えすぎた食事の危険を改めて説明した。退院後の同月25日,Aは介護支援専門員に,塩分の少ない食事が変わらず時々めまいがすると話し,その手助けで,C市の高齢者緊急一時保護事業実施要綱(本件要綱)に基づく一時保護を申請したが,福祉事務所長は応答しなかった(時点①)。
令和8年1月5日の血液検査で,Aの血中ナトリウム値は直ちに意識障害が生じる程度ではないが正常値より低く,再発のおそれが指摘されたため,Bは翌6日にAを入院させた。7日には高齢者虐待防止法7条1項の通報があり,担当職員は,自宅療養が続けば生命に重大な危険が生じるおそれがあるとの報告書を提出した。8日,福祉事務所長は,老人福祉法11条1項2号に基づき,AをE園に入所させる措置(本件入所措置)を採り,Bも同日これを知った(時点②)。23日,C市はBに月額5万1800円の負担金額決定を通知した。
Aは入所後に体調が回復した。Bは3月10日に適切な居宅介護と栄養指導を約束して退所を求めたが,Aは帰宅に迷っていると述べ,C市は13日に拒否した。Bは6月15日,施設入所の希望には協力し,居宅介護の場合も定期的な血液検査と数値低下時の直ちの入院・入所を行うとの誓約書を提出したが,Aの受け答えはしっかりせず一貫性を欠き,C市は,Aの認知面の能力低下の可能性とB以外に契約を手助けできる者がいないことを理由に退所させなかった。Bは7月6日,負担金相当額の賠償を求めて国家賠償請求訴訟(本件訴訟)を提起した(時点③)。
設問は,隣のF市の職員G,弁護士H及び若手弁護士Iの会議録を踏まえ,弁護士Iの立場で,〔設問1〕時点①以降の不応答について不作為の審査請求がされた場合の適法性を「行政庁の不作為」の該当性に絞って,〔設問2〕時点②でのBの取消訴訟の原告適格を,〔設問3〕時点②の措置の要件と時点③の解除の要件について,本件訴訟でのBの主張とC市の反論を,それぞれ検討させる。
第4 本記事が独自に予想した評価項目と重み(法務省の資料ではない)
1 設問1(不作為についての審査請求)
| 番号 | 評価項目 | 重み | 問題文の手掛かり | 判例・条文 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 「行政庁の不作為」の定義(法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないこと)から,本件保護申請が「法令に基づく申請」に当たるかが争点であることを特定する | 5 | 3頁(設問1),5頁(弁護士Hの発言) | 行政不服審査法3条 |
| 2 | 「法令に基づく申請」の意義を,法令の明文又はその解釈により申請権が認められ,行政庁が諾否の応答義務を負う行為として示す | 4 | 5頁(弁護士Hの発言) | 行政不服審査法3条,行政手続法2条1号・3号 |
| 3 | 本件要綱が法令の委任に基づかない行政内部の定めであり,申請・審査・決定通知の規定(8条・9条)だけでは法令上の申請権が生じないことを示す | 5 | 5頁(弁護士Iの発言),10頁(本件要綱8条・9条) | 本件要綱8条~10条 |
| 4 | 緊急一時保護も老人福祉法11条の入所措置の一つであることを前提に,同条が申請の仕組みを設定しているかを検討する | 5 | 5頁(弁護士I・Hの発言) | 老人福祉法11条1項 |
| 5 | 11条1項の文言(「必要に応じて」「採らなければならない」)から,市町村の職権による措置の仕組みであることを示す | 4 | 7頁(老人福祉法11条) | 老人福祉法11条1項 |
| 6 | 同法に措置の申請の規定がないこと(施設設置認可の申請,12条の解除の「申出」,生活保護法7条の申請保護の原則との対比)を示す | 3 | 7頁~8頁(老人福祉法12条) | 老人福祉法12条・15条6項,生活保護法7条 |
| 7 | 高齢者虐待防止法9条の通報・届出が職権発動の端緒にとどまることを示す | 2 | 9頁(高齢者虐待防止法9条2項) | 高齢者虐待防止法9条 |
| 8 | 本件要綱の申請・決定通知の構造から申請権を肯定する立場を取り上げ,法律が給付の仕組みを予定していた労災就学援護費判決との違いを示す | 3 | 10頁(本件要綱) | 最判平成15年9月4日 |
| 9 | 結論として,不応答は「行政庁の不作為」に当たらず,審査請求は不適法であるとする | 4 | 3頁(設問1) | 行政不服審査法3条 |
| 10 | 設問の限定(「行政庁の不作為」の該当性に絞る)を守り,審査請求先や期間等に立ち入らない | 1 | 3頁(設問1) | 行政不服審査法4条 |
2 設問2(Bの原告適格)
| 番号 | 評価項目 | 重み | 問題文の手掛かり | 判例・条文 |
|---|---|---|---|---|
| 11 | Bが本件入所措置の名宛人ではないことから,「法律上の利益を有する者」への該当性が問題となることを示す | 4 | 4頁(設問2),5頁(弁護士Iの発言) | 行政事件訴訟法9条1項 |
| 12 | 「法律上の利益を有する者」の意義(自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者,個別的利益としての保護)を判例に即して示す | 5 | 5頁(弁護士Iの発言) | 最大判平成17年12月7日 |
| 13 | 第三者の原告適格の判断における考慮事項(根拠法令の趣旨・目的,目的を共通にする関係法令,利益の内容・性質)を示す | 4 | 5頁~6頁(弁護士Hの発言) | 行政事件訴訟法9条2項 |
| 14 | 本件入所措置によりB自身の権利が制限されるかを,Bの主張(約10年間の同居・介護関係の断絶)と対比して検討する | 3 | 2頁(Bの介護),6頁(弁護士Hの発言) | 老人福祉法11条 |
| 15 | 児童福祉法27条4項(親権者の意に反する措置の禁止)・28条1項(家庭裁判所の承認)と比較し,親権者の場合との違いを示す | 5 | 5頁~6頁(弁護士Hの発言),10頁(児童福祉法) | 児童福祉法27条4項・28条1項 |
| 16 | 高齢者の子である養護者には親権に相当する監護権がなく,老人福祉法11条・12条も養護者の同意や意見聴取を定めていないことを示す | 4 | 6頁(弁護士Hの発言),7頁(老人福祉法12条) | 老人福祉法11条・12条 |
| 17 | 老人福祉法5条の4が「養護者」を福祉の措置の対象に掲げることをB側の根拠として取り上げ,その意味を評価する | 3 | 7頁(老人福祉法5条の4) | 老人福祉法5条の4・10条の4 |
| 18 | 高齢者虐待防止法14条(及び1条・6条)の養護者支援の規定をB側の根拠として取り上げ,それだけでは原告適格を基礎付けにくい理由を示す | 5 | 6頁(弁護士Hの発言),8頁~9頁(同法1条・6条・14条) | 高齢者虐待防止法1条・6条・14条 |
| 19 | 高齢者虐待防止法が養護者を高齢者から分離すべき相手方と位置付けていること(9条2項,13条の面会制限)を示す | 3 | 9頁(同法9条2項) | 高齢者虐待防止法9条2項・13条 |
| 20 | 老人福祉法28条の費用徴収(扶養義務者)による財産上の利益を検討し,別個の負担金額決定によること,時点②では決定がないことを評価する | 3 | 3頁(負担金額決定),8頁(老人福祉法28条) | 老人福祉法28条1項 |
| 21 | 結論として,Bの原告適格を否定する(肯定する場合も,上記の根拠を踏まえた理由付けを示す) | 4 | 4頁(設問2) | 行政事件訴訟法9条 |
3 設問3(時点②の入所措置の要件)
| 番号 | 評価項目 | 重み | 問題文の手掛かり | 判例・条文 |
|---|---|---|---|---|
| 22 | 本件訴訟が国家賠償請求訴訟であり,取消判決を経ずに本件入所措置の違法を主張できることを示す | 2 | 3頁(本件訴訟),5頁(職員Gの発言) | 最判平成22年6月3日 |
| 23 | 国家賠償法上の違法の判断枠組み(職務上通常尽くすべき注意義務)をC市の反論として位置付ける | 2 | 3頁(本件訴訟) | 国家賠償法1条1項,最判平成5年3月11日 |
| 24 | 老人福祉法11条1項2号の要件を分解し,年齢と常時の介護の必要性は満たすと簡潔に処理した上で,困難性要件と補充性要件を争点として特定する | 4 | 5頁(弁護士Hの発言),6頁(職員Gの発言) | 老人福祉法11条1項2号 |
| 25 | 要件の判断に裁量があるかについて,C市の主張(「認めるとき」,専門的・緊急的判断)とBの主張(居所を公権的に定める措置の重大性)を示す | 3 | 7頁(老人福祉法11条) | 老人福祉法11条1項2号 |
| 26 | 困難性要件が居宅に虐待がある場合に満たされるとの手掛かりから,虐待(高齢者虐待防止法2条4項1号ロ)の有無を争点とする | 5 | 6頁(弁護士Hの発言),8頁(同法2条4項) | 高齢者虐待防止法2条4項1号ロ |
| 27 | Bの主張として,「塩分控え目のものを十分」食べさせていたこと,尿に塩分が出やすい症状,1月5日の数値の程度,1月6日の入院,在宅の支援体制及び時点②で入院中であったことを挙げる | 4 | 2頁(事実関係) | 高齢者虐待防止法2条4項1号ロ |
| 28 | C市の反論として,12月10日の医師の説明後も食事が改められなかったこと,12月25日のめまい,1月5日の数値と再発のおそれ,1月7日の報告書を挙げ,虐待は客観的に判断すべきとする | 4 | 2頁(事実関係) | 高齢者虐待防止法2条4項1号ロ・9条2項 |
| 29 | 補充性要件の意義(自ら介護老人福祉施設等と入所契約を締結することが困難な場合等)を示す | 4 | 6頁(弁護士Hの発言) | 老人福祉法11条1項2号 |
| 30 | Bの主張として,Aの判断能力に問題がないこと,Bの手助けによる介護サービス契約の実績,介護支援専門員の手助けによる申請,要介護3で介護老人福祉施設に入所し得ることを挙げる | 4 | 2頁(事実関係) | 介護保険法8条22項・27項,同法施行規則17条の9 |
| 31 | C市の反論として,両腕の障害で契約はBの手助けに依存していたこと,Bに虐待のおそれがあること,生命の危険と「迅速」な保護の要請を挙げる | 4 | 2頁~3頁(事実関係),9頁(同法9条2項) | 高齢者虐待防止法9条2項 |
| 32 | 虐待の事実又はそのおそれの有無によって補充性要件の充足が左右されるという連動を示す | 3 | 6頁(弁護士Hの発言) | 老人福祉法11条1項2号 |
| 33 | C市の判断(担当職員の報告書に依拠し,自ら契約することも困難と判断したこと)に対し,判断過程の不合理をBの予備的主張として示す | 2 | 2頁~3頁(1月8日の判断) | 老人福祉法11条1項2号 |
4 設問3(時点③の措置解除の要件)
| 番号 | 評価項目 | 重み | 問題文の手掛かり | 判例・条文 |
|---|---|---|---|---|
| 34 | 老人福祉法12条が解除の手続を定めるにすぎないことを示し,措置の継続は11条1項2号の要件の存続を前提とし,一方の要件でも満たされなくなれば解除すべきであるとして解除の要件を特定する | 5 | 6頁(弁護士Hの発言),7頁~8頁(同法12条) | 老人福祉法11条1項2号・12条,同法施行規則6条 |
| 35 | 時点②の事実関係と,その後時点③までの事実の変化を区別して整理する | 4 | 3頁(事実関係),6頁(弁護士Hの発言) | 老人福祉法11条1項2号 |
| 36 | Bの主張として,Aの回復,原因が食事にあったこと,3月10日の約束,6月15日の誓約書(定期的な血液検査,数値低下時の直ちの入院又は入所)から,困難性要件が消滅したとする | 5 | 3頁(事実関係) | 老人福祉法11条1項2号 |
| 37 | C市が3月13日に「確実であるとはいえない」として拒否したことを,要件の存続ではなく安全の確実性を求める誤った基準として指摘する | 3 | 3頁(事実関係) | 老人福祉法11条1項2号 |
| 38 | Bの主張として,施設入所への協力の誓約と,契約能力に問題があれば後見開始等の審判請求ができることから,補充性要件も消滅したとする | 3 | 3頁(誓約書),9頁(同法9条2項) | 老人福祉法32条 |
| 39 | C市の反論として,医師の説明後も改善しなかった経緯,約束・誓約の実効性の欠如,Aの認知面の能力低下と要介護状態の重度化の可能性から,困難性要件が存続するとする | 5 | 3頁(事実関係) | 老人福祉法11条1項2号 |
| 40 | C市の反論として,Aが自ら契約することは困難であり,B以外に契約を手助けできる者がおらず,Bに代理権もないことから,補充性要件が存続するとする | 4 | 3頁(事実関係) | 老人福祉法11条1項2号 |
| 41 | Aの意思(3月11日の「迷っている」,6月16日の「帰宅してもよい」と受け答えの不一貫)を双方の立場から評価する | 3 | 3頁(事実関係) | 老人福祉法12条 |
5 答案全体
| 番号 | 評価項目 | 重み | 問題文の手掛かり | 判例・条文 |
|---|---|---|---|---|
| 42 | 設問の配点割合(20:30:50)に応じて分量を配分する | 2 | 2頁(配点) | ― |
| 43 | 設問3で,Bの主張とC市の反論を要件ごとに対にして示す | 3 | 4頁(設問3) | ― |
| 44 | 設問1と設問2の追加的な事実関係を別個独立のものとして扱う | 1 | 3頁(本文末尾) | ― |
6 重みの分布
44項目の内訳は,重み5が10項目,重み4が15項目,重み3が12項目,重み2が5項目,重み1が2項目であり,重みの合計は158点である。
重み5の10項目(番号1・3・4・12・15・18・26・34・36・39)は,設問1については会議録で弁護士Hが注意を促した要綱の法的性格と老人福祉法11条の申請の仕組み,設問2については弁護士Hが検討を求めた判断枠組み,児童虐待の場合との比較及び高齢者虐待防止法14条,設問3については弁護士Hが示した困難性要件と虐待の関係,解除の要件の特定及び時点③までの事情の変化をめぐる双方の主張である。
設問ごとの重みの合計は,設問1が36点,設問2が43点,設問3が73点であり,問題文の配点割合(20:30:50)とおおむね対応するようにした。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
以下の答案は,第4の評価項目を満たすように作成したものであり,弁護士Iの立場で,試験の実施時(令和8年7月)及び問題文の各時点の法令と,それまでに言い渡された判例を前提にしている。
答案は,旧司法試験の時代から論文式答案で広く使われてきた型によっている。
見出しを「1」「(1)」「ア」の順に下げ,論点ごとに,問題提起(「〜が問題となる。」),規範の定立(「思うに,〜。よって,〜と解する。」),当てはめ及び結論(「よって」「したがって」)の順に書き,反対の立場は「確かに,〜。しかし,〜。」の形で取り上げ,最後に「以上」と書く型である。
もっとも,本問は会議録で検討の方向がかなり示されており,設問3は双方の主張・反論を問うものであるから,規範の論証は争いの中心に絞り,問題文の事実を評価する当てはめに多くの字数を割いた。
答案の括弧書きで示した判例は,裁判所ウェブサイトの判決全文で判示を確認したものに限った。
「判例同旨」は判例と同じ規範によるもの,「参照」は事案が異なるが判示の考え方を参考にしたものを示す。
字数は見出しを含めて約4,197字である。
令和8年司法試験のCBT方式の論文式試験では,答案は1頁23行,1行当たり最大30文字で,必須科目は1問につき8頁(184行)が上限である(法務省「司法試験Q&A」Q73)。この答案は,1文ごとに段落を改めて改行し,1行30字で折り返すと184行となり,8頁の上限をちょうど使い切る分量にした。設問ごとの行数は,設問1が38行,設問2が55行,設問3が91行である。
2 答案
1 設問1について
(1) Aの本件要綱に基づく一時保護の申請(以下「本件保護申請」という。)への不応答は,「行政庁の不作為」(行政不服審査法3条)に当たるか。
同条は,不作為を「法令に基づく申請に対して何らの処分をもしないこと」と定義する。
そこで,本件保護申請が「法令に基づく申請」に当たるかが問題となる。
思うに,同条の審査請求は,応答義務を怠る行政庁から申請者を救済する制度である。
よって,「法令に基づく申請」とは,法令の明文又は解釈により申請権が認められ,行政庁が諾否の応答義務を負うものをいうと解する(行政手続法2条3号参照)。
(2)ア 本件要綱は,申請(8条),審査及び決定通知(9条)を定める。
しかし,要綱は法令の委任に基づかない行政内部の定めであり,私人に対する法的拘束力を持たない。
したがって,本件要綱だけでは法令上の申請権は生じない。
イ では,老人福祉法11条の解釈により申請権が認められないか。
緊急一時保護も,法的には同条の入所措置の一つである。
同条1項は「必要に応じて,次の措置を採らなければならない」と定め,市町村が職権で措置を採る仕組みである。
同法は施設設置認可の「申請」(15条6項)を定める一方,措置には申請の規定を置かず,本人の意思が現れるのは解除の「申出」(12条ただし書)のみである。
これは,保護を「申請に基いて」開始する生活保護法7条と対照的である。
高齢者虐待防止法9条の通報・届出も,職権発動の端緒にすぎない。
確かに,要綱の申請手続に基づく給付の決定を処分とした判例がある(最判平成15年9月4日)。
しかし,同判決は法律自体が給付の仕組みを予定していた事案であり,根拠法が職権による措置を定める本件とは異なる。
(3) よって,本件保護申請は「法令に基づく申請」に当たらない(大阪高判平成13年6月21日参照)。
したがって,不応答は「行政庁の不作為」に当たらず,Aの審査請求は不適法である。
2 設問2について
(1) Bは本件入所措置の名宛人ではないため,「法律上の利益を有する者」(行政事件訴訟法9条1項)に当たるかが問題となる。
これは,処分により自己の権利若しくは法律上保護された利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者をいう。
根拠法規が,当該利益を一般的公益に吸収解消させず,個別的利益としても保護する趣旨を含むときは,これも法律上保護された利益に当たる(判例同旨・最大判平成17年12月7日)。
その判断に当たっては,根拠法令の趣旨・目的,目的を共通にする関係法令の趣旨・目的,処分において考慮されるべき利益の内容・性質を考慮する(同条2項)。
(2) まず,Bは,約10年間続いたAとの同居・介護の関係が断たれ,自己の権利が制限されると主張し得る。
しかし,児童福祉法は,親権者の意に反する入所措置を禁じ(27条4項),その場合は家庭裁判所の承認を要する(28条1項1号)。
これは,措置が親権者の監護権を制限することを前提に,その意思を要件に組み込んだものである。
したがって,親権者は,措置の取消しを求める法律上の利益を有する。
これに対し,成年者Aの子Bには,親権・監護権に相当する権利がない。
Aは判断能力に問題のない成年者であり,どこで誰の介護を受けるかはA自身が決めることである。
老人福祉法11条は養護者の同意を要件とせず,12条も意見聴取の相手方を「当該措置に係る者」に限る。
民法上の扶養義務も,同居して介護する権利を含むものではない。
本件入所措置は,Aに施設でサービスを受ける地位を設定するにとどまり,Bの権利を制限しない。
(3)ア 次に,Bは,①老人福祉法5条の4が「養護者」を措置の対象に掲げること,②高齢者虐待防止法が養護者支援を定めること(1条・6条・14条),③扶養義務者として費用を徴収され得ること(老人福祉法28条1項)から,法律上保護された利益があると主張し得る。
イ しかし,①5条の4は措置の実施主体の規定であり,養護者への措置もデイサービスへの同伴(10条の4第1項2号)など居宅での養護を支える場面を想定したものにすぎない。
同条から,措置に反対して養護を続ける利益の保護は導けない。
②高齢者虐待防止法は,養護者を高齢者から分離すべき相手方と位置付け(9条2項),虐待をした養護者の面会の制限まで認めている(13条)。
14条の支援も,虐待防止という公益目的の施策にとどまる。
同条2項の居室確保も,養護者の負担軽減のための施策である。
③費用の徴収は「できる」とされ,負担能力に応じた別個の負担金額決定で定まるから,Bはこれを争えば足りる。
しかも,時点②では,負担金額決定はされていなかった。
Bの財産上の不利益は,措置の法的効果ではなく,別個の処分から生ずるものである。
(4) 確かに,Bは約10年間Aを介護しており,措置により生活上大きな影響を受ける。
しかし,それは法が個別的に保護しない事実上の不利益にとどまる。
したがって,Bに原告適格は認められない。
3 設問3について
(1) 本件訴訟は国家賠償請求であり,取消判決を経ずに本件入所措置の違法を主張できる(判例同旨・最判平成22年6月3日)。
C市は,「認めるとき」との文言等から要件裁量を主張し,注意義務を尽くしたとも反論し得る(最判平成5年3月11日参照)。
これに対し,Bは,措置は本人の居所を公権的に定めるから,裁量は狭いと主張し得る。
(2) 時点②の措置要件
ア Aは75歳で,両腕の障害により要介護3であるから,年齢と常時介護の必要性の要件は満たす。
争点は,居宅での介護が困難であること(困難性要件)と,施設への契約入所が著しく困難であること(補充性要件)である。
イ 困難性要件について
Bは,同要件は居宅に虐待がある場合に満たされるところ,虐待(高齢者虐待防止法2条4項1号ロ)はないと主張し得る。
Bは「塩分控え目のものを十分」食べさせており,著しい減食ではない。
Aには「尿に塩分が出やすい症状」もあった。
1月5日の数値は「直ちに意識障害が生じる程度ではない」もので,Bは翌日Aを入院させた。
時点②では,Aは入院中であった。
これに対し,C市は,虐待は養護者の主観でなく客観的に判断すべきであると反論し得る。
12月10日に医師が塩分を控えすぎる危険を「改めて」説明したのに,同月25日も「入院前と変わらず塩分が少ない食事」で,めまいもあった。
1月5日の数値は正常値を下回って再発のおそれが指摘され,1月7日の報告書も生命の重大な危険を指摘した。
入院は一時的で,退院すれば同じ居宅に戻る。
医師の説明後も食事が改められなかった以上,少なくとも虐待のおそれがあり,困難性要件は満たされていたといえる。
ウ 補充性要件について
Bは,同要件は自ら施設と契約することが困難な場合をいうところ,Aは判断能力に問題がなく,契約の実績もあると主張し得る。
Aは介護支援専門員の助けで本件保護申請もしており,要介護3で介護老人福祉施設に入所し得る(介護保険法8条22項・27項)。
C市は報告書のみに依拠してAの判断能力を考慮しておらず,その判断は事実の基礎を欠くとも主張し得る。
これに対し,C市は,Aの契約はBの手助けに依存してきたが,虐待のおそれのあるBには頼れないと反論し得る。
また,生命の危険が迫り「迅速」な保護(高齢者虐待防止法9条2項)が求められ,契約手続を経る余裕はなかった。
A自身が12月25日に一時保護を申請していたことも,施設での保護の必要性を裏付ける。
緊急性が高く,Bに頼れない以上,C市の判断は合理的であり,補充性要件も満たされていたといえる。
(3) 時点③の解除要件
ア 老人福祉法12条は,解除の手続を定めるにすぎない。
思うに,本件入所措置は継続的な関係を形成し,その継続は11条1項2号の要件の存続を前提とする(同法施行規則6条参照)。
また,措置は本人の居所を公権的に定めるものであり,要件を欠いたまま継続することは許されない。
よって,困難性要件又は補充性要件の一方でも満たされなくなれば,措置を解除しなければならないと解する。
イ Bは,困難性要件が消滅したと主張し得る。
AはE園で回復し,原因の食事は医師の指示に従えば改められる。
Bは3月10日に居宅介護と栄養指導を約束し,6月15日には定期的な血液検査と数値低下時の入院・入所を誓約した。
3月13日の「確実であるとはいえない」との拒否理由は,要件の存続でなく安全の確実性を求めており,基準を誤っている。
A自身も,6月16日には帰宅してもよいと述べている。
措置は本人の福祉のためのものであるから,本人の帰宅の意思は重視されるべきである。
また,Bは,施設入所に協力すると誓約しているから,補充性要件も消滅したと主張し得る。
Aの能力低下は「可能性」にすぎず,必要なら後見開始等の審判を請求できる(老人福祉法32条)。
ウ これに対し,C市は,Bは医師の説明後も食事を改めなかった経緯があり,誓約には実行の担保がないと反論し得る。
Aには認知面の能力低下と要介護状態の重度化の可能性があり,常時介護の必要性は高まっている。
Aの発言も,3月11日は帰宅に迷い,6月16日は受け答えが不明確で一貫しない。
また,Aは自ら契約することが困難で,手助けできるのは代理権のないBのみであるから,補充性要件も存続する。
エ 時点③では,危険の原因であった食事に具体的な再発防止策が示され,Aも回復している。
困難性要件の存続をいうには,Aの認知機能低下等を医学的に確認するなど,居宅介護の困難を基礎付ける事実が必要である。
これを確認せず「可能性」を理由に措置を継続したのであれば,解除の要件は充足されていたと評価される余地が大きい。
補充性要件についても,Bが施設入所への協力を誓約した以上,B以外に支援者がいないことは契約入所を妨げる事情とはいえない。
なお,Aの意思能力に疑いがあるなら,C市は後見開始の審判請求(老人福祉法32条)を検討すべきであり,措置の継続でこれに代えることはできない。
以上
3 本記事独自の予想に基づく解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案の1は第4の番号1~10(設問1),2は番号11~21(設問2),3(1)(2)は番号22~33(時点②),3(3)は番号34~41(時点③)に対応し,番号42~44(答案全体)は分量の配分と構成で満たすようにした。
(2) 設問1(不作為についての審査請求)
会議録で弁護士Hは,「入所措置の老人福祉法上の根拠規定である同法第11条が,申請の仕組みを設定していると解釈できるのか」を問題とし,「要綱の法的性格と,本件要綱にいう「申請」が法令に基づく申請といえるか」に注意するよう求めている。弁護士Iも,要綱は法令の委任に基づくものではなく,緊急一時保護も法的には同法11条の入所措置の一つであると述べている。そうすると,設問1の中心は,行政不服審査法3条の「法令に基づく申請」の意義を示した上で,要綱の申請規定では申請権が生じないこと,及び老人福祉法11条の解釈として申請権が認められるかを検討することにあると予想される。
老人福祉法は,措置について申請の規定を置いておらず,本人の意思が現れるのは解除の「申出」(12条ただし書)だけである。これに対し,生活保護法7条は,保護を「申請に基いて」開始すると明記している。老人福祉法上のホームヘルパー派遣について,要綱の申出書は職権で需要を把握するための契機にすぎず手続上の申請権を認めたものではないとし,生活保護法との対比から老人福祉法は申請権を認めていないとした下級審の判決(大阪高判平成13年6月21日)もある。
他方,要綱に申請・決定通知の手続がある給付について,法律が給付の仕組みを予定していることから支給決定の処分性を認めた最高裁判例(労災就学援護費判決)があり,これを用いて申請権を肯定する立場も考えられる。答案では,同判決が法律自体に基づく給付の仕組みを前提としていたのに対し,本件は根拠法自体が職権による措置を定めている点で異なるとした。
(3) 設問2(Bの原告適格)
弁護士Iは「原告適格を認めるのは,容易ではない」と述べ,弁護士Hは,児童福祉法が親権者の意に反する措置を原則として禁じ,家庭裁判所の承認を求めていることと対比して,高齢者の子には親の監護権に相当する権利がないこと,高齢者虐待防止法14条だけでは原告適格を認めることは難しいことを指摘し,「児童虐待の場合との比較も含めて」の検討を求めている。したがって,最大判平成17年12月7日の判断枠組みを示した上で,自己の権利の制限(児童福祉法との比較)と法律上保護された利益(関係法令の養護者支援の規定)の二段で検討することが求められると予想される。
Bに有利な手掛かりとしては,老人福祉法5条の4が「養護者」を福祉の措置の対象に掲げていること,高齢者虐待防止法1条・6条・14条が養護者支援を定めていること,及び老人福祉法28条により扶養義務者として費用を徴収され得ることがある。答案では,これらを取り上げた上で,5条の4は実施主体の規定であり,高齢者虐待防止法は養護者を高齢者から分離すべき相手方と位置付けていること(9条2項,資料にない13条の面会制限を含む),費用負担は別個の負担金額決定によって定まり時点②では決定がないことから,原告適格を否定した。
(4) 設問3(時点②の措置の要件)
弁護士Hは,困難性要件は少なくとも居宅に虐待がある場合に満たされ,補充性要件は実務上,自ら介護老人福祉施設等と入所契約を締結することが困難な場合等を指すとし,虐待の事実やそのおそれがなければ補充性要件が満たされない可能性もあると述べている。そうすると,時点②の争点は,Bの食事の与え方が虐待(高齢者虐待防止法2条4項1号ロの「養護を著しく怠ること」)又はそのおそれに当たるかであり,それが困難性要件と補充性要件の双方に影響するという構造を示すことが求められると予想される。
問題文は,Bに有利な事実(塩分を控え目にしつつ「十分」食べさせていたこと,Aの症状,1月5日の数値の程度,1月6日の入院,判断能力と契約の実績)と,C市に有利な事実(医師の「改めて」の説明,12月25日のめまい,再発のおそれ,1月7日の報告書,両腕の障害)を対になる形で置いている。答案では,双方の事実を示した上で,医師の具体的な説明の後も食事が改められなかったことを重く見て,時点②の要件は満たされていたと評価した。
(5) 設問3(時点③の措置解除の要件)
弁護士Hは,老人福祉法12条は解除の手続を定めたものにすぎないとし,「入所措置と措置解除のそれぞれの要件を特定し,本件入所措置時点の事実関係と現在までの事実の変化を整理した上で,その法的評価を検討する」ことを求めている。そのため,解除の実体的要件を,措置の要件の存続(一方の要件でも満たされなくなれば解除すべき)として特定することが,時点③の出発点になると予想される。答案では,施設の長に措置の「廃止」を必要とする事由が生じたときの届出を義務付ける老人福祉法施行規則6条を補強として挙げた。
時点③までの事実の変化としては,Aの回復,3月10日の約束と3月13日の拒否理由(「確実であるとはいえない」),6月15日の誓約書の具体的内容,Aの発言の変化と受け答えの不一貫,C市が挙げたAの認知面の能力低下の「可能性」とB以外の支援者の不在がある。答案では,C市の拒否理由が「可能性」にとどまり医学的な確認がないことを捉えて,困難性要件が満たされなくなっていたと評価される余地が大きいとした。
(6) 結論の許容幅と答案の弱点
設問1について,本件要綱の申請・審査・決定通知の構造と高齢者の生命に関わる利益の重大性を重視し,老人福祉法11条と一体として申請権を認める結論もあり得る。その場合も,要綱の法的性格と同条の職権主義をどう乗り越えるかの説明が必要と考えられる。
設問2について,老人福祉法28条による費用負担が本件入所措置と連動することや,5条の4・10条の4が養護者を措置の対象に含めていることを重視して,原告適格を肯定する答案もあり得る。ただし,会議録の示唆からすると,否定の結論を採る場合も,これらの根拠を取り上げて評価することが求められると考えられる。
設問3について,時点②の補充性要件は,Aの判断能力と契約の実績を重く見て満たされていなかったとする評価もあり得る。時点③については,Aの認知面の能力低下が実際に進んでいたとすれば,困難性要件・補充性要件がなお満たされるとの結論も十分にあり得るから,答案は条件付きの評価にとどめた。
答案の弱点は次の4点である。
第一に,大阪高判平成13年6月21日は,老人福祉法10条の4のホームヘルパー派遣に関する下級審の判決であり,同法11条の入所措置や不作為についての審査請求を直接判断したものではない。
第二に,補充性要件の意義は会議録の「実務においては」との説明によっており,厚生労働省の通知等では確認していない。
第三に,高齢者虐待防止法13条(面会の制限)は問題文の資料には掲げられていない条文である。
第四に,本件訴訟は国家賠償請求訴訟であるから,要件の欠如がそのまま国家賠償法上の違法となるか(職務上の注意義務の問題)は別に問題となり得るが,設問が要件の充足に絞っていることから,答案では冒頭で触れるにとどめた。
(7) 扱わなかった事項
設問1の審査請求をすべき行政庁(行政不服審査法4条)や期間,設問2の出訴期間,設問3の過失,損害及び因果関係,負担金額決定自体の違法,及び違法性の承継は,設問の範囲外として答案では扱っていない。
第6 関連記事
1 前年度の同じ科目及び本年度の第1問の模範解答
①令和7年度司法試験公法系第2問の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した72項目と5段階の重み付け(AI作成)
②令和7年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答(AI作成)
③令和8年度司法試験公法系第1問の模範解答と予想される評価項目―出題の趣旨・採点実感の公表前に問題文と判例から予想した37項目と5段階の重み付け(AI作成)
2 本問の模範解答と関連する山中弁護士ブログの記事
①老人福祉法の「やむを得ない事由による措置」――契約によらない介護サービス提供の要件と裁判例(AI作成)
②行政不服審査法の審査請求―期間・執行停止・審理員・裁決・取消訴訟(AI作成)
③非申請型義務付け訴訟―行政に是正命令を出させる訴えの一定の処分・重大な損害・補充性・判決効(AI作成)
④取消訴訟の原告適格と訴えの利益の違い―行政事件訴訟法9条と最高裁判例(AI作成)
⑤取消訴訟と国家賠償請求の関係―併合提起・違法性・取消判決の拘束力(AI作成)
⑥行政裁量の司法審査―裁量権の逸脱・濫用と判断過程審査(AI作成)
⑦病院での虐待と高齢者虐待防止法-病院が「養介護施設」に含まれないことの意味と相談・通報先(AI作成)
3 同じ年度の主要7科目の模範解答
①令和8年度司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と予想される評価項目(AI作成)
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
①法務省「令和8年司法試験の実施について」
②法務省「令和8年司法試験問題」
③令和8年司法試験論文式試験問題(公法系科目)
④法務省「司法試験Q&A」(Q73 CBT試験で入力できる文字数)
2 法令
①行政不服審査法(e-Gov法令検索)
②行政手続法(e-Gov法令検索)
③行政事件訴訟法(e-Gov法令検索)
④国家賠償法(e-Gov法令検索)
⑤老人福祉法(e-Gov法令検索)
⑥老人福祉法施行規則(e-Gov法令検索)
⑦高齢者虐待の防止,高齢者の養護者に対する支援等に関する法律(e-Gov法令検索)
⑧児童福祉法(e-Gov法令検索)
⑨生活保護法(e-Gov法令検索)
⑩介護保険法(e-Gov法令検索)
⑪介護保険法施行規則(e-Gov法令検索)
3 裁判例
①最高裁判所大法廷平成17年12月7日判決(平成16年(行ヒ)第114号,民集59巻10号2645頁)
②最高裁判所第一小法廷平成15年9月4日判決(平成11年(行ヒ)第99号,集民210号385頁)
③大阪高等裁判所平成13年6月21日判決(平成10年(行コ)第71号)
④最高裁判所第一小法廷平成22年6月3日判決(平成21年(受)第1338号,民集64巻4号1010頁)
⑤最高裁判所第一小法廷平成5年3月11日判決(平成元年(オ)第930号,民集47巻4号2863頁)
4 確認状態
問題文は,法務省掲載の公法系科目の問題冊子(PDF)を取得し,第2問の全頁(資料を含む。)を読んだ。
令和8年の出題の趣旨及び採点実感は,本記事の作成時点で公表されておらず,読んでいない。第4の評価項目と重み及び第5の3の解説は,いずれも本記事の予想であり,公表後に照合して見直す必要がある。
法令は,e-Gov法令APIで問題文の各時点(令和8年1月8日時点)に施行されていた条文を取得して確認した。老人福祉法,同法施行令及び同法施行規則に,入所措置の「申請」の規定がないことも,全文の検索で確認した。
裁判例は,いずれも裁判所ウェブサイトの判決全文で,答案と解説で用いた判示を確認した。
大阪高判平成13年6月21日は,老人福祉法10条の4のホームヘルパー派遣に関するもので,処分性については原審の判断を紹介するにとどまり,不作為の違法は判断していない。
判例秘書等の有料データベースは用いていない。
補充性要件の実務上の意義(会議録の弁護士Hの説明)は,厚生労働省の通知等では確認していない。
答案の分量は,法務省「司法試験Q&A」のQ73(1頁23行,1行当たり最大30文字,必須科目1問につき8頁)に基づき,段落ごとに改行して1行30字で折り返した行数を計算して確かめた。