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諸外国(米英独仏豪加)の司法制度――最高裁判所の開示文書7点と対照表の読み方(AIリライト)

第1 最高裁判所が開示した7点の文書

1 文書の一覧

最高裁判所に対する司法行政文書の開示申出により,諸外国の司法制度に関する文書7点の開示を受けた。内訳は,7か国を1枚の表に並べた対照表1点と,各国の制度を個別に記述した各国編6点である。以下のリンクからそれぞれのPDFを直接閲覧することができる。

諸外国(米英独仏豪加)及び我が国の司法制度の概要(対照表)
アメリカ合衆国の司法制度
イギリス連合王国(イングランド及びウェールズ)の司法制度
ドイツ連邦共和国の司法制度
フランス共和国の司法制度
オーストラリア連邦の司法制度
カナダの司法制度

③の文書の標題について,注意を要する点がある。開示された文書の1頁目に印刷された標題は「イギリス連合王国(イングランド及びウェールズ)の司法制度」であるのに対し,後記2の不開示通知書は同じ文書を「イギリス連邦(イングランド及びウェールズ)の司法制度」と記載している。「イギリス連邦」は英連邦(Commonwealth of Nations)を指す語としても用いられるから,イングランド及びウェールズの司法制度を扱う文書の標題としては,原本のとおり「イギリス連合王国」とするのが正確である。自サイトに掲載しているPDFのファイル名及び①から⑦までのリンク先も「連合王国」であり,本記事では,開示された文書自体の標題に従う。

2 令和元年5月以降の最新版が存在しないこと

これらの文書がいつの時点の制度を示すものかは,その後の不開示決定によって確定している。最高裁判所事務総長は,令和6年10月9日付け司法行政文書不開示通知書(最高裁秘書第2739号)により,上記7点の文書の「令和元年5月以降の最新版」について,「1の文書は,作成又は取得していない。」という理由で開示しないこととした。

この通知書は,不開示の理由を文書の不存在に求めるものである。したがって,最高裁判所は,令和元年5月以降にこれらの文書の改訂版を作成しておらず,保有もしていないことになる。開示された7点は,作成された時点の制度を示す資料として読むほかなく,その後の法改正によって現行制度と食い違う部分が生じていることを前提に利用する必要がある。司法行政文書の開示手続そのものについては裁判所の情報公開――通達・司法行政文書の開示手続と判決情報の公開を,開示を受けた文書の利用に制限がないことについては開示文書の利用目的は一切問われないこと等を参照されたい。

3 7点の分量と作成時点

7点はいずれも文字情報を含まない画像のPDFであり,同じ読取ソフトウェアにより,平成28年12月25日の午後6時35分から午後7時35分までの約1時間の間に連続して読み取られている。最初に読み取られているのは①の対照表であり,以下,②アメリカ,⑤フランス,④ドイツ,⑥オーストラリア,③イギリス,⑦カナダの順である。この読取りの順序は,不開示通知書が掲げる①から⑦までの順序とも,対照表の列の並び順とも一致しない。

分量は,①の対照表がA4判横1枚,②アメリカが32頁,③イギリスが69頁,④ドイツが43頁,⑤フランスが55頁,⑥オーストラリアが31頁,⑦カナダが62頁であり,各国編の合計は292頁である。各国編は,条文番号や統計の出典を付した脚注を備えた詳細な資料であるのに対し,対照表はこれを1枚に圧縮したものであるから,両者は精度も用途も異なる。

第2 対照表が示す7か国の比較

1 対照表の行の構成

対照表は,アメリカ,イギリス,フランス,ドイツ,オーストラリア,カナダ及び日本の7か国を列に並べ,裁判所(基本的組織,憲法裁判所の有無及び行政裁判所の有無),裁判官の任用,陪審・参審制(制度採用の有無及び民事・刑事における採用の別),弁護士資格,法曹養成制度並びに裁判等手続の特徴(民事・刑事)を行に配置している。注記は3つ付されており,アメリカについては主に連邦の場合を記載したこと,フランスの弁護士資格の統合の沿革,職権主義の例示を内容とする。

主要な項目を国ごとに整理すると,次のとおりである。

憲法裁判所行政裁判所裁判官の任用国民の司法参加弁護士資格
アメリカなしなし法曹一元陪審制(大陪審・小陪審)単一
イギリスなしなし法曹一元陪審制法廷弁護士・事務弁護士
フランスあり(憲法院)あり(コンセイユ・デタ等)キャリアシステム参審制単一
ドイツあり(連邦及び州の憲法裁判所)あり(連邦及び州の行政裁判所)キャリアシステム参審制単一
オーストラリアなしなし法曹一元陪審制法廷弁護士・事務弁護士
カナダなしなし法曹一元陪審制単一
日本なしなしキャリアシステム裁判員制度単一

2 裁判所の組織

基本的組織の欄は,国ごとに掲げる裁判所の数が大きく異なる。アメリカは地方裁判所,控訴裁判所及び最高裁判所の3種類にとどまるが,これは注記のとおり主に連邦の場合を記載したためであり,州の裁判所は対象外である。これに対し,連邦制を採るオーストラリアは連邦最高裁判所,連邦裁判所,家庭裁判所,連邦巡回裁判所並びに州の上級・中間・下級の各裁判所を,カナダは連邦最高裁判所,連邦控訴裁判所,州控訴裁判所,連邦裁判所,州上級裁判所及び州裁判所を掲げており,連邦裁判所と州裁判所が並存する構造がそのまま表れている。

イギリスの欄は,治安判事裁判所,郡[県]裁判所,刑事法院,高等法院,控訴院及び連合王国最高裁判所を掲げ,最高裁判所には「貴族院から移行」という注記が付されている。フランスは小審裁判所,大審裁判所,重罪院,控訴院及び破毀院を,ドイツは区裁判所,地方裁判所等,高等裁判所等,連邦通常裁判所等及びその他特別裁判所を掲げている。日本は簡易裁判所,地方裁判所,家庭裁判所,高等裁判所及び最高裁判所である。

3 憲法裁判所及び行政裁判所の有無

憲法裁判所を「あり」とするのはフランスとドイツだけであり,フランスは憲法院,ドイツは連邦及び州の憲法裁判所が挙げられている。行政裁判所も同じくフランスとドイツだけが「あり」であり,フランスはコンセイユ・デタ等,ドイツは連邦及び州の行政裁判所が挙げられている。残る5か国はいずれも「なし」である。

日本が両欄とも「なし」とされているのは,日本国憲法76条2項が特別裁判所の設置を禁じ,行政機関が終審として裁判を行うことができないと定めていることによる。もっとも,「行政裁判所なし」という表示は,行政事件を扱う手続が存在しないという意味ではない。イギリスについても,行政上の紛争は審判所(tribunal)の体系が広く担っており,「なし」という1語からは,各国が行政上の紛争をどのような機関で処理しているかまでは読み取れない。対照表は,通常裁判所とは別系統の裁判所が置かれているかどうかという1点で仕分けたものとして読む必要がある。

4 裁判官の任用と国民の司法参加

裁判官の任用は,アメリカ,イギリス,オーストラリア及びカナダを「法曹一元」,フランス,ドイツ及び日本を「キャリアシステム」と仕分けている。この2分法は,国民の司法参加の方式ともおおむね対応しており,法曹一元とされた4か国はいずれも陪審制を,キャリアシステムとされたフランス及びドイツは参審制を採用している。日本だけが「裁判員制度」という固有の名称で記載されている。

民事・刑事のいずれで用いられているかは国によって異なる。アメリカは民事・刑事に広く利用されているとされ,大陪審は刑事事件において利用されるとの注記がある。イギリス及びオーストラリアは主に刑事で用いられ,民事では名誉毀損等一部の種類の事件でのみ利用されているとされ,カナダは主に刑事で,民事ではほとんど利用されていないとされている。フランスは刑事のみ(重罪院,未成年重罪院),ドイツは主に刑事及び特別裁判所で利用され通常民事では一部の商事事件でのみ利用されているとされ,日本は刑事のみで一定の重大犯罪に限るとされている。裁判官の任用方式に関する日本国内の議論については,法曹一元を参照されたい。

5 弁護士資格と法曹養成制度

弁護士資格を法廷弁護士と事務弁護士の二元とするのはイギリスとオーストラリアだけであり,残る5か国は単一である。フランスについては注記があり,かつては弁護士の資格がアヴォカとコンセイユ・ジュリディクに分かれていたが1990年に現行のアヴォカに統一されたこと,控訴院・大審裁判所・商事裁判所には代訴士(アヴエ)が存在したが1971年及び2012年の改革を経て完全にアヴォカに統合されたこと,弁護士として一定の経験を積んだ後にコンセイユ・デタ=破毀院付弁護士となることができることが記されている。

法曹養成制度は,司法修習に相当する課程の有無で分かれている。アメリカは各州が独立した資格付与制度を採り,概ねロー・スクール卒業後に司法試験に合格すれば資格が付与され,司法修習制度はないとされる。オーストラリアは司法試験がなく,法学士又は法務博士号の取得後に実務研修課程又は実務修習を経て州最高裁判所から資格の承認を得る必要があるとされ,カナダはロー・スクール卒業後に各州のロー・ソサエティ等が実施する法曹資格付与コースを履修し最終試験に合格すれば資格が付与されるとされている。ドイツは州ごとに司法試験及び法曹養成が行われ,司法試験合格後に司法修習を経て第二回試験に合格すれば資格が付与される。フランスは司法官と弁護士で別個の養成制度が採られ,司法官には司法修習制度があり弁護士にも研修センターでの研修システムが設けられている。日本は司法試験合格後に司法研修所において1年の司法修習を経て修了試験に合格することが必要とされている。

6 裁判手続の特徴

民事の欄は,アメリカがディスカバリー手続及び懲罰的損害賠償制度,イギリスが集中審理主義及び事件類型に応じた訴訟手続,フランスが書証の重視・鑑定の頻繁な利用・レフェレ(急速審理手続)の活用・大審裁判所(民事)における弁護士強制主義・弁護士報酬の敗訴者負担,ドイツが民事訴訟改革法(2001年)による第一審審理の充実と上訴の制限・代理人強制主義・弁護士報酬の敗訴者負担,オーストラリアが集中審理主義及び弁護士報酬の敗訴者負担,カナダがディスカバリー手続及び懲罰的損害賠償制度,日本が争点整理手続・集中証拠調べの原則化・少額訴訟手続である。弁護士報酬の敗訴者負担は,フランス,ドイツ及びオーストラリアの欄にのみ現れる。

刑事の欄は,逮捕の方式と訴追の在り方に各国の違いが集中している。アメリカ,イギリス及びオーストラリアは無令状逮捕を掲げ,日本は令状逮捕を掲げている。訴追については,フランスが起訴裁量主義,カナダが起訴便宜主義,ドイツが起訴法定主義(例外あり)とされ,日本は国家訴追主義及び起訴裁量主義とされている。有罪答弁制度はイギリス,オーストラリア及びカナダに,起訴状一本主義はイギリス,オーストラリア,アメリカ及び日本に掲げられ,アメリカには司法取引及びおとり捜査が,フランスには予審制度及び附帯私訴制度が挙げられている。検察制度の沿革については検察制度の沿革を参照されたい。

第3 対照表を読むときの留意点

1 各国編の6章のうち2章に対応する行がない

各国編は,裁判所・裁判官,検察官・検察庁,弁護士・弁護士会,法曹養成制度,裁判手続並びに裁判外紛争処理(ADR)の6章から成り,末尾に当該国の裁判所審級図が付されている。これに対し,対照表には,検察官・検察庁の章と裁判外紛争処理(ADR)の章に対応する行がない。検察に関する事項は,刑事手続の欄に起訴裁量主義・起訴法定主義等として部分的に現れるにとどまり,検察官の身分や検察庁の組織は表に表れない。

ADRの行がないことは,実務上の見取図として対照表を使う場合に無視できない限界である。国際取引においては,外国裁判所の判決の承認執行のための条約が締結されていない国が少なくないのに対し,外国仲裁判断の承認及び執行に関する条約(ニューヨーク条約)には約150の国・地域が加盟しており,仲裁判断であれば締約国での執行が確保される。このため,日本企業が当事者となる国際取引の紛争解決手段としては,訴訟よりも仲裁が選ばれることが多い。各国の裁判所の組織や裁判手続を比較しただけでは,現実に用いられる紛争解決手段の全体像は把握できない。

2 英国欄に家庭裁判所が現れない

対照表のイギリス欄の基本的組織には,家庭裁判所が掲げられていない。しかし,同時に開示された③の文書は,7頁において,家庭裁判所(the Family Court又はthe Single Family Court)が,The Crime and Courts act 2013による一連の家事関係制度改正の一環として2014年4月に高等法院・郡裁判所・治安判事裁判所のそれぞれ一部を統合する形で設置され,高等法院の専属管轄として留保された一部の事件を除く全家事関係事件の第一審を取り扱うこととなったと記述している。同文書は,目次において枢密院司法委員会(the Judicial Committee of the Privy Council)も独立の項目として掲げている。

対照表の日本欄及びオーストラリア欄には家庭裁判所が掲げられているから,家事事件を扱う裁判所を表に載せないという方針が採られていたわけではない。イギリス欄だけが,同時に作成された各国編の記述と食い違っていることになる。7点が同じ日に連続して読み取られていることからすれば,対照表と各国編は一体の資料として扱われていたと考えられるが,1枚に圧縮する過程で脱落が生じたものとみるほかない。対照表を単独で用いず,各国編と併せて確認すべき理由がここにある。

3 「法曹一元」という分類軸

裁判官の任用の欄が用いる「法曹一元」と「キャリアシステム」という2分法は,日本の司法制度改革の議論に由来する整理である。この点について,法曹一元という語は日本独自のものであって英米法圏の法曹にも大陸法系の法曹にも理解してもらえない用語であり,もともとコモンロー系の国々で豊かな弁護士経験をもつ法曹を裁判官として採用し,又は有権者が選挙で選ぶというシステムを表現するために作られた用語である,との指摘がある(木佐茂男『司法改革と行政裁判』380頁)。

この指摘に従えば,対照表の当該欄は,各国が自国の制度をどう呼んでいるかを示すものではなく,日本の議論の枠組みに各国を当てはめた結果を示すものということになる。実際,法曹一元とされた4か国の間でも,アメリカの州裁判所のように裁判官を選挙で選ぶ制度と,イギリスのように法曹経験者から任命する制度とでは内容が大きく異なる。1語に圧縮された分類を各国の制度の同一性の根拠として用いることはできない。

4 対象は6か国に限られる

対照表が比較の対象とするのは,米英独仏豪加の6か国と日本である。韓国,中国その他のアジア諸国は含まれておらず,同じ大陸法系でありながら異なる経路をたどった国々の制度は視野に入っていない。日本の制度の位置付けを論じる資料として用いる場合には,この選択自体が結論を左右し得ることに留意する必要がある。

第4 日本欄の記述と現在の制度との違い

1 刑事――司法取引と検察審査会の起訴議決

対照表の日本欄の刑事の記述は,令状逮捕,国家訴追主義,起訴裁量主義及び起訴状一本主義である。しかし,この記述には対照表の作成前から存在した制度が反映されていない。検察審査会法41条の6は,検察審査会が起訴を相当と認めるときに起訴をすべき旨の議決(起訴議決)をするものと定め,起訴議決には検察審査員8人以上の多数を要するとしている。この起訴議決制度は,平成16年法律第62号による検察審査会法の改正により導入され,平成21年5月21日から施行されている。起訴裁量主義を掲げながらその例外である起訴議決制度に触れていない点は,ドイツの起訴法定主義やカナダの起訴便宜主義と対比して日本の制度を理解しようとする読者にとって,重要な欠落である。

また,対照表はアメリカ欄に「司法取引」を掲げる一方,日本欄には掲げていない。刑事訴訟法350条の2は,検察官が,特定犯罪に係る事件の被疑者又は被告人との間で,被疑者又は被告人が他人の刑事事件について真実の供述をする等の行為をし,検察官が公訴を提起しない等の行為をすることを内容とする合意をすることができると定めている。この証拠収集等への協力及び訴追に関する合意制度は,平成28年法律第54号により創設され,平成30年6月1日から施行された。対照表の作成時点では未施行であったから,作成時点の記述としては誤りではないが,現在の日米比較の資料としてそのまま用いることはできない。

2 民事――法定審理期間訴訟手続

対照表の日本欄の民事の記述は,争点整理手続,集中証拠調べの原則化及び少額訴訟手続である。民事訴訟法381条の2は,当事者が法定審理期間訴訟手続による審理及び裁判を求める旨の申出をすることができるものとし,消費者契約に関する訴え及び個別労働関係民事紛争に関する訴えをその対象から除いている。この手続は,当事者双方の申出又は同意があるときに,一定の事件について手続開始から6月以内に審理を終結し,そこから1月以内に判決をするものである。

法定審理期間訴訟手続は,令和4年法律第48号(民事訴訟法等の一部を改正する法律)により創設された。同法は令和8年5月まで段階的に施行され,オンライン提出,訴訟記録の電子化及び法定審理期間訴訟手続の創設を内容とする全面施行は令和8年5月21日である。したがって,本記事の作成時点では既に施行されている。なお,令和6年3月1日に施行されたのはウェブ会議を利用して口頭弁論の期日に参加することを可能とする改正であって,法定審理期間訴訟手続ではない。改正の全体像については民事裁判手続のIT化を参照されたい。

3 裁判員制度の対象事件

対照表の日本欄は,裁判員制度の対象事件を「刑事のみ。(ただし,一定の重大犯罪(殺人,強盗致傷)などに限る。)」と記載している。裁判員の参加する刑事裁判に関する法律2条1項は,対象事件を,死刑又は無期拘禁刑に当たる罪に係る事件及び裁判所法26条2項2号に掲げる事件であって故意の犯罪行為により被害者を死亡させた罪に係るものと定めており,対象事件の範囲そのものは対照表の記述と実質的に異ならない。

もっとも,条文の文言は変わっている。刑法等の一部を改正する法律(令和4年法律第67号)により懲役及び禁錮が廃止されて拘禁刑が創設され,令和7年6月1日から施行されたことに伴い,同項1号は「死刑又は無期拘禁刑に当たる罪」となった。開示文書の記述と現行条文を照合する際には,この種の刑名の変更が広範囲の条文に及んでいることに注意を要する。

第5 懲罰的損害賠償を命じた外国裁判所の判決と日本の執行判決

対照表は,アメリカ欄及びカナダ欄の民事の特徴として「懲罰的損害賠償制度」を掲げている。この記載を日本の実務から見る場合には,そのような外国判決が日本で執行できるかどうかが問題となる。

この点について,最高裁判所第二小法廷平成9年7月11日判決は,いわゆる懲罰的損害賠償を命じた外国裁判所の判決について執行判決をすることの可否を判示事項とし,外国裁判所の判決のうち,補償的損害賠償等に加えて,見せしめと制裁のために懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分については執行判決をすることができないとした。

さらに,最高裁判所第三小法廷令和3年5月25日判決は,民訴法118条3号の要件を具備しない懲罰的損害賠償としての金員の支払を命じた部分が含まれる外国裁判所の判決に係る債権について弁済がされた場合,その弁済が当該外国裁判所の強制執行手続においてされたものであっても,これが上記部分に係る債権に充当されたものとして執行判決をすることはできないとした。前者が懲罰的損害賠償部分そのものの執行を否定したのに対し,後者は,外国での弁済の充当という形でその部分が実質的に実現されることも認めない趣旨と読むことができる。対照表の1語から受ける印象と,日本の裁判所における帰結とは異なる。

第6 各国編の内容を検討した記事

各国編6点については,開示文書の記述と現行制度とを条文・規則・判例に当たって照合した記事を別に作成している。対照表だけでは分からない各国の詳細,及び作成後の改正によって食い違うに至った部分は,次の各記事を参照されたい。

アメリカ合衆国の司法制度――最高裁判所の開示文書と,その後に条文・規則・判例が動いた部分
イギリス連合王国(イングランド及びウェールズ)の司法制度――最高裁判所の開示文書とその後の主な改正
ドイツ連邦共和国の司法制度――最高裁判所の開示文書とその後の主な改正
フランス共和国の司法制度――最高裁判所の開示文書とその後の主な改正
オーストラリア連邦の司法制度――最高裁判所の開示文書と,その後の法改正
カナダの司法制度――最高裁判所の開示文書とその後の主な改正

対照表の欄が現在は妥当しない例として,フランス欄が掲げる小審裁判所及び大審裁判所は2020年1月1日に司法裁判所へ統合されており,オーストラリア欄が掲げる家庭裁判所及び連邦巡回裁判所は2021年9月1日に統合されている。いずれも各国編の記事で扱っている。

第7 関連する開示資料及び記事

外国の裁判所が日本に対して裁判文書の送達や証拠調べを要請する方法については,外務省が外国の裁判所が日本に裁判文書の送達及び証拠調べを要請する方法を公表しており,送達条約及び民訴条約の加盟状況に応じた要請の経路が別紙として整理されている。日本の裁判所から外国への送達については外国送達の方法,送達条約及び公示送達で扱っている。

最高裁判所は,これらの文書の改訂版を作成していない一方で,裁判官及び裁判所職員の海外派遣は継続している。次の各記事は,その状況を示す開示資料を整理したものである。

判事補の海外留学状況
判事補の外部経験の概要
裁判官の民間企業長期研修等の名簿

アメリカ法を学ぶための入門書については,次の投稿が参考になる。

出典・参考資料

1 法令

日本国憲法76条2項(e-Gov法令検索)
刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)350条の2(e-Gov法令検索)
検察審査会法(昭和23年法律第147号)41条の6(e-Gov法令検索)
民事訴訟法(平成8年法律第109号)118条3号・381条の2(e-Gov法令検索)
裁判員の参加する刑事裁判に関する法律(平成16年法律第63号)2条1項(e-Gov法令検索)

2 裁判例

最高裁判所第二小法廷平成9年7月11日判決(平成5年(オ)第1762号,執行判決,民集51巻6号2573頁,裁判所ウェブサイト)
最高裁判所第三小法廷令和3年5月25日判決(令和2年(受)第170号,執行判決請求・民訴法260条2項の申立て事件,民集75巻6号2935頁,裁判所ウェブサイト)

3 公文書・開示文書

①最高裁判所事務総長「司法行政文書不開示通知書」(令和6年10月9日付け,最高裁秘書第2739号)
②最高裁判所「諸外国(米英独仏豪加)及び我が国の司法制度の概要(対照表)」(A4判横1枚。司法行政文書開示申出に対する開示文書)
③最高裁判所「イギリス連合王国(イングランド及びウェールズ)の司法制度」1頁・7頁・13頁(同開示文書。全69頁)
④法務省民事局「民事訴訟法等の一部を改正する法律について」(改正の概要及び施行日)
⑤法務省「拘禁刑下の矯正処遇等について」(拘禁刑の創設及び令和7年6月1日施行)

4 文献

①木佐茂男『司法改革と行政裁判』(日本評論社,2026年)380頁

5 ウェブ資料

①外務省「外国の裁判所が日本に裁判文書の送達及び証拠調べを要請する方法」(平成30年12月28日)
②裁判所「改正民訴法等で変わる民事訴訟手続の概要」(民事訴訟手続のデジタル化の施行日)