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司法修習期間中の旅費

第1 旅費支給の法的根拠

司法修習期間中に司法研修所や実務修習庁会へ赴くための旅費が,どのような法的根拠で,どのような区分に基づいて支給されているかを説明する。
分野別実務修習の旅費に関する各期の事務連絡や,旅費一般の取扱いを定めた内部文書そのもの(原資料)は,司法修習生の旅費に関する文書で確認できる。

司法修習生は,国家公務員法上の国家公務員に該当しない。
裁判所法は,裁判官以外の裁判所職員(第四編第二章)と司法修習生(同編第三章,66条から68条)とを区別しており,国家公務員法2条3項が列挙する特別職一覧にも司法修習生は含まれていない。
この理解は,最高裁判所昭和42年4月28日第二小法廷判決(昭和38年(オ)第5号,民集21巻3号759頁,裁判所ウェブサイト)でも前提とされている。
同判決は,国家公務員等退職手当法上の国家公務員該当性が争点となった事案において,次のとおり判示した。

「しかるに、司法修習生は、司法試験に合格した者が裁判官、検察官又は弁護士となる資格を取得するための修習を行なうものであつて(昭和二三年最高裁判所規則第一五号司法修習生に関する規則四条参照)、国の事務を担当するものでないこと、また、裁判所法が司法修習生と国家公務員法上の国家公務員であること明らかな「裁判官以外の裁判所職員」とを区別する規定を設けており(第四編第二章及び第三章参照)、司法修習生に関する規則二条も、司法修習生が国家公務員法上の国家公務員でないことを前提として、「司法修習生は、最高裁判所の許可を受けなければ、公務員となる……ことができない。」と規定していること等に徴すれば、司法修習生は、退職手当法にいう国家公務員ではないといわざるを得ない。」

同判決は,旅費についても「修習期間中は、国庫から一定額の給与を受けるほか、暫定手当、扶養手当等の諸手当や「公務のため旅行する国家公務員等」として司法研修所入所、滞在などに必要な旅費の支給を受けることになつており(裁判所法六七条二項、裁判官の報酬等に関する法律附則一四条、裁判官の報酬等の応急的措置に関する法律八条、九条、裁判官報酬等暫定規則一条、国家公務員等の旅費に関する法律参照)」と述べている。
国家公務員に該当しない司法修習生に旅費が支給される根拠は,国家公務員等の旅費に関する法律3条5項の「第一項、第二項及び前項の規定に該当する場合を除くほか、他の法律に特別の定めがある場合その他国費を支弁して旅行させる必要がある場合には、旅費を支給する。」という規定である。

この理解は,平成28年度(最情)答申第26号(平成28年9月1日答申)でも確認できる。
同答申は,司法修習生名簿の一部開示の可否が主たる争点であるが,苦情申出人が「司法修習生は旅費法に基づく支給を受けているから公務員等に相当する」と主張したのに対し,次のとおり判断している。

「この点につき,苦情申出人は,司法修習生が国家公務員等の旅費に関する法律に基づく支給を受けていることをもって,司法修習生が「公務員等」に相当すると主張するが,同法は,国家公務員以外の者に対して旅費を支給することがあることを規定しているのであるから(同法3条5項参照),上記主張は採用の限りでない。」

なお,国家公務員等の旅費に関する法律は,令和7年4月1日施行の改正により,法律本則が大幅に簡素化された(改正前は日額旅費等の細目を含む条文が置かれていたが,改正後の本則は第1条から第12条までとなり,細目規定は政令〔国家公務員等の旅費に関する法律施行令,令和6年政令第306号〕へ移管されている。)。
もっとも,本記事が引用した3条5項(他の法律に特別の定めがある場合等の旅費支給)は,改正後も同じ条項番号のまま維持されている。
旅費及び移転給付金の税務上の取扱い(課税所得が生じない理由)については,司法修習生の旅費及び移転給付金から課税所得が生じない理由で扱っている。

第2 司法修習期間中の旅費に関する最高裁判所の説明

最高裁判所の令和4年度概算要求書(説明資料)647頁は,「(7)司法修習期間中の旅費」として,次のとおり3区分の要求要旨を記載している。

「(ア) 招集帰任旅費 司法修習においては,2年次生及び1年次生が司法研修所における導入修習に参加した上で,配属先の実務修習庁会へ赴くための招集旅費並びに2年次生が集合修習に参加するために,司法研修所に移動するためのA班の招集帰任旅費及びB班の招集旅費が必要となる。令和4年度においても,これに必要な経費を要求する。」

「(イ) 実務修習旅費 司法修習生の実務修習の主たる目的は実際の事件処理を学ぶことにある。そのためには,法廷での審理に立ち会うだけでなく,進行中の事件における現場検証や出張尋問等にも同行し,修習指導担当者等の指導を受けることが必要である。令和4年度においても,これに必要な経費を要求する。」

「(ウ) 選択型実務修習旅費 司法修習における2年次生に対する選択型実務修習は,民事裁判,刑事裁判,検察,弁護の分野別実務修習の各分野を一通り体験した後に,分野別実務修習で配属された弁護士事務所を本拠地とし,司法修習生の主体的な選択により行う課程である。そのため,実務修習庁会(裁判所,検察庁,弁護士会)は,その地の実情に応じて,できるだけ多様な個別修習プログラムを提供し,また,その修習の性質上特定の地域の実務修習庁会等しかプログラムを提供できないようなものについては,全国の司法修習生にそのプログラム(全国プログラム)を提供する。また,司法修習生が,自ら修習先を開拓することも認められる(自己開拓型プログラム)。個別修習プログラムの例としては,各実務修習庁会(裁判所,検察庁,弁護士会)において,分野別実務修習の内容を更に深め,又は,特定の事件類型等に焦点を当てるなどした様々なプログラムが提供されているほか,模擬裁判,刑事関連施設見学修習,公設事務所等における公益的活動の修習等がある。全国プログラムの例としては,管轄が東京・大阪という特定の地方裁判所に限定されている知的財産権訴訟等に関する修習,法務省における法務行政に関する修習,いわゆる渉外・知財事務所での修習等がある。このように,選択型実務修習は,司法修習生の2年次生が,分野別実務修習の深化と補完を図り,併せて,各自が関心を持つ法曹の活動領域における知識・技法の習得を図る目的で実施するものである。そこで,令和4年度においても,これに要する司法修習生旅費を要求する。」

以上は令和4年度(令和4年度予算の概算要求段階)の記載であり,各年度の予算要求額そのものではなく,招集帰任旅費・実務修習旅費・選択型実務修習旅費という3区分の制度趣旨を説明したものである。
令和8年度の裁判所予算関係資料(一般会計歳出概算要求書等)にも「司法修習生旅費」という同名の予算科目が存在することを確認しており,この3区分の枠組み自体は,少なくとも予算科目としては令和8年度まで継続している。
もっとも,令和4年度の説明資料と同水準で各区分の趣旨を叙述した資料は,令和8年度分については確認できていない。

選択型実務修習の制度全体については,選択型実務修習とは―ホームグラウンド,個別・全国・自己開拓プログラムの案内で整理している。

第3 国の旅費事務の一般的な仕組み

司法修習生に限らず,国の旅費事務一般については,次の資料がある。

国土交通省中部地方整備局HP「旅費業務の効率化の取組み~「迷う、悩む、手間取る」の解消に向けて~」には,平成26年9月に本格稼働した府省共通システムである旅費等内部管理業務共通システム(略称「SEABIS」)の解説がある。

以下は,X(旧Twitter)に投稿された,裁判所書記官を名乗るアカウントによる実務上の感想である。
投稿主の属性を第三者として確認できるものではなく,公式資料を補う参考情報として紹介する。

第4 関連記事

司法修習生の旅費に関する文書――分野別実務修習の旅費に関する各期の事務連絡,旅費一般の取扱いを定めた内部文書及び東京・大阪・名古屋の各地裁が司法修習生向けに配布した文書を掲載している。
司法修習生の旅費及び移転給付金から課税所得が生じない理由――旅費及び移転給付金の税務上の取扱い(所得税法上,雑所得の総収入金額に算入した上で同額を必要経費とする整理)及び令和7年の旅費法改正の詳細は,この記事で扱っている。
司法修習開始前に送付される資料
司法修習生の採用選考の必要書類
選択型実務修習に関する資料
選択型実務修習とは―ホームグラウンド,個別・全国・自己開拓プログラムの案内

第5 出典

1 法令

国家公務員等の旅費に関する法律(昭和25年法律第114号)3条5項。同法26条2項は令和7年3月31日以前の条文。

2 裁判例

最高裁判所昭和42年4月28日第二小法廷判決・昭和38年(オ)第5号・民集21巻3号759頁・裁判所ウェブサイト。

3 公的資料

①最高裁判所令和4年度概算要求書(説明資料)647頁。
②裁判所「令和8年度予算」一般会計歳出概算要求書等。
平成28年度(最情)答申第26号(平成28年9月1日答申)
④国土交通省中部地方整備局「旅費業務の効率化の取組み~「迷う、悩む、手間取る」の解消に向けて~」。