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後遺障害14級9号でも画像所見はあるのか―レントゲン・CT・MRIの異常と12級13号との違い(AI作成)

第1 結論

後遺障害14級9号に認定された事案でも,レントゲン,CT又はMRIで何らかの所見を確認できる場合がある。
画像所見が一つでもあれば12級13号になり,画像所見がなければ14級9号になるという二分法ではない。

自賠責保険の別表第二では,12級13号は「局部に頑固な神経症状を残すもの」,14級9号は「局部に神経症状を残すもの」と定められている。
自賠責保険における等級認定は,原則として労災保険の障害等級認定基準に準じて行われる。
12級は障害の存在が他覚的に証明できるもの,14級は障害の存在が医学的に説明可能なものとする区別は,労災の認定基準の文言ではなく,自賠責保険の実務で採られている考え方といわれている(小松初男・小林覚・西本邦男編『後遺障害入門 認定から訴訟まで』(青林書院,平成30年)170頁)。
労災の認定基準では12級13号に当たる局部の頑固な神経症状が第12級の12と表記される点を含め,自賠責と労災の号数の対応は,後遺障害等級の号数の読み方で説明している。

したがって,実際の検討では,画像に所見があるかだけでなく,その所見が事故によって生じたものか,現在の症状を説明するものか,神経学的所見及び治療経過と整合するかを総合して判断する必要がある。
また,骨折後の変形障害,関節の機能障害又は脊柱の変形障害など,疼痛とは別の障害系列に該当する場合があるため,12級13号と14級9号だけを比較すれば足りるとは限らない。

本記事は,画像所見の意味を検討する記事である。
14級全体の各号,申請方法及び金額の入口は後遺障害14級の認定・慰謝料・逸失利益,認定手続全般は交通事故の後遺障害の総合案内を参照されたい。

第2 「画像に写る」という言葉を四つに分ける

1 現在の所見があること

レントゲン写真に骨棘,椎間板腔の狭小化,骨折後の骨癒合,軽度の変形又は金属製の固定材料が写っているという事実は,現在の画像所見である。
しかし,現在の所見があることだけでは,事故前から存在した変性なのか,事故又は治療によって生じた変化なのかは分からない。

2 時間の経過による変化があること

医学的な意味で「変化を確認した」というためには,原則として撮影時期の異なる比較可能な画像が必要である。
事故後の一枚の画像だけから分かるのは現在の所見であり,事故前又は急性期の画像と比較しない限り,時間的な変化を直接確認したことにはならない。

3 事故による変化であること

事故前にはなかった所見が事故後に出現していても,撮影条件,体位,荷重の有無,投影方向又は装置の違いによって見え方が変わることがある。
受傷機転,初診時の所見,症状の出現時期及び連続性も併せて,事故との因果関係を検討する必要がある。

4 現在の症状の原因となっていること

画像上の異常があっても,その部位と疼痛又はしびれの分布が一致しなければ,症状の原因とは直ちにいえない。
反対に,画像上の異常が乏しくても,神経学的検査,診察所見及び一貫した治療経過から症状を医学的に説明できる場合がある。

確認する命題画像だけで分かること追加して確認する資料
現在の所見があるか撮影時点の形態画像診断報告書,原画像
時間的変化があるか比較可能な複数画像があれば判断材料となる事故前,急性期,術後及び症状固定時の画像
事故による変化か画像だけでは確定できないことが多い受傷機転,初診録,症状経過
症状の原因か部位的な整合性は検討できる神経学的所見,理学所見,治療経過

第3 レントゲン・CT・MRIで分かること

1 レントゲン

レントゲンは,骨折,脱臼,骨癒合,関節面の段差,骨棘,配列及び固定材料の位置を評価する基本的な検査である。
多くの骨又は関節の評価では,正面像と側面像のように互いに異なる方向から撮影した画像を組み合わせることが基本となる。
ただし,後遺障害診断書の作成だけを理由とする一律の撮影方向があるわけではなく,疑われる病態と安全性に応じて撮影方法を選ぶ必要がある。

膝又は足関節の関節裂隙及び荷重時の配列を評価する場合には立位・荷重位,下肢の骨軸又は脚長差を評価する場合には目的に応じた全長像が検討対象となる。
動揺性を評価する屈曲・伸展撮影又はストレス撮影は,疑われる不安定性,応力の方向,関節角度及び負荷方法を定めて実施しなければ,画像間の数値を単純に比較することはできない。
特に頚椎の屈曲・伸展側面像は,一般的な頚部痛又は神経根症を理由に機械的に追加する検査ではなく,不安定性が臨床的に疑われ,急性期の骨折又は脱臼等が除外され,主治医が安全に実施できると判断した場合に限って検討すべきである。ストレス撮影の位置付け,方法及び限界は,動揺関節の立証手段としてのストレスレントゲン撮影で扱っている。

一方,神経,靱帯,椎間板及び半月板などの軟部組織を直接描出する能力には限界がある。
レントゲンに決定的な異常がないことだけで,疼痛又はしびれが存在しないとはいえない。

2 CT

CTは,骨折線,骨片,関節面の陥没又は不整,骨癒合の状態など,骨の立体的な形態評価に優れている。
単純レントゲンで重なって見えにくい部位を詳しく確認するために有用である。

ただし,CTで形態異常が明瞭でも,その異常が症状を生じさせているかは別に検討する必要がある。

3 MRI

MRIは,椎間板,神経根,脊髄,靱帯,半月板,軟骨,骨髄浮腫などの評価に用いられる。
レントゲンでは分からない軟部組織の所見を把握できる場合がある。

もっとも,無症状者にも椎間板変性,椎間板膨隆その他の変性所見が相当の頻度で認められ,その頻度は年齢とともに増加することが報告されている。
MRIで異常が見つかったことと,事故による症状の原因であることは同じではない。

検査主に評価しやすい対象代表的な限界
レントゲン骨,関節の配列,骨癒合,固定材料軟部組織や神経の評価に限界がある
CT骨折線,骨片,関節面,骨癒合症状との因果関係は別途検討を要する
MRI神経,脊髄,椎間板,靱帯,半月板等無症候性の変性所見も少なくない

第4 14級9号でも画像所見があり得る場面

1 骨折は癒合したが疼痛が残る場合

レントゲンで骨癒合又は仮骨を確認できても,癒合不全,著しい変形,関節面の不整合又は固定材料の破損など,残存疼痛を強く裏付ける所見が認められない場合がある。
この場合,骨折をした事実及び治癒後の形態が画像に写っていることと,残存疼痛が12級13号として医学的に証明されることは別問題である。

2 軽度の変形又は関節面の不整が残る場合

軽度の変形又は不整が画像で確認できても,その程度,疼痛部位との一致,荷重時の影響,可動域制限又は不安定性との関係によって評価は異なる。
形態所見が機能障害又は変形障害の等級に該当する場合は,神経症状の等級だけで処理されないこともある。

3 固定材料が残っている場合

プレート,スクリュー又は髄内釘が写っていることは,手術歴及び固定材料の存在を示す。
しかし,固定材料があるという事実だけで,現在の疼痛の原因又は程度が証明されるわけではない。
固定材料周囲の所見,疼痛部位,抜釘前後の経過などを検討する必要がある。

4 加齢性又は事故前からの変性所見がある場合

頚椎又は腰椎の骨棘,椎間板腔狭小化,膝関節の変形性変化などは,事故とは無関係に存在することがある。
事故後の画像で初めて発見されたとしても,初めて発生したことを意味しない。
事故前画像がない場合には,所見の新旧,受傷機転との整合性及び症状経過を慎重に評価する必要がある。

第5 画像に異常が乏しくても症状が否定されるわけではないこと

疼痛又はしびれは自覚症状であり,通常の画像検査でその強さを直接測定することはできない。
また,撮影範囲,撮影方向,空間分解能,体位及び撮影時期により,病変が描出されないこともある。

したがって,画像に明確な異常がないことだけを理由に症状を否定するのは適切ではない。
他方で,14級9号の認定には,事故態様,受傷直後からの症状,治療の継続性,症状固定時の診察所見などから,症状の残存を医学的に説明できることが重要となる。

第6 12級13号・14級9号と画像所見の関係

1 等級表そのものは画像所見の有無で区分していないこと

自賠責保険の等級表は,12級13号を「局部に頑固な神経症状を残すもの」,14級9号を「局部に神経症状を残すもの」と定めており,「画像所見あり」又は「画像所見なし」とは記載していない。

2 画像所見は医学的裏付けを構成する一資料であること

事故による器質的変化が画像で明瞭であり,症状部位,神経学的所見及び治療経過と整合する場合,12級13号を検討する重要な材料となる。
しかし,画像所見が非特異的,軽微又は事故前からの変性と考えられる場合は,所見が存在しても12級13号の医学的証明にならないことがある。
例えば,京都地方裁判所平成25年2月5日判決(平成23年(ワ)第2903号,交通事故民事裁判例集46巻1号212頁,裁判所HP未掲載)は,MRIでC4/5の頸髄圧迫を伴うヘルニア等が確認されながら,これと整合する神経学的所見や症状がないとして,「明らかな他覚的裏付けがあるというのはなお躊躇される」とし,10年間8%の労働能力喪失を認めるにとどめた。
この8%は,12級(14%)と14級(5%)の間の率である。
同判決は,加齢による退行変性は疾患といえる程度に至らない限り素因減額の対象とならないとして,素因減額も否定している。

14級9号でも,事故後に症状が連続し,診察所見及び治療経過から症状の残存を医学的に説明できる一方,12級13号に必要な程度の客観的裏付けまでは得られないという事案がある。
その事案に骨癒合,軽度変形又は変性などの画像所見が併存することは矛盾しない。

3 別の障害系列を先に検討すべき場合

関節可動域の制限,動揺関節,脊柱又は長管骨の変形,欠損又は短縮などがある場合,神経症状ではなく機能障害又は変形障害として評価されることがある。
画像所見が明瞭な事案ほど,12級13号か14級9号かという二択に狭めず,該当し得る障害系列を全体として検討する必要がある。

等級と画像所見を比較するときは,条文の基準と,個々の資料による評価を分けて読む必要がある。

比較項目12級13号14級9号
自賠責の条文局部に頑固な神経症状を残すもの局部に神経症状を残すもの
画像の位置付け所見の存在だけで事故との関係・残存障害を確定しない画像所見がない障害だけを指すものではない
確認する資料症状,診療経過,画像・検査,障害による支障を対応させる同左。12級との違いを画像の有無だけで決めない

非該当又は14級で,画像の評価に不服がある場合は,異議申立てと認定理由・追加資料の確認に沿って,判断理由と提出済み画像・読影報告の対応を確認する。

第7 画像資料を検討するときの確認事項

画像を後遺障害の資料として用いる場合,少なくとも次の事項を確認する必要がある。

① 検査の種類がレントゲン,CT又はMRIのいずれか

② 撮影日,撮影部位,左右及び脊椎の高位

③ 正面像,側面像,斜位像,全長像,屈曲・伸展側面像又はストレス撮影等の撮影方向及び範囲

④ 立位・臥位,荷重・非荷重,関節角度,応力の方向及び負荷方法等の撮影条件

⑤ 事故前,急性期,術後,抜釘前後及び症状固定時の比較画像の有無並びに各画像の撮影条件が比較可能か

⑥ 画像診断報告書だけでなく,DICOM形式等の原画像を確認できるか

⑦ 画像所見と疼痛部位,しびれの分布,神経学的所見及び可動域との整合性

⑧ 後遺障害診断書に,所見の具体的内容と症状との関係が記載されているか

単に「画像上異常あり」と記載するだけでは,どの所見を,どの時点の,どの画像で確認したのかが分からない。
撮影方向,体位,荷重又は関節角度が異なる画像間の見え方の差を,直ちに病的な変化と評価してはならない。
画像診断報告書,原画像,撮影条件,診療録及び後遺障害診断書を相互に照合することが重要である。

検査結果の証拠価値は,「画像か診察か」という一列の序列では決まらない。レントゲン・CT・MRIは構造を記録する一方,ジャクソンテスト,スパーリングテスト及び徒手筋力テストは症状誘発又は機能を評価し,疼痛,努力,検者の手技等の影響を受け得る。
実務書には,画像上の神経圧迫と整合する神経学的異常がある事案は12級,画像が圧迫を示唆するにとどまる事案は14級に認定されやすいとの説明もある(前掲『後遺障害入門』173頁)。これは公表された等級表又は労災認定基準の文言ではなく,実務傾向に関する二次資料の説明である。個別事案では,所見の客観性,診断上の関連性,事故による発生・増悪,症状との解剖学的整合性及び各等級要件を分けて評価する必要がある。

第8 公表事例から分かること

厚生労働省が公表した左脛骨高原骨折の事例では,原処分は,レントゲン上,脛骨近位端の骨癒合を認め,癒合不全又は欠損を認めないとした上で,残存する疼痛を14級9号の神経症状と評価した。
これは,画像で骨折後の状態が確認できることと,疼痛が12級相当として評価されることが同義でないことを示す一例である。

もっとも,同事例の審査では,左膝関節面全体に及ぶ粉砕骨折,関節面の不整合及び動揺関節が認められ,疼痛及び軽度の運動制限はその不整合から派生すると判断され,最終的に機能障害として準用10級に改められた。
したがって,この事例は「骨癒合が写っていれば14級である」ことを示すものではない。
画像所見を症状の系列,機能障害及び変形障害と結び付けて評価する必要性を示している。

裁判例でも,画像異常の存在だけでは結論は決まらない。
甲府地裁平成17年10月12日判決(平成15年(ワ)第438号)は,画像所見が残存症状を明確に説明できないとして14級にとどめ,京都地裁平成28年8月30日判決(平成26年(ワ)第2685号)は,症状の拡大・悪化や検査結果等から事故による後遺障害を否定した。
既往症に捻挫が加わったとして12級を認めた例も含む詳細は,むち打ち症の12級・14級・非該当の裁判例比較を参照されたい。

第9 関連する記事

① 大腿骨骨折後の痛みの後遺障害-12級13号・14級9号を分ける画像所見,治療経過及び抜釘後疼痛(AI作成)

② 脛骨高原骨折で関節面の陥没が残った場合の後遺障害12級13号-14級9号との分かれ目,機能障害への包摂及び立証資料(AI作成)

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④ 交通事故の後遺障害診断書――症状固定後の作成,記載項目,必要資料及び認定申請(AI作成)

⑤ ストレスレントゲン撮影

第10 出典・参考資料

① 国土交通省「自賠責保険・共済の支払基準」及び「後遺障害による損害」の等級表

② 厚生労働省「神経系統の機能又は精神の障害に関する障害等級認定基準について」(平成15年8月8日基発第0808002号)

③ 厚生労働省「障害等級認定基準の一部改正について」(平成16年6月4日基発第0604002号)

④ 厚生労働省「左脛骨高原骨折後の障害に関する審査請求事例」(平成22年公表事例)

⑤ Spitzer WOほか「Scientific monograph of the Quebec Task Force on Whiplash-Associated Disorders」Spine,1995年

⑥ Brinjikji Wほか「Systematic Literature Review of Imaging Features of Spinal Degeneration in Asymptomatic Populations」AJNR,2015年

⑦ Bedson Jほか「The discordance between clinical and radiographic knee osteoarthritis」BMC Musculoskeletal Disorders,2008年

⑧ American College of Radiology「ACR Appropriateness Criteria Cervical Pain or Cervical Radiculopathy」2024年改訂版

⑨ American College of Radiology「ACR Appropriateness Criteria Acute Trauma to the Knee」2019年改訂版

⑩ American College of Radiology「ACR Appropriateness Criteria Acute Hip Pain」2024年改訂版

⑪ 小松初男・小林覚・西本邦男編『後遺障害入門 認定から訴訟まで』(青林書院,平成30年)170頁・173頁

⑫ 京都地方裁判所平成25年2月5日判決(平成23年(ワ)第2903号)交通事故民事裁判例集46巻1号212頁(裁判所HP未掲載。判例秘書で判決本文を確認)