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日弁連の懲戒手続―異議申出・綱紀審査・審査請求の違い(AIリライト)

第1 日弁連の綱紀委員会

弁護士会の懲戒手続の結論に不服がある懲戒請求者は,所定の場合に日弁連へ異議を申し出ることができる。
どの機関が審査するかは,原弁護士会の懲戒委員会の審査に付された事案かどうか等によって分かれる。
委員会の判断である「議決」と,弁護士会又は日弁連がその議決に基づいて行う「決定」「裁決」は区別する必要がある。

本記事の制度説明と提出方法は,令和8年10月15日現在の弁護士法及び日弁連の公式案内を基準とする。
最初の懲戒請求は対象弁護士等の所属弁護士会に行い,その流れと綱紀委員会の役割は弁護士会の懲戒手続を参照されたい。

1 綱紀委員会段階の不懲戒決定にはどう対応するか

原弁護士会が綱紀委員会の議決に基づき対象弁護士等を懲戒しない旨の決定をした場合,懲戒請求者は日弁連に異議を申し出ることができる(弁護士法58条4項,64条1項)。
原弁護士会の懲戒委員会の審査に付されていない事案では,日弁連はその綱紀委員会に異議の審査を求める(弁護士法64条の2第1項)。

日弁連の綱紀委員会が,原弁護士会の懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当と議決したときは,日弁連は原決定を取り消して事案を原弁護士会へ送付する(同条2項)。
原弁護士会は,送付を受けた事案についてその懲戒委員会に審査を求めなければならない(同条3項)。

異議の申出を却下又は棄却することを相当とする議決があった場合は,日弁連がその議決に基づいて却下又は棄却の決定をする(同条5項)。
綱紀委員会自体が不懲戒又は異議却下・棄却の決定をするという意味ではない。

2 委員の資格と選任

日弁連の綱紀委員会の委員は,弁護士,裁判官,検察官及び学識経験のある者の中から日弁連の会長が委嘱する。
裁判官は最高裁判所,検察官は検事総長の推薦に基づき,その他の委員は日弁連の総会の決議に基づいて委嘱される(弁護士法70条の3第2項)。
任期は2年であり,補欠の委員の任期は前任者の残任期間である。

委員選任については,日弁連会則34条3号が総会の権限を,同59条6号が総会で委任された事項に関する理事会の権限を定めている。
特定年度の委任内容はその年度の総会決議で確認すべきものであり,これらの条項だけから毎年の白紙委任を認定することはできない。

3 異議申出の方法

不懲戒決定又は処分が不当に軽いことを理由とする異議申出は,弁護士会から決定又は処分の通知を受けた日の翌日から起算して3か月以内に行う(弁護士法64条2項)。
相当の期間内に手続を終えないことを理由とする異議申出には,この3か月の制限は適用されない。

日弁連の異議申出の公式案内では,対象弁護士等が1人の場合は正本1通及び副本2通,計3通を提出し,対象者が1人増えるごとに副本を1通追加する。
新たな資料も同じ通数を用意し,提出方法は郵便,信書便又は持参とされ,ファクシミリ又は電子メールによる申出は認められていない。
既に原弁護士会へ提出した証拠書類等は,再提出する必要がない。

郵便は消印有効であり,法で定める一定の信書便は通信日付印有効と案内されている。
法64条3項も所定の郵便・信書便による送付日数を期間に算入しないとしており,一律に到着日だけで期限内かを判断するものではない。
期限が休日等に当たる場合の扱いは,通知の教示と公式案内を確認する必要がある。

手続の遅延については,相当期間異議の公式案内を参照し,申立日,これまでの進行及び異議の理由を整理する。

日弁連のどの機関が扱うかは,所属弁護士会の懲戒委員会による審査を経た事案かどうか等によって分かれる。

申立て等主な審査機関
所属弁護士会の懲戒委員会の審査に付されていない事案に関する異議申出日弁連綱紀委員会(弁護士法64条の2)
所属弁護士会の懲戒委員会の審査に付された事案に関する異議申出日弁連懲戒委員会(同法64条の5)
懲戒を受けた弁護士等による審査請求日弁連懲戒委員会(同法59条)

綱紀審査会への申出は,日弁連綱紀委員会の議決に基づく異議の却下又は棄却について,弁護士法64条の3が定める場合に認められる。
すべての不服申立てを綱紀審査会が扱うわけではない。

第2 日弁連の綱紀審査会

1 綱紀審査会へ申し出ることができる場合と期間

綱紀審査の申出ができるのは,原弁護士会が綱紀委員会の議決に基づいてした不懲戒決定に対する異議を,日弁連が却下又は棄却した場合である。
原弁護士会の懲戒委員会の審査に付された事案の異議,又は相当期間内に手続を終えないことについての異議は,この制度の対象ではない(弁護士法64条の3,日弁連の綱紀審査申出の案内)。

申出期間は,日弁連から異議の却下又は棄却決定の通知を受けた日の翌日から起算して30日以内である。
所定の郵便・信書便による送付日数と休日の取扱いもあるため,受領日を記録し,通知の教示と公式案内で期限及び提出方法を確認する。

綱紀審査会は,原弁護士会の懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当と認めるときは,出席委員の3分の2以上の多数でその旨を議決する(弁護士法64条の4第1項)。
日弁連は,その議決に基づき,自らの異議却下・棄却決定と原弁護士会の不懲戒決定を取り消して,事案を原弁護士会へ送付する(同条2項)。
送付を受けた原弁護士会は,その懲戒委員会に事案の審査を求めなければならない(同条3項)。
却下又は棄却の場合も,綱紀審査会の議決に基づいて日弁連が決定する(同条4項・5項)。
申出資格の確認,期限の特例,申出書,証拠及び閲覧の取扱いは,綱紀審査会の要件・期限・申出書で詳しく説明する。

2 制度創設の経緯

綱紀審査会は,平成15年7月25日法律第128号(平成16年4月1日施行)による弁護士法改正により日弁連に設置された機関であり,法曹三者(裁判官,検事及び弁護士)以外の11人の学識経験者で構成される(弁護士法71条の2及び71条の3)。この制度創設の直接の契機は,平成13年6月12日付けの司法制度改革審議会意見書(第3・6(2)「弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備」)が,綱紀・懲戒手続の透明化・迅速化・実効化の方策の一つとして,「懲戒請求者が綱紀委員会の議決に対する異議申出を棄却・却下された場合に,国民が参加して構成される機関に更なる不服申立ができる制度の導入」を求めたことにある。同意見書は,これと併せて,綱紀委員会等の委員構成の見直し(弁護士以外の委員の増加)や,綱紀委員会の弁護士以外の委員への評決権の付与も求めていた。

3 委員の資格と選任

日弁連の綱紀審査会は委員11人で組織され,委員は弁護士,裁判官,検察官及びこれらであった者を除く学識経験者の中から,日弁連の会長が日弁連の総会の決議に基づいて委嘱する(弁護士法71条の3第1項)。
任期は2年であり,補欠の委員の任期は前任者の残任期間である。
総会から理事会への委任の有無及び範囲は,特定年度の決議を確認して判断する。
委員の定数は弁護士法71条の2,予備委員は同法71条の5に定められている。

第3 日弁連の懲戒委員会

1 懲戒請求者からの異議申出

原弁護士会が,懲戒委員会の審査を経て対象弁護士等を懲戒しない旨の決定をした場合,又は弁護士会の処分が不当に軽いと考える場合,懲戒請求者は日弁連へ異議を申し出ることができる(弁護士法64条)。
原弁護士会の懲戒委員会の審査に付された事案では,日弁連の懲戒委員会が異議を審査する(弁護士法64条の5第1項)。
この経路の異議審査後に,綱紀審査会へ綱紀審査を申し出ることはできない。

懲戒委員会が,原決定の取消しと懲戒又は処分の変更を相当と議決した場合には,日弁連がその議決に基づいて原決定又は原処分を取り消し,自ら懲戒する(同条2項・4項)。
異議の申出を却下又は棄却するときも,懲戒委員会の議決に基づいて日弁連が決定する(同条5項)。
例えば,依頼者に綱紀委員会の議決書をインターネット上で公開してもよいと助言した弁護士について,神奈川県弁護士会は懲戒委員会の議決に基づき懲戒しない旨の決定をしたが,懲戒請求者の異議の申出を受けた日弁連は,この決定を取り消して自ら戒告とした(2026年8月2日効力発生,自由と正義2026年9月号68頁~69頁)。
この事例は,懲戒請求の議決書をネットで公開してよいか―弁護士が懲戒された例と懲戒請求の働きかけで詳しく紹介している。

相当期間内に手続を終えないことについての異議も,原事案が懲戒委員会の審査に付されたものかによって担当機関が分かれる(弁護士法64条の2第4項,64条の5第3項)。
各委員会による議決の後,日弁連が原弁護士会に速やかな手続進行等を命じる場合がある。

決定又は処分に対する異議の期間・通数・提出方法は,第1の3を参照されたい。
日弁連の懲戒委員会が議決したときは,速やかに理由を付した議決書を作成しなければならない(弁護士法67条の2)。

2 対象弁護士等からの審査請求

弁護士会が懲戒委員会の議決に基づいて対象弁護士等を懲戒した場合,処分を受けた対象弁護士等は,日弁連に対し,審査請求ができる(弁護士法59条1項)。
審査請求があった場合,日弁連は,懲戒委員会において弁護士会の懲戒処分の当否を審査した上で,議決に基づき,審査請求を却下し若しくは棄却し,又は弁護士会の懲戒処分を取り消し若しくは変更する裁決をする(行政不服審査法45条,46条1項本文参照)。
日弁連は,必要があると認めるときは,審査請求人からの申立てにより,又は職権で,懲戒処分の効力を停止することができる(懲戒委員会及び懲戒手続に関する規程46条1項)。
これは懲戒請求者による異議申出・綱紀審査申出とは申立人も手続も異なる。
効力停止を含む手続の詳細は,弁護士の懲戒処分に対する審査請求と取消訴訟を参照されたい。

対象弁護士等は,弁護士会の懲戒処分に対して直接,取消訴訟を提起することはできず(弁護士法61条2項参照),不服がある場合,必ず審査請求により争う必要がある。また,日弁連は,審査請求人に不利益に単位弁護士会の懲戒処分を変更することはできない(行政不服審査法48条)。

実際にこの審査請求によって原処分が取り消された例として,Xへの投稿を理由に大阪弁護士会から戒告を受けた弁護士が日弁連に審査請求をし,令和4年5月,日弁連がこれを取り消して懲戒しない旨の裁決をした事案がある。当該弁護士は,裁決書の一部を次のとおりXに掲載している。

なお,この審査請求の手続の在り方をめぐっては,処分庁である単位弁護士会を手続に関与させる対審制を採るべきだとする意見もある。

3 委員の資格と選任

日弁連の懲戒委員会の委員は,弁護士,裁判官,検察官及び学識経験のある者の中から日弁連の会長が委嘱する。
裁判官は最高裁判所,検察官は検事総長の推薦に基づき,その他の委員は日弁連の総会の決議に基づいて委嘱される(弁護士法66条の2第2項)。
任期は2年であり,補欠の委員の任期は前任者の残任期間である。

日弁連会則69条の2が定める委員の定数は,弁護士8人,裁判官2人,検察官2人及び学識経験者3人の計15人であり,同じ資格を有する同数の予備委員が置かれる。
選任の詳細と部会の構成は,懲戒委員会のメンバーの記事で説明している。

本記事の既掲資料である平成29年10月31日付け司法行政文書不開示通知書には,最高裁判所が平成29年度の日弁連懲戒委員会の名簿を保有していない旨が記されている。
この過去の特定名簿の保有に関する回答から,法律が定める最高裁判所の推薦権限の有無や,現在の委員構成まで判断することはできない。

4 「議決」「決定」「裁決」と議決書の読み方

委員会が審査して示す判断は「議決」,弁護士会又は日弁連が議決に基づいて外部に示す判断は「決定」又は「裁決」と整理すると,書面相互の関係を理解しやすい。弁護士法67条の2が理由を付した議決書の作成を義務付けている主体は,日弁連の懲戒委員会である。

議決書に反対意見又は少数意見の記載がないことだけから,全員一致であったと断定することはできない。個別例として,兵庫県弁護士会副会長経験者に対する懲戒請求-日弁連の異議申出棄却と三つの争点(AI作成)を参照されたい。

第4 懲戒手続に関する日弁連の規程

日弁連は,懲戒手続について,次の6つの規程を定めている。

①日弁連会則(昭和24年7月9日制定,昭和24年9月1日施行)68条ないし73条
②綱紀委員会及び綱紀手続に関する規程(平成15年11月12日会規第57号,平成16年4月1日施行)
③綱紀審査会及び綱紀審査手続に関する規程(平成15年11月12日会規第58号,平成16年4月1日施行)
④懲戒委員会及び懲戒手続に関する規程(平成15年11月12日会規第59号,平成16年4月1日施行)
⑤懲戒処分の公告及び公表等に関する規程(平成15年11月12日会規第60号,平成16年4月1日施行)
⑥弁護士会の懲戒の通知に関する規程(平成15年11月12日会規第61号,平成16年4月1日施行)

このうち②③④⑥の会規は,令和3年6月11日までに複数回の改正を経ており,⑤の会規も平成26年12月5日に改正されている。弁護士の懲戒処分は,官報をもって公告されるほか(弁護士法64条の6第3項),日弁連の機関雑誌(同会則7条参照)でも公告される(同会則68条)。日弁連の機関雑誌は「自由と正義」という月刊誌であり,一般にも販売されている。⑥の規程は,弁護士法64条の6第2項及び64条の7第1項に基づく,弁護士会の懲戒の処分及び手続に関する日弁連への通知事項を定めたものである。

第5 関連記事

・ 弁護士の懲戒事由
・ 弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」の具体例
・ 弁護士の懲戒請求権が何人にも認められていることの意義
・ 弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めた弁護士職務基本規程の条文
・ 弁護士に対する懲戒請求事案集計報告(平成5年以降の分)
→ 令和元年の審査請求の新受件数は30件であり,原処分取消は3件,原処分変更は1件であった。直近の令和7年(2025年)は新受32件,原処分取消2件,原処分変更3件である(出典は第6の3)。
・ 弁護士会の懲戒手続
・ 弁護士の戒告,業務停止,退会命令及び除名,並びに第二東京弁護士会の名簿登録拒否事由
・ 弁護士の業務停止処分に関する取扱い
・ 弁護士の懲戒処分の公告,通知,公表及び事前公表
・ 日弁連会則

第6 出典・参考資料

1 法令

①弁護士法(昭和24年法律第205号)56条,59条,61条,64条,64条の2から64条の7まで,66条の2,66条の4,67条の2,70条の3,70条の5,71条の2,71条の3,71条の5(e-Gov法令検索)
②行政不服審査法(平成26年法律第68号)45条,46条,48条(e-Gov法令検索)

2 会則・会規

①日弁連会則(昭和24年7月9日制定,昭和24年9月1日施行。日本弁護士連合会)7条,34条3号,59条6号,68条ないし73条
②綱紀委員会及び綱紀手続に関する規程(平成15年11月12日会規第57号,令和3年6月11日改正。日本弁護士連合会)
③綱紀審査会及び綱紀審査手続に関する規程(平成15年11月12日会規第58号,令和3年6月11日改正。日本弁護士連合会)
④懲戒委員会及び懲戒手続に関する規程(平成15年11月12日会規第59号,令和3年6月11日改正。日本弁護士連合会)46条1項
⑤懲戒処分の公告及び公表等に関する規程(平成15年11月12日会規第60号,平成26年12月5日改正。日本弁護士連合会)
⑥弁護士会の懲戒の通知に関する規程(平成15年11月12日会規第61号,令和3年6月11日改正。日本弁護士連合会)

3 公的資料

日弁連の懲戒制度,相当期間異議の方法及び綱紀審査申出の方法も,制度の分岐と提出方法の確認に用いた。
これらの案内の確認日は,令和8年10月15日である。

①日弁連「懲戒請求事案に関する異議の申出の方法について」(日本弁護士連合会)
②司法制度改革審議会「司法制度改革審議会意見書―21世紀の日本を支える司法制度―」(平成13年6月12日)第3・6(2)「弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備」
③日弁連「2025年 懲戒請求事案集計報告」(日本弁護士連合会,2026年)表2-1「審査請求事案の内訳(日弁連懲戒委員会)」
④最高裁判所事務総長「平成29年10月31日付け司法行政文書不開示通知書」(平成29年度日弁連懲戒委員会名簿について)