第1 TreeeSの登録準備とGビズIDの取得を分ける
1 本記事で扱う準備
TreeeS(ツリーズ)の登録準備では,裁判所のシステムの登録条件と,認証に使うGビズID自体の取得手続を分けて確認する必要がある。
最高裁判所の令和8年4月3日付調達仕様書は,法人・士業者のユーザ登録について,GビズIDを利用するかを最初に選ぶ改修案を示しているが,これは最終的な本番登録手順を保証する資料ではない。
本記事は,令和8年10月4日に確認したデジタル庁の公開マニュアルを基に,個人事業主がGビズIDを準備する際につまずきやすい点を説明する。
TreeeSの申請受付日,本番URL,資格確認の条件及び事件への関連付けは,裁判所の正式な利用案内で別に確認する。
2 既存アカウントを先に確認する
GビズIDにはエントリー,プライム及びメンバーの区分がある。
IDとパスワードでマイページに入れることだけでは,プライムの取得が完了したと判断できない。
取得済みか分からない場合は,GビズIDの公式トップからアカウントセルフ解決サービスを利用し,重複申請の前に現在の登録を確認する(プライム編39頁)。
第2 所在地と連絡先住所を混同しない
1 本人確認資料と一致させる項目
デジタル庁の公開FAQは,個人事業主の「所在地」欄には印鑑登録証明書に記載された住所を入力し,事務所の住所が異なる場合は「アカウント利用者情報」の「連絡先住所」欄に入力すると説明している。
法律事務所の所在地を,確認資料の住所に代えて本人確認用の欄へ入力してよいという意味ではない。
プライム編マニュアル24頁~25頁も,事業者基本情報とアカウント利用者情報を別の入力段階として示している。
申請前に,①本人確認資料に記載された氏名・住所,②連絡を受ける事務所の住所,③屋号,④受信可能なメールアドレスと電話番号を照合する。
2 連携先での表示は別に確認する
GビズIDに連絡先住所を登録できることから,すべての連携サービスで本人確認用の住所が表示されないとまではいえない。
TreeeSの登録画面,入力補助で書面に反映される情報及び相手方が閲覧できる情報は,実際の利用案内と画面で確認する。
旧姓を職務上使用している場合も,本人確認資料の氏名,GビズIDに登録された氏名及び裁判所へ提出する書面の氏名をそれぞれ確認する。
本記事では,TreeeS固有の氏名表示や変更方法が確定したとは扱わない。
第3 申請,審査完了及び有効化を分けて管理する
1 オンライン申請と書類郵送申請
プライム編1頁は,マイナンバーカードとスマートフォンを使うオンライン申請を「最短即日」,印鑑証明書等を郵送する申請を「最大1か月」と案内している。
最短の所要時間を取得日の保証とせず,書類の準備と不備の補正を見込んで申請する。
郵送申請では,発行日から3か月以内の印鑑登録証明書の原本が必要とされ,申請書の手書き修正は無効とされる(同28頁・34頁)。
印刷後に入力誤りが分かった場合は,そのまま手書きで直して郵送せず,公式の再申請手順を確認する。
2 審査完了のお知らせだけで終えない
プライム編35頁~38頁は,審査状況の確認と,審査完了後のSMS認証による有効化を説明している。
申請受付,審査完了,必要な認証の完了及びプライムとしてのログイン確認を,別々の完了欄として管理すると取りこぼしを防ぎやすい。
これはGビズID側の手続である。
GビズIDプライムを取得したことだけで,TreeeSのユーザ登録,資格確認又は事件へのアクセス権が完成したとは判断しない。
第4 職員のメンバー作成とサービス権限を分ける
1 作成後の利用サービスの設定
メンバー編マニュアル3頁・9頁~11頁は,メンバーアカウントを作成した後に,利用できるサービスを選択して保存する手順を示している。
職員のアカウントが存在することと,必要な連携サービスを利用できることを同じ確認項目にしない。
事務所の確認表には,①職員本人の登録完了,②対象サービスの選択・保存,③サービス側の登録や権限確認,④担当する事件で必要な操作ができるかを設けることが考えられる。
この確認表は運用上の提案であり,GビズIDの設定が訴訟代理権を与えるという説明ではない。
2 一般メンバーと管理者を区別する
メンバー編18頁以下は,一般メンバーと管理者権限を区別し,管理者権限の承諾又は申請にはメンバー自身のマイナンバーカードが必要と説明している。
一般メンバーの作成に関する「書類審査不要」という案内を,管理者権限の付与も本人確認なしで行えるという意味に広げない。
第5 認証と有効期限を事務所の台帳に記録する
1 利用する画面に合う認証を準備する
メンバー編2頁・14頁~17頁は,マイページへのログインと行政システムへのログインを分け,アプリ認証,SMS認証及びメールワンタイムパスワード認証の手順を説明している。
アプリ認証とメール認証には事前設定が必要であり,利用する画面の案内に従う。
事務所の台帳には,アカウントの区分,管理担当,受信先,認証方法及び担当変更時の処理を記録する。
パスワードや認証コードを一般の作業台帳に書き込んだり,複数人で一つの職員用アカウントを使い回したりする運用は避ける。
2 期限切れと提出期限は別の問題である
両マニュアル1頁及びデジタル庁の有効期限の案内は,プライムとメンバーの有効期間を発行日から2年3か月としている。
令和8年7月9日の導入前に発行されたアカウントの起算日には経過的な取扱いがあるため,マイページに表示される自己の期限を確認する。
プライムの期限が切れると,紐づくメンバーが有効期限内でも同様の利用制限を受けるため,弁護士側と職員側の期限を一緒に管理する。
更新日を事務所の予定表へ記録し,申請・送達の担当者が認証できる状態を維持する。
認証できなかったことから裁判上の提出期限が当然に延びるとは判断せず,提出先の障害案内,担当裁判所への確認及び利用可能な提出方法を別に検討する。
第6 関連記事と出典
1 目的別の関連記事
TreeeS側の登録に関する資料の位置付けは,TreeeSのアカウント登録を参照されたい。
入口の確認は,TreeeSのログインと研修環境,職員の役割は,TreeeSで事務職員ができることで扱う。
2 出典と確認範囲
①デジタル庁「GビズIDクイックマニュアル GビズIDプライム編 個人事業主」ver1.6,2026年9月,全39頁。
②デジタル庁「GビズIDクイックマニュアル GビズIDメンバー編」ver4.6,2026年9月,全31頁。
③デジタル庁「よくある質問」の個人事業主の住所入力,登録・認証及び有効期限の案内。
④デジタル庁「アカウントの有効期限」。
⑤最高裁判所「e提出・e記録管理システム及びe事件管理システムの追加機能改修業務 調達仕様書」(令和8年4月3日付),PDF35頁。
以上は令和8年10月4日に確認した公開資料である。
GビズIDの本人確認・登録操作を代行したものではなく,TreeeSの本番画面,最終登録条件及び障害時の代替提出手順も実地確認していない。