メインコンテンツへスキップ

重要事項説明書(離婚事件)

離婚事件では,離婚するかどうかだけでなく,別居中の生活費,子どもの生活,親権及び監護,親子交流,養育費,財産分与,年金分割,慰謝料並びに離婚後の手続を並行して検討します。
弁護士へ依頼した後も,依頼者からの情報提供と重要な判断が必要です。

本記事は,山中弁護士へ離婚事件を依頼する方が,受任時から事件終了後までに確認しておくべき事項をまとめたものです。
個別の委任契約書,委任契約約款及び担当弁護士からの説明が本記事と異なる場合は,個別の説明が優先します。
本記事は令和8年10月15日現在の制度を基準にしています。

第1 本記事の目的と関連記事との役割分担

1 本記事は依頼後の進め方を扱います

弁護士に事件を依頼するときに知っておいてほしい大切なことは,証拠の提出,相手方との連絡,裁判書面の確認,和解,費用及び回収など,事件の種類を問わず共通する事項を説明しています。

離婚の手続と決めること-親権・養育費・財産分与・慰謝料は,離婚の方法と法律上検討する論点の全体像を扱っています。

これに対し,本記事は,離婚事件を依頼した方に向けて,委任の範囲,連絡方法,資料の準備,子どもへの配慮,合意案の検討及び離婚成立後の手続を,事件の進行に沿って説明します。
養育費等の計算方法や個別制度の詳細は,後記第13の関連記事に委ねます。

2 結果や解決時期を保証するものではありません

受任時の見通しは,その時点で伺った事実と確認できた資料に基づくものです。
相手方の主張,新しい証拠,子どもの状況,収入・資産の変化,裁判所の判断その他の事情により,見通し,方針及び必要期間は変わります。

依頼者にとって不利に思える事情や,相手方から指摘されそうな事実も,早い段階で担当弁護士へ伝えてください。
弁護士が後から初めて知ると,主張,証拠提出又は和解判断の組み直しが必要となることがあります。

第2 最初に委任の範囲を確認してください

1 離婚事件と関連事件は同じ手続とは限りません

「離婚事件を依頼した」というだけでは,受任範囲は一義的に決まりません。
交渉,離婚調停及び離婚訴訟は別の段階です。
また,婚姻費用,子の監護者指定,子の引渡し,親子交流,保全処分,不貞相手への慰謝料請求,控訴,強制執行等は,離婚事件とは別の申立て又は訴訟を要することがあります。

委任契約を締結するときは,少なくとも次の事項を確認してください。

・交渉,調停,訴訟のどこまでが委任に含まれるか。
・婚姻費用,養育費,親権・監護,親子交流,財産分与,年金分割及び慰謝料のうち,何を扱うか。
・不貞相手その他の第三者への請求を含むか。
・保全処分,控訴・上告,離婚後の履行勧告・強制執行及び戸籍・登記等の手続を含むか。
・追加の委任契約,弁護士費用又は実費が必要となる場合は何か。

2 実現したいことに優先順位を付けてください

離婚の早期成立,子どもの生活の安定,安全確保,婚姻費用,親子交流,財産の確保,慰謝料,住居の維持など,すべてを同時に最大限実現できるとは限りません。
絶対に譲れない事項,条件次第で調整できる事項及び優先度の低い事項を担当弁護士へ伝えてください。

希望が変わること自体は珍しくありません。
ただし,申立て,書面提出,調停条項への合意又は和解成立の直前に方針が変わると,追加の準備や日程変更が必要となることがあります。
変更を考えた時点で早めに相談してください。

第3 安全確保と期限のある問題を先に伝えてください

1 暴力,脅迫,つきまとい及び子どもの安全

身体的暴力,脅迫,つきまとい,監視,経済的支配,子どもへの虐待その他の危険がある場合は,通常の交渉方針より先に安全確保を検討します。
現在の居場所,相手方が把握している住所・勤務先・学校・通院先,鍵や端末の管理,緊急連絡先及び警察・支援機関への相談歴を担当弁護士へ伝えてください。

裁判所へ提出する書類には,住所等の非開示,希望する送達場所,マスキングその他の対応が必要となる場合があります。
写真の位置情報,PDFのプロパティ,メール署名,宅配履歴その他のデジタル情報から居場所が推測されることもあるため,提出又は送信の前に確認してください。

差し迫った危険があるときは,弁護士からの返信を待つことより,警察,医療機関その他の緊急窓口への連絡を優先してください。

2 期限又は先行処分のおそれがある事項

次のような事情がある場合は,初回相談又は受任直後に伝えてください。

・相手方が離婚届を提出するおそれがある。
・預金の払戻し,不動産・株式の処分,保険の解約又は事業資産の移転が予定されている。
・子どもの転居,転校,海外渡航又は引渡しをめぐる対立がある。
・住宅の明渡し,住宅ローンの延滞,賃貸借契約の終了又は公共料金の停止が迫っている。
・裁判所,相手方代理人,年金事務所,市区町村その他の機関から期限付きの書類が届いた。

協議離婚届を本人の意思に反して提出される具体的なおそれがある場合は,不受理申出を検討します。
制度の対象,方法及び限界は,離婚届不受理申出の方法と効力で説明しています。

第4 事実関係と資料は早めにまとめてください

1 最初に作成してほしい一覧

離婚事件では,感情的な出来事と,裁判所の判断又は合意条件に必要な事実を分けて整理する必要があります。
次の四つを一覧にすると,検討すべき問題と不足資料が見えやすくなります。

・婚姻から現在までの時系列。
別居,不貞,暴力,生活費の停止,子どもの出来事,交渉及び申立ての日付を含みます。
・家族と生活の状況。
家族構成,住所,勤務先,収入,健康状態,子どもの通園・通学及び日常の監護状況を含みます。
・収入,資産及び負債の一覧。
名義,取得時期,おおよその金額,資料の所在及び相手方が管理しているかどうかを記載します。
・希望する解決条件。
離婚,親権・監護,親子交流,金銭,住居,姓・戸籍及び解決時期に分けます。

2 証拠は原形を保ってください

戸籍,契約書,通帳,源泉徴収票,確定申告書,登記事項証明書,保険証券,メール,メッセージ,写真,録音及び動画は,問題部分だけを切り取らず,前後関係と取得元が分かる状態で保存してください。
原本へ説明を書き込まず,説明は別紙又はコピーに記載します。

デジタル資料は,スクリーンショットだけでなく,元のファイル,送受信日時,アカウント及び会話全体が分かる書出しも保存してください。
削除,編集,切取り又はファイル形式の変換をすると,内容や取得経緯の説明が難しくなることがあります。

相手方の端末,メール,クラウド,SNS,金融機関又は勤務先のシステムへ無断でアクセスしたり,パスワードを推測して資料を取得したりしないでください。
証拠を新たに取得する方法に迷う場合は,実行前に担当弁護士へ相談してください。

3 資料は有利・不利を問わず共有してください

相手方へ送ったメッセージ,過去の合意書,既に提出した書面,収入や資産の減少を示す資料など,自分に不利に見える資料も含めて共有してください。
事実又は財産を隠したまま手続を進めると,後に説明の信用性を損ない,和解条件又は裁判所の判断に影響することがあります。

第5 受任後の連絡と相手方への対応

1 相手方との交渉は担当弁護士を通してください

受任通知後は,離婚条件に関する交渉,合意書への署名,金銭の受渡し又は資料の提出を,担当弁護士に相談せずに行わないでください。
相手方又は相手方代理人から直接連絡があった場合は,その内容を保存し,担当弁護士へ送ってください。

子どもの病気,学校行事,日常の引渡しその他,緊急又は実務上必要な連絡まで一律に禁止されるわけではありません。
どの連絡を当事者間で行い,どの連絡を代理人間で行うかを,事件の安全性と対立の程度に応じて決めます。

2 住所,収入及び家族状況の変化を知らせてください

転居,電話番号・メールアドレスの変更,転職,退職,休業,昇給・減収,妊娠・出産,再婚,子どもの進学・転校・病気,相手方からの入金その他の変化は,事件の方針や金額に影響します。
裁判所からの連絡や提出期限を失わないよう,変化が生じた時点で報告してください。

3 SNS等で事件内容を発信しないでください

相手方,子ども,学校,勤務先又は事件内容についてSNSやブログへ投稿すると,名誉・プライバシー,子どもの利益,住所秘匿,証拠及び和解交渉に問題が生じることがあります。
限定公開又は匿名の投稿でも,関係者や投稿時刻等から本人が特定されることがあります。

第6 子どもに関する事項

1 親権,監護及び親子交流は分けて考えます

令和8年4月1日以後の制度では,離婚後の親権者として父母双方又は一方を定めることができます。
ただし,共同親権を選べば監護日数が自動的に半分になったり,養育費が当然になくなったりするわけではありません。
親権,監護者又は監護の分掌,子どもの居所,親子交流及び養育費は,それぞれ具体的に検討します。

暴力その他の心身に有害な影響を及ぼす言動のおそれがある場合や,父母が共同して親権を行うことが困難な場合などには,父母の一方を親権者としなければならないことがあります。
共同親権と単独親権を抽象的な優劣で選ぶのではなく,子どもの安全,生活の継続性及び父母間の協力可能性を具体的に確認します。

制度の全体像は,裁判所「離婚と子どもをめぐる新しいルールについて」及び共同親権・共同監護の場合の養育費をご参照ください。

2 子どもを連絡役,証人又は交渉材料にしないでください

相手方への伝言を子どもに頼んだり,相手方との生活を繰り返し問いただしたり,離婚条件について一方の親を選ぶよう迫ったりしないでください。
相手方の悪口,裁判書面又は金銭条件を子どもに示すことも,子どもへ負担をかけます。

子どもが自分から話した内容を担当弁護士へ伝える場合は,発言の日時,場所,前後の会話及び質問の仕方を記録し,子どもの言葉と大人の受け止め方を区別してください。
特定の答えを練習させたり,録音のために同じ質問を繰り返したりしないでください。

3 親子交流は安全と子どもの利益を優先します

親子交流の日時,場所,受渡方法,学校行事,宿泊及びオンライン交流等は,子どもの年齢,生活リズム,健康状態及び安全面を踏まえて検討します。
約束を変更する必要がある場合は早めに連絡し,子どもを通じて調整しないでください。

暴力,虐待,連れ去り又は強い拒否反応等の懸念がある場合は,一方的に実施又は中止する前に,安全確保,第三者機関の利用,方法変更又は裁判所の手続を検討します。
調停・審判の定め方と履行方法は,親子交流は調停と審判のどちらで決めるかで説明しています。

第7 婚姻費用,養育費,財産分与及び年金分割

1 婚姻費用と養育費を区別してください

婚姻費用は,婚姻中の夫婦と未成熟子を含む世帯の生活費を分担する問題です。
養育費は,離婚後などに父母が子の監護費用を分担する問題です。
別居中の生活費が支払われていない場合,離婚の話合いとは別に婚姻費用の調停・審判が必要となることがあります。

婚姻費用や養育費では,請求又は申立ての時期が過去分の取扱いに影響することがあります。
支払が止まった日,請求した日,相手方の回答及び入金履歴を保存し,早めに相談してください。

2 収入資料は双方について揃えます

給与所得者は源泉徴収票,給与明細,賞与明細及び課税証明書等を,自営業者は確定申告書,決算書,収支内訳書,勘定科目内訳及び事業と家計の資金移動が分かる資料等を準備します。
転職,休業,歩合給,副業,法人経営その他の事情がある場合は,直近1年の数字だけで将来の収入を判断できないことがあります。

裁判所で現在参照されている令和元年版算定表の読み方は,養育費算定表の見方,計算方法及び法定養育費との違い及び婚姻費用算定表の見方,計算方法と特別事情で説明しています。

3 法定養育費は本来の養育費の標準額ではありません

令和8年4月1日以後,養育費の取決めをしないまま離婚した場合には,一定の要件の下で法定養育費が発生します。
しかし,法定養育費は取決めまでの暫定的・補充的な制度であり,通常の養育費の標準額又は上限額ではありません。
父母の収入と子どもの事情を踏まえた本来の養育費を別に決める必要があります。

私的合意書,公正証書,調停調書及び審判書では,利用できる履行確保の方法が異なります。
詳しくは,養育費の取り決め方及び法定養育費と養育費債権の先取特権の違いをご参照ください。

4 財産分与は早い段階で財産表を作ります

預貯金,不動産,住宅ローン,保険,株式・投資信託,退職金,事業用財産,自動車,貴金属その他の財産について,名義,取得時期,別居時又は基準時の金額,現在額,負債及び根拠資料を一覧にします。
婚姻前から保有する財産又は相続・贈与により取得した財産を固有財産と主張する場合も,取得経緯と資金の流れを示す資料が必要です。

令和8年4月1日以後に離婚した場合,財産分与の申立ては離婚した日の翌日から起算して5年以内です。
同日前に離婚した場合は,従前どおり2年以内です。
期間に余裕があるように見えても,古い通帳や取引履歴が取得しにくくなるため,離婚前から資料を保全してください。

財産分与による不動産の移転には,譲渡所得税,登録免許税,不動産取得税その他の税務上の問題が生じることがあります。
概要は,離婚時の財産分与と税金をご参照ください。

5 住宅ローンと離婚条件は別の契約関係です

夫婦間で,住宅ローンを一方が支払う,連帯保証人を外す,又は自宅の名義を移すと合意しても,金融機関が当然に拘束されるわけではありません。
債務者・連帯保証人の変更,抵当権,借換えの可否,固定資産税,管理費及び将来の売却可能性を確認します。

自宅に住み続ける条件を作るときは,住宅ローンと新しい住居費を同時に負担できるか,延滞時に自宅が競売となる危険がないかを検討してください。
合意書の文言だけでなく,実際に履行できる資金計画が必要です。

6 年金分割は自動的には行われません

年金分割の合意又は裁判があっても,年金事務所への標準報酬改定請求が別途必要です。
令和8年4月1日以後に離婚等をした場合の請求期限は原則5年以内であり,同日前に離婚等をした場合は原則2年以内です。
合意分割と3号分割では要件と必要書類が異なります。

期限の特例もあるため,離婚日,調停・審判・訴訟の申立日及び成立・確定日を確認し,日本年金機構「離婚時の年金分割」の現行案内に従ってください。

第8 離婚調停と離婚訴訟の進み方

1 離婚調停では離婚条件を一緒に話し合えます

家庭裁判所の夫婦関係調整調停では,離婚そのものに加え,親権者,監護,親子交流,養育費,財産分与,年金分割及び慰謝料等を話し合うことができます。
他方で,婚姻費用や子の引渡しなどについて,別事件としての申立てが必要となる場合があります。

調停委員会は中立の立場から双方の事情を聴き,合意による解決を目指します。
依頼者の代理人ではありません。
提出資料,主張及び譲歩できる範囲は,期日前に担当弁護士と確認してください。

離婚調停が不成立になっても,離婚そのものが自動的に訴訟へ移るわけではありません。
離婚の判断を求めるには,原則として改めて離婚訴訟を提起します。
他方で,婚姻費用など,調停不成立後に審判へ移行する事件もあるため,どの事件がどの段階にあるかを区別してください。

2 離婚訴訟では離婚原因と附帯する事項を審理します

離婚訴訟では,民法上の離婚原因があるかを主張・立証します。
財産分与,子の監護に関する処分,年金分割等は,必要な申立てをした上で,離婚請求と併せて判断を求めることができます。
婚姻中の婚姻費用は,離婚訴訟とは別の家事調停・審判で扱います。

書面の確認,陳述書の作成,本人尋問,子ども又は財産に関する調査,和解条件の最終確認等のため,依頼者本人の対応又は出席が必要となることがあります。
裁判所から届いた書類は,受取日が分かる状態で直ちに担当弁護士へ送ってください。

手続の全体像は,裁判所「夫婦(離婚等)」で確認できます。

第9 合意案と和解案を判断するときの確認事項

1 金額以外の条件も確認します

離婚条件は,金額だけで評価できません。
支払日,振込先,分割払い,遅滞時の取扱い,担保,財産の引渡し,不動産登記,税金,住宅ローン,年金分割,親子交流,連絡方法,清算条項及び秘密保持等を一体として確認します。

養育費や親子交流のように将来の事情変更があり得る事項は,子どもの年齢,進学,医療費,父母の収入変化及び連絡方法を踏まえ,必要以上に硬直的な条項にしないことも重要です。
他方で,履行を確保する必要がある事項は,金額,期限及び方法を明確にします。

2 実行できる内容かを確認します

高額な一括払い,長期の分割払い,住宅ローンと家賃の二重負担,名義変更を前提とする条件等は,相手方の資力,金融機関その他の第三者の承諾及び不履行時の回収方法を確認します。
合意できる文言と,現実に実行できる条件は同じではありません。

3 最終的な合意は依頼者本人が判断します

弁護士は,法的見通し,証拠,時間,費用,執行可能性及びリスクを説明し,条件を検討します。
しかし,離婚するか,どの条件で合意するかという最終判断は依頼者本人が行います。

調停成立又は訴訟上の和解の直前に条件が修正されることがあります。
金額だけでなく,条項全体を読み,理解できない点は合意前に確認してください。

第10 離婚成立後に必要となる手続

1 離婚届と戸籍の手続

調停,審判,判決又は和解等により離婚が成立しても,戸籍へ当然に記載されるとは限りません。
裁判離婚では,所定の書類を添えて,原則として成立又は確定から10日以内に離婚届を提出します。
誰が届出義務者であるか,期限の起算日及び必要書類は,調停調書,判決書,確定証明書等を受け取った時点で確認してください。

婚姻により氏を改めた人は,離婚後の氏と戸籍を選択します。
婚姻中の氏を引き続き称する届出には期限があります。
将来の戸籍,勤務先,資格,銀行口座その他の名義変更も踏まえて決めてください。

2 子どもの氏と戸籍は自動的には変わりません

父母が離婚しても,子どもの氏と戸籍が,子どもと同居する親の氏・戸籍へ当然に変わるわけではありません。
氏が異なる親の戸籍へ子どもを移す場合は,家庭裁判所の子の氏の変更許可と,市区町村への入籍届が必要です。

15歳未満の子について共同親権となっている場合は,原則として父母が共同で申し立てるなど,令和8年4月以後の取扱いに注意が必要です。
現行の書式と手続は,裁判所「子の氏の変更許可」で確認してください。

3 行政,保険,学校及び財産の手続

事情に応じて,住民票・マイナンバー,健康保険,年金,児童扶養手当その他の給付,ひとり親家庭の医療費助成,勤務先,学校・保育所,銀行・証券・保険,不動産登記,自動車,公共料金等の手続が必要です。
制度,所得要件,必要書類及び受付時期は自治体や機関によって異なるため,最新の案内を確認してください。

財産分与金,養育費又は慰謝料の入金,親子交流,不動産の移転及び年金分割等について,履行期限と必要な手続を一覧にして管理します。
支払がない場合又は相手方が合意を守らない場合は,記録を残して早めに担当弁護士へ連絡してください。

第11 弁護士費用,追加事件及び委任の終了

1 別の手続には追加費用が必要となることがあります

婚姻費用,子の引渡し,保全処分,不貞相手への慰謝料請求,控訴,強制執行,登記・税務その他の手続は,当初の委任に含まれず,追加の契約と費用を要することがあります。
裁判所へ納める印紙・郵便料,戸籍等の取得費,交通費,調査費,鑑定費その他の実費も,弁護士費用とは別です。

費用の種類と一般的な確認方法は,弁護士費用の見方及び弁護士との委任契約書で確認する事項をご参照ください。

2 委任終了時に確認する事項

事件が終了したときは,原本の返還,事件記録の保管,預り金・実費・報酬の精算,調停調書・審判書・判決書等の保管,今後の支払管理及び追加手続の有無を確認します。

依頼者が弁護士を変更する場合も,現在の期限,未提出の書面,記録の引継ぎ,費用の精算及び裁判所への届出を確認する必要があります。
変更を考える場合は,期限が迫る前に相談してください。

第12 依頼者向け確認チェックリスト

受任時と事件の節目で,次の事項を確認してください。

・今回の委任に含まれる手続と,含まれない手続を理解している。
・安全上の懸念,住所秘匿及び離婚届不受理申出の要否を伝えた。
・実現したいことに優先順位を付け,不利な事情も担当弁護士へ伝えた。
・婚姻から現在までの時系列と,家族・生活状況の一覧を作成した。
・収入,資産,負債及び住宅ローンの資料を,名義を問わず整理した。
・原本やデジタル資料を編集・削除せず,取得元と前後関係が分かる状態で保存した。
・相手方への連絡,合意,署名,金銭の受渡し又は資料提出を独断で行っていない。
・子どもを伝言役にせず,相手方の悪口や裁判内容を子どもへ伝えていない。
・住所,連絡先,収入,勤務先,家族又は子どもの状況が変わったときに報告した。
・調停案・和解案について,金額,期限,履行方法,税金,第三者の承諾及び不履行時の対応を確認した。
・離婚成立後の届出,氏・戸籍,年金分割,保険,給付,学校及び名義変更の担当と期限を確認した。
・別事件,控訴,強制執行及び離婚後の手続に追加の委任・費用が必要かを確認した。

第13 関連記事

本記事と既存記事の役割は,次のように分かれます。

・弁護士に事件を依頼するときに知っておいてほしい大切なこと――すべての依頼事件に共通する証拠,連絡,書面確認,和解,費用及び回収の基本。
・離婚の手続と決めること-親権・養育費・財産分与・慰謝料――離婚の方法と各法律問題の全体像。
・本記事――山中弁護士へ離婚事件を依頼した方が,受任時から離婚成立後までに確認し,準備し,判断する事項。
・養育費の取り決め方――合意書,公正証書,調停調書等の違いと履行確保。
・親子交流は調停と審判のどちらで決めるか――親子交流の定め方,試行的実施及び履行。
・離婚時の財産分与と税金――財産分与をする側・受ける側の課税関係。
・離婚届不受理申出の方法と効力――協議離婚届の提出をめぐる事故を防ぐ手続。

第14 出典・参考資料

1 e-Gov法令検索「民法」。
2 e-Gov法令検索「家事事件手続法」。
3 e-Gov法令検索「人事訴訟法」。
4 e-Gov法令検索「戸籍法」。
5 法務省「民法等の一部を改正する法律(父母の離婚後等の子の養育に関する見直し)について」。
6 裁判所「夫婦(離婚等)」。
7 裁判所「離婚と子どもをめぐる新しいルールについて」。
8 裁判所「財産分与請求調停」。
9 裁判所「調停離婚が成立した方へ」。
10 裁判所「子の氏の変更許可」。
11 日本年金機構「離婚時の年金分割」。