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逮捕されたら会社にばれるか-職場での逮捕,欠勤,懲戒及び解雇(AI作成)

第1 この記事の対象と先に確認すべき結論

1 勤務先への一律の自動通知はない

逮捕された人の勤務先へ,警察又は検察が逮捕の事実を一律に自動通知する制度はない。東京弁護士会も,報道されない限り,逮捕されても勤務先等へ当然に連絡されるわけではないと説明している。

もっとも,会社に知られないことが保証されるわけではない。①職場で逮捕される,②勤務先が捜索・差押え又は事情聴取の対象になる,③本人,家族又は弁護人が欠勤を連絡する,④無連絡の欠勤を会社が調べる,⑤実名・勤務先を伴う報道又は社内外からの情報提供がある,という経路で会社が把握することがある。

2 逮捕,欠勤,懲戒及び解雇は別々に判断する

逮捕は,犯罪の嫌疑と身体拘束の必要性について刑事手続上の判断がされたことを意味するにとどまり,有罪判決ではない。したがって,「逮捕されたから懲戒できる」,「勾留されたから自動的に解雇できる」という関係にはない。

会社との関係では,①会社が具体的な非違行為を確認できるか,②就業規則の懲戒事由又は解雇事由に当たるか,③私生活上の行為と会社の企業秩序・社会的評価との関連があるか,④欠勤の期間,連絡及び業務への影響はどの程度か,⑤選択した処分が重すぎないか,⑥定められた手続を履行したかを分けて検討する必要がある。本記事は一般的な情報を整理するものであり,個別事案では就業規則,雇用契約及び刑事事件の進行を確認する必要がある。

第2 逮捕が会社に知られる主な経路

1 職場で逮捕される場合

逮捕状の記載事項を定める刑事訴訟法200条は,逮捕状を執行する場所を自宅に限定していない。職場も逮捕場所から除外されておらず,捜査機関が逃亡又は罪証隠滅のおそれ,出勤状況その他の事情から職場での執行を選ぶことがある。これに対し,自宅で逮捕状を執行する際の居留守,住居への立入り,ドアの開扉及び本人不在時の取扱いについては,逮捕状を持った警察に居留守を使うとどうなるか-自宅への立入り,ドアの開扉及び不在の場合(AI作成)を参照されたい。

ただし,捜査機関が常に職場を選べるというだけで,職場での逮捕が標準であるという意味ではない。犯罪捜査規範126条2項は,逮捕の時期,方法等をあらかじめ考慮するよう求め,同規範127条2項は,手錠を使用する場合も衆目に触れないよう努めることを求めている。本人が逮捕場所を指定する権利を持つわけではないが,捜査側にも方法を事前に検討し,人目への配慮に努めるべき規範がある。

2 勤務先の捜索又は関係者聴取から知られる場合

刑事訴訟法220条1項1号は,逮捕のため必要があるときに,人の看守する建造物内へ入り被疑者を捜索することを認め,同項2号は,逮捕の現場で必要な捜索・差押え等を認めている。これとは別に,勤務先に事件の証拠があると判断されれば,捜索差押許可状に基づく捜索・差押えの対象となることもある。東京弁護士会も,逮捕後に勤務先会社で証拠品の捜索・押収が行われることがあると説明している。

業務上横領,営業秘密の持出し,社用端末を用いた行為又は勤務中の事件のように,勤務先と被疑事実との結び付きが強いほど,会社への捜査が行われる可能性は高くなる。他方,会社と無関係な私生活上の事件であれば,勤務先を捜索する必要性は一般に低く,会社への自動連絡が生じるわけでもない。

3 欠勤連絡,報道その他の経路

逮捕されると外部へ自由に連絡できなくなるため,出勤時刻までに本人が通常の方法で連絡できないことがある。家族又は弁護人が本人の意向を確認し,会社へ欠勤と連絡窓口を伝えれば,その過程で逮捕又は身体拘束が知られることがある。他方,何も連絡しなければ,会社が安否確認,緊急連絡先への連絡又は所在調査を行い,その結果として知られる可能性が高まる。

報道の有無は,事件の内容,社会的関心,職務との関係及び報道機関の判断による。実名が報道されても勤務先まで報道されない場合もあれば,会社名又は役職が示される場合もあるため,一律の予測はできない。

第3 逮捕・勾留中の欠勤と賃金

1 逮捕から勾留までの時間

司法警察員が逮捕した場合,身体拘束から48時間以内に検察官へ送致する手続をしなければならない。送致を受けた検察官は,受取りから24時間以内,かつ身体拘束から通算72時間以内に勾留を請求するか,公訴を提起するか,釈放するかを判断する(刑事訴訟法203条・205条)。

裁判官が勾留を認めた場合,起訴前の勾留期間は勾留請求の日から10日であり,やむを得ない事由があるときは通じて10日を超えない範囲で延長できる(同法208条)。そのため,逮捕直後の数日で釈放される場合と,逮捕から起訴前まで最長23日程度出勤できない場合とでは,会社側の業務調整及び雇用上の評価が大きく異なる。

2 身体拘束による欠勤と無断欠勤は同じではない

身体拘束されて出勤できないことと,就業規則上の「無断欠勤」に当たることは同じ問題ではない。誰が,いつ,どの方法で,欠勤,連絡不能の事情及び判明している見込期間を伝えたか,会社が求める届出方法を履行できたか,事後に資料を補充したかを確認する必要がある。

本人の同意が得られる場合,家族又は弁護人から会社へ,少なくとも出勤できないこと,連絡窓口及び次回連絡の予定を伝えることが考えられる。事件名や認否をどこまで説明するかは,職務との関連,就業規則上の報告義務及び刑事弁護への影響を踏まえて決めるべきである。病気ではないのに病気と説明するなど,後に虚偽と判明する連絡は,欠勤とは別の信用上の問題を生じさせるため避けるべきである。

3 欠勤中の賃金,年次有給休暇及び休職

民法536条1項は,当事者双方の責めに帰すことができない事由により債務を履行できないとき,債権者は反対給付を拒めるとし,同法624条は原則として労働を終えた後に報酬を請求できるとする。逮捕・勾留のため労務を提供できない期間は,会社の責めに帰すべき事由による就労不能とは通常いえないため,就業規則,労働協約又は個別合意に別の定めがなければ,賃金が支払われないことが原則となる。不起訴又は無罪になったことだけで,欠勤期間の賃金が当然に発生するわけでもない。

もっとも,年次有給休暇,特別休暇又は休職制度を利用できるかは別問題である。年次有給休暇の請求時期,事後の振替を会社が認めるか,起訴休職・事故欠勤休職等の規定があるかは会社ごとに異なるため,雇用契約,就業規則及び従前の運用を確認する必要がある。逮捕・勾留について法律上当然に付与される有給の休暇制度はない。

第4 逮捕だけを理由に懲戒できるか

1 就業規則上の根拠と懲戒権濫用

労働基準法89条は,常時10人以上の労働者を使用する事業場の就業規則について,解雇事由を必要的記載事項とし,制裁を定める場合はその種類及び程度も記載事項としている。会社が懲戒を行うには,労働契約又は就業規則上の根拠を確認することが出発点となる。

さらに,労働契約法15条により,懲戒が労働者の行為の性質及び態様その他の事情に照らして客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当と認められない場合,懲戒は権利濫用として無効となる。就業規則の文言に形式的に当たるように見えるだけでは足りず,事実の確かさと処分の均衡が必要である。

2 逮捕と具体的な非違行為の認定

逮捕された事実は,会社が犯罪行為の存在を確定したことを意味しない。会社が処分する場合には,本人の説明,客観資料,業務記録,関係者の供述及び刑事手続の進行等から,懲戒事由となる具体的行為を確認する必要がある。警察又は報道が逮捕を発表したというだけで,犯罪行為をしたとの認定を置き換えることはできない。

他方,懲戒のために常に有罪判決の確定まで待たなければならないわけでもない。本人が事実を認め,会社が客観資料によって行為を確認できる場合には,刑事裁判の確定前でも,その行為に対応する就業規則の条項に基づく処分が検討対象となる。ただし,就業規則が「有罪判決を受けたとき」又は「刑が確定したとき」と定めている場合,逮捕又は起訴だけでその条項を適用することはできない。

3 私生活上の犯罪と会社の企業秩序

最高裁昭和49年3月15日判決(日本鋼管事件)は,職務と直接関係のない私生活上の行為でも,会社の社会的評価に重大な悪影響を与えるものは規制対象になり得るとした。他方,「会社の体面を著しく汚した」といえるかは,行為の性質・情状,会社の事業の種類・態様・規模,経済界に占める地位,経営方針,労働者の地位・職種等を総合し,社会的評価への悪影響が相当重大であると客観的に評価できる場合でなければならないとした。

したがって,勤務外の行為については,犯罪の種類だけでなく,会社名を伴う報道の有無,顧客・取引先との関係,業務で求められる信用,管理職等の地位,実際の業務支障,過去の処分歴及び示談・被害回復等を確認する必要がある。会社が一般的にコンプライアンスを重視しているというだけで,あらゆる私生活上の犯罪に懲戒解雇を選べるわけではない。

4 本人の説明と懲戒手続

会社は,刑事手続と別に事実調査を行うことができるが,身体拘束中の本人は自由に面談又は資料提出ができない。本人の同意を前提に弁護人を連絡窓口とし,質問事項を限定した書面回答を求めるなど,現実に可能な方法を検討する必要がある。刑事事件の認否又は防御方針に影響する質問については,労働者側も刑事弁護人と回答範囲を調整することになる。

就業規則,労働協約又は懲戒規程が弁明,懲戒委員会その他の手続を定めている場合,会社はその手続を履行する必要がある。明文の手続がない場合でも,逮捕情報だけで直ちに重い処分を選ぶのではなく,処分対象事実と本人の説明を確認することは,事実誤認と処分の過重を避けるために重要である。

第5 逮捕・勾留を理由とする解雇

1 普通解雇にも客観的合理性と社会的相当性が必要である

労働契約法16条は,解雇が客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当と認められない場合,権利濫用として無効になると定める。逮捕・勾留が長期化し,労務提供の見込みが立たないことは解雇判断の一事情になり得るが,会社が「逮捕された」という一点だけで自由に普通解雇できるわけではない。

判断に当たっては,欠勤日数,連絡の有無,釈放又は復職の見込み,担当業務への具体的支障,代替要員の確保,休職制度の有無,従前の勤怠,会社が把握した被疑事実及びより軽い措置の可能性が問題となる。短期の欠勤で通常勤務へ戻れる場合と,終期不明の長期欠勤により業務の代替が必要な場合とを同じに扱うことはできない。

2 有期労働契約の途中解雇は要件がより厳しい

労働契約法17条1項により,期間の定めのある労働契約については,やむを得ない事由がなければ契約期間の途中で解雇できない。したがって,有期契約の途中で逮捕・勾留を理由に解雇する場合,期間の定めのない契約における解雇権濫用の審査に加え,契約期間を維持できない「やむを得ない事由」があるかが問題となる。

3 懲戒解雇でも解雇予告が当然に不要となるわけではない

労働基準法20条1項により,使用者は原則として少なくとも30日前に解雇を予告するか,30日分以上の平均賃金を支払う必要がある。労働者の責めに帰すべき事由に基づく解雇について予告又は予告手当を省略するには,同条3項が準用する同法19条2項により,所轄労働基準監督署長の認定が必要である。

この解雇予告除外認定と,懲戒解雇そのものの有効性は別の問題である。会社の就業規則上は懲戒解雇に当たると判断しても,監督署長の認定を受けずに即時解雇する場合は,解雇予告手当の問題が残る。また,認定を受けたことだけで,労働契約法15条・16条に照らした懲戒解雇の有効性が確定するわけでもない。

第6 結論を分けた裁判例

1 裁判例の比較

逮捕又は勾留に関係する処分の結論は,逮捕の有無だけでなく,会社が認定した具体的行為,欠勤の長さ・連絡,会社への影響及び就業規則の文言によって分かれている。昭和期の裁判例は現行の労働契約法制定前のものであるが,個別事情を区別する資料として現在も参照価値がある。

裁判例事案の要点結論結論を分けた事情
最高裁昭和49年3月15日判決(日本鋼管事件)勤務外の政治的行為で逮捕・起訴され,会社名とともに報道された従業員らを懲戒解雇等とした事案解雇等を無効とした原判決を維持行為・刑の軽重,大企業における工員という地位等から,会社の社会的評価への悪影響が「相当重大」とはいえない
名古屋地裁令和6年8月8日判決通勤中の電車内で撮影を試みて逮捕され,翌日釈放された郵便局の課長を懲戒解雇した事案懲戒事由該当性を認めつつ,懲戒解雇を無効示談,不起訴,報道なし,通常勤務へ早期復帰,具体的な業務悪影響なし,懲戒歴なし等に照らし,懲戒解雇は重すぎる
東京高裁昭和51年9月13日判決(日本ユニカー事件)逮捕・勾留により暦日91日,要出勤日60日にわたり欠勤し,就業規則の長期欠勤条項により普通解雇された事案解雇を有効とした長期の労務不提供,業務の代替が必要となったことに加え,従前の勤怠及び経歴に関する事情も考慮された
福岡高裁昭和55年4月15日判決(三菱重工長崎造船所事件)勤務外の集団行動で逮捕・勾留された従業員らについて,無断欠勤と犯罪行為を理由に懲戒解雇した仮処分事案原決定を取り消し,地位保全等の申請を棄却会社は逮捕だけでなく具体的行為を証拠から認定し,欠勤理由の説明状況,行為の反社会性及び会社への影響のおそれ等を併せて評価した

2 裁判例から読み取れる限界

これらの裁判例から,「不起訴なら解雇は必ず無効」,「長期勾留なら解雇は必ず有効」又は「管理職なら懲戒解雇できる」という一律の基準を導くことはできない。名古屋地裁判決も,行為が懲戒対象になり得ること自体は認めた上で,最も重い懲戒解雇を選んだ相当性を否定している。三菱重工長崎造船所事件も,逮捕の事実だけでなく,会社が具体的行為を認定できたことを前提としている。

日本ユニカー事件の第一審は解雇を無効としたのに対し,控訴審は結論を変更した。同じ事案でも,就業規則の長期欠勤条項をどう解釈するか,欠勤原因と本人の責任,従前の勤怠等をどこまで考慮するかによって結論が分かれたものであり,身体拘束による欠勤の評価が機械的でないことを示している。

第7 本人・家族が早期に確認する事項

本人又は家族は,刑事事件への対応と会社への対応を並行して整理する必要がある。優先順位は,①弁護人を通じて釈放見込みと接見・連絡の可否を確認する,②雇用契約,就業規則,懲戒規程,欠勤・年休・休職の規定を確保する,③本人の同意を得て会社への連絡者,伝える範囲及び次回連絡日を決める,④欠勤連絡の日時,担当者及び内容を記録する,⑤会社から質問書,出勤命令,弁明通知又は処分通知が届いた場合は刑事弁護人と労働問題を扱う弁護士の双方に共有する,という順序が考えられる。

会社から退職届,合意退職書又は処分承諾書への署名を求められた場合は,解雇との法的な違いを確認してから判断すべきである。解雇の予告後又は退職後には,労働基準法22条に基づき,解雇理由を含む証明書の交付を請求できるため,口頭説明だけでなく処分根拠を書面で確認することができる。

第8 会社が処分前に確認する事項

会社側では,逮捕情報の取得直後に処分を決めるのではなく,①情報の出所と確度,②事件と職務の関係,③就業規則のどの条項が問題となるか,④本人が実際にした行為を示す資料,⑤欠勤日数・連絡・復職見込み,⑥業務又は社会的評価への具体的影響,⑦本人の説明と被害回復,⑧同種事案との処分均衡,⑨より軽い懲戒,休職又は一時的な配置措置で対応できるか,⑩労働協約・就業規則所定の手続を履行したかを順に確認する必要がある。

低負担で確認できる資料は,就業規則,雇用契約,勤怠記録,欠勤連絡,会社が通常業務で保有するログ,公表された刑事手続情報及び本人の説明である。これらによって処分対象事実を確認できない場合,逮捕の事実を犯罪行為の証明として重い処分へ進むべきではない。刑事手続の進展を待つか,業務運営上必要な暫定措置にとどめることも選択肢となる。

第9 関連記事

逮捕の3類型,逮捕状及び逮捕後72時間の手続については,被疑者の逮捕(AIリライト)を参照されたい。

勾留の要件,期間及び不服申立てについては,被疑者及び被告人の勾留(AIリライト)を参照されたい。

逮捕直後の弁護人選任及び接見については,弁護人を参照されたい。

早朝の自宅での逮捕状執行,住居への立入り及び手錠の取扱いについては,おはよう逮捕とは何か-早朝の自宅逮捕と逮捕状のルール(AI作成)を参照されたい。

第10 出典・参考資料

1 法令・規則

刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)200条・203条・205条・208条・220条(e-Gov法令検索)

犯罪捜査規範(昭和32年国家公安委員会規則第2号)126条・127条(e-Gov法令検索)

労働契約法(平成19年法律第128号)15条~17条(e-Gov法令検索)

労働基準法(昭和22年法律第49号)19条・20条・22条・89条(e-Gov法令検索)

民法(明治29年法律第89号)536条・624条(e-Gov法令検索)

2 裁判例

最高裁判所第二小法廷昭和49年3月15日判決(昭和45年(オ)第982号,雇用契約存在確認請求事件,民集28巻2号265頁)

東京高等裁判所昭和51年9月13日判決(昭和50年(ネ)第2388号,地位確認等請求控訴事件,労働民例集27巻5号464頁,判例時報840号112頁,判例タイムズ345号248頁)

福岡高等裁判所昭和55年4月15日判決(昭和47年(ネ)第141号,三菱重工長崎造船所事件,労働民例集31巻2号480頁)

名古屋地方裁判所令和6年8月8日判決(令和5年(ワ)第5968号,地位確認等請求事件)

3 公的ウェブ資料

東京弁護士会「逮捕されたらどうなる」

厚生労働省「労働契約の終了に関するルール」

厚生労働省「解雇予告期間を置いたり解雇予告手当を支払わないで解雇することができる場合」

4 文献

①高井・岡芹法律事務所編『使用者のための解雇・雇止め・懲戒相談事例集』(青林書院,令和3年)375頁~381頁

②安倍嘉一『従業員の不祥事対応実務マニュアル〔第2版〕』(民事法研究会,令和7年)259頁~262頁