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常時恩赦等の件数及び無期刑受刑者の仮釈放(AIリライト)

本記事は,昭和43年から令和6年までの常時恩赦の種類別決定人員と,平成20年から令和6年までの無期刑受刑者の仮釈放・死亡者等の統計を整理したものである。
常時恩赦,政令恩赦及び特別基準恩赦は別の集計であり,無期刑の「仮釈放者」と「新仮釈放者」も意味が異なるため,以下ではこれらを区別して記載する。

第1 恩赦の種類と件数の読み方

1 5種類の恩赦と2つの実施方法

恩赦には,大赦,特赦,減刑,刑の執行の免除及び復権の5種類がある。
恩赦法は,政令で要件を定めて一律に行う政令恩赦と,特定の者について個別に審査する個別恩赦を定めている。

個別恩赦には,常時行われる常時恩赦と,内閣が基準及び期間を定めて行う特別基準恩赦がある。
個別恩赦については,恩赦法及び恩赦法施行規則に基づき,本人の出願又は職権による上申,中央更生保護審査会の審査及び法務大臣への申出,内閣の決定並びに天皇の認証を経て行われる。

2 刑の執行の免除と復権の効果

刑の執行の免除は,言い渡された刑を変更せず,残りの刑の執行を将来に向かって免除する制度である(恩赦法8条)。
刑の言渡し自体の効力を失わせる特赦とは効果が異なる。

復権は,有罪の言渡しによって法令上喪失し,又は停止された資格を回復する制度である(恩赦法9条及び10条)。
有罪の言渡しに基づいて既に生じた効果は変更されないため(恩赦法11条),復権の法的効果を一律に「前科の抹消」と表現するのは正確でない。

近年の常時恩赦における刑の執行の免除は,主として無期刑仮釈放者の保護観察を終了させる措置として行われている。
復権は,主として,罰金刑を受けたことによる法令上の資格制限が社会生活上の障害となっている者について行われている。

3 年次表は常時恩赦の決定人員であること

次節の年次表は,犯罪白書及び保護統計年報に掲載された各年の常時恩赦の決定人員である。
慶事等に伴う政令恩赦又は特別基準恩赦の人数は含まれない。

したがって,年次表の人数を,日本でその年に行われた全ての恩赦の人数と読むことはできない。
令和元年についても,年次表の常時恩赦とは別に,即位の礼に伴う政令恩赦及び特別基準恩赦が行われた。

第2 昭和43年から令和6年までの常時恩赦の件数

1 常時恩赦の種類別決定人員

以下の表で「0人」とした欄は,当該種類の常時恩赦の決定人員がなかったことを示す。
表は昭和43年から令和6年までを対象とする。

(1) 昭和43年から昭和63年まで

特赦減刑刑の執行の免除復権
昭和43年6人28人20人32人
昭和44年410人170人106人166人
昭和45年35人45人36人55人
昭和46年33人29人54人109人
昭和47年133人19人46人116人
昭和48年105人47人97人165人
昭和49年26人35人55人86人
昭和50年16人43人58人139人
昭和51年4人19人45人155人
昭和52年0人9人30人165人
昭和53年5人7人47人187人
昭和54年0人4人28人143人
昭和55年2人2人30人160人
昭和56年0人0人29人91人
昭和57年2人0人43人158人
昭和58年0人1人59人158人
昭和59年0人0人38人197人
昭和60年0人1人45人141人
昭和61年1人0人47人151人
昭和62年1人0人22人73人
昭和63年0人0人14人97人

(2) 平成元年から平成30年まで

特赦減刑刑の執行の免除復権
平成元年6人3人20人52人
平成2年1人5人8人62人
平成3年0人0人2人28人
平成4年20人3人20人53人
平成5年2人1人9人45人
平成6年0人4人10人55人
平成7年0人2人11人70人
平成8年0人1人5人82人
平成9年0人0人11人81人
平成10年0人0人14人88人
平成11年0人0人14人84人
平成12年0人0人14人77人
平成13年0人0人16人92人
平成14年0人0人21人75人
平成15年0人0人16人64人
平成16年0人0人18人64人
平成17年0人0人8人73人
平成18年0人0人7人47人
平成19年0人0人6人63人
平成20年0人0人4人77人
平成21年0人0人6人35人
平成22年0人0人2人46人
平成23年0人0人2人52人
平成24年0人0人5人19人
平成25年0人0人5人29人
平成26年0人0人2人34人
平成27年0人0人6人24人
平成28年0人0人5人24人
平成29年0人0人1人22人
平成30年0人0人3人16人

(3) 令和元年から令和6年まで

特赦減刑刑の執行の免除復権
令和元年0人0人0人9人
令和2年0人0人0人7人
令和3年0人0人1人9人
令和4年0人0人2人10人
令和5年0人0人2人10人
令和6年0人0人1人10人

2 平成9年以降の運用

平成9年から令和6年までの常時恩赦では,特赦及び減刑の決定人員は0人であり,刑の執行の免除及び復権だけが行われている。
もっとも,これは近年の運用実績であり,恩赦法上,常時恩赦の対象がこの2種類に限定されたことを意味しない。

常時恩赦は個別事情を審査して判断される。
近年の典型例を示すことはできるが,典型例に該当しない限り恩赦が認められないと断定することはできない。

3 昭和54年から昭和63年までの刑の執行の免除

川本満隆・後藤雅晴「恩赦制度と個別恩赦の運用状況」『法律のひろば』1989年4月号28頁によれば,昭和54年から昭和63年までの刑事施設からの上申事例で刑の執行の免除となった者は,病気のため刑の執行が長期間停止されていた者又は追徴若しくは没収の執行が長期間できなかった者であった。
同期間の刑の執行の免除のうち,刑事施設に収容中の者はいなかったとされる。

同頁は,保護観察所からの上申による刑の執行の免除について,主として無期刑仮釈放者の保護観察を終了させるためのものであったと説明する。
この記載は,当該期間の上申事例の説明であり,受刑中の者については常に刑の執行停止又は仮釈放で足りるという一般論を示したものではない。

第3 令和元年の即位の礼に伴う恩赦

1 政令による復権

令和元年10月22日の即位の礼に伴い,復権令(令和元年政令第131号)による政令恩赦が行われた。
対象者は約55万人と見込まれ,政府は,その約8割が道路交通法違反等の交通関係の罪であると説明した。

復権令は,1個又は2個以上の裁判により罰金に処せられ,その全部の執行を終わり,又は執行の免除を得た日から基準日の前日までに3年以上を経過した者を対象とした。
他に禁錮以上の刑に処せられている者は対象外とされた。

2 特別基準恩赦

即位の礼に伴う特別基準恩赦では,出願100件のうち28件が恩赦相当とされた。
その内訳は,刑の執行の免除8人及び復権20人である。

政令による復権の約55万人,特別基準恩赦の28人及び令和元年の常時恩赦による復権9人は,それぞれ別の集計である。
令和元年の年次欄に「復権9人」とあることは,同年の恩赦が9人だけであったことを意味しない。

第4 無期刑受刑者の仮釈放の仕組み

1 現行法の要件

刑法28条は,拘禁刑に処せられた者に改悛の状があるとき,無期刑については10年を経過した後,行政官庁の処分によって仮釈放できると定める。
懲役及び禁錮は,令和7年6月1日から拘禁刑に一本化された。

仮釈放を許す行政官庁は地方更生保護委員会であり,3人の委員による合議体が決定する(更生保護法16条1項1号,23条1項1号及び39条1項)。
社会内処遇規則28条は,悔悟の情及び改善更生の意欲があり,再び犯罪をするおそれがなく,かつ,保護観察に付することが改善更生のために相当であることを許可基準とし,社会の感情が仮釈放を是認すると認められないときは許可しないとしている。

10年という期間は,仮釈放の法定期間を満たす時点を示す。
10年が経過すれば当然に仮釈放されるという意味ではない。

2 10年の法定期間と30年経過後の審理運用

法務省は,無期刑受刑者について,刑の執行開始から30年が経過したときは,1年以内に仮釈放審理を開始する取扱いを実施している。
この審理で仮釈放を許さない判断となった者については,最後の審理終結から10年が経過したとき,1年以内に改めて審理を開始する取扱いである。

刑法28条の10年は仮釈放が法律上可能となる法定期間であり,30年は長期間審理されない事態を防ぐための審理開始の運用である。
30年が経過するまで審理又は仮釈放が法律上禁止されるわけではない。

3 仮釈放中の保護観察

仮釈放された者は,仮釈放の期間中,保護観察に付される(更生保護法40条)。
成人の無期刑には固定された刑期の終期がないため,刑の執行の免除等がない限り,仮釈放期間中の保護観察が続く。

もっとも,仮釈放の取消し,刑の執行の免除その他によって法律関係が変わることがある。
また,少年のときに無期刑の言渡しを受けた者については,少年法59条1項に仮釈放後の刑の終了に関する特則がある。

4 「仮釈放者」と「新仮釈放者」の違い

法務省資料の「無期刑仮釈放者」には,仮釈放を取り消された後に再び仮釈放された者が含まれる。
「無期刑新仮釈放者」は,この再仮釈放者を除いた人数である。

例えば,平成29年の無期刑仮釈放者は11人であるが,新仮釈放者は8人である。
両者は異なる統計概念であり,数字の矛盾ではない。

第5 無期刑受刑者の仮釈放・在所期間・死亡者の統計

1 平成20年から平成26年まで

平成20年から平成26年までの無期刑仮釈放者及び刑事施設で死亡した無期刑受刑者の人数は,次のとおりである。

無期刑仮釈放者死亡者
平成20年5人7人
平成21年6人14人
平成22年9人21人
平成23年8人21人
平成24年8人14人
平成25年10人14人
平成26年7人23人

2 平成27年から令和6年まで

法務省が令和8年1月に更新した資料によれば,平成27年から令和6年までの状況は次のとおりである。

年末在所無期刑者無期刑新受刑者仮釈放者新仮釈放者新仮釈放者の平均受刑在所期間死亡者
平成27年1,835人25人11人9人31年6月22人
平成28年1,815人14人9人7人31年9月27人
平成29年1,795人18人11人8人33年2月30人
平成30年1,789人25人10人7人31年6月24人
令和元年1,765人16人17人16人36年21人
令和2年1,744人19人14人8人37年6月29人
令和3年1,725人18人9人7人32年10月29人
令和4年1,688人10人6人5人45年3月41人
令和5年1,669人14人8人4人37年4月30人
令和6年1,650人11人1人1人38年1月32人

平均受刑在所期間は,新仮釈放者について算定された値である。
令和6年は仮釈放者及び新仮釈放者がいずれも1人であり,その者の受刑在所期間が38年1月であった。

3 統計を「仮釈放率」として単純比較できないこと

年末在所無期刑者数は,各年末時点の在所者というストックの人数である。
無期刑仮釈放者数は,当該年中に仮釈放された者というフローの人数である。

年末在所者数で年間仮釈放者数を割った値は,個々の無期刑受刑者が1年間に仮釈放される確率を意味しない。
また,無期刑には固定された刑期の終期がないため,刑期の終期がある有期刑と同じ方法による「仮釈放率」を用いて単純比較することはできない。

第6 平成31年3月20日の国会答弁

平成31年3月20日の参議院法務委員会において,法務省保護局長は,仮釈放制度には,出所者の社会への適応を促し,保護観察による指導監督及び補導援護を通じて再犯を防止する刑事政策上の意義があると説明した。
無期刑受刑者は終身にわたって刑事施設に収容され得るため,地方更生保護委員会が許可基準に照らし,個別事案ごとに特に慎重かつ適正に判断しているとも説明した。

同委員会では,平成29年末の年末在所無期刑者が1,795人,同年の新仮釈放者が8人,その平均受刑在所期間が33年2月であったことが示された。
また,有期刑受刑者には刑期の終期があるのに対し,無期刑受刑者には終期がないため,両者の仮釈放率を単純に比較できないと説明された。

法務省刑事局長は,旧刑法では無期徒刑の仮出獄が15年経過後とされていたが,明治40年の刑法制定時に無期の懲役又は禁錮について10年とされたと説明した。
当時の政府提出案の理由書は,改悛の状がある者を長期間在監させる必要がないこと及び長期在監による弊害を理由としていたとされる。

第7 仮釈放審理の適正手続に関する裁判例

東京地方裁判所令和7年3月24日判決(令和2年(ワ)第4600号・国家賠償請求事件)は,無期刑受刑者について,徳島刑務所長が重大な病状の変化を地方更生保護委員会に通知しなかった事案を扱った。
判決は,受刑者本人には仮釈放の申請権又は請求権は認められないとしつつ,仮釈放審理において適正手続を受ける権利ないし適正手続への期待権は法律上保護に値すると判断し,通知義務違反による侵害を認めた。

この判決は,重大な情報が地方更生保護委員会に共有されなかった個別事案における国家賠償請求の判断である。
無期刑受刑者に仮釈放請求権を認めたものでも,一般的な仮釈放許可基準を緩和したものでもない。

第8 関連記事

恩赦の効果
恩赦に関する記事の一覧
仮釈放
仮釈放に関する公式の許可基準
マル特無期事件
保護観察制度
前科抹消があった場合の取扱い

本記事の数値及び法的説明は,上記X投稿ではなく,次節の法令・公的統計・原資料によって確認した。

第9 出典・参考資料

1 法令

e-Gov法令検索「刑法」
e-Gov法令検索「更生保護法」
e-Gov法令検索「犯罪をした者及び非行のある少年に対する社会内における処遇に関する規則」
e-Gov法令検索「恩赦法」
e-Gov法令検索「恩赦法施行規則」
e-Gov法令検索「少年法」
e-Gov法令検索「復権令」

2 公文書・統計

法務省「恩赦」
法務省「『復権令』及び『即位の礼に当たり行う特別恩赦基準』について」
令和7年版犯罪白書「恩赦」
令和3年版犯罪白書「恩赦」
令和7年版犯罪白書「仮釈放等」
法務省「無期刑受刑者の仮釈放の運用状況等について」
法務省「無期刑の執行状況及び無期刑受刑者に係る仮釈放の運用状況について」(令和8年1月更新)
e-Stat「保護統計調査・恩赦」

3 国会資料・裁判例

第200回国会衆議院法務委員会第2号・令和元年10月23日
第198回国会参議院法務委員会第4号・平成31年3月20日
東京地方裁判所令和7年3月24日判決・令和2年(ワ)第4600号

4 文献

① 第一法規『逐条恩赦法釈義』(1968年)50頁~61頁
② 川本満隆・後藤雅晴「恩赦制度と個別恩赦の運用状況」『法律のひろば』1989年4月号23頁~29頁
③ 前田雅英ほか編『条解刑法〔第3版〕』弘文堂,67頁~69頁
④ 法務省保護局「更生保護の現状―平成22年度,23年度の統計を中心として―」『法曹時報』64巻9号98頁~105頁及び130頁~135頁
⑤ 浜井浩一『実証的刑事政策論―真に有効な犯罪対策へ』岩波書店,2011年,273頁~275頁