第1 弁護士会の懲戒委員会のメンバーは誰か
弁護士会の懲戒委員会の委員は,弁護士,裁判官,検察官及び学識経験のある者の中から,会長が委嘱する。
弁護士だけで構成する委員会ではなく,日弁連の懲戒委員会についても,同じ四つの資格区分が法律に定められている(弁護士法66条の2)。
ここで扱うのは,弁護士法に基づいて各弁護士会と日本弁護士連合会に置かれる懲戒委員会である。
企業の従業員に対する懲戒や,学校その他の団体の懲戒を扱う委員会とは,根拠と役割が異なる。
本記事は,令和8年10月15日に確認した弁護士法及び日弁連が公表している会則に基づき,委員の構成,選任,人数及び他の機関との違いを説明する。
懲戒委員会は,懲戒の要否及び処分内容を審査して議決する機関である。
懲戒処分をする主体は,その議決に基づいて判断する弁護士会又は日弁連であり,委員会そのものではない。
懲戒請求から決定までの手続は,弁護士会の懲戒委員会と懲戒手続の記事で説明している。
第2 委員は誰が選ぶのか
1 単位弁護士会の委員
各地の弁護士会の懲戒委員は,その弁護士会の会長が委嘱する。
裁判官・検察官の委員と,弁護士・学識経験者の委員では,委嘱の前提となる推薦又は決議が異なる(弁護士法66条の2第1項)。
| 委員の区分 | 委嘱の前提 |
|---|---|
| 裁判官 | その地の高等裁判所又は地方裁判所の推薦 |
| 検察官 | その地の高等検察庁検事長又は地方検察庁検事正の推薦 |
| 弁護士・学識経験者 | その弁護士会の総会の決議 |
懲戒請求者又は対象弁護士等が,自分の事件を担当する委員を指名する仕組みではない。
委員の選任と,個別事件をどの委員又は部会が担当するかは,区別して確認する必要がある。
2 日弁連の委員
日弁連の懲戒委員も日弁連の会長が委嘱するが,裁判官・検察官の推薦元は,単位弁護士会の場合と異なる。
裁判官は最高裁判所,検察官は検事総長の推薦に基づき,弁護士及び学識経験者は日弁連の総会の決議に基づいて委嘱される(弁護士法66条の2第2項)。
したがって,単位弁護士会についての「その地の高等裁判所・地方裁判所」等の説明を,そのまま日弁連の委員選任に当てはめることはできない。
日弁連の綱紀委員会についても,裁判官・検察官の推薦元は最高裁判所・検事総長である(同法70条の3第2項)。
3 任期と委員長
懲戒委員の任期は2年であり,補欠の委員は前任者の残任期間を務める(弁護士法66条の2第3項)。
委員長は委員の互選によって定める(同法66条の3)。
第3 懲戒委員会は何人で構成されるのか
1 法律上の最低人数と各弁護士会の定数
弁護士法66条1項は,懲戒委員会を4人以上の委員で組織し,具体的な人数を各弁護士会又は日弁連の会則で定めるとしている。
全国の懲戒委員会が一律に4人で構成されるという意味ではない。
特定の弁護士会の人数を知りたい場合は,その会の会則に定める定数と,調べたい時点の委員名簿を確認することになる。
定数,実際に就任している人数,個別事件を担当する部会の人数は,同じものではない。
2 日弁連の定数は15人
令和8年10月15日に日弁連が公表している日本弁護士連合会会則69条の2では,懲戒委員会の委員は,弁護士8人,裁判官2人,検察官2人及び学識経験者3人の合計15人とされている。
同じ資格を有する同数の予備委員も置かれる。
| 資格区分 | 委員の定数 |
|---|---|
| 弁護士 | 8人 |
| 裁判官 | 2人 |
| 検察官 | 2人 |
| 学識経験者 | 3人 |
| 合計 | 15人 |
これは会則が定める人数であり,特定の日に誰が就任していたかを示す名簿そのものではない。
過去の記事や名簿の人数を参照するときも,対象年度と,委員・予備委員の区別を確認する必要がある。
3 予備委員と部会
弁護士法66条の4は,懲戒委員と同じ資格を有する者の中から予備委員を置き,委員に故障があるときは,その委員と同じ資格の予備委員が職務を行うことを定めている。
予備委員は,委員と常時一緒に議決するための追加定員という意味ではない。
懲戒委員会には,事件を扱う部会を置くことができる。
部会には,弁護士,裁判官,検察官及び学識経験者のそれぞれ1人以上を含めなければならず,部会の議決を懲戒委員会の議決とすることができる(弁護士法66条の5)。
日弁連では,会則69条の4が,部会を弁護士4人,裁判官1人,検察官1人及び学識経験者1人の計7人で組織すると定めている。
この部会の人数と,懲戒委員会全体の15人を取り違えないことが大切である。
第4 綱紀委員会・綱紀審査会とはどう違うのか
懲戒手続には,名称の似た三つの機関が登場する。
懲戒委員会と綱紀委員会は同じ四つの資格区分から委員を委嘱するが,担当する判断が異なり,綱紀審査会は委員の資格も異なる。
| 機関 | 主な役割と構成 |
|---|---|
| 綱紀委員会 | 懲戒事案の調査等を担当する。弁護士・裁判官・検察官・学識経験者から構成される。 |
| 懲戒委員会 | 懲戒の要否・処分内容の審査等を担当する。弁護士・裁判官・検察官・学識経験者から構成される。 |
| 綱紀審査会 | 日弁連に置かれ,法律の定める要件の下で綱紀審査を行う。弁護士・裁判官・検察官及びこれらの職にあった者を除く学識経験者11人で構成される。 |
所属弁護士会での通常の手続では,綱紀委員会が調査し,懲戒委員会に審査を求めるかどうかを議決する。
「審査相当」は,懲戒委員会の審査に進めるとの判断であり,その時点で懲戒処分が決まったという意味ではない(弁護士法58条)。
日弁連の綱紀委員会・懲戒委員会は,法律が定める異議申出等も扱う。
綱紀審査会を含む日弁連の各機関の担当範囲は,日弁連の懲戒手続の記事で詳しく説明している。
綱紀審査会に関する根拠は,弁護士法64条の3・64条の4及び71条の2・71条の3である。
第5 委員名簿を確認するときの注意点
特定の懲戒委員会のメンバーを確認する場合には,機関名だけでなく,単位弁護士会か日弁連か,対象年度,委員の資格区分,委員と予備委員の別を確認する。
過去の名簿を,現在の構成又は個別事件の担当者の証拠としてそのまま扱うことはできない。
裁判官・検察官・学識経験者が加わることは法律上の構成要件であるが,資格区分や人数だけから,個別事件の判断が公正であるかどうかまで結論付けることはできない。
また,名簿の閲覧・提供の可否や,個別事件の担当委員の通知方法は,構成を定める条文とは別に,関係する会の規則及び案内に即して確認する必要がある。
第6 関連記事
弁護士会の懲戒委員会と懲戒手続では,綱紀委員会の調査,懲戒委員会の審査,弁護士会の決定及び日弁連への異議申出の流れを整理している。
弁護士の懲戒制度の概要では,制度の目的,懲戒事由,処分の種類及び不服申立ての全体像を説明している。
弁護士が懲戒請求を受けたときの初動と綱紀委員会への答弁書の書き方(AI作成)では,通知の確認,期限管理及び争点と証拠の整理を扱っている。
第7 出典
弁護士法58条,65条,66条から66条の5まで,70条の2,70条の3,71条の2及び71条の3。
委員の資格,選任及び任期は,単位弁護士会と日弁連の規定を区別して参照した。
日本弁護士連合会会則69条の2及び69条の4。
日弁連公表PDFの実頁19頁,冊子の印刷頁37・38頁に,懲戒委員会の定数及び部会の構成が記載されている。