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日米安保条約とは――全10条の内容・旧条約との違い・日米地位協定との関係(AI作成)

第1 日米安保条約の内容を理解するための基本

1 正式名称と二つの柱

日米安保条約は,日本と米国の安全保障上の協力を定める条約である。現在の正式名称は「日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約」であり,昭和35年(1960年)1月19日に署名され,同年6月23日に発効した。発効の経緯は,国立公文書館の解説で確認できる。昭和26年(1951年)9月8日に署名された旧日米安保条約とは別の条約である。

内容を読むときの中心は,第5条の共同対処と,第6条の米軍による日本国内の施設・区域の使用である。第5条は,日本の施政下の領域における日米いずれかへの武力攻撃に対処する枠組みを定める。第6条は,日本の安全と極東の平和・安全のため,米軍に施設・区域の使用を認める。防衛への対処と基地の使用を分けると,日米地位協定との関係も理解しやすい。

条約には,このほか,国際紛争の平和的解決,経済的協力,防衛能力の維持・発展,協議,国連憲章との関係及び終了手続がある。基地の提供だけを定める条約でも,あらゆる米国の戦争への参加を定める条約でもない。条文の原文は,外務省掲載の条約全文で確認できる。

2 平和条約・安保条約・地位協定の役割

文書主な役割
サンフランシスコ平和条約日本と締約連合国との戦争状態を終了させ,主権の回復や領土等を定めた。占領軍の撤退と,別の協定に基づく外国軍の駐留を区別する必要がある。
日米安保条約安全保障上の協力,武力攻撃への共同対処及び米軍による施設・区域の使用等を定める。
日米地位協定安保条約第6条を受け,施設・区域の使用条件,米軍・軍人等の地位,刑事裁判権,損害賠償及び経費負担等を具体化する。

占領終了後の米軍駐留については,平和条約と旧日米安保条約の違いと,日本の占領が終了した法的な時点を参照されたい。

第2 日米安保条約の全10条の内容

次の表は,条約全文の要点を整理したものである。実際の適用では,要約だけで判断せず,前文及び各条の全文を確認する必要がある。

条文内容の要点
第1条国際紛争の平和的解決,国連の目的と両立しない武力の威嚇・行使を慎むこと,国連の強化への努力を定める。
第2条自由な諸制度の強化,安定・福祉の条件の助長及び両国間の経済的協力を定める。
第3条憲法上の規定に従うことを条件に,自助及び相互援助により,武力攻撃に抵抗する能力を維持・発展させる。
第4条条約の実施について随時協議する。また,日本の安全又は極東の平和・安全への脅威が生じたときは,一方の要請により協議する。
第5条日本の施政下の領域における日米いずれかへの武力攻撃について,各国が憲法上の規定・手続に従って共通の危険に対処する。安保理への報告等も定める。
第6条日本の安全及び極東の平和・安全のため,米軍に日本国内の施設・区域の使用を認める。使用条件及び米軍の地位は別個の協定等による。
第7条国連憲章に基づく日米の権利・義務や,国連の責任に影響を及ぼさない。
第8条各国の憲法上の手続による批准と,東京で批准書を交換した日に効力が生ずることを定める。
第9条新条約が発効すると,昭和26年署名の旧条約が効力を失う。
第10条国連の措置に関する終了条件のほか,10年間存続した後は,一方の終了通告から1年で終了することを定める。

第3条に自助が含まれることからも,条約は日本の防衛能力の維持を米国に全面的に委ねる仕組みではない。他方,第5条の防衛上の共同対処と,第6条の施設・区域使用は,条約の中で異なる役割を担っている。

第3 第5条の防衛義務と適用範囲

1 場所・攻撃対象・対処手続を分ける

第5条の第1項を読む際には,①武力攻撃が行われる場所,②攻撃される対象,③両国の対処方法を分ける必要がある。

場所の基準は,日本の施政下の領域である。対象は,日米のいずれか一方である。そのため,日本に対する武力攻撃だけでなく,この地理的範囲内での米国に対する武力攻撃も条文の検討対象となる。在日米軍への攻撃という説明が用いられるのは,この構造による。

ただし,個々の事件が武力攻撃に当たるかは別途判断しなければならない。基地への犯罪,事故,抗議活動又は海上の摩擦を,名称だけで第5条の武力攻撃と扱うことはできない。

対処については,各国がそれぞれの憲法上の規定及び手続に従うとされている。条約には,攻撃があれば常に一定の兵力を一定の時刻に投入するという具体的な作戦までは書かれていない。このことと,第5条に基づく対処義務が存在することは別の問題である。外務省の主要規定の解説も,第5条を米国の日本防衛義務に関する規定として説明している。

2 尖閣諸島への適用と領有権の問題

米国は,日米安保条約第5条が尖閣諸島に適用されることを繰り返し確認している。令和6年7月28日の日米「2+2」共同発表の仮訳1~2頁にその確認があり,外交青書2026の日米安保体制の説明も,令和7年2月の首脳会談で再確認されたことを記載している。

第5条の基準が施政下の領域であることと,領有権の帰属をどのように判断するかは区別する必要がある。防衛上の適用確認それ自体を,領有権問題を裁定した文書と扱うことはできない。平和条約,沖縄返還及び尖閣諸島の関係は,サンフランシスコ平和条約第2条と領土問題第5で整理している。

3 台湾有事という名称だけでは結論が出ない

第5条は,日本の施政下の領域という地理的条件を定めている。台湾への攻撃があったという事実だけで,直ちにこの条件を満たすとは読めない。一方,同じ事態の中で日本の施政下の領域における日米いずれかへの武力攻撃が生じた場合には,その攻撃について第5条の要件を検討することになる。

令和6年7月の日米「2+2」共同発表は,台湾海峡の平和と安定の重要性及び両岸問題の平和的解決にも言及している。しかし,政治的な協力方針の表明を,第5条の地理的条件を消去する条約改正と扱うことはできない。

また,日本による具体的な武力行使,後方支援又は避難対応の可否は,それぞれの国内法上の根拠及び事実関係を確認する必要がある。安保条約への言及だけで,これらの行動を一括して許容又は禁止する結論は出ない。

4 宇宙に関する確認にも条件がある

外交青書2026は,令和5年1月の日米「2+2」で,宇宙への,宇宙からの又は宇宙における攻撃が,一定の場合には第5条の発動につながり得ると確認されたことを説明している。「一定の場合」という条件を落とし,宇宙やサイバーに関するあらゆる妨害が自動的に第5条の対象となると説明すべきではない。

第4 第6条の基地使用と日米地位協定

1 第5条の地理的範囲と第6条の目的は異なる

第6条の目的には,日本の安全だけでなく,極東の国際の平和及び安全の維持が含まれる。そのため,第5条が定める武力攻撃への対処と,第6条に基づく基地の使用を,同じ地理的範囲の規定として説明するのは適切でない。

第6条は,米軍が日本国内の施設・区域を使用する根拠を定める。しかし,個々の施設をどの範囲で提供するか,施設をどう管理するか,必要がなくなった施設をどう返還するかは,日米地位協定及び具体的な合意の問題になる。基地があるからといって,その土地が米国の領土になるわけでもない。

施設・区域の提供や主要判例は,在日米軍基地の法的根拠と施設数で説明している。

2 刑事裁判権・損害賠償・費用は地位協定へ進む

米軍人等の犯罪についてどちらの国が第一次の裁判権を持つかは,地位協定第17条等の問題である。公務中の行為による損害等は第18条,駐留経費の基本原則は第24条に関係する。安保条約第5条から直接これらの結論を導くことはできない。

地位協定の条文別の入口は,全28条の内容一覧である。個別の問題は,刑事裁判権・損害賠償の解説及び駐留経費と費用負担へ進むとよい。

第5 第4条の協議と事前協議制度

1 随時の協議と事前協議は根拠文書が異なる

第4条は,条約の実施について随時協議し,日本の安全又は極東の平和・安全への脅威が生じたときには,一方の要請により協議すると定める。

これに対し,いわゆる事前協議制度の対象を定める文書は,第6条の実施に関する昭和35年1月19日の交換公文である。交換公文は,次の事項を日本政府との事前協議の主題としている。

対象交換公文の内容の要点
配置米軍の日本への配置における重要な変更。
装備米軍の装備における重要な変更。
基地の使用日本から行われる戦闘作戦行動のための基地として,日本国内の施設・区域を使用すること。ただし,第5条に基づく戦闘作戦行動を除く。

戦闘作戦行動についての第5条の除外は,配置や装備の重要な変更まで一括して除外する文言ではない。また,すべての訓練,移動又は日常の基地使用が,当然にこの交換公文の対象となるという規定でもない。どの対象類型に当たるかと,実際に協議が行われたかを分けて確認する必要がある。

2 日米「2+2」と日米合同委員会を区別する

外務省の日米安保体制の説明によれば,日米安全保障協議委員会は,安全保障協力に関する重要な問題を検討する協議機関であり,日本の外務・防衛両大臣と米国の国務・国防両長官から構成されるため,日米「2+2」と呼ばれる。

日米合同委員会は,日米地位協定第25条に基づく協議機関である。条約実施に関する協議,交換公文による事前協議及び地位協定実施のための合同委員会は,根拠と対象が異なる。「日米間の協議」という言葉だけで同じ制度として扱うべきではない。構成,権限及び合意の公開は,日米合同委員会の解説を参照されたい。

核持込みと沖縄返還をめぐる歴史資料の問題は,制度一般と分けて読む必要がある。沖縄返還密約と西山事件では,核再持込み,財政負担及び訴訟の問題を区別している。

第6 旧日米安保条約との違い

1 昭和26年の旧条約と昭和35年の現行条約

国立公文書館掲載の旧条約資料と現行条約全文を比較すると,主な違いは次のとおりである。

論点旧条約現行条約
武力攻撃への対処現行第5条のような共同対処の明文規定はない。第5条に共同対処を明記する。
内乱等の鎮圧第1条に,外部の国による教唆・干渉で生じた大規模の内乱等について,日本政府の明示の要請による援助を含める。旧第1条と同じ内乱等鎮圧の条項を置いていない。
協議現行第4条に相当する一般的な協議条項はない。第4条に協議を定め,第6条の交換公文で事前協議の対象を定める。
米軍の使用条件第3条に基づく日米行政協定へ委ねる。第6条に基づく日米地位協定等へ委ねる。
終了第4条は,代替する国連等の安全保障措置が効力を生じたと両政府が認める場合の失効を定める。第10条に,10年間存続後の一方による終了通告と1年後の終了も定める。

この比較は,条文に何が明記されているかを整理したものである。旧条約に現行第5条と同様の明文がないことから,米国が日本の防衛に関して何の義務も負わなかったと直ちに断定することはできない。旧条約の解釈についての政府答弁と条文の比較は,平和条約と旧日米安保条約の違い第3及び第5で詳しく扱っている。

2 砂川事件判決は旧条約を前提としている

砂川事件の最高裁大法廷昭和34年12月16日判決は,旧条約及び日米行政協定の下での米軍駐留を前提とする。現行条約の署名前の判決である。

多数意見は,日本が指揮権・管理権を行使する主体となっていない外国軍隊について,憲法第9条第2項の戦力に当たらないとした。また,高度の政治性を有する当該条約の違憲審査について,極めて明白に違憲無効と認められる場合を除き,司法審査の範囲外とする判断を示した。最高裁の主文は原判決の破棄と東京地方裁判所への差戻しであり,最高裁自身が有罪判決を言い渡したものではない。

判決の射程を,現在のあらゆる自衛権行使や個々の基地運用の適法性にまで無条件で広げることはできない。原文の主文・多数意見は裁判所公開PDFの1~6頁,司法権の限界との関係は法律上の争訟と司法権の限界第5を参照されたい。

3 行政協定から地位協定への変更とは分ける

旧安保条約から新安保条約への変更と,行政協定から地位協定への変更は,関連するが別の比較である。前者は安全保障上の権利義務を扱い,後者は施設・区域の使用と米軍関係者の地位の具体的な条件を扱う。地位協定は国会承認を経た条約であり,原行政協定から施設外の措置,税関検査,労務,民事請求及び費用負担等を変更した。

なお,日本側にも裁判権を認め,第一次の権利を分配する刑事裁判権の仕組みは,地位協定の発効した昭和35年ではなく,行政協定第17条が改定された昭和28年から採られている。3段階の条文比較は,日米行政協定と日米地位協定の違い(https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/10/11/nichibei-gyosei-kyotei-chii-kyotei-chigai/)を参照されたい。

第7 第10条の終了手続と自動延長

1 10年ごとに再締結する仕組みではない

第10条第2項は,条約が10年間存続した後は,いずれの締約国も他方に終了の意思を通告でき,その通告から1年後に終了すると定める。10年ごとに新たな条約を締結しなければ失効するという条項ではない。終了通告がなければ存続するため,外務省はこれを自動延長方式と説明している。

終了の意思を表明した当日に直ちに条約がなくなるわけでもない。国内の政治的な発言と,条約上の相手国への終了通告を区別し,実際の通告日及びその内容を確認する必要がある。

2 地位協定の終了と個別基地の返還は別問題である

日米地位協定第28条は,同協定が安保条約の有効期間中有効であると定める。ただし,それ以前に両政府の合意で終了させる場合を除く。条約と地位協定の存続にはこの関係があるが,個別の基地返還は,施設・区域に関する別の条文及び合意により検討する必要がある。第10条に,終了通告があれば通告当日にすべての施設が返還されるとの規定はない。

条約終了後の個々の財産処理,撤収又は損害賠償の具体的な扱いも,条約第10条だけで一律に決めることはできない。

第8 日米安保条約を調べるときの資料の読み方

まず,現行条約のどの条文の問題かを特定する。武力攻撃への対処なら第5条,基地使用なら第6条,協議なら第4条及び交換公文,終了なら第10条を読む。犯罪や賠償,費用の問題は地位協定へ進む。

次に,条約本文,交換公文,政府の解説・共同発表及び裁判例を分ける。条約上の条件,政府の解釈・政策的な確認,具体的事件の司法判断は,同じ強さ・同じ対象の資料ではない。歴史的な資料では,旧条約と現行条約のどちらを前提としているかも確認する。

関連する歴史記事への入口は,日本の戦後処理に関する記事の一覧である。

第9 出典

1 外務省・日米安全保障条約全文(前文及び全10条)
2 外務省・日米安保条約の主要規定の解説(第5条・第6条・事前協議・第10条)
3 条約第6条の実施に関する交換公文(定訳の全文2頁)
4 外務省・日米安全保障体制について(協議委員会の説明。掲載日が新しくても,各項目の対象時点を確認する必要がある。)
5 日米「2+2」共同発表・令和6年7月28日・仮訳(日本防衛,尖閣諸島及び台湾海峡に関する1~2頁)
6 外交青書2026・日米安保体制(令和7年の首脳会談,宇宙に関する確認)
7 国立公文書館・旧日米安保条約資料(公布原本の解説及び現代仮名遣いの書下し)
8 最高裁大法廷昭和34年12月16日判決・判決PDF(主文及び多数意見1~6頁。6頁後半からの個別意見とは区別する。)
9 外務省・日米地位協定の条文及び関連情報(第2条・第3条・第17条・第18条・第24条・第25条・第28条)
10 国立公文書館・新安保条約の発効