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面会交流・親子交流で渡されたAirTag―位置情報の追跡とストーカー規制法(AI作成)

第1 子どもに渡した物から相手の居場所が分かる場合

親子交流の際に渡されたぬいぐるみなどにAirTag等の紛失防止タグが入っており,その位置情報から,同居親や子どもの居場所が把握されていた場合,どう考えればよいか。
令和7年のストーカー規制法改正では,紛失防止タグを利用した位置情報の取得等に対応する規定が設けられ,関係部分は令和7年12月30日に施行された。

ただし,タグが見つかったという事実だけで,直ちにストーカー行為の犯罪が成立すると結論付けることはできない。
誰の位置情報を,どのような目的で,承諾を得ずに取得したのか,物をどのように渡したのか,行為が反復されているかなどを分けて確認する必要がある。

本記事の親子交流の例は,大阪弁護士会の会報に掲載された被害者支援実務意見交換会の架空事例を手掛かりにした説明である。
実際の事件や裁判例を紹介するものではない。

第2 紛失防止タグに関する法改正

警察庁は,改正により,紛失防止タグを用いた位置情報の無承諾取得等を規制対象に加えたと説明している。
警察庁の令和8年3月9日付け通達では,紛失防止タグ等に関する規定の解釈と運用が示されている。
通達によれば,いわゆる紛失防止タグは法律上の「位置特定用識別情報送信装置」に当たると解され,紛失防止タグ等を用いた位置情報の取得等の行為は,ストーカー行為等の規制等に関する法律(以下「法」という。)2条3項の「位置情報無承諾取得等」に含まれる。

同通達の説明によれば,位置情報の無承諾取得等は,特定の者のほか,その配偶者,直系若しくは同居の親族その他その者と社会生活において密接な関係を有する者に対して行われる場合も問題になる。
そのため,子どもの所持品にタグがある場合でも,「子どもの物だから,同居親への追跡とは無関係」と直ちに判断することはできない。
子どもが特定の者の直系又は同居の親族に当たる場合,好意又は怨恨の感情を向けられた特定の者が同居親であれば,子どもに対する行為も対象となり得る。

警察庁「ストーカー規制法が改正されました!」

第3 物に取り付ける場合と,中に入れて渡す場合

タグを衣服やかばんに固定した場合だけが問題になるわけではない。
警察庁の通達は,対象となる者の所持品に紛失防止タグ等を差し入れる行為や,タグ等を差し入れた物を渡す行為についても説明している。

したがって,ぬいぐるみの中にタグを入れて渡す行為は,相手方の承諾がなければ,位置情報を実際に取得したかどうかとは別に,タグを差し入れた物の交付(法2条3項3号,同法施行令3条2号)として問題になり得る(目的の要件は後記第4の2)。
「縫い付けていない」「本人の持ち物に直接取り付けていない」という事情だけで,規制の対象外と決めることは適切ではない。

もっとも,タグを渡した行為(同項3号)と,その後に位置情報を取得した行為(同項2号)は別の行為であるから,事実として分けて整理するべきである。
発見された物,発見場所,渡された時期,端末に表示された通知及び関係する連絡内容などが,事情を説明する手掛かりになる。

第4 無承諾,目的及び反復を分けて確認する

1 承諾の有無

警察庁の通達は,承諾について,任意かつ真意によるものであることを求めている。
脅迫された場合やだまされて誤信した場合の承諾は,任意かつ真意に基づく承諾とはいえないとされている。
合意の下で位置情報を共有していた場合でも,今後の共有を断る旨を伝えられた後も引き続き取得すれば,「承諾を得ないで」に該当し得る。
警察官や第三者を通じて拒絶が伝えられた場合も同様である。

親子交流について親の間で合意していることと,位置情報の取得について承諾があることは,確認すべき対象が異なる。
子どもの所持品にタグがある場合は,親の間の合意だけでなく,所持している子ども本人との関係でも承諾の有無を検討する必要がある。
交流の合意書があるという理由だけで,位置情報の取得についても承諾があったと扱わないことが大切である。

2 行為の目的

ストーカー規制法の適用を考える際には,特定の者に対する恋愛感情その他の好意の感情,又はそれが満たされなかったことに対する怨恨の感情を充足する目的という要件にも注意が必要である。
通達によれば,怨恨の感情は,自分の好意が相手方に受け入れられないために好意の感情が転化したものであることが必要であり,特定の者に向けられた特別な感情であることを要する。
親子交流や離婚をめぐる対立があることだけで,この目的があるとはいえない。
位置を把握したという事実だけで,この目的まで当然に認定されるわけではない。
送られてきた連絡,従前の言動及び接触の経過なども含めて,具体的な事情を整理する必要がある。

3 反復と刑事責任

通達は,「ストーカー行為」について,法2条1項各号又は同条3項各号に定められた行為が全体として反復したと認められれば成立するものとし,特定の行為や特定の号の行為を反復する場合に限られないとしている。
確認すべきなのは実際の行為の反復であり,タグを発見した回数そのものではない。
1回のタグの発見だけを根拠に,直ちに犯罪の成立や処罰を断定することはできない。
一方,犯罪の成否をその場で判断できないからといって,相談を控える必要があるという意味でもない。
反復に至らない場合でも,位置情報無承諾取得等をして相手方に身体の安全,住居等の平穏若しくは名誉が害され,又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせることは法3条で禁止されており,知らない間に所持品へ取り付けられた場合も,後で認識した時点で不安を覚えたときは同様とされる。
警告は申出のほか職権でも行うことができる。
警告等の措置と,犯罪として処罰するための要件は,それぞれ分けて検討する必要がある。

第5 発見時に記録しておく事情

以下は,警察や弁護士に事情を説明するための整理の提案であり,法律上必須とされる証拠の一覧ではない。
まずは本人と子どもの安全を優先し,危険がある場合は相手方と一人で対面して問いただすことを避けるべきである。

安全に記録できる範囲で,発見した日時と場所,物の外観,タグが入っていた状態,端末上の通知,物を渡された経過及び相手方とのやり取りを残すことが考えられる。
記録を作るために危険な状態を維持する必要はない。
端末やタグの取扱い,位置情報の取得を止める方法及び証拠の保存方法は,状況を伝えた上で警察等に相談されたい。

通知の表示だけでは,誰が取得したのか,取得の目的が何であったのかまで明らかになるとは限らない。
確認できた事実と推測を分けて伝えることが大切である。

第6 親子交流の実施方法とは別に検討する

位置情報の追跡の問題と,今後の親子交流をどのように実施するかという問題は,分けて整理する必要がある。
タグの発見だけから,交流を永久に禁止できる,あるいは従前どおり必ず実施しなければならないと,本記事で一律に結論付けるものではない。

受渡し場所,相互の連絡方法,子どもに持たせる物及び住所等が伝わる経路を整理し,安全上の事情を含めて具体的な実施方法を相談することが考えられる。
既に調停や審判などで取決めがある場合は,その内容も資料として示す必要がある。
刑事責任についての断定を交渉の材料にするよりも,発見した事実と安全上の懸念を記録し,それぞれの問題に応じた相談先へ伝えることが重要である。

第7 会報の事例と一次資料の関係

親子交流の際に渡した物にタグを入れる例は,『月刊大阪弁護士会』令和8年10月号31頁~32頁の被害者支援実務意見交換会の紹介に掲載された架空事例が出発点である。
この会報の紹介は,特定の事件について裁判所が違法性や犯罪成立を判断した資料ではない。

法改正の内容,承諾,行為の目的,対象者及び反復に関する説明は,警察庁の改正案内及び令和8年3月9日付け通達の関係部分に基づく。
安全確保や相談資料の整理に関する記載は,これらを踏まえた本記事の提案である。

第8 出典

① 警察庁「ストーカー規制法が改正されました!」
② 警察庁・ストーカー行為等の規制等に関する法律等の解釈及び運用上の留意事項について(通達)(令和8年3月9日)
③ 「関係機関の皆様との被害者支援実務意見交換会を開催しました」『月刊大阪弁護士会』令和8年10月号31頁~32頁