メインコンテンツへスキップ
       

集合修習とは―司法研修所における科目・クラス担任制,起案による指導及び後期修習からの変遷(AI作成)

第1 集合修習の位置付けと実施場所

集合修習は,司法修習生が分野別実務修習の4分野(民事裁判,刑事裁判,検察,弁護)を修習した後,選択型実務修習と並んで行われる課程であり,司法研修所において実施される。
最高裁判所は,集合修習を「実務修習の体験を補完して,体系的,汎用的な実務教育を行い,法律実務のスタンダードを指導する課程」と説明している。
司法修習は,導入修習,分野別実務修習,選択型実務修習及び集合修習という4段階で構成されており,このうち導入修習及び分野別実務修習の内容並びに採用要件及び給付金を含む全体像は,司法修習とは-採用要件,1年間の流れ,修習内容,給付金及び二回試験に整理しているので,本記事では集合修習そのものの内容に絞って説明する。

司法研修所は,最高裁判所の附属機関として,裁判官の研究及び修養並びに司法修習生の修習に関する事務を取り扱う機関であり,現在は埼玉県和光市南二丁目3番8号に所在する。
司法研修所の設置根拠,組織及び沿革は,司法研修所とは-最高裁判所の附属機関としての役割,組織,司法修習及び裁判官研修で扱っているため,本記事では重複を避け,集合修習の実施場所として言及するにとどめる。

第2 集合修習の法的根拠

司法研修所は,裁判所法14条により,裁判官の研究及び修養並びに司法修習生の修習に関する事務を取り扱うために最高裁判所に置かれる機関である。
司法研修所には,同法55条に基づき司法研修所教官が置かれ,上司の指揮を受けて司法研修所における裁判官の研究及び修養並びに司法修習生の修習の指導をつかさどるものとされ,同法56条に基づき司法研修所教官の中から補せられる司法研修所長が,最高裁判所長官の監督を受けて司法研修所の事務を掌理する。
司法修習生の修習及び試験については,同法67条1項が「司法修習生は,少なくとも一年間修習をした後試験に合格したときは,司法修習生の修習を終える」と定め,同条2項は修習期間中,最高裁判所の定めるところによりその修習に専念しなければならないとした上で,同条3項は修習及び試験に関する具体的な事項を最高裁判所が定めることとしている。

もっとも,導入修習,分野別実務修習,選択型実務修習及び集合修習という現在の4段階の区分そのものは,裁判所法に明文の規定があるわけではない。
これらの区分は,同法67条3項の委任を受けて最高裁判所が定める事項として,最高裁判所規則である司法修習生に関する規則(昭和23年最高裁判所規則第15号)を踏まえ,司法研修所長通知のレベルで具体化されている。
司法研修所規則(昭和22年最高裁判所規則第11号)及び司法修習生に関する規則は,いずれも最高裁判所規則であるためe-Gov法令検索には収録されておらず,正式な規則番号は国立国会図書館の日本法令索引で確認できる。

第3 集合修習の科目とクラス担任制

集合修習は,民事裁判,刑事裁判,検察,民事弁護及び刑事弁護の5科目を中心として行われる。
司法研修所長が発した通知「司法修習生指導要綱(甲)」は,集合修習の意義について「実務修習を補完し,司法修習生全員に,実務の標準的な知識,技法の教育を受ける機会を与えるとともに,体系的で汎用性のある実務知識や技法を修得させることを旨として行う」と定めている。

司法修習生は,修習期間を通じて約70人を1組とするクラスに分けられ,集合修習では,この5科目の教官がそれぞれ1人ずつ,計5人でクラスを担当するクラス担任制がとられる。
分野別実務修習が,配属された裁判所,検察庁又は弁護士会において実務家の個別指導を受ける個別修習であるのに対し,集合修習は,クラス単位で5人の教官から体系的な指導を受ける点に構造上の違いがある。

第4 起案・討論・講評による指導方法

集合修習における指導は,実際の事件記録をアレンジして作成された修習用の事件記録(修習記録)を教材として司法修習生に文書を起案させ,討論及び講評を行うことを中心に進められる。
分野別実務修習で取り扱う事件が,現に係属し又は係属していた実際の事件であるのに対し,集合修習で用いられる修習記録は,指導のために作成された教材である点で性質を異にする。
起案は,教官が添削し講評するほか,司法修習生相互の討論の素材ともされる。

司法研修所長通知は,集合修習で使用する教材について「修習の総仕上げにふさわしいものとする」とした上で,法律文書の起案そのものだけでなく,修習内容に応じて法律上の問題点について調査した書面の作成を求めるなど,司法修習生が積極的,主体的に修習に取り組めるようにする指導上の工夫を行うものとしている。
最高裁判所ウェブサイトの教官室コーナーは,科目ごとに使用される教材の一部を明らかにしており,民事裁判科目では「対話で進める争点整理」,刑事系科目では「プラクティス刑事裁判」,民事弁護科目では「民事弁護実務の基礎~シナリオ民事保全・執行~」及び「民事弁護実務の基礎~はじめての和解条項~」がそれぞれ用いられている。

第5 各科目の指導目標

司法研修所長が平成18年4月1日付けで発した通知「司法修習生指導要綱(甲)」は,集合修習の各科目について,次のとおり指導目標を定めている。

1 民事系科目

民事裁判科目は,要件事実論を実践的,多角的に用いる能力と事実認定能力を体系的に修得させるとともに,結論を説得的に表現する能力を養い,標準的な訴訟運営の在り方を修得させることを指導目標とする。
民事弁護科目は,弁護実務に直結した民事訴訟の基本的な知識と技法を体系的に修得させ,民事訴訟関連実務に対する理解も深めさせるとともに,法律実務家としての活動開始を目前に控えた司法修習生に対し,弁護士の使命と職責や弁護士倫理の重要性を十分に認識させ,その職務の遂行に必要な能力を修得させるための総合的な指導を行う。
民事共通科目では,民事に関する多様な法分野及び諸制度についての汎用性のある知識を修得させるほか,民事訴訟の実務処理上の問題点や民事訴訟における法曹倫理等について,民事裁判,民事弁護それぞれの立場から複合的,多角的な指導を行う。

2 刑事系科目

刑事裁判科目は,刑事裁判における事実認定及び訴訟手続を中心として総合的,体系的な指導を行い,事実認定の基本的な手法と標準的な刑事訴訟手続に関する実務的な知識及び理論を修得させる。
検察科目は,検察実務に関する知識,経験等を体系的に結合させて総合的な指導を行うものであり,法曹に共通して必要な基本的な知識及び技法修得の仕上げをするという位置付けにある。
刑事弁護科目は,事案の分析,証拠の評価,捜査及び公判の各場面における弁護活動について,適正手続の理念にのっとったより高度な実務能力を総合的,体系的に修得させ,刑事手続(少年事件を含む。)における弁護士の使命と職責,弁護士倫理の重要性を理解させる。
刑事共通科目は,その性質上,刑事裁判,検察及び刑事弁護において共同して指導することにより成果が期待できる事柄について,共通の科目として指導するものとされている。

第6 現在の実施時期とA班・B班の順序

1 「後期課程」という区分と第1期間・第2期間

集合修習は,分野別実務修習の終了後,選択型実務修習と合わせて約2か月間実施されるが,どちらを先に修習するかは実務修習地ごとに異なる。
司法研修所が作成する修習日程表では,分野別実務修習後のこの期間を「後期課程」と呼び,これをさらに第1期間と第2期間に分けた上で,各実務修習地をA班とB班に振り分け,一方の班が第1期間に集合修習を,他方の班が第1期間に選択型実務修習を行い,第2期間で入れ替える方式がとられている。
なお,この「後期課程」は集合修習と選択型実務修習を合わせた期間を指す修習日程表上の呼称であり,後記第7のとおり旧制度における「後期修習」(司法研修所における仕上げの集合修習そのものを指す名称)とは,同じ「後期」の語を用いながら指す範囲が異なるので混同しないよう注意を要する。

第79期についてみると,後期課程は令和8年(2026年)11月24日から令和9年(2027年)2月25日までのおよそ3か月間であり,東京,立川,横浜,さいたま,千葉,大阪,京都,神戸,奈良,大津及び和歌山の各実務修習地(A班)は第1期間に集合修習,第2期間に選択型実務修習を行い,それ以外の実務修習地(B班)はその逆の順序で修習する。
この結果,個々の司法修習生からみれば,集合修習と選択型実務修習は,それぞれおおむね1か月半ずつの連続した期間として実施されることになる。
第79期及び第80期の確定日程並びに各実務修習地の班分けの詳細は,第79期司法修習の日程及び第80期司法修習の日程-導入修習から二回試験・一斉登録の予測までに掲載している。

2 A班とB班に分ける理由

集合修習をA班とB班に分けて実施する取扱いは,新試験制度の開始により司法試験合格者数が増加し,司法研修所の施設で全司法修習生を一時に受け入れることが困難になったことに対応するものである。
第二東京弁護士会司法修習委員会は,同会の機関誌において,新試験による合格者の大幅な増加に伴い司法研修所の施設で一度に司法修習生を受け入れることが困難となったため,集合修習を実務修習地ごとに前半と後半の2組に分け,それぞれ約1か月半ずつ実施することとした旨を解説している。

第7 「後期修習」から「集合修習」への変遷

1 旧制度における前期修習・後期修習

法曹一体の要請に基づき,裁判官,検察官又は弁護士のいずれを志望するにせよ統一して修習する現在の司法修習生制度は,日本国憲法の施行に伴い昭和22年(1947年)に発足した。
法科大学院制度が導入される前の司法修習は,司法研修所における導入的な集合修習である前期修習,各地の裁判所,検察庁及び弁護士会における実務修習,並びに司法研修所における仕上げの集合修習である後期修習という3段階で構成されており,修習期間は第52期まで当初2年間とされていた。
その後,修習期間は,第53期から第59期まで1年6か月(前期3か月,実務12か月,後期3か月)に短縮された。

2 新試験制度と集合修習という呼称

平成16年(2004年)の法科大学院制度発足に伴い,法科大学院において2年から3年の法律基本教育を受けていることを前提として,新試験(法科大学院を経た司法試験)に合格した司法修習生については前期修習が不要とされ,修習期間は1年間に短縮された。
この改正は,司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律(平成14年法律第138号)による裁判所法67条1項の改正(平成18年4月1日施行)に基づくものであり,日本弁護士連合会も,平成14年12月5日の臨時総会決議において新司法修習の期間を1年とする旨を確認している。
新試験に基づく司法修習では,前期修習を経ないまま実務修習に入り,実務修習後に司法研修所で行う仕上げの修習が,従来の後期修習に相当するものとして「集合修習」と呼ばれるようになった。

これに対し,法科大学院を経ない旧試験の合格者については,経過措置として,短縮された前期修習(2か月),実務修習(12か月)及び後期修習(2か月)という旧制度の運用がなお続けられ,修習期間は1年4か月とされたが,この旧試験に基づく司法修習は第65期(平成23年=2011年採用)を最後に終了し,以後は新試験に基づく司法修習に一本化された。
山中弁護士ブログが過去に整理した司法修習の日程表でも,第57期から第63期までは「前期修習日程予定表」及び「後期修習日程予定表」という名称が用いられていたのに対し,新試験に基づく修習の日程表は「集合修習日程予定表」という名称に変わっており,57期から66期までの司法修習日程で確認できる。

3 修習期間の変遷と導入修習の新設

修習期間は,前記のとおり2年間(第52期まで)から1年6か月(第53期から第59期),旧試験の経過措置による1年4か月(旧第60期から旧第65期)を経て,新試験に基づく第60期以降は1年間となっている。

もっとも,法科大学院での教育を前提に前期修習に相当する課程を置かないこととした結果,実務修習の現場では司法修習生の基礎的な実務能力の不足が指摘されるようになった。
これを受けて司法研修所は,修習開始段階で司法修習生に不足している実務基礎知識・能力に気付かせ,より効果的で効率的な分野別実務修習を行えるようにすることを目的として,第68期(平成26年=2014年採用)の司法修習から導入修習を新たに実施することとした。
これにより,現在の司法修習は,導入修習,分野別実務修習,選択型実務修習及び集合修習という4段階構成になっている。

第8 集合修習を終えてから二回試験まで

選択型実務修習と集合修習を終えると,修習期間の最後に司法修習生考試(二回試験)が実施され,これに合格することにより司法修習を終え,判事補,検事又は弁護士となる資格を取得する。
二回試験は,刑事裁判,検察,民事裁判,民事弁護及び刑事弁護の5科目について1日1科目ずつ5日間にわたって実施されており,この科目構成は,集合修習における5科目とそのまま対応している。
二回試験当日の具体的な流れは二回試験当日の流れ-第78期応試心得に基づく試験時間・持ち物・昼食・禁止事項に,不合格となった場合の一般的な取扱いは二回試験不合格時の一般的な取扱い-期別の沿革,罷免の根拠条文及び再受験に,それぞれ整理している。

第9 出典

1 法令

裁判所法(昭和22年法律第59号)14条,55条,56条及び67条(1項から3項まで)〔e-Gov法令検索〕

2 最高裁判所規則(国立国会図書館日本法令索引で書誌事項を確認)

司法研修所規則(昭和22年最高裁判所規則第11号)
司法修習生に関する規則(昭和23年最高裁判所規則第15号)

3 最高裁判所の制度説明

最高裁判所「司法修習の概要」
最高裁判所ウェブサイト内「教官室コーナー」(同ページ内)

4 司法研修所発行資料

司法研修所『司法修習ハンドブック』(令和元年10月発行)所収の司法研修所長通知「司法修習生指導要綱(甲)」(平成18年4月1日付け司研企第000791号,平成26年8月改訂)――情報公開請求により入手した資料であり,同通知に改正がある場合には最新の内容と異なる可能性がある。

5 法令改正の経緯資料

法務省ウェブサイト「司法試験法及び裁判所法の一部を改正する法律」(平成14年法律第138号)
日本弁護士連合会臨時総会決議(平成14年12月5日)

6 職能団体の委員会による解説

第二東京弁護士会司法修習委員会「司法修習はこう変わった」『NIBEN Frontier』2017年11月号