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事業譲渡で従業員の同意は必要か―説明時期,転籍条件,不同意者及び労働組合への対応(AI作成)

事業譲渡では,従業員の労働契約が当然に買主へ移るわけではない。
個々の従業員の同意を得て雇用主を変更する必要があり,説明の内容や時期が不十分であれば,キーパーソンの離職や労使紛争によって事業継続が難しくなる。
本記事では,中小企業の事業譲渡における従業員承継の実務を整理する。

第1 個別同意が必要である

民法625条1項は,使用者が労働者の承諾を得なければ,その権利を第三者に譲り渡すことができないと定める。
事業譲渡でも,売主と買主の合意だけで労働契約を移転することはできず,承継対象となる従業員ごとの同意が必要である。

同意書には,転籍日,買主,勤務地,職務,賃金,労働時間,休日,勤続年数の取扱い,退職金,年次有給休暇及び社会保険等を記載する。
単に「転籍に同意する」とだけ記載すると,どの条件への同意かが不明確になりやすい。

第2 説明と協議の順序を設計する

1 誰がいつ説明するかを決める

公表前の秘密保持と,従業員が十分に検討するための時間を両立させる必要がある。
売主と買主は,説明対象,説明者,説明日,個別面談,質問窓口及び回答期限を事前に決めるべきである。

重要な事実を伏せたまま署名を求めたり,回答を不当に急がせたりする方法は避ける。
特に賃金・勤務地・職務が変わる場合は,変更前後を対比して説明する必要がある。

2 労働組合等との協議を確認する

労働組合がある場合は,労働協約及び団体交渉の必要性を確認する。
厚生労働省の事業譲渡等指針(令和8年1月20日改正)は,譲渡会社等に対し,過半数労働組合があるときはその組合,ないときは過半数代表者との協議その他これに準ずる方法により,関係労働者の理解と協力を得るよう努めることを求めている。
これは行政指針上の努力事項であり,個々の従業員から転籍について同意を得る手続に代わるものではない。
契約締結日,譲渡日,労働組合等との協議及び従業員説明の日程は,この指針と案件の事情を踏まえて逆算する必要がある。

第3 転籍条件を具体化する

1 不利益変更を見える形にする

買主の雇用条件が売主より不利になる場合,同意取得の難易度は高くなる。
基本給だけでなく,賞与,手当,固定残業代,退職金,企業年金,福利厚生,試用期間,定年及び転勤範囲を比較する。

勤続年数を通算するのか,売主で退職金を精算するのか,買主が過去勤務分を引き受けるのかは,従業員説明と売主・買主間の負担条項を一致させる。

2 承継対象者を公平に選定する

承継対象者の選定が恣意的であると,差別的取扱いや解雇紛争につながり得る。
対象事業への所属,担当業務,必要資格及び本人の希望など,合理的な基準を明確にする。

有期契約,休職者,育児・介護休業者,派遣労働者,兼務者及び業務委託者は,契約関係が異なるため個別に整理する。

第4 不同意者への対応を先に決める

従業員が転籍に同意しない場合,その労働契約は原則として売主との間に残る。
不同意を理由として当然に雇用関係が終了するわけではなく,売主に配置可能な業務があるか,希望退職等の選択肢があるかを検討する必要がある。

解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当でない場合には無効となる(労働契約法16条)。
事業譲渡契約で不同意者をすべて解雇することを前提にせず,説明,配置転換,雇用維持の可能性及び個別事情を検討する。

第5 事業譲渡契約書で分担を定める

事業譲渡契約書では,承継予定者の一覧,雇用条件の提示主体,同意取得への協力,個人情報の共有時期,未払賃金・退職金・社会保険料の負担及び不同意者への対応主体を定める。

全員同意をクロージング条件にすると,1名の不同意で取引全体が停止することがある。
キーパーソン又は一定割合の同意を条件とする方法,代替人員や移行支援で補う方法など,事業継続への影響に応じた基準が必要である。

売主が従業員の同意を結果保証する条項は,従業員本人の意思を支配できない点で過重になりやすい。
売主の説明・協力義務と,買主による合理的な条件提示義務を組み合わせる方が,友好的な引継ぎにつながる。

第6 個人情報の共有を管理する

候補者の氏名,給与,評価及び健康情報を買主へ共有する場合,利用目的,共有範囲,安全管理及び取引不成立時の返却・消去を決める。
デューデリジェンス段階では匿名化又は集計情報を使い,個人特定情報は必要性に応じて段階的に開示するのが望ましい。

個人情報保護委員会の通則ガイドラインは,事業承継に伴う個人データの提供及び契約締結前のデューデリジェンスに関する考え方を示している。
秘密保持契約だけでなく,安全管理措置,目的外利用の禁止及び不成立時の措置を契約で定める必要がある。

第7 クロージング後の定着を支援する

転籍同意の取得は終点ではない。
買主は,初日説明,指揮命令系統,評価制度,相談窓口及び職場環境の改善計画を示し,売主は必要な引継ぎに協力する。

売主経営者又はキーパーソンが残る場合は,役割,権限,期間及び報告先を明確にする。
旧経営体制と新経営体制の指示が競合しないよう,PMIの責任者を一本化することが重要である。

第8 関連記事及び公的資料

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個人情報保護委員会・個人情報の保護に関する法律についてのガイドライン(通則編)

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