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公正証書作成手続のデジタル化(AI作成)

第1 公正証書作成手続のデジタル化

1 施行日及び対象となる公証人

令和7年10月1日、公正証書作成手続のデジタル化に関する改正公証人法が施行された。

公正証書の作成に係る電磁的記録に関する事務は、法務大臣の指定を受けた指定公証人が取り扱う(公証人法7条ノ2)。

2 公正証書作成のオンライン嘱託

公正証書の作成嘱託については、従来の印鑑証明書等による本人確認の方法に加えて、嘱託に係る情報に電子署名をし、所定の電子証明書を付して指定公証人に送信する方法を利用できる(公証人法28条公証人法施行規則22条)。

3 公正証書原本の作成及び保存

公正証書の原本は、電磁的記録によって作成することが困難な事情がある場合を除き、原則としてPDF形式の電磁的記録で作成・保存される(公証人法36条)。

嘱託人が紙の原本と電磁的記録による原本のいずれかを選択できる制度ではない。

ただし、成年被後見人による遺言公正証書及び保証意思宣明公正証書のように法律上書面での作成が前提となる場合や、PDF化が困難な大きな図面を添付する場合、機材の故障がある場合等には、紙の原本が作成される(日本公証人連合会「公正証書」Q5)。

列席者は、原則として電子ペン等を用いて氏名を手書きする電子サインを行う。

もっとも、身体の障害等により電子サインができない列席者については、公証人がその旨を電磁的記録に記録する(公証人法40条5項、公証人法施行規則27条)。

公証人は電子サインを行うとともに、官職証明書に係る電子証明書を用いて電子署名を行う。

4 正本又は謄抄本に相当するもの

電磁的記録で作成された公正証書について、従来の謄抄本に相当するものは、記録事項の全部又は一部を出力した書面又は当該事項を記録した電磁的記録として交付又は提供を受けることができる(公証人法43条)。

また、従来の正本に相当するものは、記録事項を記載した書面又は当該事項を記録した電磁的記録であって、その内容が公正証書の記録事項と同一であることを公証人が証明したものとして交付又は提供を受けることができる(公証人法44条)。

電磁的記録として提供される前者は「公正証書証明情報」、後者は「公正証書正本情報」と呼ばれ、両者は区別される。

第2 リモート方式による公正証書の作成

1 利用要件

リモート方式を利用するためには、①嘱託人の申出があること、②他の嘱託人に異議がないこと、③公証人が相当と認めることが必要である(公証人法40条3項)。

公証人は、通話者本人を確認するとともに、通話者がいる場所の状況がウェブ会議を実施するために適切であることも確認する。

保証意思宣明公正証書は、ウェブ会議によって作成することができない(公証人法37条3項)。

2 遺言公正証書の場合

遺言公正証書では、遺言者の本人確認、真意及び遺言能力を適切に確認できるかどうかが重要である。

そのため、リモート方式を利用できるかどうかは、遺言者の年齢及び心身の状況、遺言の内容、嘱託に至る経緯、遺言者が自由な意思に基づいて真意を述べられる環境であるかどうか並びに事後的な紛争の可能性等を踏まえて、個別に判断される。

遺言であれば当然にウェブ会議を選択できるわけではないが、遺言公正証書であることだけを理由として一律に利用できないわけでもない(日本公証人連合会「公正証書」Q7)。

3 必要な機材

リモート方式を利用する場合、パソコン、カメラ、マイク、スピーカー、タッチ入力が可能なディスプレイ又はペンタブレット、タッチペン及びパソコンで送受信できるメールアドレスが必要である。

日本公証人連合会の案内では、スマートフォン及びタブレット型PCは、公正証書作成のリモート方式には使用できないとされている(日本公証人連合会「公正証書」Q8)。

第3 電子データ等による新たな遺言制度

令和6年4月10日、「デジタル技術を活用した遺言制度の在り方に関する研究会報告書」が公表された。

この報告書は、公正証書作成手続のデジタル化とは別に、電子的な手段によって作成できる新たな遺言の方式を検討したものである。

その後、法制審議会民法(遺言関係)部会の審議を経て、令和8年6月17日、「民法等の一部を改正する法律」が成立し、同月24日に令和8年法律第45号として公布された。

同法は、遺言者が電子データ等で作成した遺言を法務局に保管申請する「保管証書遺言」を新たな普通方式の遺言として創設した(法務省「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)について)。

保管証書遺言については、パソコン等を用いた作成、オンラインによる保管申請及びウェブ会議を利用した本人確認等が予定されている。

もっとも、保管証書遺言の創設等は、公布の日から3年を超えない範囲内において政令で定める日に施行されるため、現時点ではまだ利用できない。

公正証書遺言のデジタル化と保管証書遺言は、制度の主体、作成方式及び施行時期が異なるため、区別する必要がある。

第4 出典

公証人法

公証人法施行規則

日本公証人連合会「公正証書」Q4ないしQ9

法務省「公正証書のデジタル化について」

法務省「指定公証人一覧」

法務省「民法等の一部を改正する法律」(成年後見及び遺言の制度の見直し)について

令和8年法律第45号

⑧ 吉賀朝哉・三浦武「公正証書の作成に係る一連の手続のデジタル化」『法律のひろば』79巻2号、ぎょうせい、2026年、52頁~59頁

⑨ 吉賀朝哉・三浦武「公正証書作成手続のデジタル化」『ビジネス法務』2026年2月号、中央経済社、144頁~146頁

⑩ 森公任監修『聴ける!実用法律書 すぐに役立つ 内容証明郵便・公正証書・支払督促 手続きと書式』三修社、2026年、57頁~62頁

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