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交通事故によるリスフラン関節・ショパール関節損傷の後遺障害等級――第7級8号の欠損障害,可動域制限の評価対象外及び神経症状による構成(AI作成)

第1 この記事が扱う対象

1 リスフラン関節とショパール関節

リスフラン関節は,足根中足関節ともいい,5本の中足骨と,足根骨の遠位列である内側・中間・外側の三つの楔状骨及び立方骨との間にある関節である。ショパール関節は,横足根関節ともいい,距舟関節と踵立方関節とを併せた関節複合体を指す。いずれも足の中央部にあって,足部のアーチを保ち,歩行時に足を剛にしたり柔らかくしたりする役割を担っており,交通事故では,足部の轢過,車内での足部の挟圧,バイク事故における足部の直達外力等によって,脱臼骨折又は靱帯損傷を生じる。

この二つの関節は,後遺障害等級の当てはめにおいて特異な位置にある。等級表には「リスフラン関節」という語が置かれているにもかかわらず,それは足を失った場合の欠損障害の基準としてのみ用いられており,関節としての動きが失われた場合の機能障害の項目は,リスフラン関節についてもショパール関節についても存在しない。本記事は,この構造を出発点として,欠損障害としてどこまでが第7級8号となるか,機能障害として拾えない場合にどの号で構成するか,そのためにどのような資料が必要かを整理する。本記事の内容は生成AIを用いて作成した一般的な情報提供であり,個別の事案に対する法的助言ではない。

2 射程と時点

等級の文言は,令和8年8月8日時点でe-Gov法令検索により確認した自動車損害賠償保障法施行令別表第二及び労働者災害補償保険法施行規則別表第一による。認定基準は,平成16年6月4日基発第0604003号「せき柱及びその他の体幹骨,上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準」及びその別添「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」による。自賠責保険がこの労災の基準に準拠する根拠は,平成13年金融庁・国土交通省告示第1号(自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準)第3が,等級の認定は原則として労働者災害補償保険における障害の等級認定の基準に準じて行う旨を定めていることにある。

足関節の可動域制限による第12級7号の一般的な枠組み,踵骨骨折及び距骨骨折そのものの等級認定,距骨下関節を固定した場合の当てはめについては,それぞれ別の記事で扱っている。本記事は,これらと重複する説明を避け,リスフラン関節及びショパール関節という中足部の関節に固有の問題に絞る。

第2 欠損障害――第7級8号及び第4級7号

1 等級表の文言と保険金額

自動車損害賠償保障法施行令別表第二は,足部の欠損について二つの号を置いている。第7級8号は「一足をリスフラン関節以上で失つたもの」であり保険金額は1051万円,第4級7号は「両足をリスフラン関節以上で失つたもの」であり保険金額は1889万円である。より近位で失った場合の受け皿は,第5級5号「一下肢を足関節以上で失つたもの」(1574万円)及び第2級4号「両下肢を足関節以上で失つたもの」(2590万円)である。労働者災害補償保険法施行規則別表第一も同じ内容を定めているが,同表の第5級は,神経系統の機能又は精神の障害及び胸腹部臓器の機能の障害を「一の二」「一の三」という枝番号で掲げているため,以降の号がずれ,「一下肢を足関節以上で失つたもの」は第5級3号となる。第7級8号及び第4級7号は,自賠責と労災とで号が一致する。

両足をリスフラン関節以上で失った場合は,一足ずつを第7級8号として併合するのではなく,等級表があらかじめ定めた組合せ等級である第4級7号によることになる。認定基準は,この点を「右左の足をリスフラン関節以上で失った場合,右足をリスフラン関節以上で失ったもの(第7級の8)と左足をリスフラン関節以上で失ったもの(同前)とを併合するのではなく,障害等級表に定められた『両足をリスフラン関節以上で失ったもの』(第4級の7)となる」という例で示している。

2 認定基準による切断部位の画し方

認定基準は,「リスフラン関節以上で失ったもの」を,「足根骨(踵骨,距骨,舟状骨,立方骨及び3個の楔状骨からなる。)において切断したもの」又は「リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離断したもの」のいずれかに該当するものと定義している。これに対し,一段階上の「下肢を足関節以上で失ったもの」は,「ひざ関節と足関節との間において切断したもの」又は「足関節において,脛骨及び腓骨と距骨とを離断したもの」と定義されている。

したがって,等級の分水嶺は距骨にある。距骨を脛骨及び腓骨から切り離せば第5級(自賠責5級5号,労災5級3号)であり,距骨より遠位で足根骨を切るか,中足骨を足根骨から切り離せば第7級8号である。この境界は,実際の手術記録及び画像で切断レベルを確定しなければ判断できないため,労災の後遺障害診断書の作成手引も,欠損障害がある場合には切断部位又は欠損部位が明確に分かるように記載することを求めている。切断レベルの記載が「足部切断」「足部離断」等と抽象的にとどまっている場合には,主治医に対して,どの骨のどの高さで切断したのか,あるいはどの関節で離断したのかを特定した記載を求めることになる。

3 等級表の原型としての労働基準法施行規則別表第二

「リスフラン関節」という語がこの等級体系に入った起点は,労働基準法施行規則別表第二(昭和22年厚生省令第23号)である。同表は,労働基準法77条の障害補償の額を定めるものであり,第4級(平均賃金の920日分)の七に「両足をリスフラン関節以上で失つたもの」,第7級(平均賃金の560日分)の八に「一足をリスフラン関節以上で失つたもの」を掲げている。自賠責及び労災の等級表は,いずれもこの表を母型としており,号の並びも基本的に一致する。

同表の備考は五項目あるが,その内容は視力の測定方法並びに「指を失つたもの」「指の用を廃したもの」「趾を失つたもの」「趾の用を廃したもの」の定義に限られており,等級表に掲げられていない障害を近い等級として扱うための規定は置かれていない。この点は,後述する相当等級の根拠を考えるうえで意味を持つ。

第3 ショパール関節における離断には明文がないこと

1 認定基準の文言との関係

自動車損害賠償保障法施行令別表第一及び別表第二のいずれにも「ショパール関節」の語は存在しない。労働者災害補償保険法施行規則別表第一及び労働基準法施行規則別表第二についても同じである。認定基準の中でこの語が現れるのは,併合の例に付された注として,踵骨が距骨との間で距骨下関節を構成し,舟状骨,距骨及び立方骨との間でショパール関節を構成している旨を述べる箇所だけであって,そこでの主題は足関節と踵骨とが別の部位であることの説明にある。

そのため,ショパール関節における離断,すなわち距骨及び踵骨を残して舟状骨及び立方骨より遠位を切り離した場合を,どの号で扱うかは,文言上必ずしも明らかでない。認定基準の「足根骨において切断したもの」は骨体を切る場合を想定した文言であり,「リスフラン関節において中足骨と足根骨とを離断したもの」は関節名を限定しているから,ショパール関節での離断はいずれの文言にも厳密には収まらない。実務は,足根骨をひとまとまりの部位として扱い,その近位側の境界を距骨の離断に置く認定基準の構造から,ショパール関節における離断も第7級8号として処理していると考えられるが,これを明示した通達又は行政解釈は,厚生労働省の法令等データベースにおける障害等級認定基準関係の通達一覧にも,労災補償の実務書として広く用いられている障害認定必携(第14版)の全659頁にも見当たらない。同書には「リスフラン」の語が10頁に現れるのに対し,「ショパール」の語は1頁にも現れない。

2 他の公的障害認定制度との対比

もっとも,日本の公的な障害認定制度のうち,ショパール関節を等級の基準として明文で用いているものが二つある。

第一に,国民年金及び厚生年金保険の障害認定基準は,下肢の障害に関する認定要領の欠損障害の項で,「『足関節以上で欠くもの』とは,ショパール関節以上で欠くものをいう」と定めている。同基準の等級表では,「両下肢を足関節以上で欠くもの」が国民年金法施行令別表の1級,「一下肢を足関節以上で欠くもの」が同2級であり,「一下肢をリスフラン関節以上で失ったもの」は厚生年金保険法施行令別表第1の3級である。すなわち,障害年金においては,ショパール関節における欠損は足関節以上の欠損と同視され,リスフラン関節における欠損より上位の等級に位置付けられている。

第二に,身体障害者福祉法施行規則別表第五号(身体障害者障害程度等級表)は,三級に「両下肢をシヨパー関節以上で欠くもの」を,六級に「一下肢をリスフラン関節以上で欠くもの」を掲げている。同表の表記が「シヨパー関節」であって「ショパール関節」でないことは,資料を検索する際に注意を要する点である。

これに対し,労災及び自賠責の等級表は,ショパール関節における欠損もリスフラン関節における欠損も同じ第7級8号として扱い,両者の間に段差を設けていない。医学的にも両者は同じではなく,切断レベル別の転帰を集めた系統的レビューによれば,創傷治癒不全は,リスフラン切断で約2割,改良型のショパール切断で約3割,従来型のショパール切断では約4割半ばに達している。また,義足を用いずに短距離を歩ける者の割合は,リスフラン切断で約85%,改良型のショパール切断で約74%であり,従来型のショパール切断については,家庭内を制限なく歩ける者が約4分の1にとどまるとの報告が引用されている。

3 相当等級による構成とその限界

以上を踏まえると,ショパール関節における離断について第7級8号を超える等級を求める余地が理論上あることになる。その形式的な根拠は,自動車損害賠償保障法施行令別表第二の備考六が「各等級の後遺障害に該当しない後遺障害であつて,各等級の後遺障害に相当するものは,当該等級の後遺障害とする」と定めていること,及び労働者災害補償保険法施行規則14条4項が別表第一に掲げるもの以外の身体障害について同表に掲げる身体障害に準じて等級を定めるとしていることである。

しかし,この主張には二つの限界がある。第一に,等級表は第7級と第5級との間に中間の等級を用意していないから,第6級相当を認めるには,第7級と第5級との序列の中間に位置付けるという判断を要する。第二に,障害年金及び身体障害者手帳の等級は,稼得能力の喪失ではなく生活保障又は福祉サービスの必要度を測るものであって,制度目的が異なるから,その段差をそのまま労災及び自賠責の等級へ持ち込むことはできない。本記事で調査した限り,ショパール関節における離断について第7級8号を超える相当等級を認めた裁判例又は認定例は見当たらなかった。

したがって,実務上は,等級としては第7級8号を前提としつつ,他の制度がショパール関節における欠損をより重く評価していること及び切断レベルによる機能の差を,労働能力喪失率,労働能力喪失期間及び慰謝料の主張において用いるのが現実的な組立てである。

第4 可動域制限は等級評価の対象外であること

1 認定基準の構造

認定基準の別添は,関節の機能障害を評価するに当たり,部位ごとに主要運動と参考運動を定める表を置いている。この表に掲げられた部位に,リスフラン関節,ショパール関節及び足部は含まれていない。足関節の主要運動は屈曲・伸展のみであり,参考運動の欄は空欄である。同じ別添の下肢の測定表に掲げられた部位も,股,膝及び足の三つだけであって,足については,屈曲(底屈)の参考可動域角度45度,伸展(背屈)の参考可動域角度20度,基本軸を腓骨への垂直線,移動軸を第5中足骨とし,膝関節を屈曲位で行うと定められているにとどまる。そのうえで,別添は「測定要領に定めた主要運動及び参考運動以外の運動については,関節の機能障害の評価の対象としないものであること」と明文で述べている。

したがって,リスフラン関節又はショパール関節の動きがどれほど失われても,それ自体を可動域制限として第12級7号,第10級11号又は第8級7号に反映させる回路は,認定基準の中に存在しない。中足部を固定する手術を受けたことのみを理由として下肢の三大関節の機能障害を主張しても,認定基準に従う限り認められない。

2 足関節の可動域制限として拾えるか

そこで実務上の争点となるのが,中足部の損傷が足関節の可動域制限を生じさせたと評価できるかである。この点については両方向の資料がある。手術により解剖学的な整復が得られた症例群を対象とした研究では,足関節の可動域に健側との有意差は認められず,他方で底屈のピーク値,矢状面の可動域及び足関節が生み出す力が患側で有意に低下し,その影響が膝関節にも及んでいたと報告されている。これに対し,同じ分類の損傷で観血的整復固定術を受けた症例を健常対照と比較した研究では,平均約6年半の追跡において,背屈の可動域が患側で約6度,健側で約18度,対照群で約23度と,明らかな差が認められている。

これらを併せると,中足部の損傷だから足関節は無関係であるという一般論も,中足部を損傷したのだから足関節の可動域も当然に落ちるという一般論も,いずれも成り立たない。争点は,当該事案で解剖学的な整復が得られたか,背屈の制限が健側比で認定基準の分数に達しているかという個別の事実に還元される。同時に,可動域が保たれていても筋力及び推進力が低下するという知見は,可動域では等級が取れない事案において,労働能力の喪失の実質を主張する材料になる。

なお,中足部の損傷では,測定法の版の違いが測定値に影響し得る点にも注意を要する。認定基準の別添が採る足関節の移動軸は第5中足骨であるが,日本整形外科学会,日本リハビリテーション医学会及び日本足の外科学会が2022年4月に発効させた「関節可動域表示ならびに測定法」の改訂は,足関節・足部の移動軸を足底面へ変更している。認定基準は改訂前の版に基づいているため,前足部そのものが変形又は転位している中足部の損傷では,どちらの移動軸で測定したかによって数値が動く可能性がある。閾値に近い数値が出ている事案では,主治医に対して測定の方法を確認し,必要に応じて認定基準の定める方法による再測定を求めることが考えられる。

第5 神経症状による構成

1 第12級13号と第14級9号

可動域制限として拾えない以上,中足部の損傷が残す症状は,多くの事案で「局部に頑固な神経症状を残すもの」(自賠責第12級13号。労働者災害補償保険法施行規則別表第一では「局部にがん固な神経症状を残すもの」として第12級12号)又は「局部に神経症状を残すもの」(いずれも第14級9号)として構成することになる。両者を分けるのは,症状の存在が他覚的所見によって裏付けられるかどうかであり,中足部の損傷では,関節裂隙の狭小化,骨棘形成,転位の残存,骨癒合不全といった画像所見が中心となる。

同一下肢に足関節の機能障害と足根部の疼痛とが併存する場合には,認定基準が併合の例として,踵骨骨折治ゆ後に疼痛を残し(第12級の12),同一下肢の足関節の機能に障害を残す(第12級の7)場合を併合第11級とする例を示しており,これを用いることができる。もっとも,同一下肢の障害をどこまで別個の部位として評価するかは争いになり得るところであり,踵部側でより上位の等級を得た場合に足関節の可動域制限が歩行障害として既に評価済みであるとして吸収された裁判例もあるから,どちらの構成で組むかは主張の冒頭で選択しておく必要がある。

2 立証資料

中足部の損傷は,初診時の診断名が「足関節捻挫」にとどまることが少なくない。急性の足関節外傷について磁気共鳴画像を再読影した研究では,約2割の症例にショパール関節の靱帯又は骨の損傷が認められ,骨損傷の大半は当初から報告されていたのに対し,靱帯損傷の8割以上は当初の読影で指摘されていなかったと報告されている。足部及び足関節の外傷を集めた別の研究でも,ショパール関節捻挫は全体の3%台にとどまるものの,その7割は靱帯の完全断裂であり,臨床所見と超音波所見との一致率は4割にすぎなかったとされている。

したがって,診断名が足関節捻挫であることは,中足部の器質的損傷を否定する根拠にはならない。治療の打切り又は非該当を争う場面では,初診時の画像の再読影,荷重位での撮影を含む追加の画像検査,及び症状の局在が足関節ではなく足根部又は足背にあることの記録が,主張の柱となる。

事故態様が軽微であることを理由として損傷の存在自体が争われることもあるが,スウェーデンの骨折登録に基づく2000件を超える中足部損傷の調査によれば,高エネルギー外傷は全体の5件に1件にすぎず,最も多い受傷機転は単純な転倒(つまずき)で約3割を占め,手術に至ったのは約4割であったとされている。もっとも,同じデータは,軽微な力でも損傷が生じ得ることを示す反面,加齢その他の素因が寄与したという主張の材料にもなり得るから,事故態様と受傷機転を確定してから用いるべき資料である。

自賠責保険・共済紛争処理機構の事例には,右足部を轢過されて中足骨及び楔状骨を骨折した事案について,自賠責が骨癒合良好として第14級9号としたのに対し,初診時に腫脹,発赤及び内出血が著しいと記載されていたこと,医証上,骨折と軟部組織の圧挫等による関節拘縮が指摘されていたこと,並びに事故から約1年2か月後の足部のカラー写真によって皮膚の変化及び腫脹が確認できることを理由に,第12級13号を認めたものがある。カラー写真という,医証に現れにくい外形上の変化を示す資料が判断を分けている点は,資料収集の順序を考えるうえで参考になる。また,足根骨骨折後の疼痛について,変形がなく骨癒合も良好であった事案において,症状固定までの約20か月間の通院実日数が21日にとどまっていたにもかかわらず,診断書の記載と鎮痛薬の長期処方から一貫した疼痛の存在を認め,荷重部位の骨折であることも勘案して第14級9号を認めた事例もある。

第6 裁判例

1 リスフラン関節靱帯損傷につき第14級9号とされた事例

秋田地方裁判所平成22年12月14日判決(平成21年(ワ)第354号)は,対向車がセンターラインを越えて衝突した事故により夫婦がともに受傷した事案である。同乗していた原告については,全身打撲,左上腕骨折,肺挫傷,頭部外傷,リスフラン関節靱帯損傷等の傷害を負い,骨折及び靱帯損傷につき手術を受けたことが認定されているが,後遺障害としては,損害保険料率算出機構により右足局部に神経症状を残すものとして第14級9号と判定されている。

同じ判決は,運転していた原告について,右脛骨・腓骨遠位端骨折後の右足関節痛を第12級13号,前額中央の陥没痕を第14級10号,右上肢の瘢痕を第14級4号とし,併合第12級としたうえ,症状固定時の右足関節の可動域が健側の背屈20度・底屈45度に対して背屈15度・底屈40度であったことについて,第14級にも至らない後遺障害であると判断している。足関節の可動域が健側の4分の3を下回らない限り等級として評価されないことを,具体的な数値とともに示した例である。

2 裁判所ウェブサイトにおける掲載状況

裁判所ウェブサイトの裁判例検索において,令和8年8月8日時点で本文検索を行ったところ,「リスフラン」で4件,「ショパール」で1件,「足根骨」で6件,「中足骨」で11件,「距骨」で4件,「踵骨」で19件がそれぞれ該当し,「楔状骨」「立方骨」「舟状骨」「足根中足関節」「横足根関節」及び「シヨパー」はいずれも該当がなかった。該当した各裁判例の判決全文を確認したところ,中足部の後遺障害等級を正面から判断したものは,前記の秋田地方裁判所の判決を除き見当たらず,多くは刑事事件,障害年金に関する行政事件,又は靴若しくは骨粗鬆症治療剤に関する知的財産の事件であった。下級審の裁判例は掲載率が低いから,掲載がないことは存在しないことを意味しない。

なお,「ショパール」で該当した唯一の裁判例である東京地方裁判所令和6年12月6日判決(令和4年(行ウ)第219号,障害年金不支給決定取消等請求事件)は,交通事故の損害賠償ではなく障害年金の支給に関するものであるが,その別紙として国民年金・厚生年金保険障害認定基準の下肢の障害の部分が引用されており,前記第3の1で述べた「足関節以上で欠くもの」の定義を判決文の中で確認することができる。

第7 損害論

1 労働能力喪失率

自賠責保険の支払基準別表Ⅰは,別表第二の等級について,第4級を92%,第5級を79%,第6級を67%,第7級を56%,第8級を45%,第12級を14%,第14級を5%と定めている。もっとも,この数値は,昭和32年7月2日基発第551号の別表として定められた労働能力喪失率表に由来するものであり,訴訟においては,損害賠償額算定基準もこれを参考としつつ,被害者の職業,年齢,性別,後遺症の部位及び程度,事故前後の稼働状況等を総合的に判断して具体的に評価すべきものとしている。前記の秋田地方裁判所の判決も,等級ごとの労働能力喪失率はあくまで参考にすぎず,等級評価から演繹的に導き出されるものではないと述べている。

第7級8号の欠損障害は,立位及び歩行を要する職種において,率の数値以上の支障を生じることがある。中足部の損傷を巡る研究では,可動域が保たれていても足関節が生み出す力が低下し,その影響が膝関節にも及ぶことが報告されているから,率の加算又は減算を争う場面では,職務の内容と,歩行及び立位に関する客観的な評価とを結び付けて主張することになる。

2 後遺障害慰謝料

自賠責保険の支払基準による後遺障害慰謝料は,第4級737万円,第5級618万円,第7級419万円,第8級331万円,第12級94万円,第14級32万円である。これに対し,訴訟において広く参照される損害賠償額算定基準の額は,第4級1670万円,第5級1400万円,第7級1000万円,第8級830万円,第12級290万円,第14級110万円である。第7級では,自賠責の419万円に対して訴訟基準は1000万円であり,約2・4倍の差がある。被害者請求により支払われた金額のみを前提として示談に応じるべきではない理由が,この差に端的に現れている。

3 労働能力喪失期間

損害賠償額算定基準は,労働能力喪失期間の始期を症状固定日,終期を原則として67歳とし,症状固定時の年齢が67歳を超える場合等については簡易生命表の平均余命の2分の1によるとしている。そのうえで,期間を制限する取扱いとして挙げられているのは「むち打ち症の場合は,12級で10年程度,14級で5年程度に制限する例が多く見られる」という記述であり,これはむち打ち症について述べたものである。

中足部の損傷は,画像上の器質的変化を伴う点でむち打ち症とは異なる。ショパール関節損傷を平均約10年追跡した研究では,画像上の外傷後関節症が9割を超える症例に認められた一方,後期の関節固定術を要した者は5%に満たないと報告されており,一見軽微とされる中足部の損傷を平均約4年追跡した研究でも,慢性疼痛が約7割,足のアーチの扁平化が約4割,複合性局所疼痛症候群が約3割,二次的な関節固定が約2割弱に生じたとされている。症状が固定した後もこれらの変化が進行し得ることは,喪失期間の制限に反対する事情として,また将来の再手術及び装具の費用を留保する根拠として用いることができる。

4 異議申立て及び紛争処理の見込み

一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構が公表している実績データによれば,同機構の審査件数に対する変更件数の割合は,制度が始まった平成14年度には21・1%であったが,その後低下し,令和5年度は8・7%,令和6年度は10・7%,令和7年度は6・9%である。令和7年度は,審査件数677件のうち,有無責の変更が1件,後遺障害の変更が46件であった。異議申立て又は紛争処理の申請によって等級が変わる見込みを説明する際には,この母集団の数値を併せて示すのが誠実であろう。

出典・参考資料

1 法令・告示・通達

自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年政令第286号)別表第二,同表備考及び第2条(e-Gov法令検索)

労働者災害補償保険法施行規則(昭和30年労働省令第22号)別表第一及び第14条(e-Gov法令検索)

労働基準法施行規則(昭和22年厚生省令第23号)別表第二及び同表備考(e-Gov法令検索)

身体障害者福祉法施行規則(昭和25年厚生省令第15号)別表第五号(身体障害者障害程度等級表)(e-Gov法令検索)

自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)第3(国土交通省)

同基準別表Ⅰ 労働能力喪失率表(国土交通省)

「せき柱及びその他の体幹骨,上肢並びに下肢の障害に関する障害等級認定基準」について(平成16年6月4日基発第0604003号)及び別添「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」(厚生労働省法令等データベースサービス)

国民年金・厚生年金保険 障害認定基準(昭和61年3月31日庁保発第15号。令和4年4月1日改正)第3第1章第7節第2「下肢の障害」(分割版PDF。日本年金機構)

2 裁判例

秋田地方裁判所平成22年12月14日判決(平成21年(ワ)第354号,損害賠償請求事件,裁判所ウェブサイト)

東京地方裁判所令和6年12月6日判決(令和4年(行ウ)第219号,障害年金不支給決定取消等請求事件,裁判所ウェブサイト)

3 公的資料

紛争処理業務等の実績データ(平成14年度〜令和7年度)(一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構)

関節可動域表示ならびに測定法改訂について(2022年4月改訂)(日本整形外科学会・日本リハビリテーション医学会・日本足の外科学会,The Japanese Journal of Rehabilitation Medicine 58巻10号1188頁~1200頁,J-STAGE)

4 文献

①民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準2026年版上巻(基準編)(公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部,2026年2月6日第55版発行)111頁及び223頁

②労災補償障害認定必携(第14版)(労災サポートセンター,平成30年2月)272頁~283頁

③労災保険後遺障害診断書作成手引(整形外科領域)(労災保険情報センター,平成29年3月)58頁

④自賠責・紛争処理事例と判例から読み解く後遺障害等級認定の判断-傾向を踏まえた交通事故事件処理-(新日本法規出版,令和8年3月)176頁及び191頁

⑤Rammelt S, Missbach T. “Chopart Joint Injuries: Assessment, Treatment, and 10-Year Results.” Journal of Orthopaedic Trauma. 2023;37(1):e14頁~e21頁.

⑥Garríguez-Pérez D, Cebrián-Parra JL, Marco F. “Impact of the Subtle Lisfranc Injury on Foot Structure and Function.” Foot & Ankle International. 2021;42(10):1303頁~1310頁.

⑦Walter WR, Hirschmann A, Alaia EF, Tafur M, Rosenberg ZS. “MRI Evaluation of Midtarsal (Chopart) Sprain in the Setting of Acute Ankle Injury.” American Journal of Roentgenology. 2018;210(2):386頁~395頁.

⑧Thiounn A, Szymanski C, Lalanne C, Soudy K, Demondion X, Maynou C. “Prospective observational study of midtarsal joint sprain: Epidemiological and ultrasonographic analysis.” Orthopaedics & Traumatology: Surgery & Research. 2016;102(5):657頁~661頁.

⑨Demirel M, Turan AF, Şen C, Kılıçoğlu Öİ. “Reduced ankle strength and dorsiflexion joint motion after surgical treatment of Myerson type B Lisfranc injuries.” Acta Orthopaedica et Traumatologica Turcica. 2025;59(6):405頁~414頁.

⑩Eceviz E, Çevik HB. “Beyond the foot: Proximal joint adaptations following Lisfranc injury.” The Journal of Foot and Ankle Surgery. 2026年オンライン先行公開.

⑪van der Wal GE, Poelstra RJ, Postema SG, Geertzen JHB, Dijkstra PU, Reneman MF. “Lisfranc and Chopart amputation: A systematic review.” Medicine (Baltimore). 2023;102(10):e33188.

⑫Juto H, Möller M, Wennergren D, Edin K, Apelqvist I, Morberg P. “Epidemiology, classification, and treatment of 2084 Lisfranc injuries: A study from the Swedish Fracture Register.” Injury. 2025;56(2):112036.

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交通事故による距骨下関節固定術と後遺障害等級――足関節機能障害との区別,等級の当てはめ及び立証資料

足関節の可動域制限と後遺障害12級7号――認定基準,測定方法,代償動作及び裁判例

交通事故による踵骨骨折の後遺障害等級――足関節,可動域,疼痛及び立証資料

交通事故による距骨骨折の後遺障害等級認定――骨壊死,足関節機能障害及び立証資料

交通事故による外傷性変形性足関節症の後遺障害等級――因果関係,可動域,症状固定後の進行

交通事故による脛骨神経麻痺の後遺障害等級――足関節・足指と12級13号・14級9号

拘縮と可動域制限の違い――裁判例,行政通達及び医学の見地から

自賠責保険の支払基準――令和2年4月1日以降の交通事故に適用される告示の全文,別表及び改正経緯