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会計検査院が指摘した裁判所の不当事項一覧―最高裁・下級裁判所の事例(昭和22年度~令和7年度)(AI作成)

第1 一覧の範囲と読み方

本記事は,会計検査院の決算検査報告から,昭和22年度~令和7年度の裁判所関係の不当事項を年代順にまとめたものである。
最高裁判所自身の会計経理については,令和7年度のRoootSの事案が,本記事で取り上げた報告の範囲では昭和35年度以来65年度ぶりとなる。
間の年度にも,下級裁判所の経理に関する不当事項や,不当事項とは別の区分で裁判所を扱った報告がある。昭和35年度の案件本文・令和7年度の案件本文45~47頁

会計検査院法第29条第3号は,検査報告に,検査の結果法律,政令若しくは予算に違反し又は不当と認めた事項の有無を掲記しなければならないと定める。
本記事では,決算検査報告の「不当事項」に区分された事案のうち,案件本文で裁判所の関与が分かるものを掲載した。
複数機関をまとめた報告番号は,案件本文に従って対象を併記した。会計検査院法(e-Gov)・検査報告データベースの年度別目次

昭和22年度~令和6年度は,検査報告データベースの年度別目次と案件本文による。
令和7年度は,会計検査院が令和8年11月5日に内閣に送付した決算検査報告の公表資料(不当事項の目次と裁判所の案件本文)による。
年度欄は決算検査報告の年度であり,契約・支払・不正行為の時期は個々の案件で異なる。
金額欄の額は,各案件本文が支出額,不正行為の金額,損害額,割高額又は不当金額として示す額であり,案件ごとに意味が異なる。令和7年度決算検査報告(会計検査院)

第2 昭和22年度~昭和35年度

年度番号対象件名・指摘の概要・金額と出典
昭和22(1)最高裁判所「経費の年度区分をみだつたもの」。六法全書1,500部が昭和23年6月から10月までの間に納入されたのに,年度内に完納されたものとして,代金67万5,000円を昭和22年度予算から支出した。 案件本文
昭和22(2)福島地方裁判所同上。屋根修繕工事ほか32工事は昭和23年3月から5月までの間に起工し,5月及び6月に完成したのに,年度内に完成したものとして,請負代金112万2,470円の全額を昭和22年度予算から支出した。 案件本文
昭和22(3)熊本地方裁判所同上。回転椅子ほかの物品の購入,庁舎の修理工事ほかについて,年度内に納入又は着工の事実がないのに,代金95万6,703円を昭和22年度予算から支出した。 案件本文
昭和22(6)名古屋高等裁判所・名古屋高等検察庁「寄附により庁舎を整備し予算の制をみだつたもの」。昭和・中川・津島の各簡易裁判所と区検察庁等の庁舎の整備に寄附を充てた。寄附受入額は,名古屋地方検察庁岡崎支部・岡崎区検察庁の庁舎分を含めて計872万9,292円である。 案件本文
昭和22(8)和歌山地方裁判所・和歌山地方検察庁同上。橋本・湯浅の各簡易裁判所等の庁舎の整備に寄附を充てた(寄附受入額計97万円)。 案件本文
昭和22(9)松江地方裁判所・松江地方検察庁同上。川本・島根大田の各簡易裁判所と区検察庁の庁舎の整備に寄附を充てた(寄附受入額計44万8,064円)。 案件本文
昭和22(10)大分地方裁判所・大分地方検察庁同上。大分地方裁判所・大分地方検察庁の庁舎と三重簡易裁判所・三重区検察庁の庁舎の整備に寄附を充てた(寄附受入額計500万円)。 案件本文
昭和23(1)裁判所ほか2府9省(所管横断)「制規によらない給与を支給したもの」。北海道と寒冷積雪地に在勤する職員に,法律の根拠と予算の計上がないまま特別俸・勤務地手当を支給した。全体で9億4,589万1,423円,うち裁判所分は480万1,248円である。 案件本文
昭和23(2)水戸地方裁判所「工事の施行に当り処置当を得ないもの」。元水戸刑務所跡地の所管換えが確定する前に官舎3棟の新営工事に着手し,所管換えを受けられなくなったため,25万5,000円を追加して別の敷地へ移築した(工事費計105万9,000円)。 案件本文
昭和24(1)浦和地方裁判所「職員の不正行為に因り国に損害を与えたもの」。職員が保釈保証金等を領得した(65万9,000円)。 案件本文
昭和24(2)札幌地方裁判所同上(151万6,117円)。 案件本文
昭和25(1)宇都宮地方裁判所「職員の不正行為に因り国に損害を与えたもの」。職員が歳出金・前渡資金を領得した(53万7,116円)。 案件本文
昭和26(1)最高裁判所「工事費の積算当を得ないもの」。大阪家庭裁判所庁舎新営第5期工事(代金5,024万3,000円)で鉄材の所要量を過大に見込み,検査院の試算より約700万円高価となった。第6期工事でも鉄材を過大に見込んだ。 案件本文
昭和26(2)東京地方裁判所・札幌地方裁判所「職員の不正行為に因り国に損害を与えたもの」。職員が未消印の収入印紙,領置金等を領得した(41万5,354円。ほかに金塊等)。 案件本文
昭和27(2)最高裁判所・大阪高等裁判所・甲府地方裁判所・福井地方裁判所「裁判所関係庁舎の整備について処置当を得ないもの」。大阪家庭裁判所ほか7か所の庁舎新営(昭和27年度までの支出11億1,987万9,399円)で主体工事の一部を中止するなどし,使用予算に比べ利用価値が低かった。未使用の庁舎敷地等も指摘された。 案件本文
昭和27(3)東京地方裁判所「保管金の処理が当を得ないもの」。保釈保証金・民事予納金等の保管金のうち2,416万1,544円について,関係書類との連係が判明しないまま長期間となっていた。 案件本文
昭和28(1)東京地方裁判所八王子支部・八王子簡易裁判所「職員の不正行為により国に損害を与えたもの」。職員が民事予納金・保釈保証金等の一部を銀行に預け入れずに領得した(505万9,000円)。 案件本文
昭和29(1)大阪地方裁判所・神戸地方裁判所伊丹支部・伊丹簡易裁判所同上。職員が前渡資金・歳入歳出外現金等と刑事領置物の時計を領得した(1事項5万円以上のものとして2事項93万5,506円,時計60個は評価額22万5,000円)。 案件本文
昭和30(1)水戸地方裁判所・水戸家庭裁判所の各土浦支部,土浦簡易裁判所,岡山地方裁判所勝山支部,勝山簡易裁判所同上。職員が保管金を領得した(1事項5万円以上のものとして2事項162万8,292円)。 案件本文
昭和32(1)大阪高等裁判所同上。職員が刑事領置金を領得した(97万500円)。 案件本文
昭和32(2)名古屋高等裁判所金沢支部同上。職員が刑事領置金品を領得した(133万3,204円。ほかに腕時計1個)。 案件本文
昭和32(3)大阪地方裁判所同上。職員が前渡資金を領得した(799万3,392円)。 案件本文
昭和32(4)福岡地方裁判所同上。職員が歳入歳出外現金を領得した(247万7,200円)。 案件本文
昭和34(1)最高裁判所「経費の年度区分をみだしたもの」。岐阜地方裁判所・岐阜家庭裁判所の大垣支部合同庁舎の工事3件を年度内に完成したこととし,翌年4月に請負代金の全額計1,848万円を支出した。小切手の一部は支出官が保管し,完成後に交付した。 案件本文
昭和34(2)横浜地方裁判所「職員の不正行為により国に損害を与えたもの」。職員が鑑定料・証人旅費の請求書を偽造するなどして歳出金を領得した(130万2,760円)。 案件本文
昭和34(3)長崎地方裁判所同上。職員が競売事件の払渡請求書を偽造するなどして保管金を領得した(68万7,060円)。 案件本文
昭和35(1)最高裁判所「諸経費を過大に積算したため工事費が高価と認められるもの」。東京地方裁判所刑事部・東京簡易裁判所の合同庁舎の冷暖房設備第2期工事(契約額4,800万円)で諸経費を過大に積算し,工事費が約300万円高価となった。 案件本文

表中の「同上」は,直前の行と同じ件名である。
昭和31年度・昭和33年度は,目次と所管別の集計表に裁判所の掲記が見当たらない。昭和31年度目次・同所管別集計・昭和33年度目次・同所管別集計

昭和22年度の寄附による庁舎整備の案件は,裁判所と法務庁の分を合わせて掲記されており,裁判所が関係する(6)(8)(9)(10)のほか,法務・検察側の(4)(5)(7)(11)がある。
(11)の熊本少年審判所は,法務庁設置法で矯正総務局の所掌事務に掲げられた機関であり,家庭裁判所は昭和24年1月1日に家事審判所と少年審判所を統合して発足した。
昭和23年度(1)は裁判所分を含む所管横断の案件で,裁判所内の個別機関の内訳は案件本文から判別できない。昭和22年度目次・寄附案件本文・法務庁設置法(衆議院)・家庭裁判所70周年(裁判所)・昭和23年度(1)本文

第3 昭和36年度~令和6年度

この64年度のうち,裁判所所管の不当事項が掲記されたのは7年度で,報告番号は計15であり,案件本文で指摘された経理はいずれも下級裁判所のものである。
平成24年度の保管金の事案では,最高裁判所長官は,会計検査院法第27条に基づく報告と会計法第42条に基づく通知の主体として記載されている。年度別目次・平成24年度の案件本文

年度番号対象件名・指摘の概要・金額と出典
昭和57(1)那覇地方裁判所石垣支部・石垣簡易裁判所「職員の不正行為による損害を生じたもの」。会計係員が民事執行予納金などの保管金を領得した(損害額391万8,630円。昭和58年3月に全額返納)。 案件本文
平成2(1)~(7)(1)東京地裁,(2)水戸地裁,(3)宇都宮地裁,(4)広島地裁,(5)福岡地裁,(6)宇都宮家裁,(7)福岡家裁「旅費の経理が適正を欠くと認められるもの」。管内支部との事務打合せ等の出張で日帰りを1泊2日に付け増しするなどし,計1,620件,1,973万1,250円の支払が適正を欠いていた(平成3年11月末までに全額返納)。 案件本文
平成3(1)東京高等裁判所「職員の不正行為による損害が生じたもの」。職員が控訴状等にはり付けてあった未消印の収入印紙221枚を領得した(損害額2,210万円)。 案件本文
平成4(1)~(3)(1)浦和地裁,(2)福岡地裁小倉支部,(3)大分地裁同上。職員が(1)(3)で保管金を,(2)で鑑定料等の前渡資金を領得した((1)108万1,377円,(2)1,002万7,772円,(3)105万円。いずれも全額返納)。 案件本文
平成10(1)横浜地方裁判所同上。職員が換金目的で受領した郵便切手・収入印紙の代金を破産予納金から支払わせ,保管金を領得した(損害額736万8,666円)。 案件本文
平成21(2)前橋地方裁判所「清掃業務請負契約において、清掃員の人工数を誤って算出したため、契約額が割高となっていたもの」。予定価格の算定で人工数を過大に算出し,契約額2,572万5,000円が約150万円割高となった。 案件本文
平成24(1)前橋地方裁判所「職員の不正行為による損害が生じたもの」。職員が民事執行予納金等の保管金を領得した(損害額1,198万円)。 案件本文

表中の「同上」は,直前の行と同じ件名である。
平成21年度の(1)は,参議院の案件である。

第4 令和7年度の最高裁RoootS

年度対象件名・指摘の概要・金額と出典
令和7最高裁判所e事件管理システム「RoootS」の設計・開発契約と改修契約の2契約について,提出された成果物が仕様を満たしていないのに検査に合格したとする検査調書を作成して契約金額を支払い,会計法令に違反したとされた(1件,不当金額13億8,082万8,790円)。 案件本文45~47頁

会計検査院の令和7年度「不当事項」の目次(冊子3頁)で,「裁判所」に掲げられているのはこの1件であり,2契約の指摘を一つの案件にまとめている。
公表資料の「特徴的な案件」の一覧では6番目に掲げられているが,この「6」は一覧の中の項番である。令和7年度「不当事項」目次・案件本文(冊子3・45~47頁)・令和7年度の特徴的な案件(会計検査院)

結合テストの終了条件やマニュアルの内容,改修契約の成果物が支払時にどのような状態だったかは,次の記事で契約ごとに整理した。最高裁RoootSの検査と支払―会計検査院が13億8082万円余を不当とした理由(AI作成)

第5 平成19年度など別区分の報告

次の表は,裁判所に関する記載のうち,決算検査報告で「不当事項」とは別の区分に置かれた例である。
平成24年度には,前橋地方裁判所の保管金の不当事項と,裁判所の会計経理等に関する国会からの検査要請への報告の両方がある。

年度報告区分主題と出典
昭和26是正させた事項(3)東京地方裁判所の没取金等の処理の遅延。 本文
平成14本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項電話等の割引制度の利用による通話料の節減。 本文
平成16本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項家庭裁判所の常勤医師の研修等に係る勤務時間の管理と給与の支払。 本文
平成17本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項自動車等を使用して通勤する職員等の通勤手当の認定。 本文
平成18本院の指摘に基づき当局において改善の処置を講じた事項最高裁判所が裁判員制度広報用映画の制作契約で取得した35mmフィルムの利用。 本文
平成19国会及び内閣に対する報告裁判員制度に係る広報業務の実施状況(検査対象は最高裁判所と法務省)。 本文
平成24国会からの検査要請事項に関する報告裁判所における会計経理等。最高裁判所の情報システムに係る契約も扱う。 本文

第6 最高裁自身への指摘が65年度ぶりとなる理由

昭和35年度の案件では,工事の対象施設は東京地方裁判所刑事部と東京簡易裁判所の合同庁舎であり,工事を発注したのは最高裁判所である。
令和7年度のRoootSでも,契約を締結し,検査・支払を行ったのは最高裁判所である。昭和35年度の案件本文・令和7年度の案件本文45~47頁

その間の昭和36年度~令和6年度の64年度に「不当事項」として掲記された裁判所の案件は,いずれも下級裁判所の経理に関するものである。
平成19年度などの最高裁判所を扱った報告は,「不当事項」とは別の区分に置かれている。
このため,最高裁判所自身の会計経理が「不当事項」に掲記されたのは,昭和35年度(1960年度)以来,令和7年度(2025年度)が65年度ぶりとなる。年度別目次・平成19年度の案件本文