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日弁連の懲戒手続(AIリライト)

第1 日弁連の綱紀委員会

弁護士会が行う一次的な懲戒手続に対し,日弁連は,異議の申出があった場合に,綱紀委員会,綱紀審査会又は懲戒委員会という3つの機関のいずれかで審査を行う。懲戒請求者が弁護士会の綱紀委員会の判断に不服がある場合は綱紀委員会(本項)及び綱紀審査会(第2)が,懲戒請求者又は対象弁護士等が弁護士会の懲戒委員会の判断に不服がある場合は日弁連の懲戒委員会(第3)が,それぞれ担当する。

1 異議の申出に対する議決

弁護士会の「綱紀」委員会が対象弁護士を懲戒しない旨の決定をした場合,懲戒請求者は日弁連に対し異議の申出ができ(弁護士法64条1項前段),異議の申出があった場合,日弁連は,綱紀委員会において異議の審査を行う(同法64条の2第1項)。日弁連の綱紀委員会は,審査の結果,①弁護士会の懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当とする旨の議決をするか(同条2項),②異議の申出を却下又は棄却する旨の議決をする(同条5項)。①の議決があったときは,日弁連は当該議決に基づき原弁護士会の不処分決定を取り消して事案を原弁護士会に送付し,原弁護士会はその懲戒委員会に事案の審査を求めなければならない(同条3項)。

2 委員の資格と選任

日弁連の綱紀委員会の委員は,弁護士,裁判官,検察官及び学識経験のある者の中から,それぞれ日弁連の会長が委嘱する(弁護士法70条の3第2項前段)。この場合,①裁判官又は検察官である委員はその地の高等裁判所若しくは地方裁判所又は高等検察庁検事長若しくは地方検察庁検事正の推薦に基づき,②その他の委員は日弁連の総会の決議に基づき,委嘱しなければならない(同項後段,同法66条の2第2項後段)。委員の任期は2年であり(同法70条の3第3項),予備委員の選任(同法70条の5)も含めて,毎年5月の定時総会の決議(日弁連会則34条3号)において,選任に関する事項は理事会に白紙委任されている(同会則59条6号参照)。

3 異議申出の方法

異議申出の方法については,日弁連HPの「懲戒請求事案に関する異議の申出の方法について」が参考になる。異議申出をする場合,正本1通及び副本2通の合計3通の異議申出書を日弁連に提出する。

第2 日弁連の綱紀審査会

1 綱紀審査の申出とその議決

異議の申出の却下又は棄却に対して不服がある場合,懲戒請求者は,日弁連に対し,綱紀審査会による綱紀審査の申出ができる(弁護士法64条の3)。日弁連の綱紀審査会は,審査の結果,①弁護士会の懲戒委員会に事案の審査を求めることを相当とする旨の議決をするか(同法64条の4第1項),②綱紀審査の申出を却下又は棄却する旨の議決をする(同条4項及び5項)。①の議決は,出席した委員の3分の2以上の多数によらなければならない(同条1項後段)。

2 制度創設の経緯

綱紀審査会は,平成15年7月25日法律第128号(平成16年4月1日施行)による弁護士法改正により日弁連に設置された機関であり,法曹三者(裁判官,検事及び弁護士)以外の11人の学識経験者で構成される(弁護士法71条の2及び71条の3)。この制度創設の直接の契機は,平成13年6月12日付けの司法制度改革審議会意見書(第3・6(2)「弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備」)が,綱紀・懲戒手続の透明化・迅速化・実効化の方策の一つとして,「懲戒請求者が綱紀委員会の議決に対する異議申出を棄却・却下された場合に,国民が参加して構成される機関に更なる不服申立ができる制度の導入」を求めたことにある。同意見書は,これと併せて,綱紀委員会等の委員構成の見直し(弁護士以外の委員の増加)や,綱紀委員会の弁護士以外の委員への評決権の付与も求めていた。

3 委員の資格と選任

日弁連の綱紀審査会の委員は,日弁連の会長が日弁連の総会の決議に基づき委嘱する(弁護士法71条の3第1項)。委員の任期は2年であり(同条2項),予備委員の選任(同法71条の5)も含めて,毎年5月の定時総会の決議(日弁連会則34条3号)において,選任に関する事項は理事会に白紙委任されている(同会則59条6号参照)。

第3 日弁連の懲戒委員会

1 懲戒請求者からの異議申出

弁護士会の懲戒委員会が対象弁護士を懲戒しない旨の決定をした場合,懲戒請求者は,日弁連に対し,異議の申出ができ(弁護士法64条1項前段),弁護士会がした懲戒の処分が不当に軽い場合も,同様に異議の申出ができる(同項後段)。いずれの異議の申出も,当該事案が原弁護士会の懲戒委員会の審査に付されたものであるときは,日弁連は,懲戒委員会において異議の審査を行う(同法64条の5第1項)。日弁連の懲戒委員会は,審査の結果,①弁護士会の懲戒しない旨の決定を取り消して対象弁護士を懲戒するか(同条2項),②弁護士会の懲戒の処分を取り消してより重い処分に変更するか(同条4項),③異議の申出を却下又は棄却する(同条5項)。日弁連が議決をしたときは,速やかに,理由を付した議決書を作成しなければならない(同法67条の2)。異議申出の方法は,前記第1の3と同様であり,正本1通及び副本2通の合計3通の異議申出書を提出する。

2 対象弁護士等からの審査請求

弁護士会の懲戒委員会が対象弁護士等を懲戒する旨の決定をした場合,対象弁護士は,日弁連に対し,審査請求ができる(弁護士法59条1項)。審査請求があった場合,日弁連は,懲戒委員会において弁護士会の懲戒処分の当否を審査した上で,議決に基づき,審査請求を却下し若しくは棄却し,又は弁護士会の懲戒処分を取り消し若しくは変更する裁決をする(行政不服審査法45条,46条1項本文参照)。日弁連は,必要があると認めるときは,審査請求人からの申立てにより,又は職権で,懲戒処分の効力を停止することができる(懲戒委員会及び懲戒手続に関する規程46条1項)。

対象弁護士等は,弁護士会の懲戒処分に対して直接,取消訴訟を提起することはできず(弁護士法61条2項参照),不服がある場合,必ず審査請求により争う必要がある。また,日弁連は,審査請求人に不利益に単位弁護士会の懲戒処分を変更することはできない(行政不服審査法48条)。

実際にこの審査請求によって原処分が取り消された例として,Xへの投稿を理由に大阪弁護士会から戒告を受けた弁護士が日弁連に審査請求をし,令和4年5月,日弁連がこれを取り消して懲戒しない旨の裁決をした事案がある。当該弁護士は,裁決書の一部を次のとおりXに掲載している。

なお,この審査請求の手続の在り方をめぐっては,処分庁である単位弁護士会を手続に関与させる対審制を採るべきだとする意見もある。

3 委員の資格と選任

日弁連の懲戒委員会の委員は,弁護士,裁判官,検察官及び学識経験のある者の中から,それぞれ日弁連の会長が委嘱する(弁護士法66条の2第2項前段)。この場合,①裁判官又は検察官である委員はその地の高等裁判所若しくは地方裁判所又は高等検察庁検事長若しくは地方検察庁検事正の推薦に基づき,②その他の委員は日弁連の総会の決議に基づき,委嘱しなければならない(同項後段)。委員の任期は2年であり(同条3項),予備委員の選任(同法66条の4)も含めて,毎年5月の定時総会の決議(日弁連会則34条3号)において,選任に関する事項は理事会に白紙委任されている(同会則59条6号参照)。もっとも,最高裁判所は,平成29年10月31日付けの司法行政文書不開示通知書において,平成29年度の日弁連懲戒委員会の名簿を保有していない旨を回答している。

第4 懲戒手続に関する日弁連の規程

日弁連は,懲戒手続について,次の6つの規程を定めている。

日弁連会則(昭和24年7月9日制定,昭和24年9月1日施行)68条ないし73条
綱紀委員会及び綱紀手続に関する規程(平成15年11月12日会規第57号,平成16年4月1日施行)
綱紀審査会及び綱紀審査手続に関する規程(平成15年11月12日会規第58号,平成16年4月1日施行)
懲戒委員会及び懲戒手続に関する規程(平成15年11月12日会規第59号,平成16年4月1日施行)
懲戒処分の公告及び公表等に関する規程(平成15年11月12日会規第60号,平成16年4月1日施行)
弁護士会の懲戒の通知に関する規程(平成15年11月12日会規第61号,平成16年4月1日施行)

このうち②③④⑥の会規は,令和3年6月11日までに複数回の改正を経ており,⑤の会規も平成26年12月5日に改正されている。弁護士の懲戒処分は,官報をもって公告されるほか(弁護士法64条の6第3項),日弁連の機関雑誌(同会則7条参照)でも公告される(同会則68条)。日弁連の機関雑誌は「自由と正義」という月刊誌であり,一般にも販売されている。⑥の規程は,弁護士法64条の6第2項及び64条の7第1項に基づく,弁護士会の懲戒の処分及び手続に関する日弁連への通知事項を定めたものである。

第5 関連記事

・ 弁護士の懲戒事由
・ 弁護士法56条1項の「品位を失うべき非行」の具体例
・ 弁護士の懲戒請求権が何人にも認められていることの意義
・ 弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めた弁護士職務基本規程の条文
・ 弁護士に対する懲戒請求事案集計報告(平成5年以降の分)
→ 令和元年の審査請求の新受件数は30件であり,原処分取消は3件,原処分変更は1件であった。直近の令和7年(2025年)は新受32件,原処分取消2件,原処分変更3件である(出典は第6の3)。
・ 弁護士会の懲戒手続
・ 弁護士の戒告,業務停止,退会命令及び除名,並びに第二東京弁護士会の名簿登録拒否事由
・ 弁護士の業務停止処分に関する取扱い
・ 弁護士の懲戒処分の公告,通知,公表及び事前公表
・ 日弁連会則

第6 出典・参考資料

1 法令

弁護士法(昭和24年法律第205号)56条,59条,61条,64条,64条の2から64条の7まで,66条の2,66条の4,67条の2,70条の3,70条の5,71条の2,71条の3,71条の5(e-Gov法令検索)
行政不服審査法(平成26年法律第68号)45条,46条,48条(e-Gov法令検索)

2 会則・会規

日弁連会則(昭和24年7月9日制定,昭和24年9月1日施行。日本弁護士連合会)7条,34条3号,59条6号,68条ないし73条
綱紀委員会及び綱紀手続に関する規程(平成15年11月12日会規第57号,令和3年6月11日改正。日本弁護士連合会)
綱紀審査会及び綱紀審査手続に関する規程(平成15年11月12日会規第58号,令和3年6月11日改正。日本弁護士連合会)
懲戒委員会及び懲戒手続に関する規程(平成15年11月12日会規第59号,令和3年6月11日改正。日本弁護士連合会)46条1項
懲戒処分の公告及び公表等に関する規程(平成15年11月12日会規第60号,平成26年12月5日改正。日本弁護士連合会)
弁護士会の懲戒の通知に関する規程(平成15年11月12日会規第61号,令和3年6月11日改正。日本弁護士連合会)

3 公的資料

①日弁連「懲戒請求事案に関する異議の申出の方法について」(日本弁護士連合会)
②司法制度改革審議会「司法制度改革審議会意見書―21世紀の日本を支える司法制度―」(平成13年6月12日)第3・6(2)「弁護士倫理等に関する弁護士会の態勢の整備」
③日弁連「2025年 懲戒請求事案集計報告」(日本弁護士連合会,2026年)表2-1「審査請求事案の内訳(日弁連懲戒委員会)」
④最高裁判所事務総長「平成29年10月31日付け司法行政文書不開示通知書」(平成29年度日弁連懲戒委員会名簿について)