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司法研修所の民事裁判起案と講評―設問の読み方・主張整理・事実認定・復習(AI作成)

第1 民事裁判起案では何を検討するのか

1 公開資料で確認できる指導の目的

司法研修所の民事裁判起案に取り組むときは,設問が何を求めているかを確認し,主張分析によって検討対象を定め,証拠と重要な間接事実を評価して,その判断を文章にするという流れを意識したい。
本記事では,民事裁判教官室の公開資料を基に,起案に当たっての確認事項と,講評を受けた後の復習方法を説明する。

民事裁判修習における指導について(令和7年3月版)では,法的な主張分析,民事事実認定及び紛争解決の基本的な能力を指導の目標としている(2頁)。
同資料は,修習記録を用いた起案や争点整理演習を通じて,実体法と要件事実を具体的な事案で使いこなすことを目指すと説明している(3・4頁)。
司法研修所の位置付けについては,司法研修所とは,集合修習全体については,集合修習とはを参照されたい。

2 判決書全体の起案と同じものと考えない

上記の令和7年3月版資料は,当時の司法研修所では判決書の起案をさせておらず,判決書の書き方の指導をしていないと説明している。分野別実務修習でも,基本的には部分起案やサマリーペーパーが想定されている(7頁)。
この説明は,同資料における指導内容の説明である。個別の配属庁でどの起案を命じられるかは,実際の指示によって確認する必要がある。

以下では,民事裁判起案の留意点(令和7年2月版)を中心に説明する。
資料の版と掲載は令和8年10月5日に確認した。各起案では,配布された設問・起案要領・指示を先に確認し,その指定に従うことが出発点となる。

第2 記録を検討する前に設問の指定を整理する

1 対象となる請求・抗弁と記載範囲

「民事裁判起案の留意点」は,主張整理を求める問題について,対象が特定の請求・抗弁に限られるのか,全部の請求・抗弁なのかを確認するよう説明している(PDF2頁)。
請求原因だけを整理する指示と,抗弁・再抗弁までを整理する指示では,必要な作業が異なる。
また,附帯請求を対象とするか,整理した理由まで説明するかについても,設問の指定を確かめる必要がある。

記録を読み始める前に,①検討対象,②必要な結論,③理由の要否,④除外された事項を短く書き出しておく方法を提案する。
読み進める途中で検討が広がったときにも,このメモに戻れば,書くべき範囲を確認できる。

2 一般的な留意点より起案要領の指定を優先する

公開の留意点は,個別の起案要領や指示を確認するための補助となる資料である。
起案要領で特別な指示がされている場合には,その指示が優先することも,同資料で示されている(PDF2頁)。
以前の起案や過去の講評と似ているという理由で,今回の指定を読み飛ばさないことが必要である。

第3 主張整理では実体法から具体的事実へ進む

1 訴訟物,請求原因,抗弁及び再抗弁を整理する

主張整理では,まず訴訟物を把握し,当事者の言い分を請求原因・抗弁・再抗弁等に整理する。
その際,法律効果を生じさせるために必要な具体的事実を摘示することが求められる(「民事裁判起案の留意点」PDF3頁)。
複数の請求がある場合には,ある抗弁がどの請求に対するものなのかを明確にする必要がある。

記録上の発言や書面の記載をそのまま全部並べるのではなく,どの法規範に基づく,どの法律効果のための事実なのかを確かめたい。
請求原因・抗弁の記載例を知っていても,その背後の実体法の理解が曖昧であれば,事案に応じた整理ができなくなる。
基礎を確認する資料については,司法研修所の民事系公開教材案内を参照されたい。

2 認否を確認して事実認定の対象を定める

主張の整理後は,主要事実についての相手方の認否を確認し,争いのある主要事実を把握する。
公開の留意点では,口頭弁論終結時に維持された主張を整理すること,撤回されたものや陳述されていないもの等を区別することも説明されている(PDF4頁)。
書面中に一度記載されていたというだけで,現在も維持されている主張と決めつけないことが必要である。

「民事裁判修習における指導について」は,適切な主張分析がなければ,事実認定の対象も適切に把握できないことを説明している(3頁)。
事実認定の文章がうまく書けないときには,証拠評価だけでなく,その前提の主張整理と認否に誤りがないかも確かめたい。

第4 事実認定では重要な事実を評価して結論につなげる

1 要証事実と直接証拠を先に確認する

事実認定では,設問が求める要証事実と結論の範囲を確かめる必要がある。
判断の枠組みの記載を求められた場合は,何を判断するために,どの証拠・事情を検討するのかを示す(「民事裁判起案の留意点」PDF5頁)。

類型的に信用性の高い文書が直接証拠に当たる場合は,文書の成立とその内容の証明力を検討する。直接証拠に当たる供述証拠がある場合は,その供述の信用性を検討する。
ここでは,契約書らしい名称の書面があるというだけで直接証拠と扱わず,その要証事実を直接証明する内容かを確かめる必要がある(同PDF6頁)。

2 間接事実,経験則及び反対方向の事情を検討する

動かし難い事実を中心に重要な間接事実を認定し,それが要証事実の存在又は不存在をどの程度推認させるかを,経験則を用いて検討する。
自分の結論と反対方向に働く重要な事情も検討し,それらの相互関係を総合して結論を導くことが必要である(同PDF7頁)。

復習の際には,「この事実がある」だけで文章が止まっていないかを確認したい。
①その事実を何から認定したか,②どの経験則で要証事実に結び付けたか,③反対方向の事情を踏まえても推認が維持されるかを,自分の起案の各段落について点検する方法を提案する。

3 事実の数や固定的な時系列の構成に偏らない

令和7年の指導資料は,間接事実を多数拾うこと自体に注力したり,常に事前・当時・事後の順に論証したりする硬直的な検討の問題点を説明している。
時系列を意識することは有用であるが,すべての起案を同じ順序に並べる必要があるわけではない(「民事裁判修習における指導について」10・11頁,「民事裁判起案の留意点」PDF8頁)。

公開資料では,結論を導くための重要な間接事実を捉えているか,経験則を踏まえた評価が妥当か,総合的な判断が説得的かが重視されている。
したがって,復習では,記録から拾った事実の数を増やすことよりも,結論の分かれ目になった事情とその評価を確かめることに力を注ぎたい。
これらは公開資料に示された指導上の観点であり,個別の起案の配点や二回試験の採点基準を示すものではない。

第5 講評を受けた後の復習方法

1 指摘を原因ごとに分ける

指導資料は,結論を導く上で重要な事実について検討・論証することを重視し,個別の起案講評で,どの事実を検討すべきかについて理解を深めてもらいたいと説明している(「民事裁判修習における指導について」7頁)。
講評では,結論が同じだったかだけでなく,重要な事実の選択と評価がどう違っていたかを確かめたい。

以下は,本記事が提案する復習の分類である。
① 設問の読み違い―検討対象,理由の要否,記載範囲を取り違えたもの。
② 主張分析の誤り―実体法,訴訟物,攻撃防御の構造又は認否を取り違えたもの。
③ 証拠・事実の把握の誤り―重要な証拠・事情を見落としたもの,証拠の内容を誤読したもの。
④ 評価の不足―経験則との結び付き,反対事情の検討又は総合判断が弱かったもの。
⑤ 表現の不足―検討した内容が,読む側に分かる形で記載されていなかったもの。

例えば,重要な間接事実を書かなかった場合でも,記録で見落としたのか,気付いたが重要性を理解できなかったのかで,次に直すべき点は異なる。
その違いを確認してから書き直す方が,同じ誤りを繰り返しにくい。

2 重要な一段落を書き直して判断の変化を残す

復習では,講評の内容をすべて転記するよりも,自分の判断が変わった箇所を明確にすることを提案する。
そのために,①当初の判断,②講評等で気付いた誤り,③正しい検討の根拠,④書き直した段落を一組で残すと,後から見直しやすい。

事実認定の総合判断が弱かった場合は,結論の分かれ目となった事情を一つ選び,その根拠証拠,推認の理由,反対事情への応答を含めて書き直してみる。
主張整理を誤った場合は,文章の語尾だけを直すのではなく,実体法の根拠と攻撃防御の位置を確認した上で,具体的事実を整理し直したい。

3 次の起案・実務修習につなげる

次の起案の前に,前回の復習から確認事項を少数選ぶ方法を提案する。
例えば,設問の範囲を最初に書き出す,認否を確認してから事実認定に進む,総合判断で反対方向の重要な事情に応答する,というように,実際の作業に置き換えられる事項にする。

また,実務修習で実際の事件を検討するときには,起案で学んだ主張分析・事実認定が,争点整理や和解を含む紛争解決にどう働くかを意識したい。
司法研修所と実務庁の指導の役割分担や連携については,令和7年3月版の指導資料15・16頁で説明されている。具体的な配属庁での修習については,民事裁判修習の実際も参照されたい。

第6 関連記事と出典

1 関連記事

・司法研修所の民事系公開教材案内
・集合修習とは―科目,クラス担任制及び起案による指導
・司法研修所教官の役割,身分,任官との関係
・司法修習開始前に送付される資料―白表紙・事前課題・通知書の期別一覧

2 出典と説明の範囲

・司法研修所民事裁判教官室「民事裁判起案の留意点」(令和7年2月版)全9頁(本文はPDF2~9頁)。
・同「民事裁判修習における指導について」(令和7年3月版)全16頁。
・民事裁判教官室・民事弁護教官室民事系科目における法的分析能力(主張分析能力)及び事実認定能力について(令和6年3月版)全2頁。

公開資料の入口は,最高裁判所の民事裁判教官室コーナーである。
本記事は,公開された指導内容と,本記事が提案する学修・復習方法を説明したものである。特定の修習記録の解答,非公開の講評又は個別の採点内容を紹介するものではない。