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平成28年司法試験公法系第2問(行政法)の模範解答と評価項目―出題の趣旨・採点実感から抽出した32項目と5段階の重み付け(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

本記事は平成28年司法試験公法系科目第2問(行政法)について,法務省の出題の趣旨と採点実感を読み,32個の評価項目と5000字以内の答案例を示すものである。
評価単位の分け方と重みは記事独自の整理であり,法務省の公式配点・得点や合格可能性ではない。

項目内容
対象平成28年司法試験公法系科目第2問(行政法)
公式問題文公法系問題PDFのPDF6~18頁(第2問)
基準時試験実施日は平成28年5月11日。適用法は問題付属の抜粋と仮定による。一般的な出題法令基準日を確認したものではない
公式資料出題の趣旨:PDF2~3頁の第2問/採点実感:PDF5~8頁の第2問。ともに確認済み
評価N=32,重み5は9件,重み合計W=126
主要論点住民の原告適格,除斥違反,裁量基準,違法性の承継,公衆浴場と飲食部分
主要判例最高裁平成21年12月17日第一小法廷判決(平成21年(行ヒ)第145号,民集63巻10号2631頁),最高裁昭和50年5月29日第一小法廷判決(昭和42年(行ツ)第84号,民集29巻5号662頁)
答案分量4268字(見出しを含み空白・改行を除く)
試験後の法改正現行法の事案ではなく試験問題への解答。現行条文と試験当時の全条文の同一性を保証しない
確認日令和8年10月31日
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答案例はX1らの原告適格を肯定し,X2らは道路交通による一般的被害にとどまる限り否定する。
許可の手続・実体違法を指摘し,確認取消訴訟での違法性承継を肯定する構成を採る。
公衆浴場は文言上該当することを認めた上で,Xらの側から限定解釈と飲食部分の附属性を争う。
これらの実体的結論は記事の分析であり,公式資料が唯一の結論を指定したとする趣旨ではない。

重み5は第4の番号1・3・5・9・13・14・17・18・22の9項目である。
第4で全項目を確認し,第5の答案と解説で対応及び留保を確認できる。

第2 評価項目の示し方と重み付けの基準

1 評価項目の示し方

公式資料の記述を一つの判断対象ごとに整理し,出題の趣旨と採点実感の根拠頁・節を分けた。
明示のない事項は記載なし,一般的記述から導くものは間接と表示す。
注意項目は答案全体の品質として整理し,同一の不足を設問別項目と二重に減点する趣旨ではない。
承継や用途解釈の複数の立場は,規範・事実評価・結論が一貫しているかを評価し,対立する結論を累積要求しない。

2 5段階の重み付けの基準

重み記事独自の基準
5設問の結論を決める中核の規範・判断操作・当てはめ
4主要な理由付けや反対構成
3通常必要な処理や個別事情の評価
2中心論証を支える補助的品質・事項
1追加的な補足事項。本問では該当項目なし

重みの件数を均す割当てはしていない。
各項目は設問内の役割に応じて重みを定め,記事上は通し番号で示す。
重み5の9件は,原告適格の枠組み(1),利益の個別保護(3),二群の当てはめ(5),手続瑕疵の取消基準(9),要綱から裁量違法への媒介(13),具体的裁量審査(14),承継の実体面(17)・手続面(18),公衆浴場の文言解釈(22)である。

第3 本問の概要

1 問題文と事実関係

Aは第一種低層住居専用地域にスーパー銭湯と附属車庫を計画する。
車庫は約1500㎡,130台の1層2段で,屋上は金網フェンスのみである。
休日の利用は約1500人,車両約550台,営業時間は24時までが予定される。
X1らは車庫から約6mの隣接地,X2らは本件敷地から約45m離れた接続道路沿いに居住する。

市長の例外許可に先立つ審査会では,除斥されるべきA代表者の兄弟Bが参加し,7人中5人が賛成した。
その後,指定確認検査機関Y2が浴場と車庫の建築確認をした。
Xらは許可と確認の各取消訴訟を提起し,弁護士が検討する。
詳しい事実・別紙法令は公式問題文を参照されたい。

2 設問が求めること

設問立場・対象指定・仮定・除外到達点
1(25)X1ら・X2ら/許可取消訴訟各群の利益状況と法令・要綱を区別原告適格の有無と理由
2(30)Xら/許可の違法原因Bの除斥該当性は前提手続瑕疵と裁量逸脱濫用
3(30)確認取消訴訟で許可の違法を主張全員の原告適格と設問2の違法を仮定。最高裁判例に言及実体・手続両面から承継の可否
4(15)Xら/浴場・飲食部分の用途該当性文言・趣旨・具体的機能を検討確認の違法原因を構成

配点比は問題の25:30:30:15である。
出訴期間の正当な理由,確認取消訴訟の原告適格及び執行停止は会議録の指定に従い独立に論じない。

第4 評価項目と重み

1 設問1

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
1法律上保護された利益説と行訴法9条2項に基づく第三者原告適格の枠組みを示す5趣旨2~3頁採点5頁3(1)
2都市計画法を関係法令とし,低層住居専用地域の設定目的を具体的に関連付ける4趣旨2~3頁採点5頁3(1),6~7頁4(2)
3直接的な建築被害及び地域指定の反射的利益と比較し,居住利益の個別保護を論証する5趣旨3頁採点5頁3(1)
4被侵害利益の性質・回復困難性と距離による被害程度を検討する4趣旨3頁採点5頁3(1)
5X1とX2の被害源・位置・程度の差を踏まえて各々原告適格を判断する5趣旨3頁採点5頁3(1),7頁4(2)
6要綱の法的位置と公聴会による手続保障を,原告適格との関係で検討する4趣旨3頁採点5頁3(1),7頁4(2)

2 設問2

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
7審査会同意に独立の処分性がなく,許可取消訴訟で瑕疵を争う構造を示す3趣旨3頁記載なし
8審査会の専門性・公正性と除斥規定の目的を示す4趣旨3頁採点5頁3(2)
9手続瑕疵が制度の趣旨に反する重大なものであるかにより許可の取消原因となるか判断する5間接(趣旨3頁設問2:枠組み又は媒介理論を求める。具体的定式は記事の整理)採点5頁3(2),7頁4(3)(判断枠組み。最高裁昭和50年5月29日第一小法廷判決(昭和42年(行ツ)第84号,民集29巻5号662頁)が参考になるとする)
10Bを除いても多数という反論と審議・意見形成への影響を具体的に評価する4趣旨3頁採点5頁3(2)
11住環境判断に裁量を認める理由と逸脱濫用の審査枠組みを示す4趣旨3頁採点5頁3(2)
12要綱を法規命令ではなく裁量基準・行政手続法上の審査基準と位置付ける4趣旨3頁採点5頁3(2),7頁4(3)
13要綱違反が直ちに違法とはいえないことと,合理的基準からの理由なき逸脱等が裁量逸脱濫用に結び付く理論を示す5間接(趣旨3頁設問2:枠組み又は媒介理論を求める。具体的定式は記事の整理)間接(採点5頁3(2),7頁4(3):判断枠組み・理論説明。具体的定式は記事の整理)
14車庫の構造・規模・遮蔽欠如・使用態様等を要綱事項と結び付け具体的に裁量審査する5趣旨3頁採点5頁3(2)
15公聴会による判断適正担保と住民意見の考慮を検討する3趣旨3頁採点5頁3(2)

3 設問3

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
16排他的管轄と出訴期間制限から違法性承継を原則否定する理由を示す4趣旨3頁採点5頁3(3)
17許可と確認が結合して一つの目的・効果を実現するか,先決関係を含め具体的に論ずる5趣旨3頁採点5~6頁3(3),7頁4(4)
18先行許可を争う手続保障を具体的に検討し,実体法的観点と併せて結論を示す5趣旨3頁採点5~6頁3(3)
19最高裁平成21年12月17日第一小法廷判決(平成21年(行ヒ)第145号,民集63巻10号2631頁)の安全認定と建築確認に関する具体的理由を本件と比較する4趣旨3頁採点5~6頁3(3),7頁4(4)
20許可を通知する制度の有無とXらが実際に許可を知ったことを区別して評価する4趣旨3頁採点6頁3(3)
21市職員の誤教示を手続保障・待機の評価に位置付ける3記載なし採点6頁3(3)

4 設問4

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
22文言上スーパー銭湯が公衆浴場に当たることを出発点に法解釈する5趣旨3頁採点6頁3(4),7頁4(5)
23低層住居地域で公衆浴場を許容する趣旨から限定解釈の可否を検討する4趣旨3頁採点6頁3(4)
24一般浴場と本件の機能・料金・利用状況等の異同を用いて検討する4趣旨3頁採点6頁3(4)
25飲食部分について兼用住宅に限る規定と面積制限を区別し,政令を踏まえ結論と理由を示す4趣旨3頁採点6頁3(4)
26飲食部分の存在だけで違法とせず,公衆浴場との一体性・附属性を具体的に検討する3趣旨3頁採点7頁4(5)
27建築確認を羈束行為とし,用途該当性を法解釈・適用として審査する3間接(3頁の本案解釈)採点7頁4(5)

5 答案全体

番号評価項目重み出題の趣旨採点実感
28指定された立場・除外事項・仮定を守り,四設問に応答する3趣旨2頁採点5頁2,6頁4(1)
29法令を正確に引用し,相互の関係と結論に結び付ける3趣旨2頁採点6頁4(1),6~7頁4(2)
30規範・事実評価・理由・結論を明確に示し,問題と離れた一般論を増やさない3記載なし採点5頁2,6頁4(1),7~8頁5
31判読可能で簡潔な文章と正確な表記を用いる2記載なし採点6頁4(1),8頁5
32設問1に偏らず設問4まで必要な論述量を確保する3記載なし採点6頁4(1),7頁4(5)

6 重みの分布

重み1重み2重み3重み4重み5NW
01913932126

N=0+1+9+13+9=32,W=0+2×1+3×9+4×13+5×9=126である。
重みや件数は法務省が公表した配点ではない。

第5 模範解答

1 答案の前提と表記

以下は公式資料との比較後に作成した一つの答案例である。
建基法は建築基準法,行訴法は行政事件訴訟法を指す。
Xら側の検討として,設問3では承継肯定を採用し,設問4では反対論を示しつつXらの取消原因を構成する。

2 答案

1 設問1
(1) 取消訴訟の原告適格は,処分の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に認められる(行政事件訴訟法9条1項)。
処分の根拠法規が,不特定多数者の利益を専ら公益に吸収せず,個々人の個別的利益としても保護する趣旨である場合,その利益を侵害され,又は必然的に侵害されるおそれのある者がこれに当たる。
根拠法令の文言だけでなく,同条2項の考慮要素を検討する。

(2) 建築基準法48条1項は,都市計画法上の用途地域に応じて建築用途を規制し,第一種低層住居専用地域では良好な住居の環境を保護する。
同法1条に加え,目的を共通にする関係法令である都市計画法1条,8条,9条1項,10条も参酌すると,用途の混在による生活環境の悪化を防ぐ趣旨である。
さらに例外許可の「良好な住居の環境を害するおそれがない」との要件,利害関係人の公開の意見聴取を要求する建基法48条14項は,個別建築物の立地によって騒音,排気ガス,照射光等の直接の影響を受ける周辺住民の具体的な居住利益を個別にも保護すると解される。
地域指定により区域住民が一様に受ける快適性は反射的利益にとどまり得るが,個別建築物から直接かつ相当程度の被害を受ける居住利益とは区別される。
倒壊・火災等による生命身体の被害とは異なるものの,継続する騒音等は日々の健康で平穏な生活を害し,後の金銭賠償だけでは回復し難い。
他方,不特定多数の道路利用者に共通する交通の安全・円滑という利益一般まで個別に保護するとは解し難い。

(3) X1らは本件自動車車庫から約6mの隣接地に居住する。
130台を収容し深夜まで使用される車庫は屋上に遮蔽壁がなく,車両の出入りによる騒音,光,排ガスを直接受ける具体的危険がある。
したがって原告適格を有する。

 X2らは本件敷地から約45m離れ,主として本件施設と幹線道路を結ぶ道路上を通行する車両による被害を主張する。
距離だけで排除できないが,施設そのものからの直接被害については隣接するX1らと同程度に具体化しておらず,通行車両による一般的な交通被害にとどまる限り個別保護の範囲外である。
よって原告適格は否定される。
公聴会が利害関係人の意見を許可判断に反映する制度であることは個別保護の補強となる。
しかし要綱は法規命令ではなく,行訴法9条2項の関係法令に当然に含まれない。
要綱の概ね50mという案内書の送付範囲は行政運営上の範囲であり,それに属して参加したことのみでは,上記の実体的利益を超えて原告適格は生じない。

2 設問2
(1) 除斥違反
 建築審査会の同意は内部的な手続であり,独立に権利義務を定める処分ではない。
その違法は許可の取消原因として争う。
建基法48条14項の同意は許可の法定要件である。
同法78条,79条,82条は,専門性と公正性を備えた審査を担保する。
最高裁昭和50年5月29日第一小法廷判決(昭和42年(行ツ)第84号,民集29巻5号662頁)に照らせば,法がこの審査を要求した趣旨に反する重大な手続瑕疵がある場合には,それを経た許可も違法となる。
除斥されるべきBが議決に加わり賛成票を投じたことがこの瑕疵に当たるかを検討する。
Bを除いても出席委員6人中4人の賛成で過半数であるとの反論がある。
しかし,除斥は票数だけでなく,利害関係人が討議や他の委員の判断に影響を及ぼすこと自体を防ぐ規定である。
Bの関与がなければ同じ審議・議決になったとはいえず,公正な審査を経るという制度趣旨に反する重大な瑕疵であるから,本件許可の取消原因となる。

(2) 裁量権の逸脱・濫用
 良好な住居環境を害するおそれの判断は,敷地,構造,使用態様,周辺環境等の専門技術的評価を必要とし,市長に裁量がある。
しかし重要な事実の基礎を欠き,考慮すべき事項を考慮せず,又はその評価が合理性を欠いて,法の目的に照らし著しく妥当性を欠く判断は逸脱・濫用として違法となる(行訴法30条)。

 本件要綱は行政手続法5条の審査基準に当たる裁量基準であり,法規命令ではないから,違反が直ちに法令違反になるわけではない。
他方,住環境を保護する合理的な基準を設定・公表した行政庁が個別事情の合理的説明なくこれを離れることは,平等取扱いと予測可能性を害する。
また基準が法の目的に沿って要求する重要事項の考慮を欠く場合には,その判断過程の不合理を通じて逸脱・濫用となる。

 車庫は約1500㎡で形式的面積基準を満たすとしても,1層2段で屋上部分にも駐車する。
要綱が1階以下の部分に限定する趣旨も,住民に及ぶ影響を抑える点にある。
階数算定だけでなく,屋上が金網フェンスのみで遮音・遮光・排気の遮蔽を欠く点を審査すべきである。
約1500人,約550台という休日の利用見込み,24時までの営業から,隣接住宅への騒音,照射光,排気の影響は小さくない。
要綱の遮音壁等の対策もなく,公聴会は判断の適正を担保するために設けられており,要綱第7の2は聴取した意見の十分な尊重を求めるが,Xらの意見を踏まえた調整・代替対策はうかがわれない。
面積等だけで住環境を害するおそれがないとすることは,重要な不利益を過小評価するものである。
本件許可は裁量権を逸脱・濫用し違法である。
公益上やむを得ないという別の許可要件により当然に正当化することもできない。

3 設問3
(1) 問題の所在
 許可と建築確認は各々独立の処分であり,通常は先行処分の違法をその取消訴訟で争う。
取消訴訟の排他的管轄と出訴期間による法律関係の早期安定を重視すれば,後行処分の取消訴訟で先行処分の違法を主張することは原則として許されない。
もっとも,先行処分が取り消されていないからといって,後行処分の取消訴訟で先行違法を主張できないと一律にはいえない。
両処分の目的・法的効果の結合と,先行段階で争うことを期待できる手続保障を検討する。

(2) 判例との比較
 最高裁平成21年12月17日第一小法廷判決(平成21年(行ヒ)第145号,民集63巻10号2631頁)は,安全認定と建築確認が避難又は通行の安全という同一目的を追求し,結合して効果を発揮すること,もとは確認で一体的に審査されていた事項が専門的判断のため分離されたことを指摘した。
また安全認定は周辺住民への通知等がなく,確認まで建築できないため,認定の存在を知っていても確認を待つことが必ずしも不合理でないとして,確認取消訴訟で認定の違法を主張できるとした。

 本件でも,許可は用途規制への適合を補完し,確認がこれを前提に他の規制適合性も審査して建築を可能にする。
用途規制に抵触する車庫の建築について,許可が用途面の障害を除き,確認が許可を前提として建築基準関係規定への適合性を確定するという先決関係にある。
この限りで,例外的に建築を認める一つの効果の実現に結合している。
形式的に独立するだけでは遮断を基礎付けられない。

 これに対し,用途例外許可は従前から独立した裁量処分で,確認と元来一体だった安全認定とは異なる。
しかも公聴会への全員参加と6月末までの許可の認識は,先行段階で争えたとして承継否定に働く。
ただし,公聴会の事前公告と処分後の通知とは別であり,例外許可は申請者以外の者に通知することが予定されていない。
実際に知ったという個別事情だけで制度的保障が十分であるとはいえない。

 しかし,公聴会は処分前の意見表明であって取消訴訟の機会そのものではない。
許可だけでは建築できず,最終的な建築可能性が確定する確認を待つことにも合理性がある。
市職員が確認取消訴訟で許可の違法も主張できると説明した点は,法的効果を変更するものではないが,現実の救済機会を評価する上で考慮できる。
したがって,本件では両処分の結合と合理的な待機を重視し,設問2の違法を訴訟2でも主張できると解する。
これは訴訟1の出訴期間や正当な理由の再判断とは別の問題である。

4 設問4
(1) 公衆浴場の解釈
 建築確認は建築基準関係規定への適合性を審査する羈束行為であり,用途該当性を裁量の逸脱・濫用で判断してはならない。
別表第二(い)項7号は個室付浴場業に係るものを除く公衆浴場と定める。
本件はその除外対象でなく,文言上は公衆浴場に該当する。
問題は,用途地域の趣旨からこの文言を限定解釈できるかである。
公衆浴場法1条の定義は衛生管理の対象を定めるための広い定義であり,住環境を保護する用途規制の範囲を当然には決めない。
Xらは,第一種低層住居専用地域で浴場が許容される理由を地域住民の日常生活に必要な施設である点に求め,広域から集客する娯楽施設は含まれないと主張できる。

 本件は住宅の浴室保有率が95.5%となった時代に,県条例上の「一般公衆浴場」ではなく統制額400円の対象外である「その他の公衆浴場」として,600円又は700円で,サウナ,休憩,マッサージ,飲食を提供し,休日約1500人を集める。
規模,営業時間,機能から,日常の衛生需要を満たす浴場より娯楽施設としての性格が強く,上記限定解釈によれば7号に含まれない。

 これに対し,文言は風営法2条6項1号の個室付浴場業に係るもののみを除外しており,スーパー銭湯の排除を明記していない。
内風呂の普及だけで浴場の生活上の必要性は消滅せず,Xらの限定解釈には文理上の弱点がある。
それでも,広い定義を機械的に採ると,低層住宅地で集客型施設を許容し住環境保護を失わせるため,Xらは機能に着目した限定を求めるべきである。

(2) 飲食部分
 別表第二(い)項2号及び令130条の3第2号は,住宅兼用の食堂等について住宅部分が延べ面積の2分の1以上で,非住宅部分が50㎡以下という限定を設ける。
浴場は住宅ではなく,50㎡以内であれば独立の飲食店も許されるとの反論は成り立たない。
ただし,飲食部分があれば直ちに浴場全体が違法になるわけではない。
浴場の通常の附属用途として一体的に7号に含まれるかを検討する。

 Y2側は入浴後の軽食にすぎず,施設全体の延べ床面積約1490㎡に対し約50㎡と小さいと反論できる。
これに対しXらは,酒類提供・厨房を備え,単なる自動販売機による飲料提供を超えた食堂機能があり,飲食店を限定的にしか許容しない上記制度趣旨から附属性を厳格に解すべきだと主張できる。
外部客利用や別入口は前提にしない。
Xらとしては,本件の厨房を伴う飲食機能は通常の浴場利用への附随性を超えると評価し,この部分は7号に含まれず,これを含めてした確認は違法であると主張する。

以上

3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説

(1) 答案と評価項目の対応

答案の1は番号1~6,2は7~15,3は16~21,4は22~27に対応する。
番号28~32は答案全体に関する注意項目である。
以下には重み5・4の全22項目を第4と同じ文で示す。
重み3以下の7・15・21・26~32も答案との対応を全件確認し,手書きの判読性だけは電子答案の評価対象外としている。

番号重み評価項目答案の該当箇所・留保
15法律上保護された利益説と行訴法9条2項に基づく第三者原告適格の枠組みを示す答案の1/規範・具体的事実・結論を対応
24都市計画法を関係法令とし,低層住居専用地域の設定目的を具体的に関連付ける答案の1/規範・具体的事実・結論を対応
35直接的な建築被害及び地域指定の反射的利益と比較し,居住利益の個別保護を論証する答案の1/反射的利益・直接被害との比較
44被侵害利益の性質・回復困難性と距離による被害程度を検討する答案の1/回復困難性と距離
55X1とX2の被害源・位置・程度の差を踏まえて各々原告適格を判断する答案の1/規範・具体的事実・結論を対応
64要綱の法的位置と公聴会による手続保障を,原告適格との関係で検討する答案の1/要綱の非法規性と公聴会
84審査会の専門性・公正性と除斥規定の目的を示す答案の2/規範・具体的事実・結論を対応
95手続瑕疵が制度の趣旨に反する重大なものであるかにより許可の取消原因となるか判断する答案の2/重大な瑕疵の基準
104Bを除いても多数という反論と審議・意見形成への影響を具体的に評価する答案の2/規範・具体的事実・結論を対応
114住環境判断に裁量を認める理由と逸脱濫用の審査枠組みを示す答案の2/規範・具体的事実・結論を対応
124要綱を法規命令ではなく裁量基準・行政手続法上の審査基準と位置付ける答案の2/規範・具体的事実・結論を対応
135要綱違反が直ちに違法とはいえないことと,合理的基準からの理由なき逸脱等が裁量逸脱濫用に結び付く理論を示す答案の2/平等・予測可能性と考慮過程
145車庫の構造・規模・遮蔽欠如・使用態様等を要綱事項と結び付け具体的に裁量審査する答案の2/規範・具体的事実・結論を対応
164排他的管轄と出訴期間制限から違法性承継を原則否定する理由を示す答案の3/排他的管轄・早期安定
175許可と確認が結合して一つの目的・効果を実現するか,先決関係を含め具体的に論ずる答案の3/規範・具体的事実・結論を対応
185先行許可を争う手続保障を具体的に検討し,実体法的観点と併せて結論を示す答案の3/規範・具体的事実・結論を対応
194最高裁平成21年12月17日第一小法廷判決(平成21年(行ヒ)第145号,民集63巻10号2631頁)の安全認定と建築確認に関する具体的理由を本件と比較する答案の3/規範・具体的事実・結論を対応
204許可を通知する制度の有無とXらが実際に許可を知ったことを区別して評価する答案の3/制度的通知と現実の認識
225文言上スーパー銭湯が公衆浴場に当たることを出発点に法解釈する答案の4/文言上該当を先に認める
234低層住居地域で公衆浴場を許容する趣旨から限定解釈の可否を検討する答案の4/規範・具体的事実・結論を対応
244一般浴場と本件の機能・料金・利用状況等の異同を用いて検討する答案の4/規範・具体的事実・結論を対応
254飲食部分について兼用住宅に限る規定と面積制限を区別し,政令を踏まえ結論と理由を示す答案の4/兼用住宅・50㎡・附属用途の区別

(2) 設問1の解説

趣旨は,建築物の倒壊・火災・日照等による直接被害や地域指定の反射的利益との比較を求め,採点実感は利益の回復困難性と二群の差を重視している。
答案は番号1・2の法令関係から3・4の保護利益を導き,5で各群に当てはめ,6で要綱と公聴会を補う。
約50mや参加実績のみで法的保護を決めない一方,制度の個別保護を補強する意義も認めている。
X2らについて施設から直接・相当程度の被害が具体化されれば肯定方向にも検討でき,道路交通被害一般と区別することが重要である。

(3) 設問2の解説

公式資料は手続瑕疵の存在だけで許可の違法を導くことを戒めている。
答案は番号7で同意と許可を区別し,8~10で公正な審査を要求する趣旨と重大な瑕疵を検討する。
採点実感が参照を促す最高裁昭和50年5月29日第一小法廷判決(昭和42年(行ツ)第84号,民集29巻5号662頁)は,諮問機関の審理・決定の過程に重大な法規違反があることなどにより,法が諮問を経ることを要求した趣旨に反すると認められるような瑕疵があるときは,これを経た処分も違法として取消しを免れないとした。
同判決は,公聴会審理に瑕疵があっても,機会を与えたとしても審議会の判断を左右する資料・意見を提出し得た可能性が認め難い事情があるときは取消事由にならないとも判断している。
番号10の票数の反論はこの点に関わり,除斥違反への当てはめは答案の解釈である。

番号11~15は裁量審査である。
要綱を法規命令とせず,合理的基準からの理由なき逸脱や重要事項の考慮欠落という法的な橋渡しを置く。
平等・予測可能性による説明は,処分基準について公正かつ平等な取扱いの要請と相手方の信頼の保護を挙げた最高裁平成27年3月3日第三小法廷判決(平成26年(行ヒ)第225号,民集69巻2号143頁)を参考にした記事の整理であり,同判決は審査基準に関する判示ではない。
面積だけで適法とせず,開放された屋上,利用台数,深夜営業,意見尊重を検討する。
屋上駐車場を建築法規上当然に2階と数える断定は採用していない。

(4) 設問3の解説

番号16の原則否定と17・18の例外判断を分け,19の最高裁平成21年判決の具体的内容を使う。
同判決は安全認定と確認の効果の結合だけでなく,周辺住民への手続保障と確認を待つ合理性を問題にした。
本件の公聴会・許可認識は承継否定に働くが,20では制度的な第三者通知とたまたま知った事実を分け,21では職員説明を権限ある法的変更ではなく救済機会の評価として扱う。

答案は承継肯定を採るが,許可の独立性・専門裁量,公聴会と認識を重視した否定構成も比較の対象である。
公式資料が求めるのは具体的で説得的な両面検討であり,本記事の結論を唯一の公式見解としない。

(5) 設問4の解説

番号22は文言解釈の出発点である。
文言上の公衆浴場該当を認めてから,23・24で生活需要と娯楽性,料金・機能等を用いて限定解釈を検討する。
公衆浴場法の広い定義を別目的の建基法へ自動移送せず,27のとおり確認を羈束的な法適合審査として論じる。
文言が広く許容しているという反論は強く,限定解釈の結論には留保がある。

番号25・26では,50㎡という数字だけで浴場附属の飲食部分を適法又は違法としない。
住宅兼用という規定の条件を確認した上で,厨房・酒類提供,浴場との面積・機能関係から附属性を検討する。
答案の附随性を超えるという評価はXらの主張としての分析であり,外部客利用や別入口という事実を補っていない。

(6) 答案の弱点と扱わなかった事項

居住利益の個別保護の範囲,承継における公聴会と通知の評価,公衆浴場の限定解釈,飲食部分の附属性には複数の説明が可能である。
本答案はそれぞれ理由と反論を示す一例であり,別構成を排除しない。
昭和50年判決は運輸審議会の公聴会審理に関する事案であり,除斥違反への当てはめは本答案の解釈である。
試験後の法改正や判例を当時答案へ追加せず,出訴期間・執行停止等の指定された対象外事項も展開していない。

第6 関連記事

1 同じ年度の司法試験の記事

本記事では,同じ年度の司法試験の記事へのリンクを置かず,次の2及び3で関連記事を案内する。

2 同じ科目の別の年度の記事

①令和6年度公法系第2問の模範解答と評価項目は,都市再開発に関する行政法問題である。
②令和元年公法系第2問の模範解答と評価項目も行政法の別問題である。

3 本問の論点に関連する記事

①第一種市街地再開発事業の事業計画変更を争う方法―処分性,軽微変更,違法性の承継及び出訴期間は,先行処分と後行処分の関係を扱う実務記事である。
対象制度は本問と異なる。

第7 出典及び確認状態

1 公式資料

問題(PDF6~18頁),出題の趣旨(PDF2~3頁の公法2部分),採点実感(PDF5~8頁)を確認した。
問題の仮定上の平成29年の提訴と,平成28年5月11日の試験基準時を区別している。

2 法令

問題付属の建築基準法・施行令,都市計画法,公衆浴場法及び風営法を基礎にした。
行政事件訴訟法9条・30条と行政手続法5条は,e-Gov法令検索で遡れる最も古い平成29年4月1日時点の条文と現行条文が同文であることを確認したが,試験日である平成28年5月11日時点の条文そのものは確認していない。

3 裁判例

最高裁平成21年12月17日第一小法廷判決(平成21年(行ヒ)第145号,民集63巻10号2631頁,全5頁)を確認した。
最高裁昭和50年5月29日第一小法廷判決(昭和42年(行ツ)第84号,民集29巻5号662頁)及び最高裁平成27年3月3日第三小法廷判決(平成26年(行ヒ)第225号,民集69巻2号143頁)は,引用に関わる判示部分を確認した。
建基法48条の自動車車庫の許可に関する横浜地裁平成17年2月16日判決(平成14年(行ウ)第17号)は理由部分等を確認したが,平成16年改正前の行政事件訴訟法の事案であり,答案では特定判例として引用していない。

4 確認状態

問題・出題の趣旨・採点実感は上記の関連範囲を読んで確認した。
一部の法令沿革は未確認として留保する。
公式記載は資料が何を求めたか,記事独自の分析は評価の分節・重み・答案の構成,複数成り立つ法的構成は対立する構成として区別している。