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こども性暴力防止法とは―日本版DBSの対象・義務・令和8年12月25日の施行準備(AI作成)

第1 こども性暴力防止法の結論と基準日

1 令和8年12月25日に施行される

こども家庭庁が「こども性暴力防止法」と呼んでいる制度は,「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(令和6年法律第69号)である。
同法は令和6年6月19日に成立し,同月26日に公布され,令和8年12月25日に施行される。
「日本版DBS」はこの制度の通称として用いられるが,犯罪事実確認だけでなく,日常の未然防止,早期把握,疑いが生じた場合の調査・保護・支援及び情報管理までを一体として整える法律である。

2 対象事業・対象従事者・措置の三つを分けて確認する

実務では,①どの事業が法律上の対象となるか,②その事業で誰が対象業務従事者となるか,③各事業者がどの措置をいつまでに行うかを分けて確認する必要がある。
法人全体が一括して対象になるとは限らず,同じ法人の中でも施設やサービスによって取扱いが異なり得る。
また,職名や雇用形態だけで対象者を決めるのではなく,実際の業務における児童等との接し方を確認しなければならない。

こども性暴力防止法の施行前の準備作業は,対象事業・従事者を確定し,就業規則と採用書式,報告・対応ルール,相談窓口,研修及び情報管理を整えることである。
義務対象事業者は,これに加えてGビズID・事業者情報のまとめ登録と,システム利用に向けた準備状況を確認する。
第5では担当者・成果物・完了確認を,第7では準備漏れの最終確認を示す。

施行前準備に着手する場合は,まず対象事業・対象従事者と担当者を整理し,次に規程・採用書式・相談体制・情報管理を整え,周知・研修と運用確認へ進むと整理しやすい。
これは実務上の推奨順序であり,国が各作業に一律の着手日や同じ締切を定めたという意味ではない。
第5の施行前準備と進め方及び第7の最終確認表から,必要な作業を確認できる。

3 本記事の確認基準日は令和8年10月8日である

本記事は,令和8年10月8日現在の法令,令和8年9月改訂の施行ガイドライン及びQ&A,同年10月1日付けの監督等指針並びに義務事業者用準備ガイドVer.1.1に基づく。
制度の運用資料,申請画面及びひな型は施行までに更新される可能性があるので,実際に準備を行う時点でこども家庭庁「こども性暴力防止法」の最新資料を確認する必要がある。

施行前の準備作業,公式ひな型及びまとめ登録の通知に関する説明は,令和8年10月14日に確認した公表資料に基づく。

第1の4,第3の4,第4の3の確認の流れ,第4の6及び第8の説明は,令和8年10月17日に確認した法令,こども家庭庁の資料及び令和8年9月29日改訂Q&Aに基づく。

4 なぜ作られたのか(制定の経緯)

こども家庭庁が開催した「こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組みに関する有識者会議」の報告書(令和5年9月12日)は,制度検討の経緯を次のように説明している。
令和3年に成立した教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律(令和3年法律第57号)は,児童生徒性暴力等により教員免許状が失効した者等に関するデータベースの整備等を定めた。
その附帯決議では,部活動の外部コーチ,ベビーシッター,塾講師,放課後児童クラブの職員等の免許等を要しない職種についても,イギリスのDBS制度も参考にして,性犯罪の前科等がないことの証明を求める仕組みを検討することとされた。

令和3年12月に閣議決定された「こども政策の新たな推進体制に関する基本方針」も,教育・保育施設等やこどもが活動する場で働く際に性犯罪歴等の証明を求める仕組み(いわゆる日本版DBS)の導入に向けた検討を進めるとした。
令和4年の児童福祉法等の一部を改正する法律(令和4年法律第66号)では,保育士についても,登録を取り消された者のデータベースの整備等について,教育職員等と同様の規律が設けられた(以上,報告書1頁)。

有識者会議は令和5年6月から9月まで5回開催され,その後,法案が第213回国会(令和6年通常国会)に提出されて,令和6年6月19日に成立した。
法1条は,児童対象性暴力等が児童等の権利を著しく侵害し,その心身に生涯にわたって回復し難い重大な影響を与えるものであることに鑑み,事業者の責務と措置,民間教育保育等事業者の認定の仕組み及び国が性犯罪歴に関する情報を提供する仕組みを定めることを目的として掲げている。

なお,教員や保育士のデータベースは児童等に対する性暴力等による行政処分歴を確認するものであり,本法の犯罪事実確認は性犯罪の前科を確認するものである。
両者は重ならない場合があるので,データベースの活用が義務付けられている事業者は,施行後も引き続き照会を行う必要がある(Q&A基礎編6-14)。

第2 対象事業者は二つの仕組みに分かれる

1 学校設置者等は法律上の義務対象である

学校,認定こども園,児童福祉施設その他の法律が定める学校設置者等には,対象業務従事者に対する犯罪事実確認を含む各措置が法律上義務付けられる。
どの施設・事業が学校設置者等に該当するかは,名称や法人格だけでなく,根拠法令,認可・届出の種類及び実際に提供する役務により確認する。
地方公共団体や一つの法人が複数の施設を運営する場合には,事業所ごとの対象性と,誰が申請・情報管理を担当するかを対応表にしておく必要がある。

2 民間教育保育等事業者には認定制度がある

学習塾,スポーツクラブ,放課後活動,民間の学習支援等の事業については,法律が定める要件を満たす民間教育保育等事業者が認定を受け,学校設置者等と同等の措置を実施する仕組みが設けられている。
「こどもにサービスを提供している」というだけで直ちに同一の義務対象になるわけではないが,認定を受ける場合には,対象事業,対象従事者,規程,研修,相談体制及び情報管理を一体として整備することになる。
認定の要否を検討する事業者は,利用者への表示だけでなく,申請後に継続して実施できる人員・権限・予算があるかを先に確認すべきである。

認定の基準,申請時期,手数料,認定後の義務及びこまもろうマークの使い方は,こども性暴力防止法の認定制度―学習塾・スポーツクラブの認定要件・申請手続・手数料とこまもろうマークで説明している。

フランチャイズ学習塾の認定主体,教授者の人数要件及び本部との分担は,日本版DBSとフランチャイズ学習塾―本部・加盟教室の認定,犯罪事実確認と役割分担で説明している。

3 業務委託先や施設利用者も契約関係だけで決めない

学校や保育所の事業として外部事業者へ水泳指導等を委託する場合には,外部の指導者であっても学校設置者等が犯罪事実確認を行う必要があると,令和8年9月29日改訂Q&Aは説明している。
これに対し,施設を貸しているにとどまり,別事業者が独立した英会話教室等を行う場合には,その事業の実施主体と認定の有無を確認することになる。
契約書上の「委託」「場所貸し」という名称だけに依存せず,誰の事業として,誰の指揮・管理の下で,児童等へ役務を提供しているかを整理する必要がある。

第3 誰が犯罪事実確認等の対象になるか

1 支配性・継続性・閉鎖性の三要件が中心になる

対象従事者の範囲は,法令上明記された職種に加え,実際の業務が支配性,継続性及び閉鎖性の三要件を満たすかによって判断される。
支配性とは,指導やコミュニケーション等を通じて児童等に対して優越的な立場に立つ機会があることをいう。
継続性は,日常的又は定期的な接触だけでなく,不定期でも反復継続が見込まれる場合を含み,閉鎖性は,第三者の目に触れない状況で接する機会が生じ得る場合を含む。SNS,コミュニケーションアプリ又は学習ツールを通じた双方向のオンライン接触も考慮される。

2 正規職員だけが対象になるわけではない

対象性は,正規職員,短時間労働者,派遣労働者,業務委託先,実習生又はボランティアという契約上の名称だけで決まらない。
送迎運転手,清掃・警備担当者,事務職員等であっても,実際の業務で三要件を満たす場合は対象となり得る。
反対に,年1回の行事だけに参加する者や,一日だけの講演者等については,具体的な接触態様によって継続性等を欠くと判断されることがある。

施設ごとの職種の一覧と,事務職員・送迎運転手・調理員・ボランティア・実習生の判断例は,こども性暴力防止法の対象となる職種と事業―学校・保育所・学習塾の一覧と事務職員・運転手・ボランティアの判断で整理している。

3 対象者リストは職名簿ではなく業務台帳として作る

事業者は,部署名と職名だけを並べるのではなく,①児童等と接する場面,②頻度と期間,③一対一又は第三者の目が届かない場面の有無,④オンライン接触,⑤雇用・委託・実習等の関係,⑥判断根拠を記載した対象者リストを作成することが望ましい。
同じ職名でも配置先や担当業務によって結論が異なり得るので,異動,業務変更及び新規委託の都度,リストを更新する。
境界事例は,現場責任者だけで決めず,人事,法務,安全管理及び情報管理の担当者が事実関係を共有して判断する必要がある。

4 犯罪事実確認の対象となる性犯罪と期間

犯罪事実確認で照会されるのは,「特定性犯罪」について有罪判決が確定した事実である(法2条7項・8項)。
特定性犯罪には,刑法の不同意わいせつ罪・不同意性交等罪等のほか,児童福祉法の児童淫行罪,児童買春・児童ポルノ法の罪,性的姿態撮影等処罰法の罪及び都道府県の迷惑防止条例・青少年健全育成条例の罪の一部が含まれ,被害者が成人である場合も対象となる(Q&A基礎編2-11)。

特定性犯罪事実該当者に当たるのは,拘禁刑の実刑では刑の執行終了等から20年,全部執行猶予では裁判確定から10年,罰金では刑の執行終了等から10年を経過していない者である(法2条8項)。
不起訴や示談になった者,窃盗罪など特定性犯罪以外の罪で刑が確定した者は当たらない(Q&A基礎編2-10)。

対象となる罪の一覧,改正前の罪の扱い,期間の数え方及び対象にならないものは,こども性暴力防止法の犯罪事実確認とは―対象となる性犯罪・20年と10年の期間・確認の流れと事前通知で詳しく説明している。

第4 事業者に求められる主な措置

1 未然防止のための行動基準と研修を整える

事業者は,児童対象性暴力等に至る前の不適切な行為の範囲を具体化し,従事者,児童等及び保護者へ周知する必要がある。
身体接触,私的な連絡,SNS利用,撮影,更衣・送迎・個別指導等について,業務上必要な行為と禁止又は承認を要する行為を,児童等の年齢・発達段階及び事業内容に応じて定める。
研修は制度説明だけで終えず,具体的な場面で誰へ報告し,どのように接触を避け,どの記録を残すかまで扱う。

2 相談・報告と早期把握の経路を作る

相談窓口は,従事者用と児童・保護者用の双方について,利用方法,秘密保持の範囲,不利益取扱いの禁止及び緊急連絡先を明らかにする。
相談を受けた者が一人で調査を始めたり,関係者がそれぞれ児童へ質問したりしないよう,受理,安全確認,管理職への報告,外部機関への相談及び記録保全の流れを定める。
匿名又は断片的な情報でも,現在の危険,ほかの児童への波及及び客観資料の消失可能性を確認できる仕組みが必要である。

3 犯罪事実確認と防止措置を採用・配置に接続する

対象事業者は,原則として対象業務へ従事させる前に,こども家庭庁へ犯罪事実確認書の交付を申請し,特定性犯罪事実該当者に該当するかを確認する。
急な欠員等のやむを得ない事情に関する特例は,事業者内部の連絡漏れや準備不足を一般的に救済するものではない。
確認結果を得た後は,児童等と接する対象業務に従事させないこと等の防止措置を検討するが,確認結果があることだけで内定取消し,懲戒又は解雇の有効性が自動的に決まるわけではない。就業規則,採用時の説明,配置可能性,労働法上の要件及び手続を別に確認する必要がある。

確認の手続は,原則としてこまもろうシステム上で行い,事業者が交付申請の情報を入力し,従事者が戸籍・除籍の抄本等を提出した上で,こども家庭庁が法務大臣に照会する(法33条・34条,Q&A基礎編6-10)。
特定性犯罪事実該当者に当たる場合は,事業者への交付前に本人へ記載内容が通知され,本人は通知を受けた日から2週間以内に訂正を請求できる(法35条5項,37条)。
交付までの標準処理期間は,日本国籍者で2週間から1か月程度,外国籍者で1か月から2か月程度とされている(Q&A基礎編6-5)。
手続の流れ,確認書の記載事項及び期限は,犯罪事実確認の対象犯罪・期間・確認の流れで整理している。

4 疑いが生じたときは安全確保・調査・支援を分ける

性暴力等の疑いが生じた場合は,まず児童等と加害が疑われる従事者との接触を避け,医療,警察,児童相談所,所管行政庁その他の関係機関へ相談する必要性を判断する。
児童等への聴き取りは,安全確保と連絡判断に必要な範囲を超えて繰り返さず,誘導を避け,専門的な聴取との役割分担を検討する。
事業者側の初動と弁護士の役割については,こども性暴力防止法の施行と弁護士の役割―事業者側助言・こども側代理・聴き取りの注意点で詳しく説明している。

5 犯罪事実確認記録等を厳格に管理する

犯罪事実確認書とその転記等は,極めて機微性の高い犯罪事実確認記録等であり,利用目的,閲覧権限,保管・消去,外部提供及び漏えい時の対応について法定の制限を受ける。
本人の同意又は顧問弁護士の守秘義務があれば自由に外部提供できるという制度ではない。
本人通知,訂正,内部共有,保護者・派遣元への説明,保存・廃棄等については,日本版DBSの犯罪事実確認記録をどう扱うか―本人通知・訂正、保護者への説明、内部共有と保存・廃棄を参照されたい。

6 確認書の情報には罰則がある

業務に関して知り得た犯罪事実確認書の情報を,自己又は第三者の不正な利益を図る目的で提供した者は,2年以下の拘禁刑若しくは100万円以下の罰金に処せられ,又はこれらを併科される(法43条)。
業務に関して知り得た確認書の情報の内容をみだりに他人に知らせ,又は不当な目的に利用した者も,1年以下の拘禁刑若しくは50万円以下の罰金に処せられ,又はこれらを併科される(法45条2項)。

偽りその他不正の手段で確認書の交付を受けた場合(法44条),認定を受けていない者が認定の表示又はこれと紛らわしい表示を広告等に付した場合(法45条1項),帳簿の不備や確認書の廃棄・記録の消去を怠った場合等(法46条)にも罰則がある。
法人の従業者等が業務に関して法43条,44条,45条1項又は46条の違反行為をしたときは,行為者のほか法人にも罰金刑が科される(法48条)。

なお,罰則を定める法第6章には,犯罪事実確認を行わなかったこと自体を処罰する規定は置かれていない。
もっとも,学校設置者等が犯罪事実確認義務(法4条)に違反していると認められるときは,内閣総理大臣がその名称等を公表するものとされている(法17条)。

第5 こども性暴力防止法の施行前準備と進め方

義務事業者用準備ガイドVer.1.1は,施行までの最低限の準備として,制度周知,対象者等の確定,就業規則・採用書式の見直し,報告・対応ルール,相談,研修及び情報管理を挙げている。
次の担当者と成果物の例は,同ガイドを基にした実務上の整理であり,国が一律に指定した役職や様式ではない。
認定対象事業者は,認定申請の準備と申請時点の要件を別に確認し,義務対象事業者のまとめ登録と混同しない。

準備作業担当者の例成果物・完了確認
事業・対象従事者の確定設置者・人事・現場責任者事業区分,対象者台帳,判断理由と更新担当者
不適切な行為の具体化現場・人事・法務行動基準,業務上必要な行為との区別,周知記録
就業規則・採用書式人事・法務規程,募集要項,誓約書,内定通知書の整合
報告・対応と相談安全管理・相談担当者報告先,代替連絡先,対応者,相談先の案内
研修の計画・実施研修担当者・各管理職受講計画,座学・演習,受講・未受講者の記録
情報管理管理責任者・情報システム担当者規程,閲覧権限,取扱記録,消去・漏えい対応
システム利用準備(義務対象)本部・施設・所轄庁との連絡担当者提出控え,照会対応,通知受信,権限設定の準備

1 制度周知と責任者の指定

最初に,経営者又は設置者が,制度全体の責任者,犯罪事実確認の担当者,情報管理責任者,相談・通報の担当者及び事案発生時の指揮者を指定する。
小規模事業者が一人の担当者へ複数の役割を持たせる場合も,どの権限で何を閲覧し,誰へ報告するかを文書化する。
従事者には,制度の目的,対象業務,確認手続,提出を求められる資料,情報の取扱い及び相談先を説明する。

2 不適切な行為と対象従事者の範囲を確定する

現場の業務を棚卸しし,身体接触,私的連絡,撮影,個別指導,送迎,更衣,宿泊及びオンライン利用等について,不適切な行為の範囲を定める。
併せて,支配性・継続性・閉鎖性の三要件により対象従事者を洗い出し,雇用,派遣,委託,実習及びボランティアを含む台帳を作成する。
判断が分かれる業務については,業務実態と判断理由を残し,単に「対象外」とだけ記載しない。

「不適切な行為」の意味,SNS・撮影・身体接触等の具体例と,業務上必要な行為との区別は,こども性暴力防止法の「不適切な行為」と行動基準の作り方で詳しく説明する。

3 就業規則・募集要項・契約書を見直す

就業規則等には,不適切な行為,対象業務への配置,犯罪事実確認への協力,服務規律,懲戒事由及び情報管理との整合を確認する。
募集要項,求人票,誓約書及び内定通知書では,対象業務であること,法に基づく確認を行うこと及び防止措置の可能性を,こども家庭庁の参考例に照らして見直す。
現職者から施行直前に事後的な誓約書を取れば,虚偽があった場合に当然に「採用時の重要な経歴詐称」として懲戒解雇できるわけではないので,確認制度と懲戒制度を混同しない。

4 相談・報告・事案対応の規程と研修を整える

相談窓口,報告経路,緊急時の接触回避,警察・児童相談所・所管行政庁への連絡,児童等及び保護者への説明,調査記録並びに再発防止を一つの事案対応規程に整理する。
ひな型をそのまま採用せず,自施設の夜間・休日対応,複数拠点間の連絡,委託先との役割及び報道対応まで確認する。
施行前研修では,管理職,窓口担当者,一般従事者及び情報管理担当者について,必要な知識と演習を分けることが望ましい。

対象者と受講時期,標準・要点・独自研修の使い分け,座学と演習及び受講管理は,こども性暴力防止法の従事者研修で具体的に説明する。

5 情報管理規程と技術的措置を実装する

情報管理規程には,管理責任者,取扱担当者,閲覧権限,端末・紙媒体の保管,複写・持出し・送信の制限,取扱記録,消去,監査及び漏えい時対応を定める。
規程を作るだけでなく,実際のアカウント権限,保管場所,画面表示,ログ,バックアップ及び廃棄方法を確認する。
犯罪事実確認記録等と,面談で別に得た情報,児童等の申告記録,医療情報及び一般の人事記録を,根拠と保存期間を区別して管理する必要がある。

6 GビズID・まとめ登録と通知の受信を確認する

義務対象事業者は,GビズIDの取得,事業者情報の提出,登録内容の確認・補正,通知の受信及びシステム権限の準備を分けて管理する。
令和8年8月28日付け通知には,提出期限に間に合わなかった場合の所轄庁からの連絡と,11月6日までにテストメールを受信できなかった場合の学校設置者等からの連絡が示されている。
連絡主体が異なるため,現在の状態に合う手順を確認する。

具体的な確認項目と日程は,こども性暴力防止法のGビズID・まとめ登録―こまもろうシステムの施行前準備で整理する。
GビズID取得やテストメール受信だけを,犯罪事実確認や研修を含む制度対応全体の完了として扱わない。

7 公式マニュアル・参考例を用途別に選ぶ

準備全体は義務事業者用準備ガイド,制度の詳細は施行ガイドラインとQ&A,書類作成は公式ひな型・参考例,職員研修は従事者向け研修教材で確認する。
事業者アカウントの準備には,まとめ登録マニュアルとその後の通知を併せて用いる。
就業規則,募集要項,誓約書及び内定通知書の使い分けは,こども性暴力防止法の就業規則・誓約書の見直し―公式参考例と施行前の準備作業を参照されたい。

公式ひな型・参考例とまとめ登録の案内は,次のページから最新版を確認できる。
https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou/hinagata
https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou/matometouroku

8 施行前の準備についてよくある質問

(1) こども性暴力防止法の義務事業者用準備ガイドとは?

こども家庭庁が,義務対象事業者が令和8年12月25日の施行までに最低限実施すべき準備をまとめた手引きである。
準備の一覧は同ガイド,制度の詳細は施行ガイドラインとQ&A,書類作成は公式ひな型,研修の計画・実施は研修の手引きと教材で確認する。
まとめ登録に関しては専用のマニュアルとQ&Aがあり,その後の期限延長や確認・補正の通知も読む必要がある。

(2) 現職者も施行日までに犯罪事実確認を終える必要があるか

施行時現職者には,施行後3年以内に確認する仕組みがある。
施行前の制度周知,対象者の確定,規程や研修等の準備と,施行後の犯罪事実確認を同じ締切として扱わない。
実際の申請月等は対象者の区分と最新の行政案内に従って確認する。

(3) 研修は資料を配れば完了か

準備ガイドは,研修を座学と演習を組み合わせて計画・実施するものとしている。
資料の配布だけで研修の実施を確認済みとせず,対象者,教材,演習,受講記録及び未受講者への対応を確認する。

(4) こども性暴力防止法の準備は?

最初に,施設・事業ごとの法の対象性と,誰が対象業務従事者になるかを整理する。
その台帳を基に,責任者と担当者を決め,規程・採用書式,相談・報告の仕組み,研修及び情報管理を実際の業務へ対応させる。
義務対象事業者は,GビズID・まとめ登録等のシステム利用準備も確認する。

(5) こども性暴力防止法の施行までに必要な対応は?

義務事業者用準備ガイドは,制度周知,不適切な行為と対象者の範囲確定,就業規則・採用募集要項等の見直し,報告・対応ルール,相談体制,研修及び情報管理を最低限の準備としている。
これらの施行前準備と,施行後に行う犯罪事実確認を分けて管理する。
現職者の確認時期は上記(2)を,研修の具体的な進め方は従事者研修の記事を参照されたい。

第6 採用・労務管理で誤りやすい点

1 一般的な犯罪歴調査の制度ではない

犯罪事実確認は,法の対象事業者が対象業務従事者について行う特別の制度であり,すべての企業がすべての応募者について犯罪歴を広く照会できるようにする制度ではない。
対象業務が特定される前に本人同意だけで確認を先行させることや,確認書を別の求人又は別事業者のために流用することはできない。
採用実務全般と本制度との関係については,中途採用における使用者側の留意点――募集・選考・内定・試用期間の実務も参照されたい。

2 情報の確認と人事上の判断を分ける

事業者は,確認結果を必要最小限の関係者で取り扱い,児童等への安全確保措置と,内定取消し,配置転換,懲戒又は解雇という人事上の判断を分けて検討する。
特定性犯罪事実該当者を対象業務へ従事させない必要があっても,対象外業務への配置可能性,採用時の条件及び就業規則等により,採るべき人事措置は事案ごとに異なり得る。
採用後又は解雇後に経歴詐称が判明した場合の一般的な判断枠組みについては,採用後・解雇後に経歴詐称が判明した場合―懲戒解雇・普通解雇・理由の後付けと証拠で扱っている。

3 「該当者はいない」という人数情報も外部へ自由に出せない

令和8年9月29日改訂Q&Aは,特定性犯罪事実該当者の数自体が特定性犯罪事実の有無を示す情報であるため,外部へ開示できないとしている。
保護者への安全上必要な説明と,特定の従事者の確認結果又は該当者数の開示は別問題である。
制度への信頼を得るためには,個別の確認結果を公表するのではなく,事業者が実施している予防,研修,相談及び安全確保の体制を説明する必要がある。

第7 施行準備の最終確認表

1 事業・従事者の範囲

①対象となる施設・サービスと根拠法令を整理したか。
②義務対象事業者か,認定を受ける民間教育保育等事業者かを区別したか。
③委託・場所貸し・共同事業の実態と確認主体を整理したか。
④支配性・継続性・閉鎖性に基づく対象従事者リストを作成したか。
⑤採用,異動,新規委託及び業務変更の際の更新責任者を決めたか。

2 規程・人事・研修

①不適切な行為の範囲を現場と協議して定めたか。
②就業規則,募集要項,求人票,誓約書,内定通知書及び委託契約を照合したか。
③相談・報告・事案対応の規程と夜間休日の連絡経路を整えたか。
④従事者向け研修と管理職・窓口担当者向け研修を計画したか。
⑤児童等及び保護者へ,行動基準と相談方法を分かる言葉で周知したか。

3 犯罪事実確認・情報管理

①犯罪事実確認の申請責任者,担当者及び対象者への案内方法を決めたか。
②施行時現職者と新規採用者の申請時期を分けて管理しているか。
③確認前に例外的に従事させる場合の要件と安全措置を理解しているか。
④情報管理規程,権限設定,取扱記録,保管・消去及び漏えい時対応を実装したか。
⑤安全確保措置と人事上の最終判断を分けて検討する体制があるか。

第8 こども性暴力防止法についてよくある質問

制度全体について寄せられることの多い質問に,本文の該当箇所と関連記事を示して簡潔に答える。

1 こども性暴力防止法は何をする法律か

学校・保育所等の学校設置者等と,認定を受けた民間教育保育等事業者に,こどもと接する従事者による性暴力を防ぐための措置を求める法律である(法1条,Q&A基礎編1-3)。
措置の中心は,未然防止と早期把握,相談体制,研修,性犯罪前科の有無を国に照会する犯罪事実確認と防止措置,疑いが生じた場合の調査・保護・支援及び情報管理である(法4条~8条・11条~14条)。
令和8年12月25日に施行される。

2 対象となる職種は何か

法律は,学校の校長,副校長,教頭,教諭,養護教諭,講師等や,保育所・児童養護施設等の長及び児童の保育・養護等の業務を行う従業者などを,犯罪事実確認の対象となる教員等として定めている(法2条4項)。
認定を受けた学習塾等では,児童等に技芸又は知識の教授を行う者等が対象となる(同条6項)。
これらの職名に当たらない事務職員や送迎運転手等でも,支配性・継続性・閉鎖性の三要件を満たす業務に就く場合は対象となり得るので,第3で述べたとおり業務の実態で判断する。
施設ごとの職種の一覧と判断例は,こども性暴力防止法の対象となる職種と事業―学校・保育所・学習塾の一覧と事務職員・運転手・ボランティアの判断で整理している。

3 なぜ作られたのか

教員と保育士については,免許状の失効者や登録を取り消された者のデータベースの整備等が法律で定められていたが,塾講師,部活動の外部コーチ,放課後児童クラブの職員等の免許等を要しない職種についても,性犯罪の前科等を確認する仕組みが求められていた(有識者会議報告書1頁)。
法は,こどもへの性暴力が心身に生涯にわたって回復し難い重大な影響を与えることに鑑み,事業者の責務と措置を定め,国が性犯罪歴に関する情報を提供する仕組みを設けた(法1条)。
経緯は第1の4で説明している。

4 犯罪事実確認の確認方法は

事業者がこまもろうシステムで交付申請をし,従事者が戸籍等を提出して,こども家庭庁が法務大臣に照会し,その結果を記載した犯罪事実確認書が事業者に交付される。
特定性犯罪事実該当者に当たる場合は,交付前に本人へ通知され,2週間の訂正請求期間がある。
詳しい流れは犯罪事実確認の対象犯罪・期間・確認の流れで説明している。

5 防止の対象となる性暴力の具体例は

法が防止の対象とする児童対象性暴力等には,児童等との性交等,わいせつな行為,児童買春・児童ポルノに関わる行為や性的姿態の撮影,衣服の上から又は直接の身体接触や盗撮,性的羞恥心を害する言動であって児童等の心身に有害な影響を与えるものが含まれる(法2条2項,教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律2条3項,Q&A基礎編2-2)。
これに至る前の私的なSNSのやり取り,私的な撮影,不必要な身体接触等は「不適切な行為」として別に扱われる。
その内容は,こども性暴力防止法の「不適切な行為」とは―SNS・撮影・身体接触と行動基準の作り方で説明している。

6 不起訴や示談の場合も確認で分かるか

分からない。
犯罪事実確認で分かるのは,特定性犯罪について拘禁刑又は罰金の裁判が確定した事実であり,不起訴や示談になった者は特定性犯罪事実該当者に当たらない(法2条8項,Q&A基礎編2-10)。
法定の期間を経過した前科についても,確認書には特定性犯罪事実該当者ではない旨が記載される(Q&A応用編6-2)。

7 大学は対象か

大学と専修学校の専門課程は,義務対象の事業ではない(法2条3項1号イ・ロ,Q&A基礎編10-5)。
これに対し,高等専門学校と専修学校の高等課程は対象であり,大学が附属学校を設置している場合は,その設置者である国立大学法人や学校法人等が附属学校について対象事業者となる(同)。
学生が実習,インターンシップ又はボランティアで対象事業者の業務に従事する場合は,実習先の事業者が犯罪事実確認の対象と判断することがあるので,大学等はあらかじめ制度の概要等を周知しておくことが考えられるとされている(Q&A基礎編3-13・10-4)。

8 法律はいつ見直されるか

法附則6条は,政府が施行後3年を目途として,施行の状況等を勘案しつつ,学校設置者等,教員等,民間教育保育等事業者,教育保育等従事者及び特定性犯罪事実該当者の範囲を含め,制度の在り方について検討を加え,必要があると認めるときは措置を講ずると定めている。
施行前の現時点では,制度の詳細は施行ガイドラインとQ&Aの改訂で補われているので,最新版を確認する必要がある。

9 制度の限界や問題点はあるか

犯罪事実確認で把握できるのは,確定した有罪判決のうち法定の罪と期間に当たるものに限られ,前科のない者による加害や起訴に至らなかった事案は把握できない(法2条8項)。
民間の学習塾等は認定を受けた場合に確認の義務を負うものであり(法26条),認定を受けるかどうかは事業者の判断である(認定制度はこども性暴力防止法の認定制度―学習塾・スポーツクラブの認定要件・申請手続・手数料とこまもろうマークで説明している。)。
このため,法は犯罪事実確認だけでなく,不適切な行為の防止,早期把握,相談,研修及び調査を併せて求めており,対象の範囲は施行後3年を目途に検討される(法附則6条)。

10 施行令・施行規則とは何か

施行令(令和7年政令第440号)は,特定性犯罪に当たる都道府県条例の罪の列挙,いとま特例や現職者の確認の猶予期間,民間教育事業の指導者数の要件(3人)等を定める政令である。
施行規則(令和7年内閣府令第104号)は,交付申請の方法や安全確保措置の内容等の細目を定める内閣府令である。
いずれも条文はe-Gov法令検索で確認でき,施行ガイドラインが条文ごとに運用を説明している。

11 こまもろうマーク・こまもろうシステムとは何か

認定を受けた事業者は,内閣総理大臣が定める表示である認定事業者マーク(こまもろうマーク)を事業の広告等に表示できる(法23条1項,Q&A基礎編4-1)。
認定を受けていない者が同じ表示又は紛らわしい表示を付けることは禁止され,罰則がある(法23条2項,45条1項)。
こまもろうシステムは,認定申請,事業者・従事者のアカウント登録及び犯罪事実確認書の交付申請等を行うこども性暴力防止法関連システムである(Q&A基礎編4-3・6-10)。
マークの使い方と認定の手続は,こども性暴力防止法の認定制度―学習塾・スポーツクラブの認定要件・申請手続・手数料とこまもろうマークで説明している。
GビズIDとまとめ登録の準備は,こども性暴力防止法のGビズID・まとめ登録―こまもろうシステムの施行前準備で整理している。

第9 出典・確認範囲

1 法令

①e-Gov法令検索「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律」(令和6年法律第69号)。
②こども家庭庁掲載「学校設置者等及び民間教育保育等事業者による児童対象性暴力等の防止等のための措置に関する法律の施行期日を定める政令」(令和7年政令第439号)。
③同法施行令(令和7年政令第440号)及び同法施行規則(令和7年内閣府令第104号)。

④e-Gov法令検索「教育職員等による児童生徒性暴力等の防止等に関する法律」(令和3年法律第57号)2条3項。

2 こども家庭庁の資料

①こども家庭庁「こども性暴力防止法」(令和8年10月8日確認)。
②こども家庭庁「こども性暴力防止法施行ガイドライン」(令和8年9月2日掲載の改訂版)。
③こども家庭庁「こども性暴力防止法に関するQ&A」(令和8年9月29日掲載の改訂版)。
④こども家庭庁「こども性暴力防止法施行に向けた義務事業者用準備ガイドVer.1.1」(令和8年9月2日掲載)。
⑤こども家庭庁「こども性暴力防止法に係る監督等指針の策定について」(令和8年10月1日付け通知)。

⑥公式ひな型・参考例リンク集,及び事業者情報のまとめ登録の案内(令和8年10月14日確認)。
準備ガイドのPDF実頁2~3・11~14,及び令和8年8月28日付け登録内容確認・テストメール通知のPDF実頁1~4を参照した。
https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou/hinagata
https://www.cfa.go.jp/policies/child-safety/efforts/koseibouhou/matometouroku

⑦こども家庭庁「こども関連業務従事者の性犯罪歴等確認の仕組みに関する有識者会議」報告書(令和5年9月12日)1頁。
⑧第1の4,第3の4,第4の3・6及び第8では,令和8年9月29日改訂Q&Aの基礎編1-3(19頁),2-2(20頁),2-10・2-11(23頁),3-13(28頁),4-1・4-3(29頁),6-5(45頁),6-10(47頁),6-14(50頁),10-4・10-5(69頁)及び応用編6-2(92頁)を参照した(令和8年10月17日確認)。

3 個別判断で追加確認が必要な事項

対象事業者・対象従事者の該当性,認定申請,いとま特例,防止措置,内定取消し・配置転換・懲戒・解雇,児童等への聴き取り及び外部提供の可否は,個別の事業内容,契約関係,業務実態,時期及び資料により結論が異なり得る。
実施時には,最新の法令・公式資料を確認し,必要に応じて所管行政庁,弁護士,社会保険労務士又は情報セキュリティの専門家へ相談する必要がある。