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生成AIで調べた交通事故の慰謝料・後遺障害等級・過失割合を弁護士に確認するとき―AIの回答で確かめる点と初回相談への持って行き方(AI作成)

第1 この記事の対象と結論

1 対象とする読者と基準日

この記事は,交通事故の被害者側で,ChatGPTその他の生成AIサービスを使って慰謝料の金額,後遺障害等級,過失割合又は時効を調べた人を対象とする。
加害者側の対応,物損だけの事故の細かな算定及び個別の保険約款の解釈は扱わない。
法令,告示及び公的機関の説明は,令和8年9月28日時点で確認した内容に基づく。

2 結論

(1) 原資料で確かめる四つの点

生成AIの回答は,結論ではなく「見込みの仮説」として扱うのが安全である。
その仮説が正しいかどうかは,次の四つを原資料で確かめると判断しやすい。
①慰謝料の金額が,自賠責保険の支払基準によるものか,裁判で参照される基準によるものか
②後遺障害等級が,認定済みの等級か,AIが想定した見込みの等級か
③過失割合が,どの事故類型を当てはめ,どの修正要素を考慮したものか
④時効の期間と起算点が,人身の損害,物の損害,自賠責保険の請求及び労災保険の給付のどれについてのものか

(2) 弁護士に確認するときの基本

弁護士に相談するときは,AIに入力した質問文とAIの回答を,保険会社からの書類,診断書及び保険証券と一緒に持参すると,仮説のどこが本件に当てはまり,どこが違うかを短い時間で確認できる。

第2 生成AIの回答をそのまま使えない理由

1 個人情報保護委員会が示す一般の利用者への留意点

個人情報保護委員会は,令和5年6月2日の「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」で,一般の利用者に向けた留意点を示している。
そこでは,生成AIサービスの応答結果には不正確な内容が含まれることがあり,自然な文章であっても確率的な相関関係に基づいて生成されることが指摘されている。
また,入力された個人情報が機械学習に利用されることがあるため,リスクを踏まえて入力を判断すること,事業者の利用規約やプライバシーポリシー等を確認して利用を判断することも挙げられている。
この注意喚起は個人情報の取扱いを中心とする資料であるが,応答結果に不正確な内容が含まれ得るという指摘は,交通事故の金額や等級の見込みを尋ねる場合にも当てはまる。

2 交通事故の金額は前提によって大きく変わる

交通事故の損害賠償の金額は,どの算定基準を使うか,後遺障害等級が何級か,被害者の過失がどの程度か,既に支払われた金額がいくらかによって大きく変わる。
生成AIに「むち打ちで14級なら慰謝料はいくらか」と尋ねた場合,回答の金額がこれらの前提をどう置いたものかは,回答の中で明示されないことがある。
その金額を保険会社の示談案と比べる前に,回答がどの前提を置いたかを一つずつ特定する必要がある。

第3 AIの回答で確かめる四つの点

1 慰謝料の金額はどの基準によるものか

(1) 自賠責保険の支払基準

自賠責保険の保険金は,金融庁及び国土交通省の告示(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号)である「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」に従って支払われる。
支払には限度額があり,国土交通省の説明によれば,傷害による損害は120万円,後遺障害による損害は第14級の75万円から第1級の3,000万円(常時介護を要する第1級は4,000万円)である。
生成AIが示した金額が自賠責保険の支払基準によるものであれば,それは自賠責保険から支払われる金額を示すものであって,加害者に対して請求できる損害額そのものを示すものではない。
告示の全文,別表及び改正経緯は,自賠責保険の支払基準――令和2年4月1日以降の交通事故に適用される告示の全文,別表及び改正経緯で整理している。

(2) 裁判で参照される基準と保険会社の示談案

公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部は,『民事交通事故訴訟 損害賠償額算定基準』(通称「赤い本」)を編さん,発行しており,同支部の説明によれば,東京地裁の実務に基づき賠償額の基準を示す専門書として毎年改訂され,裁判所でも損害賠償額の算定基準として利用されている。
同支部の案内によれば,2026年版は令和8年2月6日に発刊されている。
公益財団法人日弁連交通事故相談センター本部も,『交通事故損害額算定基準』(通称「青本」)を隔年で改訂して発行している。
生成AIの回答が「裁判基準」「弁護士基準」と称していても,どの年の版を前提にしているか,入通院の期間や実通院日数をどう数えたかは回答だけでは分からないことが多い。

保険会社の示談案は,これらの基準と一致するとは限らない。
慰謝料の三つの算定基準の違いは交通事故の慰謝料の種類と三つの算定基準で,示談案の各項目の照合方法は保険会社から届いた交通事故の示談案の見方で説明している。

2 後遺障害等級は認定済みか見込みか

(1) 等級は政令の別表で定まる

後遺障害等級は,自動車損害賠償保障法施行令の別表第一及び別表第二で定められている。
例えば,別表第二は,第12級13号を「局部に頑固な神経症状を残すもの」,第14級9号を「局部に神経症状を残すもの」と定めており,保険金額は第12級が224万円,第14級が75万円である。
生成AIが「14級なら〇〇万円」と答えるときは,第14級が認定されることを前提にしている。
症状固定前の段階や,等級の申請結果が出る前の段階では,その前提自体がまだ確定していない。
画像所見と等級の関係は後遺障害14級9号でも画像所見はあるのかで,後遺障害診断書の記載項目は交通事故の後遺障害診断書で説明している。

(2) 等級の認定と不服の申立て

損害保険料率算出機構の説明によれば,自賠責保険の請求があると,同機構の自賠責損害調査事務所が保険会社から送られた請求書類に基づいて損害調査を行い,保険会社はその調査結果に基づいて支払額を決定する。
後遺障害の等級認定が難しい事案等は同機構の地区本部や本部で審査され,異議申立ての事案等は,外部の専門家が参加する自賠責保険(共済)審査会で審査される。

国土交通省の説明によれば,後遺障害等級を含む保険会社の決定に異議がある場合は,保険会社に対して異議申立てを行うことができるほか,一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構に調停を申請することもできる。
また,国土交通省の説明によれば,保険会社は,自賠責保険金を支払うときに,後遺障害等級とその判断理由等を書面で請求者に交付することを義務付けられている。
本記事では,生成AIの回答が「異議申立てをすれば等級が上がる」と読める場合でも,まずこの書面で認定の理由を読み,その理由に応える医学的資料を追加できるかを確かめることを基本とする。

3 過失割合はどの事故類型を当てはめたか

(1) 過失割合の基準は令和8年3月に改訂されている

民法722条2項は,被害者に過失があったときは,裁判所がこれを考慮して損害賠償の額を定めることができると定めている。
過失相殺の割合を事故類型ごとに示した書籍として,『民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準』(別冊判例タイムズ)がある。
判例タイムズ社の案内によれば,その全訂6版(別冊判例タイムズ39号)は2026年3月30日に発売され,「自転車同士の事故」の章が新たに設けられたほか,歩行者,四輪車,単車,自転車,高速道路上及び駐車場内の事故の基準にも改訂が加えられている。

生成AIの学習データや回答の根拠が改訂前の版に基づいている場合,回答の過失割合が現在の版の基準と異なることがある。
回答が何版のどの事故類型を当てはめたものかを確認し,確認できないときは現在の版で当てはめ直す必要がある。
改訂点は別冊判例タイムズ39号(過失相殺率の認定基準・全訂6版)の改訂点で整理している。

(2) 修正要素と事故状況の証拠

同じ事故類型でも,速度,合図の有無,一時停止,車線の位置等の修正要素によって過失割合は変わる。
生成AIは,利用者が入力しなかった事情を考慮できず,入力した事情が証拠で裏付けられるかも判断できない。
ドライブレコーダーの映像,実況見分調書等の刑事記録及び現場の写真で,どの修正要素を主張できるかを確かめる必要がある。
映像の扱いは交通事故のドライブレコーダー映像を民事訴訟で使う方法で説明している。

4 時効の期間と起算点

(1) 損害賠償請求権の時効

民法724条は,不法行為による損害賠償請求権が,被害者又はその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないとき,又は不法行為の時から20年間行使しないときに時効によって消滅すると定めている。
人の生命又は身体を害する不法行為については,民法724条の2により,この3年間が5年間とされる。
そのため,同じ交通事故でも,人身の損害と物の損害とで時効の期間が異なる。
生成AIの回答が「交通事故の時効は3年」とだけ述べている場合は,どちらの損害についての回答かを確かめる必要がある。
起算点の考え方は交通事故の損害賠償請求権の時効はいつから進行するかで整理している。

(2) 自賠責保険の請求と労災保険の給付

自動車損害賠償保障法19条は,被害者が加害者側の自賠責保険に直接請求する権利等について,被害者又はその法定代理人が損害及び保有者を知った時から3年を経過したときに時効によって消滅すると定めている。
業務災害又は通勤災害に当たる場合,労働者災害補償保険法42条1項により,療養(補償)給付や休業(補償)給付等を受ける権利は2年,障害(補償)給付等を受ける権利は5年で時効によって消滅する。
加害者に対する請求の時効だけを尋ねた回答には,これらの時効が含まれていないことがある。
自賠責保険の時効は自賠責保険の被害者請求・加害者請求の消滅時効で説明している。

第4 生成AIに入力する情報と入力しない情報

1 個人を特定する情報は入力しない

前記の注意喚起は,入力された個人情報が機械学習に利用され,不正確な内容を含めて出力されるリスクがあることを指摘している。
本記事では,生成AIで見込みを調べるときは,氏名,住所,生年月日,事故の日時と場所の詳細,保険証券番号,診断書や保険会社の書類の画像を入力しないことを基本とする。
基準の違いや確認すべき点を知る目的であれば,「追突事故」「むち打ち」「通院6か月」「実通院日数60日」「過失は0」のように,事故類型と数字だけに置き換えて尋ねることが考えられる。

2 質問文と回答を保存しておく

生成AIの回答は,同じ質問でも日時や使ったサービスによって変わり得る。
弁護士に確認するときに備えて,使ったサービス名,質問した日付,入力した質問文及び回答の全文を保存しておくとよい。
質問文が残っていれば,回答がどの前提を置いたのかを後から特定しやすい。

第5 弁護士に確認するときの持って行き方

1 持参すると確認が早いもの

次の資料があれば,生成AIの回答と照らし合わせながら確認できる。
①生成AIに入力した質問文と回答(サービス名と日付が分かるもの)
②相手方の保険会社から受け取った書類(示談案,計算書,治療費の支払状況が分かるもの)
③診断書及び後遺障害の認定結果の通知(あれば)
④自分や家族の自動車保険の保険証券(弁護士費用特約,人身傷害保険の有無を確認するため)
⑤事故の状況を書いたメモ,ドライブレコーダーの映像又は現場の写真(あれば)

2 相談で確かめること

(1) 四つの点を資料に基づいて確かめる

相談では,第3で挙げた四つの点を,手元の資料に基づいて一つずつ確かめる。
生成AIの回答が正しい部分は,そのまま今後の方針を考える材料になる。
回答が本件に当てはまらない部分は,どの前提が違うのか(基準の種類,等級の認定の有無,事故類型,時効の対象)を特定しておくと,保険会社との交渉で確認すべき点を整理しやすい。

(2) 弁護士費用特約を使う場合

弁護士費用特約を使える場合は,保険会社が紹介する弁護士ではなく自分で選んだ弁護士に依頼できるかも確認事項になる。
自己選任と保険者の同意の関係は弁護士費用保険で弁護士を自分で選べるかで整理している。

第6 関連記事

①交通事故の慰謝料の種類と三つの算定基準――入通院・後遺障害・死亡の早見表,示談金との違い及び計算例
②保険会社から届いた交通事故の示談案の見方――慰謝料・休業損害・逸失利益・既払金・過失割合・清算条項の確認
③後遺障害等級の号数の読み方-自賠責と労災の対照表,旧号数の読替え,相当・準用及び併合
④生成AIを使った本人訴訟-訴状・準備書面の作成,架空判例の確認及び裁判所への提出
⑤交通事故事件のご相談・ご依頼の流れ(お問い合わせからご依頼まで)
⑥家族が付き添って弁護士に相談するとき―同席の可否,本人の意思確認,守秘義務と交通事故・相続での注意点

第7 出典・参考資料

1 法令・告示

①民法(明治29年法律第89号)722条,724条及び724条の2(e-Gov法令検索)
②自動車損害賠償保障法(昭和30年法律第97号)16条及び19条(e-Gov法令検索)
③自動車損害賠償保障法施行令(昭和30年政令第286号)別表第二(e-Gov法令検索)
④労働者災害補償保険法(昭和22年法律第50号)42条(e-Gov法令検索)
⑤自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準(平成13年金融庁・国土交通省告示第1号,国土交通省掲載PDF)

2 所管行政機関・公的機関の資料

①個人情報保護委員会「生成AIサービスの利用に関する注意喚起等」(令和5年6月2日)
②国土交通省「限度額と補償内容」(自賠責保険・共済ポータルサイト)
③国土交通省「支払に疑問、不服がある場合には」(自賠責保険・共済ポータルサイト)
④損害保険料率算出機構「当機構で行う損害調査」

3 文献

①判例タイムズ社「民事交通訴訟における過失相殺率の認定基準〔全訂6版〕別冊判例タイムズ39号(2026年3月30日発売)」
②公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部「2026年版民事交通事故訴訟損害賠償額算定基準(赤い本)発刊のお知らせ」
③公益財団法人日弁連交通事故相談センター東京支部ホームページ(赤い本の説明)
④公益財団法人日弁連交通事故相談センター「当センターの刊行物について(青本及び赤い本)」