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セルフレジの精算漏れは犯罪になるか―店舗の対応,合理的配慮及び防犯カメラの注意点(AI作成)

第1 セルフレジで分けて考える問題

セルフレジで商品を登録し忘れた場合には,商品を持ち出したという事実と,未精算と知りながら持ち出したのかという問題を分けて考える必要がある。
また,刑事責任の有無と,不足した代金や払い過ぎた金額をどう精算するかという民事の問題も別である。

本記事は,令和8年10月27日を基準に,日本の法律と公的機関の資料に基づき,商品の精算漏れ,不正精算,店舗の対応,合理的配慮及び防犯カメラの運用を整理する。
個別の店舗の仕組みや利用者の行動によって判断が変わるため,レシート,操作記録,映像等の具体的な資料を確認することが大切である。

第2 精算忘れと窃盗罪の故意

1 未精算という結果だけで犯罪は決まらない

刑法235条は,他人の財物を窃取した者について,10年以下の拘禁刑又は50万円以下の罰金を定めている。
他方,同法38条1項は,罪を犯す意思がない行為は,法律に特別の規定がある場合を除き,罰しないとしており,235条には不注意による窃盗を処罰する規定はない。

したがって,実際に精算を忘れ,未精算であることを認識しないまま商品を持ち出した場合と,未精算と知りながら持ち出した場合は区別する必要がある。
商品がレジに登録されていないという結果だけで,窃盗罪の成立が当然に決まるわけではない。

もっとも,「忘れていた」と説明しただけで故意が否定されると決まるものでもない。
商品の登録状況や一連の操作,店員とのやり取り,持ち出し前後の行動等を,記録と照らして確認する必要がある。

2 法律を知らなかった場合との違い

刑法38条3項は,法律を知らなかったとしても,そのことによって罪を犯す意思がなかったとすることはできないと定めている。
「未精算だとは気付かなかった」という事実の認識の問題と,「この行為が犯罪になるとは知らなかった」という説明は,同じではない。

第3 意図的な不正精算では行為と仕組みを確認する

セルフレジを利用した不正行為であっても,窃盗,詐欺,電子計算機使用詐欺のどれに当たるかを,機械を操作したという一点だけで決めることはできない。
店員を欺いたのか,商品の交付や占有の移転がどのように行われたのか,機械に入力した情報によってどのような記録が作られたのかを分けて検討する必要がある。

刑法246条1項は,人を欺いて財物を交付させる行為を,同条2項は同じ方法で財産上不法の利益を得る行為等を処罰する。
同法246条の2は,電子計算機に虚偽の情報や不正な指令を与えて財産権の得喪・変更に係る不実の電磁的記録を作るなどし,財産上不法の利益を得る行為等を処罰する規定である。

例えば,別の商品のバーコードを読み取らせたという事情があっても,それだけで電子計算機使用詐欺罪の全ての要件を満たすと断定することはできない。
実際の決済や債権処理の仕組み,店員の関与,商品の持出しの状況を確認し,各罪の要件に当てはめることになる。

他人名義のクレジットカードを利用した場合の問題は,家族や交際相手のクレジットカードを使うと犯罪になるか―名義人の承諾と詐欺罪,承諾の範囲を超えた利用及び名義人の支払責任を参照されたい。

第4 不足した代金と払い過ぎた金額の精算

1 売買契約の内容を確認する

民法522条1項は,契約の申込みに対して相手方が承諾をしたときに契約が成立すると定め,同法555条は,財産権を移転する約束と,これに対して代金を支払う約束によって売買が効力を生ずるとしている。
セルフレジについても,どの商品を,いくらで売買する合意がされたのかを確認する必要がある。

どの画面操作の時点で契約が成立するかを,全ての店舗について一律に決めることはできない。
画面の表示,店舗の取扱い,登録された商品及び決済完了の状況を確認し,契約に基づく代金の精算が必要かを検討する。

2 不当利得の返還が問題となる場合

民法703条は,法律上の原因なく他人の財産等によって利益を受け,そのために他人に損失を及ぼした者に,利益の存する限度で返還する義務を定めている。
二重登録や誤計上で払い過ぎた場合,あるいは未精算のまま利益を得た場合には,契約関係に加え,不当利得の返還が問題となることがある。

その際には,誰がどの利益を受け,誰に損失が生じたか,その利益に法律上の原因があるか等を確認する。
刑事上の故意がなかったという理由だけで民事上の精算が不要になると考えたり,逆に誤計上があれば常に無条件で全額返金されると考えたりするのは適切でない。

第5 店舗が精算漏れを疑ったときの対応

1 記録を照合し,事情を確認する

店舗の運用としては,まず対象商品とレシートを照合し,利用した端末,時刻,登録・決済の記録,店員の対応及び映像を確認することが有用である。
利用者側も,レシート等の手元の資料を保ち,どの商品について,どの操作が問題とされているのかを確認すると,説明すべき点を整理しやすい。

これは,精算漏れを疑われた利用者と,被害の有無を調べる店舗の双方にとって,事実関係を確認するための提案である。
全ての資料について,一律の法定保存期間や保存義務があるという意味ではない。

2 私人による現行犯逮捕と引渡し

刑事訴訟法212条は,現に罪を行い,又は現に罪を行い終わった者を現行犯人とし,一定の場合には現行犯人とみなす者も定めている。
同法213条により,窃盗の現行犯人については私人も逮捕状なしに逮捕することができるが,私人が逮捕したときは,同法214条により,直ちに検察官又は司法警察職員に引き渡さなければならない。

これらは,単に機械の警報が出た場合や精算漏れの疑いがある場合に,店舗が無制限に利用者を拘束できるという規定ではない。
現行犯の要件を満たすかという問題と,事実確認のために説明を求めるという対応を混同しないことが必要である。

3 誤認や過剰な対応による損害賠償

民法709条は,故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者に,生じた損害を賠償する責任を定めている。
店舗の誤認や過剰な対応についても,権利利益の侵害,故意・過失,損害及び因果関係等を個別に検討することになる。

精算ミスの指摘や警察への相談が常に違法になるわけではなく,反対に,店舗が防犯のためと考えた対応なら常に適法になるわけでもない。
刑事事件の処分結果だけから店舗の過失や賠償額が自動的に決まるものでもないため,実際にどのような確認と対応をしたかの記録が大切になる。

第6 障害のある利用者への合理的配慮

障害者差別解消法8条2項は,障害のある人から社会的障壁の除去を必要とする旨の意思の表明があり,その実施に伴う負担が過重でないとき,事業者に必要かつ合理的な配慮を求めている。
事業者の合理的配慮に関する令和3年改正法は,令和6年4月1日に施行された。

セルフレジを利用する際に操作上の困難がある場合,店舗の運用としては,店員が操作を補助する,他の会計方法を案内するなど,その人の状態と店舗の体制に応じた対応を検討することが考えられる。
これらは対応方法の提案であり,全ての店舗に同じ設備や同じ人員配置が一律に義務付けられるという意味ではない。

また,高齢であることや操作に不慣れであることと,この法律にいう障害のある人に当たることは,同一ではない。
意思表明や障害の状態,過重な負担等の条件を確認する必要があり,セルフレジの導入自体が直ちに違法になると一般化することもできない。

第7 防犯カメラと顔識別データの運用

1 従来型カメラと顔識別機能を区別する

特定の個人を識別できるカメラ画像を扱う場合には,個人情報保護法上の規律が及ぶ。
個人情報保護委員会のQ&Aは,従来型の防犯カメラについて,取得状況から防犯目的であることが明らかな場合には,利用目的の通知・公表が不要となり得ると説明している。

これに対し,顔識別機能付きのカメラでは,顔識別機能を用いることも明らかにして利用目的を特定し,その目的を本人に通知し,又は公表する必要があるとされる。
全ての防犯カメラに同じ説明を当てはめず,導入する機器がどのような情報を取り扱うかを確認する必要がある。

2 保存期間と安全管理

カメラ画像や顔特徴データが個人データに当たる場合には,個人情報保護法23条の安全管理措置が必要となる。
同法22条に関する個人情報保護委員会のQ&Aは,利用の必要性を考慮して保存期間を設定し,必要がなくなったときは遅滞なく消去するよう努めなければならないとしている。

安全管理の義務と,不要となった個人データの消去に関する努力義務は区別する必要がある。
防犯カメラの映像について,どの店舗でも同じ日数だけ保存しなければならないという一律の説明はできない。

3 他店との共同利用と登録基準

防犯目的のカメラ画像等を他店等と共同利用する場合にも,個人情報保護法27条5項3号が定める事項を,あらかじめ本人に通知し,又は本人が容易に知り得る状態に置くなどの要件を確認する必要がある。
個人情報保護委員会は,共同利用するデータや事業者の範囲を,目的の達成に照らして真に必要な範囲に限ることが適切であると説明している。

顔識別用の検知対象者の登録についても,対象とする行為と利用目的を明確にし,必要な範囲を超えない登録基準とすることが求められる。
同委員会のQ&Aは,登録時の厳格な判断や,統一的な基準の文書化等が望ましいとしており,機械が検知したという結果を,直ちに犯罪の認定と同じものとして扱う運用は避けるべきである。

第8 関連記事と出典

1 関連記事

セルフレジ周辺での置き忘れ品については,次の記事も参照されたい。
詳しくは,置き引きは窃盗罪か占有離脱物横領罪か―置き忘れた物の占有が続いているかの判断と裁判例を参照されたい。

2 法令と公的機関の資料

– 刑法38条,235条,246条,246条の2
– 民法522条,555条,703条,709条
– 刑事訴訟法212条から214条まで
– 障害者差別解消法8条2項
– 内閣府障害を理由とする差別の解消の推進
– 個人情報保護法17条,18条,21条から23条まで,27条5項3号
– 個人情報保護委員会個人情報保護法ガイドラインに関するQ&AQ1-13,Q1-14
– 個人情報保護委員会カメラ画像や顔特徴データ等の個人データの保有期間(Q5-4)
– 個人情報保護委員会防犯目的のカメラ画像・顔特徴データ等の共同利用(Q7-50)