◯山中弁護士への事件のご依頼・ご相談は「交通事故のお問い合わせ」から可能です。
第1 脛骨神経麻痺の等級は診断名だけでは決まらない
1 最初に確認すべき三つの事項
交通事故後に脛骨神経麻痺と診断されても,その診断名が直ちに一つの後遺障害等級へ結び付くわけではない。最初に,①神経がどの高さで損傷したか,②足関節又は足指の運動機能がどこまで失われたか,③運動機能障害とは別に足底の痛み,しびれ又は知覚低下が残ったかを分けて確認する必要がある。
脛骨神経は膝窩から下腿後面を下行し,内果後方の足根管付近で内側足底神経,外側足底神経等へ分かれる。そのため,下腿近位部の高位損傷では足関節の底屈,足指の屈曲及び足部内在筋の働きまで低下し得る一方,足根管付近の遠位損傷では足関節の底屈が保たれ,足底の痛み,しびれ及び足指機能の異常が前面に出ることが多い。
この病変高位の違いを無視して,足底のしびれがあるから足関節の機能障害である,又は脛骨神経麻痺だから神経症状の等級だけであると決めることはできない。医学上の障害部位と,自賠責上の評価対象である足関節機能,足指機能及び神経症状を対応させることが出発点である。
2 本記事の射程
本記事は,自賠責保険の後遺障害等級を中心に,交通事故による脛骨神経麻痺の評価方法を説明する。足関節の参考可動域,主要運動,測定方法及び12級7号の詳しい説明は,交通事故による足関節機能障害と12級7号を参照されたい。
なお,本記事は一般的な制度及び医学的知見の説明であり,個別事案の等級を保証するものではない。急速に進行する運動麻痺,強い腫脹,激しい痛み又は広がる知覚障害がある場合は,後遺障害申請よりも神経圧迫その他の緊急病態に対する診療が優先される。
第2 現行の後遺障害等級をどう振り分けるか
1 自賠責と労災認定基準の関係
国土交通省の自賠責保険支払基準は,後遺障害の等級認定について,原則として労災保険の障害認定基準に準じるものとしている。そのため,自賠責の別表にある等級及び号数を確認した上で,労災の認定基準に示された機能障害,神経症状及び測定方法を参照するのが実務上の基本である。
もっとも,労災資料と自賠責の現行別表では,神経症状の号数が同じではない。労災資料にある12級12号は自賠責の現行12級13号に対応し,労災資料にある14級9号は自賠責でも14級9号である。また,旧自賠責資料にある12級12号及び14級10号は,それぞれ現行12級13号及び現行14級9号に対応するため,古い事例の号数をそのまま現行号数として引用してはならない。
2 足関節の機能障害
自動車損害賠償保障法施行令別表第二では,一下肢の三大関節中の一関節について,関節の用を廃したものを8級7号,機能に著しい障害を残すものを10級11号,機能に障害を残すものを12級7号としている。脛骨神経の高位損傷によって足関節の底屈等が失われた場合は,この系列が問題となる。
厚生労働省の下肢及び足指の認定基準では,足関節の主要運動は底屈及び背屈であり,その可動域を合計して健側と比較する。著しい機能障害は原則として主要運動の可動域が健側のおおむね2分の1以下,機能障害は同じく4分の3以下である場合に対応するが,用廃の判定及び例外的な取扱いを含め,測定値だけでなく認定基準全体を適用する必要がある。
関節可動域の測定要領は,原則として他動運動による測定値を用いる一方,弛緩性麻痺のため他動では動くが自動では動かない場合には,自動運動による測定値を参照するとしている。したがって,脛骨神経麻痺では他動値だけを提出するのではなく,自動値,徒手筋力,歩容及び装具の使用状況を併せて記録することが重要である。
3 足指の機能障害
自賠責の現行別表では,一足の足指の全部の用を廃したものが9級15号,一足の第一の足指又は他の四の足指の用を廃したものが12級12号,一足の第三の足指以下の一又は二の足指の用を廃したものが14級8号である。脛骨神経麻痺で足指屈筋又は足部内在筋の麻痺が残った場合は,知覚障害だけでなく,各足指について所定の関節運動がどこまで失われたかを測定する必要がある。
足指の評価では,単なる足底知覚低下を足指用廃と読み替えることはできない。母趾と第二趾以下では対象関節及び基準が異なるため,診断書に「足指の動きが悪い」とだけ記載するのではなく,各足指の自動運動,他動運動,拘縮の有無及び麻痺筋を区別して記録すべきである。
4 12級13号と14級9号の神経症状
自賠責の現行別表では,局部に頑固な神経症状を残すものが12級13号,局部に神経症状を残すものが14級9号である。厚生労働省の神経症状に関する認定基準は,疼痛について,通常の労務に服することはできるが,時には強度の疼痛のためある程度差し支えがあるものと,通常の労務に服することはできるが,受傷部位にほとんど常時疼痛を残すものを区別している。
実務上,12級13号では,症状の存在及び事故外傷との結び付きが医学的な客観資料によって相当程度裏付けられているかが重要になる。14級9号でも診断名だけでは足りず,受傷部位,発症時期,症状の分布及び診療経過が一貫し,事故による神経障害として医学的に説明できることが必要である。
神経伝導検査の一つの異常値だけで12級13号になり,又は陰性であれば14級9号にもならないという一律の法的基準はない。局所の器質的損傷,神経学的所見,電気診断,画像,手術所見及び継続的な診療記録を総合して,証明の強さを評価する必要がある。
5 機能障害と神経症状の関係
末梢神経麻痺に関する労災認定基準は,根性麻痺及び末梢神経麻痺について,原則としてその神経が支配する器官に生じた機能障害の等級により認定するとしている。したがって,高位の脛骨神経麻痺で足関節又は足指の実質的な運動機能喪失があるときは,まず機能障害の系列を検討し,残る痛み又はしびれを当然に別等級として加算するものではない。
足関節機能障害と足指機能障害にも,同一系列又は派生関係に関する調整がある。複数の異常所見がある場合でも,傷害ごとに等級を機械的に足し算するのではなく,同一神経損傷から派生した障害か,別個の障害として独立評価できるかを確認しなければならない。
第3 病変高位と症状分布から損傷部位を絞る
1 高位の脛骨神経損傷
膝窩又は下腿近位部で脛骨神経が損傷すると,足関節底屈,足部内反,足指屈曲及び足部内在筋の筋力低下が組み合わさり得る。足底の知覚低下,アキレス腱反射の低下,つま先立ちの困難及び歩行時の蹴り出し低下も病変高位を考える手掛かりになるが,個々の所見は単独では脛骨神経損傷に特異的ではない。
下腿骨折,膝周囲の脱臼又は骨折,挫滅創,血腫,コンパートメント症候群,瘢痕及び術後癒着は,外傷性の脛骨神経障害を生じさせ得る。骨折線,創部又は術野と神経走行が一致するかを画像及び診療録で具体的に示すことが,事故との因果関係を判断する上で重要である。
2 足根管部及び足底神経枝の損傷
内果後方の足根管付近では,脛骨神経及びその終末枝が圧迫又は損傷される。典型的には足底の灼熱痛,しびれ又は知覚低下が中心となり,進行例では足部内在筋の筋力低下又は萎縮がみられる一方,足関節の底屈は保たれることが多い。
踵の知覚が保たれているから足根管部障害であり,又は踵までしびれるから足根管部障害ではないと断定することはできない。踵骨枝の分岐には個人差があり,病変範囲も一定ではないため,内側足底,外側足底及び踵部を分けた知覚図と,Tinel徴候が足底のどこへ放散するかを記録することが有用である。
3 交通事故後に区別すべき他の病態
足底の痛み又はしびれは,脛骨神経麻痺だけで生じる症状ではない。S1神経根障害,坐骨神経障害,多発ニューロパチー,糖尿病性神経障害,足底筋膜由来の痛み,複合性局所疼痛症候群,骨性変形による局所圧迫及び関節拘縮等を区別する必要がある。
例えば,腰痛及び下肢後面の放散痛を伴い,脛骨神経支配域を越えた筋力低下がある場合は神経根又は坐骨神経病変を検討する。他方,内果後方の外傷又は手術創と一致する局所圧痛及びTinel徴候があり,足底へ限局して症状が放散する場合は,足根管部又は足底神経枝の障害を支持しやすい。
4 急性期の圧迫障害を見逃さない
交通事故による脛骨骨幹部骨折及び後内側の裂創後に,足底及び踵の知覚消失と母趾屈曲障害が生じ,手術で足根管内の脛骨神経が緊張した屈筋組織に圧迫されていることが確認された症例報告がある。この症例では除圧後に回復しており,神経が断裂していなくても,事故直後の機械的圧迫が重い麻痺を生じ得ることを示している。
後遺障害評価は治療終了後の問題であるが,急性圧迫の解除時期は回復可能性を左右し得る。事故直後に進行する麻痺を,将来の等級資料を整える問題として扱うのではなく,まず緊急の整形外科的又は末梢神経外科的評価につなげるべきである。
第4 検査所見をどう読むか
1 神経学的診察が検査設計の基礎となる
必要な診察項目は,足関節底屈,足部内反,各足指屈曲及び足部内在筋の筋力,筋萎縮,アキレス腱反射,足底の知覚分布,Tinel徴候,つま先立ち,歩容並びに装具使用状況である。左右差だけでなく,痛みによる力の入りにくさ,腱断裂,固定後拘縮及び関節痛による運動制限を神経原性の筋力低下から区別する必要がある。
知覚検査は「足底にしびれ」と一括せず,内側足底,外側足底,踵及び足背を図示することが望ましい。筋力所見と知覚所見が同じ病変高位で説明できるかを確認することで,検査の選択及び後遺障害診断書の説得力が大きく変わる。
2 神経伝導検査及び針筋電図
足根管症候群の電気診断に関する専門学会のレビューは,多発ニューロパチー,神経根障害及び他の単神経障害を除外した上で,母趾外転筋及び小趾外転筋への脛骨神経運動伝導,内側及び外側足底神経の混合神経伝導並びに感覚神経伝導を症状のある側と反対側で比較することを提案している。しかし,基礎となった研究の質は低く,確実な単一検査は示されていない。
2026年の系統的レビューは,82研究,4213人,4509足を集計し,検査法の不統一及び研究上の偏りが大きいとした。同レビューで報告された感度の中央値は,Tinel徴候78.5%,混合神経伝導66%,感覚神経伝導84%,運動神経伝導57%,筋電図86%,神経伝導と筋電図の組合せ78.5%,超音波断面積61%,断面積比74%であり,いずれも法的な等級判定の閾値ではない。
このため,神経伝導検査又は筋電図が陽性であることは有力な裏付けになり得るが,検査だけで事故との因果関係及び症状の程度まで証明するものではない。反対に,陰性結果も,測定した枝,温度,左右比較,技術的条件,病変高位及び検査時期を確認せずに脛骨神経障害を否定する根拠としては使えない。
3 検査時期と経時的変化
軸索損傷後の電気診断所見は,損傷直後から全て完成するわけではなく,Waller変性の進行,脱神経及び再支配に伴って変化する。事故直後の一回の陰性結果と,症状固定時の複数回の検査結果では意味が異なるため,受傷日からの経過日数を明記して解釈すべきである。
他方,検査を遅らせれば常に正確になるわけでもない。急性期の局在確認,数週後の軸索障害評価及び数か月後の再支配評価では目的が異なるため,臨床所見に応じた時期を専門医が選択し,検査対象筋及び神経枝を記録する必要がある。
4 超音波及びMRI
神経超音波は,神経の連続性,腫大,扁平化,瘢痕,局所圧迫及び周囲組織との動的関係を観察できる。MRI又はMR neurographyは,深部病変,占拠性病変,神経走行及び支配筋の脱神経変化を評価するために有用であり,骨折又は手術材料との位置関係も確認できる。
もっとも,正常脛骨神経の断面積にも年齢,体格,測定部位及び手技による幅がある。正常値研究の平均値又は一研究のカットオフを,自賠責12級13号の法的基準として用いることはできず,画像は症状分布及び他の検査所見と対応させて読む必要がある。
第5 事故との因果関係及び症状固定を立証する
1 強い因果関係を構成する資料
事故外傷と脛骨神経麻痺との因果関係を支えるのは,一つの検査名ではなく,時間,部位及び機序の連続した記録である。特に,次の資料が相互に整合するほど,事故による障害であることを説明しやすい。
- ① 事故直後の骨折,脱臼,挫滅創,血腫,腫脹又は手術所見を示す画像及び診療録
- ② 事故直後又は合理的な時期から継続する足底知覚障害及び運動麻痺の記載
- ③ 受傷部位又は術野と脛骨神経の解剖学的走行との一致
- ④ 筋力,反射,知覚図,Tinel徴候,神経伝導検査,筋電図,超音波又はMRIの相互整合性
- ⑤ 治療経過を通じた症状の一貫性と,症状固定時に残った具体的な活動制限
手術で神経の圧迫,瘢痕性絞扼又は損傷が直接確認されている場合は強い資料となる。ただし,手術所見がなくても,骨折形態,創部,症状分布及び複数の客観所見が一致すれば評価可能であり,反対に手術歴があるだけで事故由来の神経麻痺が証明されるものでもない。
2 争われやすい経過
初診時に足底知覚又は筋力の記載がなく,数か月後に初めて脛骨神経麻痺が記載された場合は,事故直後から症状が存在したかが争われやすい。もっとも,骨折治療,安静又は固定のため初期に十分な神経診察ができなかった事情があれば,検査不能であった理由と,固定解除後に判明した所見を診療録から説明する必要がある。
症状分布が診察ごとに大きく変わる場合,脛骨神経の走行と一致しない場合,又は腰椎疾患,糖尿病性神経障害等の代替原因がある場合も争点となる。この場合は,不利な資料を省くのではなく,事故前の無症状性,事故前後の検査比較,鑑別診断及び主治医の医学的説明をそろえる方が合理的である。
3 既往障害及び素因の扱い
事故前から糖尿病,多発ニューロパチー,腰椎疾患又は足根管症候群があったとしても,直ちに事故との因果関係が否定されるわけではない。事故前の症状及び機能,事故によって新たに生じた所見,事故後の悪化幅並びに外傷部位との整合性を区別して評価する必要がある。
一方,事故前から同じ分布の知覚障害及び電気診断異常が存在し,事故後に客観的な変化がない場合は,事故による増悪の証明が難しくなる。既往症を隠すよりも,過去の診療録及び健診資料を含む比較資料を早期に確保することが重要である。
4 症状固定時に残すべき記録
症状固定は,一定期間が経過したという形式だけで決めるものではなく,治療による改善可能性と残存障害を医学的に評価する時点である。神経縫合,除圧術,リハビリテーション又は装具調整後も回復が続いている場合は,その経過を踏まえて主治医が判断すべきである。
症状固定時には,筋力を具体的な筋ごとに記載し,知覚障害を図示し,自動及び他動の関節可動域を分け,電気診断及び画像の実施日と所見を整理する必要がある。歩行距離,階段,つま先立ち,運転,安全靴,長時間立位等の支障も,抽象的な「日常生活に支障あり」ではなく,再現可能な事実として記載することが望ましい。
第6 紛争処理事例が示す12級と14級の境界
1 客観資料を重ねて12級13号が認められた事例
榎木貴之・小杉晴洋『自賠責・紛争処理事例と判例から読み解く後遺障害等級認定の判断』178頁~179頁が紹介する平成29年紛争処理事例21は,内果周辺の骨折及び創傷後に足底のしびれ及び痛みが残った事案である。症状の一貫性,瘢痕と一致するTinel徴候,足底へ放散する症状,神経剥離術で確認された瘢痕性絞扼及び神経伝導検査の異常が組み合わされ,現行12級13号が認められたと整理されている。
同書179頁~181頁が紹介する平成18年紛争処理事例38は,内果骨折後の足底神経症状について,筋電図上の明確な異常がなくても,骨折及び手術経路,症状分布,神経ブロックによる症状軽減等を総合し,旧12級12号,すなわち現行12級13号を認めた事例である。単一の筋電図所見が陰性であっても,他の独立した資料が十分に整合すれば,一律に12級を否定できないことを示す。
2 14級9号が問題となった事例
同書149頁が紹介する平成20年紛争処理事例28は,圧挫創及び蜂窩織炎後の足底の神経症状について,内側又は外側足底神経の皮枝損傷を検討し,現行14級9号に相当する評価をした事例である。同書149頁~150頁が紹介する平成16年紛争処理事例51も,腫脹,足底神経の走行に沿う症状及びTinel徴候等から,旧14級10号,すなわち現行14級9号を認めた事例である。
これらの事例は,14級9号が単なる本人申告だけで決まることを意味しない。局所外傷と症状分布が解剖学的に結び付き,診療経過を通じて一貫していることが,医学的に説明可能な神経症状として評価される基礎となっている。
3 事例から導ける実務上の到達点
12級13号と14級9号の境界は,特定の一検査の陽性又は陰性ではなく,器質的損傷と神経症状を結ぶ客観的な証明の厚みにある。手術所見及び異常な神経伝導所見がそろえば証明は強くなるが,その双方が必須であるとの固定的な基準は公表資料からは導けない。
また,自賠責保険・共済紛争処理機構の公表ページも,公表事例と類似する事案が必ず同じ結論になるものではないと注意している。事例番号だけを引用するのではなく,当該事例で重視された外傷態様,解剖学的一致,症状経過及び検査所見が対象事案にも存在するかを比較すべきである。
第7 申請及び訴訟での実践的な組立て
1 資料を病変高位ごとに並べる
申請資料は,診療科又は検査日ごとに漫然と並べるよりも,病変高位の仮説に沿って整理すると理解されやすい。高位損傷を主張するのであれば,足関節底屈,足部内反,足指屈曲,足底知覚及びアキレス腱反射を一組にし,遠位損傷を主張するのであれば,内果後方の局所所見,足底の分布,足部内在筋及び足関節底屈が保たれることを一組にする。
画像,神経伝導検査又は筋電図の報告書だけでなく,元画像,波形,測定条件及び検査対象筋が分かる資料も確保することが望ましい。等級判断で問題となるのは報告書の結論語だけではなく,事故外傷との位置関係及び他の所見との整合性である。
2 等級系列を先に決め付けない
足関節底屈が自動ではほとんどできないが他動では動く場合は,神経麻痺による機能障害として自動可動域及び筋力を含む評価が必要である。反対に,底屈筋力が保たれ,足底のしびれだけが中心である場合に,足関節可動域の等級を主張しても病変高位と整合しにくい。
足指についても,各関節の所定基準を満たす実測値がなければ,用廃の等級を診断名だけから導くことはできない。機能障害の基準に達しない場合でも,事故由来の神経症状が残るのであれば,12級13号又は14級9号を別の評価入口として検討する。
3 申請前のチェックリスト
- ① 事故直後の神経学的所見又は診察できなかった理由が診療録に残っているか
- ② 骨折線,創部,血腫又は術野と脛骨神経の走行を画像上で説明できるか
- ③ 足関節,足指及び知覚障害を分け,自動値と他動値を区別しているか
- ④ 神経伝導検査及び筋電図の対象神経,対象筋,左右比較,温度並びに実施時期が分かるか
- ⑤ 陰性所見を含め,超音波,MRI,手術所見及び診療経過との整合性を説明できるか
- ⑥ 腰椎疾患,坐骨神経障害,糖尿病性神経障害その他の代替原因を検討したか
- ⑦ 症状固定時の歩行,階段,立位,運転,就労及び装具使用の支障を具体化したか
- ⑧ 古い資料の旧号数を自賠責の現行号数へ正しく読み替えたか
4 被害者側と保険者側の争点
被害者側では,検査結果を多く提出するだけでなく,事故外傷から病変高位,病変高位から症状分布,症状分布から等級系列へ至る論理を一つの流れにする必要がある。特に12級13号を主張する場合は,局所の器質的損傷を示す資料と,症状がその損傷から生じることを示す複数の所見を対応させることが重要である。
保険者側又は加害者側では,一検査の陰性だけを取り出すのではなく,検査時期及び感度の限界,検査対象の適切性,臨床所見及び代替原因を含めて評価すべきである。争点は,症状があるかないかという二者択一ではなく,どの部位のどの程度の神経障害が,事故によって,症状固定時まで残ったと証明できるかである。
第8 出典
1 法令及び行政資料
- ① e-Gov法令検索「自動車損害賠償保障法施行令」別表第二
- ② 国土交通省「自動車損害賠償責任保険の保険金等及び自動車損害賠償責任共済の共済金等の支払基準」
- ③ 厚生労働省「障害等級認定基準について」神経系統の機能又は精神の障害
- ④ 厚生労働省「障害等級認定基準について」下肢及び足指の障害
- ⑤ 厚生労働省「関節の機能障害の評価方法及び関節可動域の測定要領」
- ⑥ 厚生労働省「神経症状の等級認定基準」
- ⑦ 一般財団法人自賠責保険・共済紛争処理機構「紛争処理事例」
2 国内書籍
- ① 榎木貴之・小杉晴洋『自賠責・紛争処理事例と判例から読み解く後遺障害等級認定の判断―傾向を踏まえた交通事故事件処理―』新日本法規,令和8年,149頁~150頁及び178頁~181頁
3 医学文献
- ① Nadine Boers et al., “Differences in Diagnosing Tarsal Tunnel Syndrome Across the Literature: A Systematic Review and a Call for Standardization,” JBJS Reviews 14(2), 2026, e25.00222, DOI 10.2106/JBJS.RVW.25.00222,PMC全文
- ② Atul T. Patel et al., “Usefulness of Electrodiagnostic Techniques in the Evaluation of Suspected Tarsal Tunnel Syndrome: An Evidence-Based Review,” Muscle & Nerve 32, 2005, 236-240, DOI 10.1002/mus.20393,AANEM公開PDF
- ③ Craig K. Mezrow et al., “Acute tarsal tunnel syndrome following partial avulsion of the flexor hallucis longus muscle: a case report,” Journal of Foot and Ankle Surgery 41(4), 2002, 243-246, DOI 10.1016/S1067-2516(02)80022-9,PubMed抄録
- ④ “Electrodiagnostic Assessment of Peri-Procedural Iatrogenic Peripheral Nerve Injuries and Rehabilitation,” PMCID PMC11998969,PMC全文
- ⑤ “Imaging of traumatic peripheral nerve injuries,” PMCID PMC8333344,PMC全文
- ⑥ “Normative Reference Values of the Tibial Nerve Cross-Sectional Area,” PMCID PMC10573196,PMC全文
- ⑦ E. Carlos Rodríguez-Merchán et al., “Tarsal tunnel syndrome: current rationale, indications and results,” EFORT Open Reviews 6(12), 2021, 1140-1147, DOI 10.1302/2058-5241.6.210031,PMC全文