第1 この記事の対象と結論
1 対象
この記事は,令和7年10月1日に施行された公正証書の作成手続のデジタル化を扱う。
中心に置くのは,遺言公正証書をウェブ会議(リモート方式)によって作成することができるか,できるとして,どのような要件,手続及び制約があるかである。
公正証書の作成手数料の改定については,別稿の令和7年10月1日施行の公証人手数料令改正で扱っているため,この記事では触れない。
公正証書遺言の「口授」の要件については,公正証書遺言の「口授」とは-要件・判例・無効訴訟の実務を参照されたい。
2 調査の基準日及び適用時点
この記事の調査の基準日は,令和8年9月2日である。
法令は,同日現在のe-Gov法令検索で確認した現行条文による。
公証人法施行規則については,令和8年3月10日施行の現行版のほか,令和7年10月1日施行版も確認した。
法務省が公表する指定公証人一覧は令和8年8月3日現在のものである。
3 結論
遺言公正証書は,ウェブ会議によって作成することができる。
遺言であることを理由に一律に排除されているわけではない。
公証人法上,ウェブ会議による作成が明文で排除されているのは保証意思宣明公正証書だけである(公証人法37条3項)。
これに加えて,公証人法施行規則24条10号は,ウェブ会議の方法によって遺言公正証書を作成する場合に証書へ記載すべき事項を定めている。
すなわち,法令は遺言公正証書をこの方法で作成することを正面から予定している。
もっとも,実際に利用できるかどうかは公証人の個別の判断による。
日本公証人連合会は,遺言のように本人の意思の確認が重要なものについては慎重に判断されるとしている。
また,成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時にする遺言は,書面での作成が前提となるため,デジタル化及びリモート方式の対象外である。
第2 公正証書作成手続のデジタル化
1 施行日及び指定公証人
令和7年10月1日,公正証書の作成手続のデジタル化に関する改正公証人法が施行された。
公証人法及び他の法令により公証人が行うこととされた電磁的記録に関する事務は,法務大臣の指定した公証人(指定公証人)が取り扱い,その指定は告示によって行われる(公証人法7条ノ2)。
したがって,デジタル化された手続を利用できるのは指定公証人の役場に限られる。
法務省が公表する指定公証人の一覧は,「電磁的記録の認証等」に係る指定と「公正証書の作成」に係る指定とを別の欄で表示している。
このうち「公正証書の作成」に係る指定の効力発生日は,東京法務局管内で令和7年10月1日から同年11月28日まで,横浜地方法務局及びさいたま地方法務局管内で同年11月10日,札幌法務局,高松法務局,徳島地方法務局,高知地方法務局及び松山地方法務局管内で同年12月15日というように,役場ごとに定められている。
全国一斉に始まったものではない。
2 電磁的記録による作成が原則である
公証人は,嘱託があった場合には,電磁的記録をもって公正証書を作成することにつき困難な事情がある場合を除き,電磁的記録によって公正証書を作成する(公証人法36条)。
嘱託人が紙と電磁的記録のいずれかを選択できる制度ではない。
日本公証人連合会は,電磁的記録による作成が困難な事情の例として,①法律上書面で作成することが前提となっている場合(列席者の署名押印が義務づけられている保証意思宣明公正証書及び成年被後見人の遺言公正証書,券面又は付箋への記載が必要な手形・小切手の拒絶証書など),②技術的・物理的に困難な場合(PDF化することが困難な大きな図面を添付する必要があるとき,機材の故障により電磁的記録としての作成ができないときなど)を挙げている。
列席者は,パソコン上でタッチペンを用いて氏名を手書きする電子サインを行い,押印は不要である。
身体の障害等により電子サインができない列席者については,公証人がその旨を記録する(公証人法40条5項,公証人法施行規則27条)。
公証人は,電子サインに加えて,官職証明書に係る電子証明書による電子署名を行う。
3 インターネットによる嘱託
嘱託人は,公正証書の作成を嘱託する場合には,官公署の作成した印鑑に関する証明書又は署名用電子証明書等を提供する方法その他の法務省令で定める方法により,嘱託人が本人であることを明らかにしなければならない(公証人法28条)。
従来の来所及び印鑑証明書による本人確認に加えて,嘱託に係る情報に電子署名をし電子証明書を付してインターネットから送信する方法を利用できるようになった。
4 正本及び謄本に相当するもの
嘱託人,その承継人又は利害関係を有する第三者は,電磁的記録で作成された公正証書について,記録されている事項の全部又は一部を出力した書面の交付の請求又は当該事項を記録した電磁的記録の提供の請求をすることができる(公証人法43条1項2号・3号)。
嘱託人又はその承継人は,公正証書に記録されている事項を記載した書面又は記録した電磁的記録であって,その内容が公正証書の記録事項と同一であることを公証人が法務省令で定める方法により証明したものの交付又は提供の請求をすることができる(公証人法44条1項2号・3号)。
令和7年の法改正により,従来の「正本」及び「謄本」は,書面で作成される公正証書について用いる用語となった。
電磁的記録で作成される公正証書については,従来の正本に相当するものが「公正証書正本情報」(電磁的記録の場合)又は「同一事項証明書面」(書面の場合),従来の謄本に相当するものが「公正証書証明情報」(電磁的記録の場合)又は「全部事項出力書面」(書面の場合)と呼ばれる。
交付を受けた書面の表題がこれらの用語になっている場合,それは当該公正証書が電磁的記録によって作成されたことを意味するのであって,ウェブ会議によって作成されたことを意味するものではない。
第3 遺言公正証書をウェブ会議で作成できるか
1 法令上の根拠
遺言公正証書をウェブ会議で作成できることは,次の三つの規定の組合せから導かれる。
(1) 口述の聴取
公証人は,嘱託人からの申出があり,かつ,当該申出を相当と認めるときは,法務省令で定めるところにより,公証人及び列席者が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって,聴取した陳述その他の自己の実験した事実の実験を行うことができる(公証人法37条2項)。
公正証書によって遺言をするには,遺言者が遺言の趣旨を公証人に口授することを要するところ(民法969条1項2号),この口述の聴取は同項にいう事実の実験に当たる。
(2) 読み聞かせ及び承認
公証人は,作成した公正証書を列席者に読み聞かせ,又は閲覧させ,列席者からその記載又は記録の正確なことの承認を得なければならない(公証人法40条1項)。
公証人は,嘱託人からの申出があり相当と認めるときは,これらの行為を,公証人及び列席者が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって行うことができる(同条3項)。
(3) 証人の立会い
公証人は,嘱託人からの申出があり相当と認めるときは,公証人並びに嘱託人及び通訳人又は証人が映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって,証人を公正証書の作成に立ち会わせることができる(公証人法31条)。
同条の証人は,本来は嘱託人が視覚障害その他の障害により視覚により表現を認識することが困難である場合等に立ち会わせる証人(公証人法30条)を指す。
もっとも,令和7年10月1日施行の改正により新設された民法969条3項は,公正証書遺言の証人について,公証人法30条に規定する証人とみなして同法の規定を適用すると定めている。
したがって,遺言の証人についても公証人法31条が適用され,証人をウェブ会議によって立ち会わせることができる。
2 施行規則が遺言公正証書を名指しで想定している
公証人法38条6号は,公正証書に記載し又は記録すべき事項として,同条1号から5号までのほか「その他法務省令で定める事項」を掲げる。
これを受けた公証人法施行規則24条は,公正証書の記載又は記録事項を10号にわたって定めており,その10号は次のとおりである。
法第三十七条第二項又は第四十条第三項の規定により映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によつて遺言公正証書を作成する場合において,証人が嘱託人と同席しているときは,その旨
この規定は,ウェブ会議の方法によって遺言公正証書を作成することを当然の前提とした上で,証人が遺言者と同じ場所にいるときはその旨を証書に記載することを求めるものである。
同号は,令和7年法務省令第40号による令和7年10月1日施行版から既に置かれており,令和8年3月10日施行の現行版でも文言は変わっていない。
同号が「証人が嘱託人と同席しているとき」を記載事項としていることは,その裏返しとして,証人が遺言者と別の場所からウェブ会議に参加する形態も想定されていることを示している。
本記事では,この規定を,遺言公正証書のウェブ会議による作成が法令上予定されていることを示す最も直接的な根拠と整理する。
3 適用が除外されるのは保証意思宣明公正証書だけである
公証人法37条3項は,同条2項の規定を適用しない公正証書として,民法465条の6第1項(同法465条の8第1項において準用する場合を含む。)の公正証書,すなわち保証意思宣明公正証書のみを掲げている。
遺言公正証書は,この適用除外に含まれていない。
4 成年被後見人の遺言は対象外である
成年被後見人が事理を弁識する能力を一時回復した時において遺言をするには,医師2人以上の立会いを要する(民法973条1項)。
遺言に立ち会った医師は,遺言者が遺言をする時において精神上の障害により事理を弁識する能力を欠く状態になかった旨を遺言書に付記して,これに署名し,印を押さなければならない(同条2項)。
この付記,署名及び押印は書面を前提とするものであるから,成年被後見人の遺言公正証書は,公証人法36条2号にいう電磁的記録をもって作成することにつき困難な事情がある場合に当たる。
日本公証人連合会も,成年被後見人の遺言公正証書を,法律上書面で作成することが前提となっている例として挙げている。
なお,民法等の一部を改正する法律(令和8年法律第45号)により,民法973条2項は,立ち会った医師が「記載し,又は記録して,これに署名し,又は法務省令で定める署名に代わる措置を講じなければならない」と改められ,押印の要件がなくなるとともに電磁的記録による記録が可能となる。この部分の施行日は,公布の日から起算して1年を超えない範囲内において政令で定める日である(同法附則1条2号)。
他方,同条1項の対象者を成年被後見人から同法10条1項の規定による審判を受けた者へ改める部分は,成年後見制度の見直しと同じく,公布の日から起算して2年6月を超えない範囲内において政令で定める日に施行される。令和8年9月3日現在,いずれの政令も確認できないが,施行後は,書面であることを前提とする本項の説明を再検討する必要がある。
第4 リモート方式の要件及び手続
1 三つの要件
日本公証人連合会は,リモート方式を利用できるのは,①嘱託人の申出があること,②通訳人及び証人のみのウェブ会議での参加を除き,他の嘱託人の異議がないこと,③公証人が相当と認めることの全てが満たされた場合であるとしている。
②の括弧書は実務上重要である。
証人だけがウェブ会議に参加する場合には,他の嘱託人の異議がないことは要件とならない。
2 相当性の判断
日本公証人連合会は,ウェブ会議方式での作成が相当かどうかを,その必要性と許容性とを総合的に勘案して判断するとしている。
必要性が高い場合の例として挙げられているのは,①ウェブ会議方式での参加を希望する者が心身の状況,就業状況,地理的状況等に照らして公証役場に行くことが困難な場合,②嘱託人相互の関係から嘱託人相互が同席することに問題がある場合,③感染症予防等のため嘱託人がいる施設への立入が制限されている場合である。
許容性は,嘱託人の本人確認,真意の確認,判断能力の確認等を適切に行うことができるかどうかという観点から判断されるとされている。
代理人による手続が許容されるような場合には許容性が高いと考えられる一方,遺言及び任意後見等,本人の意思の確認が重要なものについては慎重に判断されるとされている。
また,ウェブ会議中に電子サイン等のための機材操作をする必要があるため,そのような操作が困難な場合は許容性に欠けると判断されるとされている。
遺言能力に疑問がある場合に公証人が取る対応については,遺言者の遺言能力に疑問がある場合に公証人が取るべき具体的対応を参照されたい。
3 申込み及び本人確認
日本公証人連合会は,リモート方式の利用について次の手続を示している。
まず,リモート方式の利用を希望する場合には,要件が整っているか及び相当かについて公証人の判断を要するため,早めに公証人に相談する必要があるとされている。
事前の相談の段階でリモート方式を利用できると判断された場合でも,実際に手続を開始した後の状況によって,リモート方式による作成手続が取り止めとなる場合もあり得るとされている。
次に,事前に,ウェブ会議での参加を希望する者の氏名,その者についてウェブ会議の利用を希望する理由,ウェブ会議の招待及びウェブ会議中のメールの送受信に使用するメールアドレス等を記載したウェブ会議利用申出書の提出が必要とされている。
その様式は,公正証書作成嘱託書を兼ねた様式1を利用することとされている。
さらに,本人確認資料として,印鑑登録証明書又は署名用電子証明書の提出が必要とされている。
印鑑登録証明書による場合は,公正証書の最終の案文を添付するなど適宜の方法で嘱託の内容を明らかにした公正証書作成嘱託書を紙で作成して実印を押捺し,これと印鑑登録証明書を郵送等の方法により提出する。
署名用電子証明書による場合は,同様の嘱託書をPDFファイルとして作成し,これにマイナンバーカードの署名用電子証明書その他の法務大臣が指定する電子証明書で電子署名したものを電子メール等で提出する。
いずれの場合も,リモート方式で参加する嘱託人及び嘱託代理人の顔写真が貼付された公的身分証明書の写しを事前に送付し,ウェブ会議の冒頭でその原本を画面上で提示することとされている。
4 必要な機材
日本公証人連合会の「リモート方式に関する説明」は,リモート方式により公正証書を作成する際に嘱託人が使用するパソコンについて次の6項目を挙げ,これらの要件の一つでも欠ける場合はリモート方式を利用できないとしている。
①ウェブ会議中インターネットに接続されていること
②Microsoft Teamsが使用可能であること
③Teamsの使用中に,同じパソコンで電子メールを即時に受信可能であること
④ウェブカメラが使用可能であること
⑤Teamsの使用中に,ウェブカメラを動かして嘱託人のいる部屋全体を写すことが可能であること
⑥パソコンの画面がタッチパネルであって,タッチペンを使用可能であること
同会は,ウェブ会議中ずっとインターネットに接続されていることが必要であるため,移動中の車両内等,安定した通信が行えない場所もリモート方式を利用できないとしている。
タブレット型PC及びスマートフォンは,電子サインを行う際に,公証人や他の列席者が画面上の電子サインの状況と電子サインを行っている列席者の様子を同時に確認することができないため,使用できないとされている。
5 場所の要件
公証人法施行規則23条は,公証人法31条,37条2項又は40条3項の規定により映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話をすることができる方法によって公正証書を作成するときは,公証人が,①通話者,②通話者の所在する場所の状況が当該方法によって手続を実施するために適切なものであること,を確認しなければならないと定めている。
日本公証人連合会が示す次の運用は,本記事では,この省令上の確認義務を具体化したものと整理する。
①リモート時に嘱託人がいる場所は,原則として個室などの閉じられた空間である必要があり,テラス,公園のベンチなどの屋外,共用スペース,喫茶店など嘱託人以外の人が自由に立ち入ることができる場所では,公証人が相当でないと判断してリモート方式の利用を断ることがある
②公証人は,室内の状況や嘱託人の周辺にほかの人物がいないかどうかを確認するため,ウェブカメラで室内全体を映すことを求めることがあり,部屋の出入り口が嘱託人の背後の画面に映り込むような角度でのウェブカメラの設置を求めることもある
③ウェブ会議時にはバーチャル背景を利用できず,背景を隠すことも遠慮を求められる
これらは,いずれも第三者が同席して遺言者に影響を及ぼしていないことを確認するための仕組みであると考えられる。
第5 証人及び操作を補助する者の取扱い
1 証人の欠格事由は民法974条による
公証人法35条3項は,証人となることができない者として,未成年者,同法14条各号に掲げる者のほか,嘱託事項について利害関係を有する者,嘱託事項について代理人である者又は代理人であった者,嘱託人又はその代理人の配偶者,四親等内の親族,法定代理人,保佐人,補助人,被用者又は同居人を掲げている。
もっとも,民法969条3項は,公正証書遺言の証人について公証人法の規定を適用するに当たり,公証人法35条3項を明文で除外している。
したがって,遺言公正証書の証人の欠格事由は民法974条によって判断され,公証人法35条3項の欠格事由は適用されない。
民法974条は,遺言の証人又は立会人となることができない者として,①未成年者,②推定相続人及び受遺者並びにこれらの配偶者及び直系血族,③公証人の配偶者,四親等内の親族,書記及び使用人を掲げている。
2 欠格者はパソコンの操作のためにも出席できない
日本公証人連合会の「リモート方式に関する説明」は,パソコンの操作について,嘱託人自身が操作することが望ましいものの,それが難しい場合には他人に操作を行ってもらっても差し支えないとした上で,遺言公正証書の作成については,証人又は立会人の欠格事由(民法974条)がある者は,パソコンを操作するためであるとしても,ウェブ会議に出席することはできないとしている。
したがって,推定相続人である子が,パソコンの操作を補助する目的であっても,遺言者の側からウェブ会議に出席することはできないことになる。
同会は,さらに,パソコンの操作を行うため立ち会う者について,公証人が,嘱託事項について利害関係がある,あるいは嘱託人の判断・意思決定に影響を及ぼすおそれがあるのでウェブ会議に立ち会うのは相当でないと判断した場合には,リモート方式による公正証書の作成を断ることがあるとしている。
本記事では,この点を,高齢の遺言者が単独でパソコンを操作することが難しい場合に,操作を補助できる者が事実上限られるという,リモート方式の実質的な制約と整理する。
3 証人が同席する場合の記載
第3の2のとおり,ウェブ会議の方法によって遺言公正証書を作成する場合において,証人が嘱託人と同席しているときは,その旨が公正証書に記載又は記録される(公証人法施行規則24条10号)。
公正証書の記載事項からは,作成がウェブ会議によったこと及び証人が遺言者と同席していたかどうかを読み取ることができる。
第6 電子データ等による新たな遺言制度との区別
令和6年4月10日,「デジタル技術を活用した遺言制度の在り方に関する研究会報告書」が公表された。
この報告書は,公正証書作成手続のデジタル化とは別に,電子的な手段によって作成できる新たな遺言の方式を検討したものである。
その後,法制審議会民法(遺言関係)部会の審議を経て,令和8年6月17日に「民法等の一部を改正する法律」が成立し,同月24日に令和8年法律第45号として公布された。
同法は,遺言者が電子データ等で作成した遺言を法務局に保管申請する「保管証書遺言」を新たな普通方式の遺言として創設した。
保管証書遺言については,パソコン等を用いた作成,オンラインによる保管申請及びウェブ会議を利用した本人確認等が予定されている。
もっとも,保管証書遺言の創設等は,公布の日から3年を超えない範囲内において政令で定める日に施行されるため,現時点では利用できない。
公正証書遺言のデジタル化と保管証書遺言は,制度の主体,作成方式及び施行時期が異なるため,区別する必要がある。
保管証書遺言の内容については,保管証書遺言とは-令和8年民法等改正で新設された第4の遺言方式,成立要件及び施行時期を参照されたい。
第7 参考-遺言公正証書の作成件数
日本公証人連合会によれば,令和7年1月から12月までの1年間に全国で作成された遺言公正証書は12万3891件であった。
過去10年間の推移は,平成28年10万5350件,平成29年11万0191件,平成30年11万0471件,令和元年11万3137件,令和2年9万7700件,令和3年10万6028件,令和4年11万1977件,令和5年11万8981件,令和6年12万8378件である。
令和7年は前年より4487件減少している。
もっとも,デジタル化の施行は令和7年10月1日であり,同会の公表資料はリモート方式による作成件数を区分していないから,この減少の原因をデジタル化に求めることはできない。
第8 出典・参考資料
1 法令
①民法(明治29年法律第89号)969条,969条の2,973条,974条(e-Gov法令検索)
②公証人法(明治41年法律第53号)7条ノ2,28条,29条,30条,31条,35条,36条,37条,38条,40条,43条,44条(e-Gov法令検索)
③公証人法施行規則(昭和24年法務府令第9号)23条,24条,27条(e-Gov法令検索)
2 所管行政機関の資料
①公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化について(法務省)
②指定公証人(法務大臣から指定された電磁的記録に関する事務を行う公証人)の一覧(法務省,令和8年8月3日現在)
③「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)について(法務省)
④民法等の一部を改正する法律案(第221回国会提出法律案,参議院)
3 日本公証人連合会の資料
①公証事務「公正証書」Q4からQ9まで(日本公証人連合会)
②リモート方式に関する説明(日本公証人連合会)
③Web会議を利用した公正証書の作成の流れについて(利用者様向け操作マニュアル)1.03版(日本公証人連合会,2025年9月22日)
④2025年10月1日から公正証書の作成手続がデジタル化されます!(日本公証人連合会,2025年9月8日)
⑤令和7年の遺言公正証書の作成件数について(日本公証人連合会,2026年3月23日)
4 参考文献
①吉賀朝哉・三浦武「公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化」法律のひろば79巻2号,ぎょうせい,2026年,52頁~59頁
②吉賀朝哉・三浦武「公正証書作成手続のデジタル化」ビジネス法務2026年2月号,中央経済社,144頁~146頁