第1 検事の修習期と生年月日は,同じ基準では判断されない
検事の氏名や官職が公表されていても,修習期,生年月日及び備考欄の全てが同じように開示されるわけではない。
平成28年度(行情)答申第365号は,修習期の不開示を妥当とする一方,本府省課長相当職にある者の生年月日と,裁判所から検事として出向していることを示す備考欄の記載は開示すべきと判断した。
この答申は,平成27年1月23日現在及び同年4月15日現在の「法務・検察幹部名簿及び検事期別名簿」に対する一部開示決定を審査したものである。
以下では,その事案での判断と,平成19年の幹部略歴公表通知を区別して説明する。
現在の全ての検事について,修習期や生年月日が一律に開示又は不開示になると結論付けるものではない。
出典は,平成28年度(行情)答申第365号1頁及び7~9頁である。
第2 平成28年答申で問題となった情報と結論
1 名簿の欄と,実際に争われた範囲
答申によれば,「法務・検察幹部名簿」には官職,氏名,期,生年月日及び現職発令日が記載され,「検事期別名簿」には検察官番号,氏名の漢字・カナ,生年月日,現職発令日,現職及び備考が記載されていた。
不開示欄の全てが争われたのではなく,審査の対象は,幹部名簿の修習期,両名簿の本府省課長相当職にある者の生年月日,検事期別名簿の備考欄中の裁判所からの出向を示す記載であった。
検察官番号や,備考欄の別の事項についても同じ結論が出たと読むことはできない。
| 争われた情報 | 答申の結論 | 判断の要点 |
|---|---|---|
| 法務・検察幹部名簿の修習期 | 不開示は妥当 | 任官年月だけで全員の修習期が分かるとはいえず,直接公表されている事実も認められなかった |
| 本府省課長相当職にある者の生年月日 | 開示すべき | 略歴の公表通知により公表が予定されている情報である |
| 備考欄の裁判所から検事として出向していることを示す部分 | 開示すべき | 当該人事異動が官報に掲載されている |
2 修習期と任官年月を同一視できない理由
異議申立人は,検事の任官年月日が官報に公告されるため,任官年月が分かれば修習期も分かると主張した。
審査会は,弁護士からの任官など,司法修習の修了から検事任官までに間隔がある場合を挙げ,修習を修了した年に任官するという前提が全員には成り立たないとした。
また,当該事案で各検事の修習期を直接公表した事実がないという諮問庁の説明を認め,行政機関情報公開法5条1号ただし書イの公表情報には該当しないと判断した。
職務遂行の内容に直接結び付く情報とはいえないこと等から,同号ただし書ロ・ハにも該当しないとした。
これは答申当時の資料と公表状況に基づく判断であり,後に本人の略歴等が公表された場合にも,その新たな事情を考慮せず当然に不開示となるという意味ではない。
3 生年月日と,裁判所からの出向の記載
本府省課長相当職にある者については,求めに応じて略歴書を提出する運用が認められていた。
審査会は,実際に求めがなく略歴書を提出していなくても,公表が予定されている情報として,生年月日は開示すべきとした。
備考欄中の,裁判所から法務省・検察庁へ検事として出向していることを示す部分は,その人事異動が官報に掲載されることを理由に開示すべきとした。
備考欄全体の公開や,職員の私生活に関する情報の公開を認めた判断ではない。
出典は,答申7~9頁である。
第3 平成19年通知による幹部略歴の公表
1 通知当時の対象職
「法務省における幹部公務員の略歴の公表について」は,平成19年6月15日法務省人任第1481号の依命通知である。
掲載原本の別紙では,人事異動により次の役職へ異動した場合を対象としている。
次の一覧は通知当時の名称を示すものであり,その後の組織改編や支部移転を反映した現行の対象職一覧ではない。
① 内部部局:政令職以上。
② 施設等機関:法務総合研究所長,矯正研修所長。
③ 地方支分部局:法務局長,矯正管区長,地方更生保護委員会委員長,地方入国管理局長。
④ 最高検察庁:検事総長,次長検事,部長,その他の検事(併任検事を含む。),事務局長。
⑤ 高等検察庁:検事長,次席検事,部長(東京,大阪に限る。),事務局長。
⑥ 地方検察庁:検事正,次席検事(東京,横浜,さいたま,千葉,大阪,京都,神戸,名古屋,福岡に限る。),支部長(八王子,川崎,沼津,堺,姫路,岡崎,小倉に限る。)。
2 記載事項と公表方法
別紙の記載事項は,氏名,生年月日,出身地,最終学歴,採用試験の種類及び区分,職歴である。
出身地・最終学歴の扱いや,職歴として記載する範囲には,同別紙に定める条件がある。
修習期は,この6項目の独立した記載事項としては列挙されていない。
対象職員が異動する際の略歴作成・提出を定める一方,検察官については官房人事課で作成するため,提出は不要としている。
公表方法は,原則として当該人事異動時に新聞報道資料とともに略歴を添付して公表するというものである。
出典は,掲載原本2~3頁である。
3 略歴の公表と情報公開請求を分けて読む
公表通知は,対象職の略歴をどのように作成・公表するかを定める資料である。
情報公開請求に対する開示・不開示は,請求対象文書の内容と,公表の事実又は予定などを踏まえて判断される。
通知に挙がる職かどうかだけで,名簿の全ての欄の開示を判断することはできない。
行政機関情報公開法の条文は,e-Gov法令検索を参照。
平成28年答申を現在の請求に利用する場合は,請求時点・処分時点の公表資料と,対象とする欄を明確にすることが必要である。
第4 名簿を調べるときの確認事項と関連記事
1 公式の記載,黒塗り,追加記載を区別する
ブログ掲載の検事期別名簿には,開示されたPDFに山中弁護士が修習期を手書きで追記した版が含まれる。
その追記は法務省が開示した記載ではない。
テキスト版も,原資料からの転記・整形と追記を区別し,氏名,官職,発令日等を利用する際は元PDFを確認する必要がある。
年別資料は,法務省作成の検事期別名簿に掲載している。
幹部職の名簿は,法務・検察幹部名簿,政官要覧社向け幹部公務員名簿の年別PDFを参照。
2 基準日と公表資料の版を合わせる
名簿の「現在」という日付は,その資料の基準日を示す。
後の人事異動まで反映した現職者一覧であるとは限らない。
また,幹部名簿に生年月日又は生年月が載っていても,別の時点の名簿の全欄が同じ扱いになるとは限らない。
法務省幹部の時点別資料は,令和8年8月12日現在のテキスト版を参照。
裁判官・検察官の出向・交流については,裁判官と検察官の人事交流を参照。
第5 出典
① 平成28年度(行情)答申第365号(平成28年9月29日):対象文書と結論は1頁,審査対象と判断理由は7~9頁。
② 法務省における幹部公務員の略歴の公表について(平成19年6月15日依命通知):ブログ掲載原本1~3頁。
③ 行政機関の保有する情報の公開に関する法律:5条・6条。答申の判断を現在の文書に当てはめる際は,適用法令と対象情報を確認する。