メインコンテンツへスキップ
       

公正証書遺言の作成手数料-現行額と計算例(AIリライト)

公正証書遺言の作成手数料は,遺産総額だけで一律に決まるものではなく,相続又は遺贈によって利益を受ける者ごとに目的の価額に応じた手数料を算定し,遺言加算,枚数加算及び交付費用等を加えて計算する。

本記事では,令和7年10月1日施行の改正後の公証人手数料を前提に,料金表,計算方法,病床で作成する場合の加算及び具体的な計算例を整理する。

証人への報酬,戸籍証明書等の取得費用及び弁護士等へ依頼する場合の報酬は法定の公証人手数料とは別であるため,区別して説明する。

第1 公正証書遺言の費用を構成する項目

1 法定の公証人手数料と別途費用

公正証書遺言について公証役場へ支払う費用は,①目的の価額に応じた作成手数料,②遺言加算,③枚数加算,④従来の正本又は謄本に相当する情報の交付費用によって構成される。

病床で作成するときは病床執務加算が生じ,公証人が公証役場外へ出張するときは日当及び旅費も必要となる。

他方,証人への報酬,戸籍証明書,登記事項証明書及び固定資産評価証明書等の取得費用並びに弁護士その他の専門家へ原案作成を依頼する場合の報酬は,公証人手数料令が定める公証人手数料には含まれない。

2 目的の価額と必要資料

法律行為の目的の価額は,公証人が公正証書の作成に着手した時の価額による(公証人手数料令10条)。

預貯金等は遺言の対象となる額を基礎とし,不動産は登記事項証明書,固定資産評価証明書又は固定資産税・都市計画税納税通知書等を用いて確認されるため,作成を依頼する公証役場へ必要資料を事前に確認するのが安全である(日本公証人連合会「遺言公正証書を作成するには,どのような資料が必要ですか」参照)。

財産の評価又は受益者ごとの配分が確定しなければ最終額も確定しないため,初回相談時の概算と作成時の請求額が異なることがある。

第2 目的の価額に応じた基本手数料

1 令和7年10月1日改定後の料金表

法律行為に係る公正証書の作成手数料は,公証人手数料令9条及び別表により,次のとおり定められている。

法律行為の目的の価額手数料
50万円以下3000円
50万円を超え100万円以下5000円
100万円を超え200万円以下7000円
200万円を超え500万円以下1万3000円
500万円を超え1000万円以下2万円
1000万円を超え3000万円以下2万6000円
3000万円を超え5000万円以下3万3000円
5000万円を超え1億円以下4万9000円
1億円を超え3億円以下4万9000円に,1億円を超える額5000万円までごとに1万5000円を加算
3億円を超え10億円以下10万9000円に,3億円を超える額5000万円までごとに1万3000円を加算
10億円を超える29万1000円に,10億円を超える額5000万円までごとに9000円を加算
算定不能1万3000円

令和7年9月30日までの旧料金表とは金額が異なるため,以前に作成された解説や見積例を参照するときは,適用時点を確認する必要がある。

2 受益者ごとに算定して合算する方法

相続又は遺贈によって利益を受ける者が2人以上いる場合,各相続人及び受遺者について,その人が受ける利益の総額に対応する手数料を算定し,これらを合算する(日本公証人連合会「公正証書遺言の作成手数料は,どれくらいですか」参照)。

例えば,1人が3800万円の財産を受ける場合の基本手数料は3万3000円であるが,3500万円を受ける者と300万円を受ける者に分かれる場合は,3万3000円と1万3000円を合算した4万6000円となる。

認知,未成年後見人の指定その他の目的の価額を算定できない法律行為は,原則として目的の価額を500万円とみなすため,手数料は1万3000円となる(公証人手数料令9条,16条本文及び別表)。

祭祀主宰者の指定も,財産処分とは別の算定不能の法律行為として1万3000円の手数料が必要となる。

3 遺言加算

遺言の目的の価額の総額が1億円以下の場合,目的の価額等に応じて算出した手数料に1万3000円を加算する(公証人手数料令19条1項)。

目的の価額の総額が1億円を超える場合にはこの1万3000円は加算されないが,各受益者について算定した基本手数料は必要である。

第3 枚数加算と証明情報の交付費用

1 公正証書の枚数等による加算

電磁的記録で作成された公正証書の記録事項を紙に出力した場合,出力した書面が3枚を超えるときは,超える1枚ごとに300円を加算する(公証人手数料令25条)。

電磁的記録で作成することが困難な事情があり,例外的に紙で公正証書を作成する場合は,証書が4枚を超えるときに,超える1枚ごとに300円を加算する。

この枚数加算は公正証書を作成する段階の加算であり,作成後に証明情報を書面で受け取るための交付費用とは別である。

2 書面交付と電磁的記録による提供

電磁的記録で作成された公正証書については,従来の正本に相当する公正証書正本情報と,従来の謄抄本に相当する公正証書証明情報の交付又は提供を請求できる(公証人法43条及び44条)。

これらを書面で交付してもらう場合は1枚につき300円であり,電磁的記録で提供してもらう場合は1件につき2500円である(公証人手数料令40条及び40条の2)。

紙で作成された公正証書の正本又は謄本の交付費用も,1枚につき300円である。

公正証書の原本と証明情報の違いについては,「公正証書遺言の原本と証明情報」も参照されたい。

第4 追加費用が生じる場合と生じない事項

1 病床での作成及び公証役場外への出張

遺言公正証書を遺言者の病床で作成する場合,遺言加算及び枚数加算等を加える前の作成手数料に,その50%を加算する(公証人手数料令32条)。

病床加算の基礎額に遺言加算及び枚数加算まで含めて50%を計算するものではないため,見積りを確認するときは加算の順序を区別する必要がある。

公証人が病院,自宅,老人ホームその他の施設へ出張するときは,別に日当1日2万円,ただし4時間以内は1万円と,旅費が必要となる(公証人手数料令43条)。

2 証人への報酬,資料取得費及び専門家報酬

公正証書遺言の作成には証人2人の立会いが必要であり,適当な証人がいないときは公証役場に紹介を依頼できる(日本公証人連合会「公正証書遺言の証人は,どのように手配するのですか」参照)。

公証役場から紹介された証人への報酬は法定の公証人手数料ではなく,額は一律に法定されていないため,作成を依頼する公証役場に確認する必要がある。

戸籍証明書等の取得費用及び弁護士等へ遺言案の作成を依頼する場合の報酬も別途必要となり得るため,公証役場の見積額だけを公正証書遺言の総費用と考えることはできない。

3 予備的遺言,遺言執行者の指定及び付言事項

主位的な遺言と予備的な遺言を同じ遺言公正証書に記載する場合,予備的な遺言について別の手数料は算定されない(日本公証人連合会「予備的な遺言について,説明してください」参照)。

もっとも,先に作成した遺言公正証書とは別に,後日,予備的な遺言を定める新たな遺言公正証書を作成する場合は,その新しい公正証書について手数料が必要となる。

遺言執行者の指定は財産処分に付随する事項として扱われ,付言事項は法律行為ではないため,これらを通常の遺言内容とともに記載しても,それ自体を理由として公証人手数料は増えない。

第5 公正証書遺言の手数料の計算例

1 書面で証明情報を受け取る場合

遺言者が,①甲に3500万円の不動産を,乙に300万円の不動産を相続させ,②甲を祭祀主宰者に指定し,③電磁的記録で作成された公正証書の紙への出力枚数が7枚であり,④作成後に公正証書正本情報及び公正証書証明情報を各1通,各7枚の書面で交付してもらう場合を考える。

計算は次のとおりであり,公証人手数料等の合計は7万7400円となる。

内訳金額
甲が受ける3500万円の財産3万3000円
乙が受ける300万円の財産1万3000円
祭祀主宰者の指定1万3000円
枚数加算300円×(7枚-3枚)=1200円
2通の書面交付300円×7枚×2通=4200円
遺言加算1万3000円
合計7万7400円

この金額には,証人への報酬,資料取得費,病床加算,日当,旅費及び専門家報酬を含めていない。

2 電磁的記録で証明情報の提供を受ける場合

同じ事例で,公正証書正本情報及び公正証書証明情報を電磁的記録で各1件提供してもらう場合,書面交付費用4200円に代えて2500円×2件=5000円が必要となる。

この場合の合計は,7万7400円-4200円+5000円=7万8200円となる。

書面と電磁的記録のどちらが適するかは,遺言書の提出先の取扱い及び保管方法も確認した上で選ぶ必要がある。

第6 消費税と見積額の確認

1 公証人手数料は消費税の非課税取引であること

公証人法7条1項の手数料を対価とする役務の提供は非課税取引であるため,公証人手数料に消費税はかからない(消費税法6条1項及び別表第2第5号ハ)。

証人への報酬又は専門家報酬は公証人手数料とは性質が異なるため,それぞれの請求内容を確認する必要がある。

2 作成を依頼する公証役場への確認事項

日本公証人連合会は,遺言公正証書に関する公証人への相談は無料と案内しているため,財産資料及び遺言内容の概要を示して概算額を確認できる。

最終的な手数料は,受益者ごとの目的の価額,公正証書の枚数,証明情報の交付方法,病床での作成の有無及び証人紹介の有無によって変わるため,作成を依頼する公証役場から内訳のある見積りを受けるのが確実である。

第7 出典

1 法令

公証人手数料令

公証人法

消費税法

2 ウェブ資料

① 日本公証人連合会「公証人手数料令(令和7年政令第263号改正,令和7年10月1日施行)

② 日本公証人連合会「公正証書遺言の作成手数料は,どれくらいですか

③ 日本公証人連合会「予備的な遺言について,説明してください

④ 日本公証人連合会「公正証書遺言の証人は,どのように手配するのですか

⑤ 日本公証人連合会「遺言公正証書を作成するには,どのような資料が必要ですか

3 文献

次の文献は手数料の算定構造及び実務上の取扱いの確認に使用したが,いずれも令和7年10月1日の料金改定前に刊行されているため,現在の金額は公証人手数料令及び日本公証人連合会の現行資料によった。

① 日本公証人連合会編『新訂 公証人法』ぎょうせい,2011年,222頁~229頁

② 麻生興太郎『遺言等公正証書作成の知識と文例』日本法令,2021年,66頁~68頁

③ 奈良恒則ほか『3訂版 遺言相談標準ハンドブック』日本法令,2021年,167頁~173頁

④ 雨宮則夫・寺尾洋『第3版 Q&A 遺言・信託・任意後見の実務』日本加除出版,2018年,29頁

第8 関連記事

公正証書原本の電子化及びリモート方式については,「公正証書作成手続のデジタル化(AI作成)」を参照されたい。

公正証書遺言の原本の保存期間及び遺言検索については,「公正証書遺言の原本の保存期間及び検索可能性」を参照されたい。

作成時の口授の要件及び遺言無効訴訟に関する裁判例については,「公正証書遺言の『口授』とは―要件・判例・無効訴訟の実務(AIリライト)」を参照されたい。