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将棋の公式タイトル戦の優勝賞金はどの所得になるか―事業所得・一時所得の違いと確定申告(AI作成)

第1 将棋の公式タイトル戦の優勝賞金は通常,事業所得になる

職業として継続的に対局するプロ棋士が,その活動の一環として得る公式タイトル戦の優勝賞金は,通常,事業所得と考えられる。
優勝が一度きりであっても,その賞金が棋士として行っている事業から生じる収入であることは変わらない。
抽選に当選した懸賞の賞金と同じように,一律に一時所得として50万円の特別控除や2分の1課税を適用することはできない。

この結論は,所得税法の所得区分と,日本将棋連盟が公表する棋戦・報償金の仕組みを組み合わせて説明できる。
もっとも,アマチュアの大会賞金,勤務先からの褒賞金,スポンサーからの別個の贈与などは,支払者,支払理由及び受領者の活動の実態を確認して区別する必要がある。
この記事は,日本の居住者である個人が受け取る賞金の所得税上の区分を対象とする。

第2 職業上の対局賞金を事業所得と考える理由

1 事業所得の条文と棋士の収入の仕組み

所得税法27条1項は,「事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業で政令で定めるものから生ずる所得(山林所得又は譲渡所得に該当するものを除く。)をいう。」と定めている。
委任を受けた所得税法施行令63条は,11号にサービス業,12号に「対価を得て継続的に行なう事業」を掲げている。

日本将棋連盟の定款36条は,棋士に対し,棋戦への参稼に応じた報償金等として賞金,対局料その他の謝金を支給する旨を定めている。
また,日本将棋連盟の竜王戦の説明では,現役棋士等がランキング戦から参加し,竜王と挑戦者の番勝負の結果によってタイトルと賞金が決まる仕組みが示されている。
こうした棋戦で,職業棋士が継続的な対局活動の成果として得る賞金は,通常,棋士としての事業から生じた収入に位置付けられる。

2 優勝が一度だけでも,一時所得とは限らない

継続性を判断する対象は,優勝賞金を何回受け取ったかだけではない。
対局を職業として継続し,その活動の中で賞金を得たのであれば,初めてのタイトル獲得による賞金も,事業との関係を踏まえて区分する。
年に一回支払われることや,一括で振り込まれることも,それだけで一時所得にする理由にはならない。

「一時所得」という言葉の日常的な意味と,所得税法が定める要件は異なる。
一回限りの大きな収入であっても,仕事から生じる収入や役務の対価は,一時所得から除かれることがある。

3 連盟の「社員」という地位と給与所得を混同しない

日本将棋連盟の定款5条2項が正会員を一般社団法人及び一般財団法人に関する法律上の「社員」としているのは,法人の構成員としての地位を定めたものである。
それだけで,会社に雇用される従業員と同じ給与所得になるわけではない。
給与所得か事業所得かは,雇用関係や指揮監督などの実態に即して判断するものであり,定款中の名称だけで決めることはできない。

税務と労働法等での判断の違いは,税務・労働法・社会保険・フリーランス法における労働者性の判定(AI作成)で説明している。

第3 懸賞の賞金が一時所得になる場合との違い

1 一時所得の要件には,事業所得でないことも含まれる

所得税法34条1項は,一時所得を,事業所得や給与所得等以外の所得のうち,「営利を目的とする継続的行為から生じた所得以外の一時の所得で労務その他の役務又は資産の譲渡の対価としての性質を有しないもの」と定めている。
したがって,賞金という名称だけで一時所得に区分することはできない。

所得税基本通達34-1(1)も,一時所得の例として「懸賞の賞金品、福引の当選金品等(業務に関して受けるものを除く。)」を掲げている。
括弧書きが示すように,業務に関して受け取る賞金は,抽選による一般的な懸賞の賞金と区別しなければならない。

2 50万円の特別控除と2分の1課税をそのまま使えない

一時所得に該当する場合は,総収入金額からその収入を得るために直接要した支出を差し引き,さらに最高50万円の特別控除を差し引く。
その後の金額の2分の1が総所得金額に算入される(所得税法34条2項・3項,国税庁一時所得)。
50万円は,賞金の一件ごとに使える控除ではなく,その年の一時所得全体について適用する上限である。

これに対し,事業所得の金額は,その年の事業所得に係る総収入金額から必要経費を控除して計算する(所得税法27条2項)。
職業上の対局賞金を事業所得に区分する場合,一時所得の50万円控除や2分の1課税は適用しない。
青色申告特別控除などは別の制度であり,賞金を一時所得とすることとは区別する。

3 主催者の賞金と第三者の褒賞金で区分が分かれることもある

国税庁のマラソン大会の賞金・褒賞金の課税関係では,会社員が受け取った大会主催者からの入賞賞金・記録更新賞金を雑所得とし,主催者以外の団体からの記録更新の褒賞金を一時所得としている。
主催者からの賞金は,役務の対価又はその役務に付随して取得するものとされている。

これは,その質疑応答事例の事実関係についての説明であり,将棋の賞金の区分を直接示した回答ではない。
しかし,同じ「賞金」でも,職業としての活動の有無,支払者及び支払理由によって所得区分が異なることを理解するための参考になる。
第三者からの支払であれば常に一時所得になるということでもなく,広告出演等の対価や業務との関係を確認する必要がある。

第4 アマチュアの大会賞金や副収入はどう考えるか

1 プロ・アマという肩書だけで決めない

アマチュアの大会賞金についても,まず,事業所得,給与所得等に該当するか,営利を目的とする継続的行為から生じるか,役務の対価としての性質があるかを確認する。
一度だけ出場した大会であっても,主催者への役務の対価として支払われる賞金であれば,一時所得の要件を満たさず,雑所得になる場合がある。
反対に,業務との関係がなく,継続的な営利活動から生じたものでもなく,役務等の対価でもない賞金なら,一時所得に該当し得る。

所得税法35条1項は,他の9種類の所得のいずれにも該当しない所得を雑所得としている。
所得税基本通達35-2の注は,事業所得と認められるかを,その活動が社会通念上事業と称するに至る程度で行われているかによって判定するとしている。
賞金額が大きいことや,開業届を提出したことだけで,事業所得になるわけではない。

2 受領場面ごとの確認事項

受領する場面所得区分の考え方確認する事情
職業棋士が継続的な対局活動の一環で得る公式タイトル戦の賞金通常は事業所得職業としての活動と棋戦賞金の関係
アマチュアが大会主催者から得る賞金一時所得と決めず,事業所得又は雑所得等の可能性を検討活動の規模・継続性,役務の対価性
業務と無関係の抽選による懸賞賞金一時所得に該当し得る継続的営利行為や役務の対価に当たらないか
スポンサー等からの別個の褒賞金支払理由に応じて区分広告等の対価,業務との関係,支払条件

大会の募集要項や賞金規程だけでなく,契約書,支払通知,対局・出演の条件及び実際の活動を合わせて確認することが大切である。

第5 事業所得として確定申告するときの注意点

1 賞金の総額と必要経費を整理する

事業所得は,賞金だけを取り出して計算するのではなく,同じ事業から生じる対局料等の収入も含めて,その年の収入と必要経費を整理する。
所得税法37条1項及び国税庁事業所得の課税のしくみに従い,業務について生じた費用を必要経費として検討する。
例えば,対局のために自己負担した旅費や業務用資料の購入費などは,業務との関係や支出内容に基づいて判断する。
私生活の費用はそのまま必要経費にはならず,業務と私用に共通する支出についても,業務部分を区分して検討する。

2 源泉徴収と最終的な所得区分は別の問題である

支払時に所得税が差し引かれているかどうかと,賞金が事業所得,一時所得又は雑所得のどれに該当するかは,別々に確認する必要がある。
源泉徴収がある場合も,それだけで所得税の計算がすべて終わるわけではない。
所得税法120条1項4号は,申告時の所得税額から源泉徴収税額を控除する計算を定めている。

賞金総額,差し引かれた税額及び実際の振込額を分けて記録し,賞金総額と手取り額を混同しないようにする。
具体的な源泉徴収の対象・税率は,支払の内容や適用される規定によって確認する。

3 20万円以下なら申告不要,という理解にも注意する

給与所得者については,一定の条件の下で,給与所得及び退職所得以外の所得金額の合計が20万円以下であれば所得税の確定申告を要しない制度がある。
しかし,これはすべての賞金に共通する非課税枠ではなく,職業棋士の事業所得に一律に当てはめることもできない。
また,医療費控除等のために確定申告を行う場合は,この制度によって申告を省略できた所得も併せて申告する必要がある(国税庁給与所得者で確定申告が必要な人及び確定申告を要しない場合の意義)。
申告の要否や手続の全体像は,所得税の確定申告に関するメモ書き(AIリライト)を参照されたい。

第6 よくある質問

1 初めてタイトルを獲得した賞金なら一時所得か

初めての受賞であることだけでは一時所得にならない。
職業として続けている対局活動から生じた賞金であれば,通常,事業所得として考える。

2 女流棋士のタイトル戦の賞金はどうか

職業として継続的に対局する活動の一環として得る賞金であれば,基本的な所得区分の考え方は同じである。
女流棋士という肩書だけで所得区分が変わるわけではなく,所属,契約及び活動の実態に即して判断する。

3 賞金の金額が公表されていないと所得区分は決められないか

賞金額が非公表であることと,所得区分の判断は別である。
所得区分は支払の性質や活動の実態から考え,申告する金額は支払通知等に基づいて確認する。
日本将棋連盟のよくある質問は,賞金額を公開している棋戦と,それ以外の非公開の棋戦があると説明している。

4 ノーベル賞の非課税と同じ扱いになるか

所得税法9条1項13号ホは,「ノーベル基金からノーベル賞として交付される金品」を非課税としている。
この規定を,将棋のタイトル戦の賞金にそのまま適用することはできない。
賞金であることや,社会的に高い評価を受けることだけでは,非課税にはならない。
非課税規定の対象と賞金一般の所得区分は,ノーベル賞の賞金に税金はかかるか(AI作成)で説明している。

第7 関連記事

①株主優待・懸賞の賞品は何所得か―配当所得・一時所得・雑所得の区別,収入の時期,会社員の確定申告及び賞品を出す会社の源泉徴収(AI作成)
②ノーベル賞の賞金に税金はかかるか―所得税法9条1項13号ホの非課税,経済学賞の例外,沿革及び受け取った後の税金(AI作成)
③所得税の確定申告に関するメモ書き(AIリライト)
④税務・労働法・社会保険・フリーランス法における労働者性の判定(AI作成)

第8 出典

1 法令・通達

①所得税法9条,27条,28条,34条,35条,37条及び120条(e-Gov法令検索)
②所得税法施行令63条(e-Gov法令検索)
③所得税基本通達34-1(一時所得の例示)(国税庁)
④所得税基本通達35-2(業務に係る雑所得の例示)(国税庁)

2 国税庁の説明

①事業所得の課税のしくみ(No.1350)
②一時所得(No.1490)
③マラソン大会の賞金・褒賞金の課税関係
④給与所得者で確定申告が必要な人(No.1900)
⑤確定申告を要しない場合の意義

3 日本将棋連盟の公表資料

①定款5条及び36条(情報公開ページ掲載の定款)
②竜王ランキング戦・決勝トーナメントについて
③プロ棋戦の規定等について(よくある質問)