第1 有料化の意味
家庭ごみ有料化とは,市町村が一般廃棄物処理について,指定袋の販売等を通じ,排出量に応じた手数料を住民から徴収する仕組みである。目的は単なる歳入確保ではなく,排出抑制,再生利用,負担の公平化,住民の意識改革及び処理費用・環境負荷の低減にある。
有料化の当否は,「ごみ処理には税金を使っているのに二重負担ではないか」という問いだけでは決まらない。一般財源で負担する範囲,排出量に応じて手数料を求める範囲,低所得世帯・乳幼児・介護等への配慮及び手数料収入の使途を一体として説明する必要がある。
第2 廃棄物処理法上の位置付け
廃棄物処理法6条は,市町村に一般廃棄物処理計画の策定を求め,同法6条の2第1項は,市町村に区域内の一般廃棄物を生活環境上の支障が生じないうちに処理する責任を負わせる。同法4条1項は,市町村に減量のための住民活動促進と効率的運営を求める。
地方自治法227条は,特定の者のためにする事務について手数料を徴収できる旨を定める。実際の対象,料金,減免,徴収方法及び使途は,市町村の条例と一般廃棄物処理計画で確認する。
第3 家庭ごみと事業系一般廃棄物の違い
家庭ごみと事業系一般廃棄物はいずれも産業廃棄物以外の一般廃棄物であり得るが,責任の置き方は同じではない。事業者は廃棄物処理法3条1項により,事業活動に伴う廃棄物を自らの責任で適正処理しなければならない。
一方,家庭ごみについては,市町村が個々の住民に代わって継続的・安定的な処理を担う。有料化しても,家庭ごみが事業系ごみと同じ自己処理責任へ転化するわけではなく,市町村の処理責任も消えない。
事業系一般廃棄物では,許可業者への委託,処理施設への直接搬入及び事業系指定袋等の制度が用いられることがある。家庭用集積所への混入を防ぐため,排出区分,収集方法及び料金体系を明確にする必要がある。
第4 期待される効果
1 排出抑制と再生利用
排出量に応じて負担が増える料金体系は,分別,買物時の選択,食品ロス削減,再使用及び資源回収への動機を生む。ただし,料金が低すぎれば行動変容が乏しく,高すぎれば不適正排出を招き得る。
2 負担の公平性
全額を一般財源で賄う方式では,排出量の多寡にかかわらず税負担となる。排出量に応じた手数料は受益・原因に応じた公平性を高め得るが,世帯人数,乳幼児,介護用品,医療上の事情など本人が抑制しにくい排出への減免や袋配布を検討する必要がある。
3 費用の可視化と説明責任
有料化は,収集・焼却・最終処分に必要な費用を住民が意識する契機となる。市町村側にも,費用,収入,使途及び減量実績を継続して説明する責任が生じる。
第5 料金制度の設計
環境省の手引きは,排出量単純比例型,超過量比例型,二段階比例型,定額制従量制併用型及び負担補助組合せ型等を示す。制度が簡明で徴収費用が低いか,限界的な追加排出に価格シグナルが働くか,住民間の公平を確保できるかを比較する。
指定袋方式では,袋価格に手数料を含める範囲,製造・流通費,販売店手数料及び偽造対策を明確にする。粗大ごみ,直接搬入,資源物及び事業系ごみは別体系になることが多いため,家庭ごみの袋価格だけを見て制度全体を評価すべきではない。
第6 不法投棄・不適正排出への対策
有料化には,無指定袋,分別違反,家庭用集積所への事業系ごみ混入,近隣自治体への越境排出及び不法投棄の懸念がある。導入前の実態調査,住民・事業者への説明,排出ルールの見える化,集積所管理者との連携,監視,違反袋への対応及び通報窓口を準備する。
不適正排出対策は取締りだけでは足りない。ごみ減量相談,資源回収の拡充,生ごみ対策,再使用の機会及び正規の事業系収集ルートを整備し,適法な選択肢を利用しやすくする必要がある。
第7 導入後の評価
導入前後のごみ量だけでなく,人口・世帯数,事業活動,観光客数,資源物への移行,近隣自治体への流出,収集・処理費,手数料収入及び不法投棄件数を比較する。開始直後の減量が続くとは限らないため,定期的に料金水準,減免,袋容量及び併用施策を見直す。
第8 出典
①環境省「一般廃棄物処理有料化の手引き及び事例集」
②環境省「一般廃棄物処理有料化の手引き概要版」
③e-Gov法令検索「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」
④e-Gov法令検索「地方自治法」