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養子縁組前の子と兄弟姉妹の代襲相続―「共通する親の直系卑属」と最高裁令和6年11月12日判決(AI作成)

被相続人より先に兄弟姉妹が死亡していても,その子であるおい・めいが常に代襲相続人になるわけではありません。最高裁令和6年11月12日第三小法廷判決は,おい・めいが「被相続人とその兄弟姉妹の共通する親の直系卑属」でない場合には,兄弟姉妹を代襲して相続人になることができないと判断しました。

この問題は,死亡した兄弟姉妹が被相続人の親と養子縁組をし,その兄弟姉妹に縁組前から子がいた場合に生じます。戸籍を読む際には,死亡の先後だけでなく,養子縁組日と子の出生年月日を対照する必要があります。

第1 最高裁令和6年11月12日判決の結論

最高裁令和6年11月12日第三小法廷判決(令和5年(行ヒ)第165号,民集78巻6号1377頁)は,次のように判断しました。

被相続人とその兄弟姉妹の共通する親の直系卑属でない者は,被相続人の兄弟姉妹を代襲して相続人となることができない。

したがって,戸籍上「死亡した兄弟姉妹の子」であることだけでは足りません。その子が,被相続人と兄弟姉妹を結び付ける共通の親から見ても直系卑属であるかを確認する必要があります。

第2 判決の事案

判決で問題となった親族関係は,次のようなものでした。

  1. 被相続人CとBは,もともと姉妹ではありませんでした。
  2. Bには既に子らがいました。
  3. その後,Bは,被相続人Cの母Dと養子縁組をし,法律上,被相続人Cの妹となりました。
  4. Bが死亡し,さらに被相続人Cが死亡しました。
  5. Bの子らは,Bを代襲してCの相続人になったとして,相続登記を申請しました。

登記官は,Bの子らには申請権限がないとして登記申請を却下しました。東京高裁はBの子らが代襲相続人になると判断しましたが,最高裁は原判決を破棄し,Bの子らは代襲相続人にならないと判断しました。

第3 兄弟姉妹の代襲相続と養子縁組の法的関係

1 兄弟姉妹の子が代襲する基本ルール

民法889条2項は,兄弟姉妹が相続開始以前に死亡した場合等について,同法887条2項を準用しています。そのため,兄弟姉妹の子が代襲相続人になることがあります。

もっとも,兄弟姉妹の系統について準用されるのは887条2項であり,同条3項ではありません。そのため,現在の相続法では,兄弟姉妹の孫以下への再代襲は認められていません。

2 養子縁組による親族関係は縁組の日から生じる

民法727条は,養子と養親及びその血族との間に,養子縁組の日から,血族間と同一の親族関係が生じると定めています。

最高裁判決は,養子縁組前から養子の子であった者には,養親との間に縁組による血族関係が生じないことを前提としました。このため,被相続人の親が兄弟姉妹を養子にした時点で既に生まれていた養子の子は,その養親の直系卑属にはなりません。

3 「共通する親の直系卑属」の意味

被相続人と死亡した兄弟姉妹を法律上の兄弟姉妹にしている親を,ここでは「共通する親」と呼びます。代襲者であるおい・めいは,この共通する親から見ても直系卑属でなければなりません。

判決の事案では,共通する親はDでした。しかし,Bの子らは,BがDと養子縁組をする前に出生していたため,Dの直系卑属ではありませんでした。このことから,Bを代襲してCの相続人になることが否定されました。

第4 縁組日と出生日の組合せ

事案確認の方向代襲相続
兄弟姉妹が実子で,その子も法律上の子である共通する親から兄弟姉妹,その子へと法律上の直系関係が続くか他の要件を満たせば認められる
兄弟姉妹が養子で,養子縁組後にその子が出生した出生時には養親との親族関係が生じているか他の要件を満たせば認められ得る
兄弟姉妹が養子で,養子縁組前からその子が出生していたその子は養親の直系卑属に当たるか最高裁令和6年判決によれば認められない

上表は出生と縁組の基本的な関係を示すものです。特別養子縁組,離縁,認知その他の身分関係がある場合は,その効力を別に確認する必要があります。

第5 戸籍・相続登記・法定相続情報一覧図の確認方法

兄弟姉妹相続でおい・めいが登場する場合は,次の順序で戸籍を確認すると整理しやすくなります。

  1. 被相続人に子及び直系尊属がいないことを確認する。
  2. 被相続人の兄弟姉妹の範囲を,父母双方の戸籍から確認する。
  3. 被相続人より先に死亡した兄弟姉妹について,実親子関係か養親子関係かを確認する。
  4. 養子縁組がある場合は,養子縁組日と,代襲者とされる子の出生年月日を対照する。
  5. 被相続人と兄弟姉妹の共通する親を特定し,代襲者がその親の直系卑属であるかを確認する。

この確認をせずにおい・めいを相続人として扱うと,相続登記,遺産分割協議,預貯金の払戻し又は法定相続情報一覧図の申出で,相続人の範囲を誤るおそれがあります。登記申請では,申請人に相続による権利取得がないとして却下されることもあります。

戸籍のつなぎ方と一覧図への転記は,「法定相続情報一覧図の作成方法―戸籍謄本の読み方と相続人の確認」で説明しています。

第6 相続放棄を検討するときの注意

おい・めいが代襲相続人に当たらないのであれば,その人について相続放棄をする必要はありません。他方,自分が相続人に当たるか不明なまま期間が経過すると,債務の有無や熟慮期間の起算点をめぐる問題が生じ得ます。

相続放棄を検討する場面では,単に親族から「あなたが相続人である」と言われたことだけで判断せず,戸籍と法的な親族関係を確認します。手続と必要書類は,「相続放棄の手続を自分でする方法」で説明しています。

第7 判決の射程と実務上の注意

最高裁判決が否定したのは,養子縁組前から養子の子であった者による兄弟姉妹の代襲相続です。おい・めい一般の代襲相続を否定したものではありません。また,生物学上の血縁の近さを比較して相続人を決めたものでもなく,民法上の親族関係を基礎に判断しています。

したがって,「戸籍上はおい・めいである」「被相続人と親しく生活していた」「生物学上の血縁がある」といった事情だけから結論を出すことはできません。養子縁組,出生,認知,離縁等の各身分行為の時期と効力を確認する必要があります。

第8 出典・参考資料

  1. 最高裁令和6年11月12日第三小法廷判決・裁判例結果詳細(令和5年(行ヒ)第165号,民集78巻6号1377頁)。
  2. 同判決全文PDF。
  3. 民法727条,887条2項・3項,889条1項2号・2項。
  4. 一藤哲志「令和6年度最高裁民事破棄判決等の実情」判例時報2629号。