メインコンテンツへスキップ
       

年休・産前産後休業等を稼働率に算入する賃上げ条項の効力―最高裁平成元年12月22日判決(AI作成)

年間稼働率が80%以下の従業員を翌年度の賃上げ対象から除外する条項について、法が保障する休暇・休業等を欠勤として算入する部分の効力を判断した最高裁平成元年12月22日第二小法廷判決を基に、制度設計と訴訟実務の要点を整理する。

第1 判決の結論

最高裁平成元年12月22日第二小法廷判決(昭和59年(オ)第303号)は、年間稼働率80%以下の従業員を翌年度の賃上げ対象から除外する条項について、年次有給休暇、生理休暇、産前産後休業、育児時間、業務上災害による休業及び正当な争議行為等を欠勤として算入する部分は、公序に反し無効であるとした。

他方、稼働率制度全体を当然に無効とはせず、無効部分を除いた残部は、当事者の合理的意思に反しない限り有効であるとした。その上で、各労働者の稼働率と賃金額を再計算させるため原判決を破棄し、事件を差し戻した。

第2 事案と80%条項

会社と労働組合の間では、一定期間の稼働率が80%以下の従業員について翌年度の賃上げを行わない旨の取扱いが定められていた。稼働率の計算では、現実に勤務しなかった日を広く欠勤として扱い、法令上保障された休暇・休業や正当な組合活動に伴う不就労も算入されていた。

争点は、稼働率という勤務実績を賃上げ条件に用いること自体が許されるかだけではない。どの不就労原因を同じ「欠勤」として扱うか、その結果として法定権利の行使を抑制する効果が生じるか、違法部分を除いた残部を維持できるかが中心となった。

第3 制度目的の合理性と権利行使の抑制を分ける

1 稼働率基準に一定の合理性があり得る

最高裁は、従業員の出勤率又は勤務実績を賃上げの条件とする制度について、企業の経済的観点から一定の合理性を有する場合があることを否定していない。したがって、稼働率を用いたという一事だけで制度全体を無効とする判決ではない。

2 保護された休暇等を一律に不利益算入できない

しかし、法律が労働者に保障する休暇・休業等を取得した日を欠勤として算入し、その結果として翌年度の賃上げ対象から外すことは、権利行使に大きな経済的不利益を結び付ける。権利を形式上残しても、行使すれば継続的な賃金差が生じるなら、その行使を抑制し、法の趣旨を実質的に失わせるおそれがある。

第4 対象となった休暇・休業等

本判決が問題としたのは、年次有給休暇、生理休暇、産前産後休業、育児時間、業務上災害による休業及び正当な争議行為等である。

これらは根拠法、要件、賃金支払の有無及び保護目的が同一ではない。実務では、「勤務しなかった日」という一つの列にまとめず、休暇・休業・休職・遅刻早退・争議行為等を根拠別に分類し、それぞれについて不利益取扱いを禁ずる法令、制度目的及び裁判例を確認する。

第5 一部無効と残部の効力

1 無効となる範囲を特定する

本判決は、法が保障する権利行使を抑制する欠勤算入部分を無効とした。条項中のどの文言・計算要素が違法効果を生むかを特定し、その部分を除外して稼働率を計算する必要がある。

2 残部は当然には無効とならない

無効部分を除いた条項の残部は、当事者の合理的意思に反しない限り有効とされた。残部の効力を検討するときは、条項の目的、文言、計算構造、無効部分を除いても制度が機能するか、労使がその制度を選択したと考えられるかを確認する。

労働協約又は就業規則に無効な要素が含まれるからといって、全てを一括して無効と主張するのでは足りない。反対に、制度目的に合理性があるからといって、個々の算入項目まで当然に有効となるものでもない。

第6 不利益は一年度で終わらないことがある

賃上げ除外によって生じた賃金差が翌年度以降の基本給、賞与、時間外手当又は退職金の計算基礎へ累積する制度では、損害又は未払賃金の計算が複数年度に及ぶことがある。

実務では、基準内賃金の推移、毎年の賃上げ額、欠勤算入を除外した稼働率、賞与・割増賃金・退職金との連動、消滅時効の起算点及び遅延損害金を年度ごとに表にする。差戻し後の審理は、法的評価だけでなく、この再計算を行うための賃金台帳、出勤簿、休暇届、労働協約及び就業規則の収集が中心となる。

第7 就業規則・労働協約の点検方法

① 賃金・昇給・賞与・精勤手当の算定式を特定する。
② 不就労日を、年休、法定休業、会社都合休業、業務災害、私傷病、組合活動その他の原因別に分類する。
③ 各項目について、法令上の権利又は不利益取扱い禁止との関係を確認する。
④ 一日又は一回の取得が、賃上げ除外等の過大な不利益へ結び付く閾値・段差を確認する。
⑤ 違法な算入項目を除いても算定式が機能するかを検証する。
⑥ 過去分について、労働者ごとの再計算、時効及び関連給付への波及を確認する。
⑦ 制度変更時は、労働協約の締結過程、就業規則変更の合理性、説明資料及び経過措置を保存する。

第8 現在の実務での使い方

本判決は平成元年当時の法令及び労使関係を前提とする。現在の事件では、現行の労働基準法、労働組合法、育児介護休業法、男女雇用機会均等法その他の関係法令、施行日、経過措置及び後続判例を確認する。

特に、休暇・休業を取得したことと賃金が支払われることは別問題である一方、権利行使を理由として将来の賃金体系から排除することの適法性は別途検討を要する。「ノーワーク・ノーペイ」という語だけで、将来にわたる昇給除外まで正当化しない。

第9 関連する山中弁護士ブログ記事

① 年次有給休暇の付与日数,取得方法,年5日義務及び時季変更権(AIリライト)
② 労働協約(AIリライト)
③ 上告審に関するメモ書き(AIリライト)

第10 参考資料

① 最高裁平成元年12月22日第二小法廷判決(昭和59年(オ)第303号)
② 富越和厚「最高裁民事破棄判決の実情(6・完)―平成元年度―」判例時報(二次資料)
③ 裁判所・裁判例検索

(本記事はAIが作成した一般的な解説であり、個別事件に対する法的助言ではない。具体的事件では、最新の法令、労働協約、就業規則、賃金台帳、出勤記録、後続判例及び経過措置を確認する必要がある。)