第1 選択型実務修習の全体像
1 目的と司法修習における位置付け
選択型実務修習は,分野別実務修習の4分野を一通り修習した後,自らの進路,興味及び関心に応じて修習内容を主体的に選択し,設計する課程である。
最高裁判所の「司法修習の概要」は,その目的を,分野別実務修習の成果の深化・補完と,分野別実務修習では体験できない領域における実務修習と説明している。
現在の司法修習では,約8か月の分野別実務修習を終えた後,選択型実務修習と集合修習をそれぞれ約2か月間行う。
集合修習と選択型実務修習のどちらを先に行うかは,実務修習地によって異なる。
司法修習全体の流れは,「司法修習とは―採用要件,1年間の流れ,修習内容,給付金及び二回試験」で整理している。
2 本記事の役割と基準日
本記事は,選択型実務修習の制度全体を見渡し,目的に合う資料又は関連記事へ進むためのハブである。
制度の基本構造を説明した上で,運用ガイドライン,Q&A,期別資料,全国プログラム,自己開拓プログラム,旅費及び欠席の資料へ案内する。
基準日は令和8年8月29日である。
公開されている通知,Q&A及び期別資料には作成時点の古いものが含まれるため,応募期限,提出書式,連絡先,旅費及び報告方法については,所属する配属庁会から当期に配布された資料を優先して確認することとなる。
第2 ホームグラウンドと3種類のプログラム
1 制度の構成
選択型実務修習では,分野別実務修習の弁護修習で配属された弁護士事務所をホームグラウンドとし,必要に応じて個別修習プログラム,全国プログラム及び自己開拓プログラムを選択して修習計画を作る。
各構成要素の違いは,次のとおりである。
| 構成要素 | 主な修習先又は提供主体 | 制度上の位置付け | 最初に確認する資料 |
|---|---|---|---|
| ホームグラウンド修習 | 分野別実務修習の弁護修習で配属された弁護士事務所 | 弁護実務修習の深化・補完の拠点 | 当期の修習計画及び配属庁会の指示 |
| 個別修習プログラム | 各地方裁判所,地方検察庁及び弁護士会 | 各実務修習地で提供されるプログラム | 配属庁会から示されるプログラム一覧 |
| 全国プログラム | 全国の司法修習生を対象とする提供機関 | 特定地域又は機関で行う修習を全国から募集するプログラム | 当期の応募要領及びプログラム別資料 |
| 自己開拓プログラム | 司法修習生が自ら開拓する,法曹の活動と密接な関係を有する分野の受入先 | 提供済みのプログラム以外の修習を自ら設計する仕組み | 当期の申出書,受入れ関係書類及び承認手続 |
2 ホームグラウンド修習
ホームグラウンドは,選択型実務修習の期間全体を支える弁護修習の拠点である。
プログラムに参加しない期間を単なる空白期間として扱うものではなく,分野別実務修習で得た経験を弁護実務の中で深め,又は補う役割を持つ。
司法修習委員会の平成22年9月27日付「選択型実務修習の現状と課題について」も,ホームグラウンド修習自体に弁護実務修習の深化・補完という積極的な意義があると説明している。
もっとも,ホームグラウンドで確保すべき期間その他の細部は,古いガイドライン及び期別資料の記載をそのまま現在へ当てはめず,当期の指示を確認する必要がある。
3 個別修習プログラムと全国プログラム
個別修習プログラムは,地方裁判所,地方検察庁及び弁護士会が,各実務修習地の実情に応じて提供するプログラムである。
制度導入時のガイドライン概要には,裁判所の通常事件・特殊事件・家事事件,検察庁の捜査・公判補完修習,弁護士会の各種専門分野などが例示されているが,実際の内容は期及び修習地によって確認することとなる。
全国プログラムは,全国の司法修習生を対象とするプログラムである。
提供機関,実施場所,日程,定員及び選考方法はプログラムごとに異なるため,「選択型実務修習全国プログラムに関する文書」から期別資料へ進み,応募する期の文書を確認する。
法務省が提供する全国プログラムについては,「法務行政修習プログラム―制度・第78期日程・過去資料」で,第78期の募集内容と過去資料を整理している。
4 自己開拓プログラム
自己開拓プログラムは,司法修習生が,法曹の活動と密接な関係を有する分野について,自ら修習先を開拓する仕組みである。
制度導入時のガイドライン概要は,民間企業の法務部及び地方自治体の法務関係部門等を例示し,修習内容を記載した書面と受入先の受入れに関する書面を基に,実務修習先として相応しいかを判断する構成を示していた。
制度導入時のガイドライン概要に照らすと,受入希望先の内諾だけで修習プログラムが成立するものではなく,受入れ関係書類及び修習内容に基づく判断が予定されていた。
現在の申出に当たっては,当期の申出書,受入れ関係書類,提出期限及び承認主体を先に確認し,獲得目標,具体的な修習内容,日程及び受入体制を説明できる計画にする。
過去の通知,申出書及び情報公開答申は,「選択型実務修習に関する資料」から確認できる。
第3 修習計画を作るときの確認順序
1 当期資料から選択肢と期限を確認する
最初に,配属庁会から示された個別修習プログラム,全国プログラムの応募要領及び自己開拓プログラムの申出要領を確認する。
その際は,①応募又は申出の期限,②対象となる修習地又は修習班,③日程,④定員・選考方法,⑤提出書類,⑥旅費・宿泊費その他の自己負担,⑦欠席・遅刻・早退時の連絡先,⑧修習後のレポート等を一つの予定表に整理する。
古い通知又は他の修習期の書式は,制度の考え方又は過去の運用を知る資料にはなるが,当期の提出書類としてそのまま使えるとは限らない。
資料の年月日と対象修習期を確認し,当期資料と異なる場合は当期資料に従う。
2 獲得目標からプログラムを組み合わせる
修習計画は,プログラム名を埋めるだけでなく,分野別実務修習で深めたい事項,未体験の領域及び各プログラムで得ようとする知識・技法を対応させて作る。
全国プログラム又は自己開拓プログラムの希望が通らない場合も想定し,ホームグラウンド修習及び個別修習プログラムで同じ獲得目標をどこまで実現できるかを併せて検討すると,計画の修正がしやすい。
制度導入時のガイドライン概要は,司法修習生が立てた計画を原則として尊重しつつ,ガイドラインに照らして相応しくない点があれば是正させる構成を示していた。
現在の具体的な審査及び調整は,配属庁会の当期資料と担当者の指示により確認する。
3 日程,旅費及び欠席を別々に確認する
修習内容が承認されるかという問題と,移動に伴う旅費・宿泊費が支給されるかという問題は分けて確認する。
司法修習生の旅費に関する通知等は,「司法修習生の旅費に関する文書」に掲載しているが,支給条件及び手続は当期資料で再確認する。
遅刻,欠席又は早退が生じる場合は,修習先への連絡だけで足りるとは限らず,欠席承認の申請先及び様式を確認する。
欠席承認,日数基準及び修習停止との違いは,「司法修習生の欠席・休暇・修習停止」で整理している。
第4 目的別の関連記事案内
1 制度全体と運用ルールを確認する
| 確認したい事項 | 関連記事 | 記事の役割 |
|---|---|---|
| 司法修習全体の流れ | 司法修習とは―採用要件,1年間の流れ,修習内容,給付金及び二回試験 | 選択型実務修習を1年間の司法修習の中に位置付ける。 |
| 分野別実務修習との関係 | 大阪修習の裁判修習―第77期日程表で見る民事・刑事・家裁・保全・執行・令状修習 | 選択型実務修習に先行する大阪の裁判修習の具体例を確認する。 |
| 運用ガイドライン本文 | 選択型実務修習の運用ガイドライン | 平成18年9月26日付司法研修所長通知の本文を確認する。 |
| ガイドラインの疑問点 | 選択型実務修習の運用ガイドラインQ&A | 同日付通知のQ&Aを論点別に確認する。 |
| 期別の補足例 | 第72期の「選択型実務修習に関する留意点」 | 平成30年11月15日付の期別補足資料を確認する。 |
| 平成22年当時の運用 | 選択型実務修習に関する平成22年3月当時の説明 | 制度導入後の説明を歴史資料として確認する。 |
2 プログラム及び原資料を探す
| 確認したい事項 | 関連記事 | 記事の役割 |
|---|---|---|
| 通知,申出書及び情報公開資料 | 選択型実務修習に関する資料 | 自己開拓プログラムを含む関係文書の索引である。 |
| 全国プログラムの期別文書 | 選択型実務修習全国プログラムに関する文書 | 複数期の募集資料及び結果資料へ案内する。 |
| 法務省の全国プログラム | 法務行政修習プログラム―制度・第78期日程・過去資料 | 第78期の募集内容と過去の法務行政修習を整理する。 |
| 司法修習の事務運用 | 司法修習生の司法修習に関する事務便覧 | 複数年の事務便覧へ案内する。 |
3 周辺の手続を確認する
| 確認したい事項 | 関連記事 | 記事の役割 |
|---|---|---|
| 移動に伴う旅費 | 司法修習生の旅費に関する文書 | 旅費に関する通知,質疑及び支給例を確認する。 |
| 欠席,遅刻及び早退 | 司法修習生の欠席・休暇・修習停止 | 欠席承認と修習停止を区別し,確認手順を示す。 |
第5 制度沿革と古い資料の読み方
1 「選択型実務修習」という名称
平成16年7月2日の第8回司法修習委員会では,それまで「総合型実務修習」と呼んでいた課程を「選択型実務修習」とすることが了承された。
現在の最高裁判所の制度説明も,選択型実務修習を新司法修習で初めて採り入れた制度と位置付けている。
2 制度資料と期別運用を区別する
第10回司法修習委員会の資料37「選択型実務修習のガイドラインの概要について」は,制度を円滑に開始するため現実的な観点から定め,実施状況を踏まえて不断に見直すとしていた。
したがって,制度導入時のガイドライン,平成22年の委員長談話,第72期の留意点及び新型コロナウイルス感染症対応期の文書は,それぞれの作成時点を示した上で読む必要がある。
本記事では,古い資料に記載された具体的な期間,書式,連絡方法及び費用を,令和8年8月29日現在の全修習地に共通する運用とは扱っていない。
最新の運用は,所属する配属庁会から当期に示された文書で確認する。
第6 出典・参考資料
1 最高裁判所の制度説明・司法修習委員会資料
①最高裁判所「司法修習の概要」(令和8年8月29日確認)
②司法修習委員会第10回資料37「選択型実務修習のガイドラインの概要について」1頁~3頁(PDF1頁~3頁)
③司法修習委員会「選択型実務修習の現状と課題について」(平成22年9月27日)1頁~2頁(PDF1頁~2頁)
2 制度沿革資料
①第8回司法修習委員会「議事録」(平成16年7月2日)14頁(PDF14頁)