第1 結論
国の行政機関に対する通常の情報公開請求では,開示請求の理由や開示後の利用目的を請求書に記載する必要はなく,原則としてその目的によって開示・不開示の結論を変えることもできない。
もっとも,「利用目的は一切問われない」という表現は,請求時の審査と開示後の利用とを混同するおそれがある。権利濫用に当たる例外的な請求,行政機関情報公開法とは別に運用されている司法行政文書の開示申出,地方公共団体ごとの条例及び開示後の著作権・個人の権利は,それぞれ別に検討する必要がある。
開示文書を記事,研究又は資料集に利用することが一般に禁止されるわけではない。法令・告示・裁判所の判決等のように著作権の目的とならないもの,著作権法上の引用,権利者の許諾又は公共データ利用規約等のライセンスに基づく利用など,適法な公表・再利用の方法を文書と利用態様に応じて選ぶことになる。
第2 行政機関情報公開法では請求理由を記載しない
1 請求書の法定記載事項
行政機関の保有する情報の公開に関する法律は,政府の説明責任を全うすることを目的とし,3条で「何人も」行政文書の開示を請求できると定めている。日本国籍,住所地,利害関係その他の資格は要件ではない。
同法4条1項が開示請求書に必要としているのは,①開示請求者の氏名又は名称及び住所等と,②行政文書を特定するために必要な事項である。請求理由,調査対象,開示後の利用目的又は営利・非営利の別は,法定の記載事項に含まれない。
また,同法5条の不開示情報は,文書に記録された情報の性質と,これを公にすることによって生じる支障を基準としている。そのため,通常の開示決定は,請求者の動機や開示後の予定ではなく,対象文書に不開示情報が記録されているかを中心に判断される。
2 平成21年度の情報公開・個人情報保護審査会答申
平成21年度(行情)答申第131号ないし第134号は,独立行政法人の競争相手である事業者が情報を利用する可能性を理由に,不開示とすることができるかが問題となった事案である。
答申は,情報公開法制が請求者の属性や請求目的を問わず,請求の対象となった法人文書の内容に即して開示・不開示を判断する仕組みであることを前提に,競争相手であることや開示情報を事業に利用する可能性だけを理由として不開示にすることはできないとした。
これは開示決定の判断基準についての答申であり,開示を受けた情報のあらゆる利用方法を許諾したものではない。開示後の利用については,後記第4の問題が残る。
3 最高裁平成19年判決の補足意見
最高裁平成19年4月17日第三小法廷判決(平成18年(行ヒ)第50号,集民224号97頁)は,愛知県の旧情報公開条例に基づく食糧費関係文書の一部非公開処分を扱った判決である。
同判決の補足意見は,情報公開請求権が何人にも認められ,請求者の目的のいかんを問わず請求できる権利である以上,公開により事務・事業へ支障が生じるかは一般的・客観的に判断すべきであると述べた。
この説明は法廷意見そのものではなく,補足意見に記載されたものである。また,判決が直接判断したのは愛知県の旧条例に基づく不開示事由であり,開示文書の二次利用一般ではない。この射程を区別して参照する必要がある。
第3 目的不問の原則にも例外がある
1 権利濫用となる開示請求
開示請求権も,どのような態様で行使してもよいわけではない。民法1条3項は権利の濫用を許さないと定めており,「情報公開制度における権利の濫用について」は,制度の趣旨を著しく逸脱し,行政機関の事務を混乱・停滞させることを目的とするような例外的事案への対応を検討している。
もっとも,請求文書が大量であること,反復請求であること又は行政機関が対応に労力を要することだけで,直ちに権利濫用となるものではない。対象文書の特定,分割開示の相談その他の合理的な方法を検討した上で,請求の態様と制度運営への影響を個別に判断する必要がある。
2 司法行政文書の開示申出
裁判所は行政機関情報公開法の対象となる行政機関ではなく,裁判所が保有する司法行政文書は,「裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱」に基づく開示申出の制度によって取り扱われる。
同要綱は何人も開示を申し出ることができるとし,申出書の記載事項に利用目的を掲げていない。他方で,裁判所の事務を混乱・停滞させる目的であることが明らかな場合その他開示申出権の目的を著しく逸脱した利用と認められる場合には,開示をしないことができる旨を明記している。
したがって,行政機関情報公開法の説明を司法行政文書へそのまま当てはめるのではなく,裁判所の要綱を確認する必要がある。司法行政文書の範囲及び管理については,「司法行政文書に関する文書管理(AIリライト)」で整理している。
3 地方公共団体の情報公開条例
地方公共団体の情報公開は,各団体の条例による。国の行政機関情報公開法と基本的な考え方を共通にする制度であっても,適正使用の責務,濫用的請求への対応その他の規定は自治体ごとに確認する必要がある。
例えば,埼玉県情報公開条例の解釈及び運用の基準は,利用目的や理由等の個別的事情を聴くことは適切でなく,商業目的での使用も一律には禁止されないと説明している。他方で,第三者の権利を侵害する利用,開示情報の不当な利用及び著作権法上の問題については,利用者が責任を負うことを併せて示している。
第4 開示決定と開示文書の再利用は別の問題である
1 公益目的の公表は情報公開制度の目的に沿う
行政機関情報公開法1条は,政府の諸活動を国民に説明する責務が全うされるようにするとともに,国民の的確な理解と批判の下に公正で民主的な行政を推進することを制度目的としている。開示文書を保存し,内容を検証し,出典を示して広く知らせる活動は,国民が行政活動を理解し,検証し,批判するための基礎を提供するものであり,この制度目的に正面から沿う公益的な活動である。
同法3条が「何人」にも開示請求権を認め,請求理由や利用目的を法定記載事項としていないのは,行政文書を請求者との個人的関係に応じて開示する制度ではなく,文書の内容に即して開示・不開示を客観的に判断する制度だからである。同法には,開示文書を受領した者に対し,開示を受けたという理由だけで一般的な守秘義務を負わせ,又は公益目的の公表を一律に禁止する規定もない。
本ブログが,裁判所その他の公的機関の文書を取得し,年月日,文書名及び発出主体を特定した上で,原資料を読者が確認できる形にして制度の運用や沿革を説明することには,高い公益性がある。特に,行政機関等が自らウェブサイトに掲載していない資料,過去のウェブサイトから失われた資料又は散在して検索しにくい資料について,継続的な検証可能性を確保する意義は大きい。
また,公的機関の活動に関する情報を社会へ伝達し,事実に基づく議論に供する行為は,日本国憲法21条が保障する表現活動の重要な一内容である。情報公開制度の目的と表現の自由は,公的資料を検証可能な形で社会へ還元する活動の公益性を支える。
もっとも,情報公開制度を利用するときは,①誰がどの文書を請求できるか,②その文書に不開示情報があるか,③行政機関がどの方法で閲覧又は写しの交付を行うか,④受領者が開示後に複製・公衆送信・頒布等を行えるかという四つの段階を分ける必要がある。行政機関情報公開法3条ないし5条が主として規律するのは①と②であり,14条が③の開示の実施方法を定めるが,④については,後記のとおり,公益目的に加えて,著作物性,権利制限規定,利用許諾,名誉・プライバシー及び利用規約等を重ねて判断することになる。
2 著作権が及ばない文書・情報は広い
著作権法が保護するのは思想又は感情を創作的に表現した著作物であり,単なる事実,数値,データ,アイデア及び誰が書いても同じになる定型的な表現には著作権が及ばない。したがって,開示文書全体に著作物性がある場合でも,そこに記録された年月日,決裁経過,件数,役職,異動,統計その他の客観的事実を抽出し,出典を示して自分の文章で説明することは,著作物の表現を利用することとは別である。
同法13条は,①憲法その他の法令,②国又は地方公共団体の機関等が発する告示,訓令,通達その他これらに類するもの,③裁判所の判決,決定,命令及び審判並びに裁判に準ずる手続による行政庁の裁決・決定,④国等が作成するこれらの翻訳物・編集物を著作権の目的から除外している。本ブログが多く取り扱う法令,通達及び裁判書は,この規定によって利用できる範囲が広い。
また,公務員が職務上作成した文書であっても,直ちにすべての表現が著作物になるわけではない。様式に沿った通知書,事務的な照会・回答,単純な名簿又は事実の羅列は,個々の表現に創作性があるかを具体的に検討する必要がある。著作物性がない部分については,複製又は公衆送信に著作権者の許諾を要しない。
一方,同法42条の3は,行政機関等が情報公開法令に従って著作物を公衆に提供・提示するため,必要と認められる限度で利用できることを定める。同法18条3項も,一定の場合には,行政機関等へ未公表著作物を提供した著作者が,情報公開法令に基づく行政機関等の公衆への提供・提示に同意したものとみなしている。これらの規定は,著作権法自体が情報公開の公益を組み込んでいることを示すものである。
同法42条の3による行政機関等の開示と,受領者によるウェブサイトへの掲載とは利用主体及び利用態様が異なる。ただし,この区別は開示文書の公表を否定する結論ではなく,受領者については,著作物性がないこと,後記の引用その他の権利制限,明示又は黙示の利用許諾,利用規約その他の法的根拠を確認するという意味である。
3 引用・報道等による利用
著作権法32条1項は,公表された著作物について,公正な慣行に合致し,報道,批評,研究その他の引用の目的上正当な範囲内で引用して利用できると定める。公的機関の活動を検証し,制度を説明し,原資料に基づく批評を行うという本ブログの目的は,条文が例示する報道,批評及び研究と密接に関連する。
引用の正当な範囲は,引用部分の文字数だけで機械的に決まるものではなく,記事の目的,原資料を示す必要性,引用部分と本文との主従関係,引用部分の明確な区別及び著作権者の利益への影響を踏まえて判断される。開示文書の文言,書式又は前後関係そのものが検証対象であるときは,その検証に必要な範囲を画像又は文字で示す必要性が高い。引用箇所を明瞭に区別し,文書名,作成者,日付及び原資料へのリンクを示し,記事本文で実質的な説明又は評価を加えることにより,引用の根拠は強くなる。
同法32条2項は,国等の機関が一般に周知させることを目的として作成し,その著作名義の下に公表する資料について,転載禁止の表示がない限り,説明の材料として新聞紙,雑誌その他の刊行物に転載できる場合を定めている。また,同法41条は,時事の事件を報道する場合に,その事件を構成し,又はその過程で見聞される著作物を,報道目的上正当な範囲で利用できることを定めている。対象資料,掲載媒体及び利用態様が各条の要件を満たす場合には,これらも独立した利用根拠となる。
同法48条が出所の明示を求める場合に限らず,公的資料を扱う記事で出典及び原資料への到達経路を明示することは,引用部分と記事作成者の説明を区別し,読者による検証を可能にする。この運用は,著作権法上の適法性だけでなく,記事の正確性及び公益性も同時に高める。
4 明示の許諾・法定の同意・黙示の利用許諾
著作権法63条1項は,著作権者が他人に著作物の利用を許諾できると定める。許諾は利用規約,メール,申請書への回答その他の方法で明示できるほか,書面による明示の合意がなくても,当事者の合理的意思を客観的事情から解釈して,黙示の利用許諾が認められる場合がある。
大阪高裁令和3年1月21日判決(令和2年(ネ)第597号)は,デザイン制作委託契約について,成果物の目的の範囲内で複製することを許諾する合意が存在すると合理的に解釈し,原制作物と同じ宣伝広告・販売促進の目的のために必要な範囲で複製した店頭用POPを黙示の利用許諾の範囲内と認めた。この判決は,黙示の許諾の成否が,文言の有無だけではなく,資料の作成・提供目的,利用目的の同一性,利用態様及び必要な範囲によって判断されることを示している。
開示文書又はその素材について,次の事情が重なるほど,ウェブサイトへの掲載に関する黙示の利用許諾を基礎付ける方向に働くと考えられる。
① 著作権者又は著作権者から権限を与えられた者が資料を提供したこと。
② 提供前又は提供時に,資料をウェブサイトで公表し,制度の説明・検証に利用する目的が伝えられていたこと。
③ 提供者がその目的を知った上で,ウェブ掲載に適した電子ファイル,掲載用画像又は埋込み手段を提供したこと。
④ 転載禁止その他の留保がなく,公衆への周知,説明又は検証という資料の作成目的と掲載目的が一致していること。
⑤ 内容を不当に改変せず,出典と作成主体を明示し,目的に必要な範囲で利用していること。
⑥ 同種資料についての利用規約,公表方針又は従前の取扱いが二次利用を認める方向にあること。
以上の事情は,一つだけで結論を決めるのではなく,全体として評価される。特に,開示申出書又はその後の連絡でウェブ公表の目的を明示し,権利者又は権限ある提供者がこれを認識して電子データを提供した場合には,黙示の許諾を主張する基礎が強くなる。
反対に,知財高裁平成28年6月23日判決(平成28年(ネ)第10026号)は,紙の冊子の作成・配布と,電子データをウェブサイトに掲載して誰でも閲覧できるようにすることとは利用方法として質的に異なるとして,紙媒体についての許諾がウェブ掲載に当然には及ばないとした。したがって,黙示の許諾を基礎付ける場合にも,単なる沈黙だけではなく,ウェブ掲載を含む具体的な目的と提供経緯を確認することが有用である。
なお,著作権法18条3項のみなし同意は,行政機関等が情報公開法令により未公表著作物を公衆に提供・提示することに関するものであり,受領者による再公表を直接許諾する規定ではない。ただし,情報公開法令による公衆への提供を著作権法が予定し,著作者が別段の意思を表示しなければ同意があったものと扱う仕組みは,開示文書の公共的利用を著作権法が積極的に調整していることを示している。
5 利用規約・オープンデータ・原資料へのリンク
行政機関等のウェブサイトが公共データ利用規約,クリエイティブ・コモンズその他のライセンスを採用している場合は,その条件に従う利用が明示の許諾に基づく最も明確な方法となる。営利・非営利を問わない二次利用,複製,公衆送信及び改変を認める規約もあり,本ブログの記事に広告が表示されることだけで利用が妨げられるとは限らない。適用される規約,第三者の権利表示及び出典記載の条件は,後記第5のとおり個別に確認する必要がある。
文書そのものを自らのサーバーへ複製する必要がない場合は,行政機関等が適法に公開している原資料へリンクし,必要な事実と評価を自分の文章で説明する方法がある。通常のリンクはリンク先文書の複製物を自ら作成して公衆送信するものではなく,読者を公的な原資料へ直接導くため,著作権上の負担を抑えながら検証可能性を高めることができる。
原資料が将来削除される可能性がある場合でも,記事本文に正式名称,作成主体,作成日,文書番号及び確認した内容を記載しておけば,資料の同一性と記事作成時の調査経過を示しやすい。原資料の保存が必要なときは,著作物性,引用,許諾及び利用規約を順に確認して,根拠を重ねることになる。
6 名誉・プライバシーとの調整
開示文書に個人又は法人について社会的評価を低下させる事実が含まれる場合,公益目的は名誉毀損の成否において重要な法的意味を持つ。最高裁平成17年6月16日第一小法廷判決(平成15年(受)第900号)は,公共の利害に関する事実について専ら公益を図る目的で公表した場合,重要な部分の真実性が証明されれば違法性がなく,真実性の証明がなくても真実と信ずる相当の理由があれば故意又は過失が否定されるという判例法理を前提に判断している。
本ブログが公的機関の一次資料そのものを確認し,出典を明記し,公開された事実と記事作成者の評価を区別し,反対方向の資料も検討し,誤りが判明した場合に訂正することは,公益目的,真実性及び相当な調査を基礎付ける事情となる。公務,公的機関の組織・運用,公金の支出,公職者の職務及び司法制度に関する事実は,私人の私生活だけに関する事実と比べ,公共の利害との関係が強い。
プライバシーその他の人格的利益についても,公表される情報の性質,対象者の地位,公務との関係,公表の目的,入手方法,既に公表されている範囲及び表現方法等を総合して判断することになる。開示決定は公益性を基礎付ける一事情となるが,それだけで個別の公表態様が決まるものではないため,公務との関係が乏しい住所,連絡先,被害者・未成年者に関する情報その他の私生活情報は,公表目的との関係で必要性を確認し,必要に応じてマスキングする。この区別は,名誉・プライバシーに関する本ブログの記事で詳しく説明している。
7 本ブログによる資料公開の法的基盤
本ブログによる開示文書の公表・資料化は,単一の抽象的な「公益目的」だけに依拠するものではない。①情報公開法1条の説明責任及び国民による理解・批判に資するという制度目的,②事実・データ・定型的表現には著作権が及ばないこと,③著作権法13条によって法令,通達及び裁判書等が権利の目的から除外されること,④同法32条等の権利制限規定,⑤明示又は黙示の利用許諾,⑥利用規約・オープンデータ,⑦公的な原資料へのリンク,⑧名誉毀損法上の公益目的・真実性・真実相当性という複数の根拠を,資料の性質に応じて重ねることができる。
とりわけ,本ブログが開示文書を一次資料として保存し,公的機関の制度・運用・沿革を説明し,文書名・日付・文書番号及び出典を示し,読者が原資料と記事の説明を照合できるようにする活動は,情報公開によって得られた情報を社会へ還元し,公的機関の説明責任を実質化するものである。これは単なる私的利用や資料の転載それ自体を目的とする活動とは異なり,公益的な調査,記録,報道,批評及び研究として位置付けられる。
公表に際して,資料ごとに,著作物性がない部分を基礎とし,必要部分は出所を明示して引用し,公的機関の公開ページへリンクし,利用規約又は許諾がある場合はこれを併用し,公務と無関係な個人情報を必要に応じて除くという運用を行えば,法的根拠は一層強固になる。このような確認は,本ブログの資料公開活動を否定するための留保ではなく,公益的な活動を継続可能で検証に耐えるものとするための基盤である。
第5 オープンデータと個別の開示文書は同じではない
1 オープンデータの意味
オープンデータ基本指針は,国,地方公共団体及び事業者が保有する官民データについて,①営利目的・非営利目的を問わず二次利用できるルールが適用され,②機械判読に適し,③無償で利用できるものをオープンデータと定義している。
この定義に従えば,情報公開請求に対して個別に交付された文書が,交付されたという理由だけで当然にオープンデータになるわけではない。二次利用できる旨の規約が適用されているか,データ中に第三者の権利の対象となる情報が含まれていないかを確認する必要がある。
2 公共データ利用規約
公共データ利用規約(第1.0版)は,この規約を採用した国の府省のウェブサイトについて,出典の記載等の条件の下でコンテンツの複製,公衆送信,翻訳・変形等を可能にする共通ルールである。
ただし,同規約は,個別のウェブサイトが採用している場合に適用される。また,第三者が著作権その他の権利を有するコンテンツについては,利用者の責任で権利者から許諾を得る必要がある。したがって,掲載元の利用規約,コンテンツの権利表示及び第三者権利の有無まで確認することが重要である。
第6 Internet Archiveに関する不開示通知書
1 令和元年5月22日付通知書
最高裁判所事務総長令和元年5月22日付司法行政文書不開示通知書は,司法行政文書開示手続により開示された司法行政文書の一部を一般の人がインターネット上で公表することが法的に禁止されているかが分かる現行の文書を対象とする申出について,対象文書を作成又は取得していないことを理由に不開示とした。
2 令和元年8月9日付通知書
最高裁判所事務総長令和元年8月9日付司法行政文書不開示通知書は,Internet Archiveが裁判所ウェブサイトの過去の内容を公表するに際し,裁判所から得た許可の内容が分かる現行の文書を対象とする申出について,対象文書を作成又は取得していないことを理由に不開示とした。
3 二つの通知書から分かる範囲
二つの通知書から直接分かるのは,各申出の時点において,申出により特定された現行の文書を最高裁判所が作成又は取得していなかったという事実である。
文書不存在を理由とする不開示通知は,開示文書のインターネット公表が一般に違法であることを示すものでも,一般に適法であることを包括的に確認するものでもない。実際の公表では,前記第4及び第5のとおり,対象文書の法的性質,利用態様,掲載元の利用条件及び第三者の権利を確認することになる。
出典・参考資料
1 法令
① 行政機関の保有する情報の公開に関する法律(平成11年法律第42号)1条,3条~5条及び14条(e-Gov法令検索)
② 著作権法(昭和45年法律第48号)2条1項1号,13条,18条3項,32条,41条,42条の3,47条の7,48条,49条及び63条(e-Gov法令検索)
③ 日本国憲法21条(e-Gov法令検索)
④ 民法(明治29年法律第89号)1条3項(e-Gov法令検索)
2 裁判例・答申
① 最高裁平成19年4月17日第三小法廷判決(平成18年(行ヒ)第50号,集民224号97頁,裁判所ウェブサイト)
② 大阪高裁令和3年1月21日判決(令和2年(ネ)第597号,著作権侵害差止等請求控訴事件,裁判所ウェブサイト)
③ 知財高裁平成28年6月23日判決(平成28年(ネ)第10026号,売掛金請求控訴事件,裁判所ウェブサイト)
④ 最高裁平成17年6月16日第一小法廷判決(平成15年(受)第900号,損害賠償等請求事件,裁判所ウェブサイト)
⑤ 情報公開・個人情報保護審査会平成21年度(行情)答申第131号ないし第134号(平成21年7月13日答申)
3 公的資料
① 裁判所の保有する司法行政文書の開示に関する事務の取扱要綱(裁判所ウェブサイト)
② 情報公開制度における権利の濫用について(総務省,平成21年7月)
③ 埼玉県情報公開条例の解釈及び運用の基準33頁~35頁(埼玉県,令和8年4月)
④ オープンデータ基本指針(高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部・官民データ活用推進戦略会議,令和6年7月5日改正)
⑤ 公共データ利用規約(第1.0版)(デジタル庁)
⑥ 令和8年度著作権テキスト4頁~5頁及び63頁~64頁(文化庁)
⑦ 最高裁判所事務総長令和元年5月22日付司法行政文書不開示通知書(最高裁秘書第2552号)
⑧ 最高裁判所事務総長令和元年8月9日付司法行政文書不開示通知書(最高裁秘書第3771号)
4 文献
① 宇賀克也『新・情報公開法の逐条解説〔第8版〕』(有斐閣,2018年)64頁,158頁及び164頁
② 中山信弘『著作権法〔第3版〕』(有斐閣,2020年)447頁