第1 採用願を提出すれば採用されるのか
採用願の提出だけをもって,検事への採用が確約されたと説明することはできない。
法務省は,採用願を提出した検事志望の司法修習生に対し,面接選考を行って採否を決すると説明している。
これは平成30年度(行情)答申第222号のPDF3頁に記載された諮問庁の説明である。
同答申には,提出者は事実上の内定者であるという審査請求人の主張も記載されているが,その主張と法務省の説明を同列の確定事実として扱うことはできない。
答申の結論は,一部不開示部分の開示範囲に関するものであり,個々の採用・不採用を認定したものでもない。
第2 過去の志望者数と任官者数から分かる範囲
集合修習時の志望調査と,修習終了後の任官者数は,時点も集計対象も異なる。
志望者数は,採用願提出者数,面接対象者数又は最終応募者数と同じとは限らない。
| 修習期 | 志望者数 | 任官者数 |
|---|---|---|
| 第65期 | 72人 | 72人 |
| 第66期 | 83人 | 82人 |
| 第67期 | 75人 | 74人 |
| 第68期 | 76人 | 76人 |
志望者数の根拠資料は司法修習生の組別(クラス別)志望状況,任官者数の資料は期別の任官者数に掲げる。
第65期の任官者数は現行修習2人と新修習70人の合計である。
総数が近いことは比較できるが,人数差が1人だから不採用者が1人であった,あるいは同数だから全員が採用された,とはこの資料だけでは判断できない。
志望変更・辞退・集計後の希望表明等の個人別対応関係を,総数から確認することはできないためである。
平成29年度(最情)答申第3号は,第69期の司法修習生組別志望等調査表を作成・取得していないという判断を妥当とした。
これは当該集計表の取扱いに関するものであり,検察教官が個々の希望を確認する行為全般の廃止を意味するものではない。
第3 検察教官の推薦に関する公的資料
平成28年度(行情)答申第755号では,匿名ブログを基に,教官会議の推薦を受ければ事実上の内定になる等の主張がされた。
これに対し法務省は,審査請求人の述べる推薦行為は行われておらず,法務省として推薦なるものに関与していないと説明した(PDF4頁)。
審査会は,対象文書を作成・取得していないという説明を不自然・不合理とはいえないとして,不存在による不開示決定を妥当と判断している。
この答申を読むときは,請求人の主張,諮問庁の説明,審査会の判断を区別する必要がある。
また,日弁連の「森山法務大臣に対する検察官任命に関する要望書」(平成13年9月11日)には,教官による推薦や,志望の辞退・変更を求める当時の運用について,日弁連の問題認識が示されている。
この記載と,平成29年の答申に記載された法務省の説明とは,作成時点と主体が異なる。
要望書は当時の調査と評価を示す資料であり,現在の全修習期の採用手順が同じであると認定する資料ではない。
第78期A班宛ての採用手続通知には,書類交付の申出先と提出先が記載されている。
この通知だけから,推薦の有無,書類交付前の選考の全容又は採用の確約を認定することもできない。
第4 成績・年齢・全国一斉検察起案をどう読むか
匿名ブログに記載された成績の優先順位,年齢による加減点,推薦の運用等は,公表された採用基準として確認された事項と区別する必要がある。
特に,平成28年度(行情)答申第755号は,匿名ブログにある採用基準の正しさを認定した答申ではない。
公表資料だけで評価項目ごとの配点や一律の年齢減点を断定することはできない。
平成30年度(最情)答申第42号は,第70期の全国一斉検察起案に関する成績分布表等を最高裁判所が保有していないという判断を妥当とした。
最高裁判所事務総長は,起案の評価結果は分野別実務修習の成績評価の一資料として使用されると説明している(PDF1頁)。
最高裁判所に当該文書が存在しないことから,法務省の採用選考で起案成績が一切考慮されない,あるいは特定の配点で考慮されると結論付けることはできない。
第5 面接票の公開部分と非公開部分
平成30年度(行情)答申第222号は,面接票No.1等の不開示部分について,面接官の着眼点又はそれを推知させる内容が記載されていると認めた上で,開示すべき部分を判断している(PDF4・5頁及び別表)。
第78期の提供資料にも一部不開示部分がある。
公開された欄と記載例は書類の準備に役立つが,非公開の評価内容や有利な回答例を補って説明する根拠にはならない。
採用願・面接票の具体的な記入,写真,成績証明書,追完及び訂正については,書類作成の解説を参照。
日程は採用までの手続で確認できる。
第6 出典と関連記事
本記事は,公表された答申と過去の集計資料の確認範囲に基づく。
現在の全ての評価項目,選考途中の人数,個人ごとの採否は公表資料から確認できず,倍率・合格保証・一律の配点を示すものではない。
– 平成30年度(行情)答申第222号―法務省の面接選考に関する説明,公開範囲の判断。
– 平成28年度(行情)答申第755号―推薦行為等に関する法務省の説明,対象文書の不存在。
– 平成29年度(最情)答申第3号―第69期組別志望等調査表。
– 平成30年度(最情)答申第42号―全国一斉検察起案関係文書。
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