任意取調べ,自白の証拠能力,類似事実による犯人性立証を扱う令和2年司法試験刑事系第2問について,公式資料から抽出した56項目と5段階の重み付け,約5,000字の模範解答を示す。
第1 この記事の対象と結論
対象は令和2年司法試験の刑事系科目第2問(刑事訴訟法)である。問題文,出題の趣旨及び採点実感に基づき,任意取調べの限界,自白の証拠能力及び類似事実による犯人性立証を整理する。
公式資料から独自に抽出した評価項目は56項目,重み5は23項目である。これは法務省の公式採点基準・配点を示すものではない。強制性と任意取調べの相当性を分け,自白法則と違法収集証拠排除法則の適用関係を説明し,立証趣旨に即して証人尋問請求の採否まで答えることが中心となる。
本答案は,身体・行動の自由を奪う強制手段の使用までは認めない一方,疲労を利用した偽計を含む取調べは相当な限度を超えると判断する。二元説から自白の証拠能力を否定し,W証人尋問請求も却下する構成を採る。公式資料は結論を一律に指定しておらず,別の構成でも規範・事実評価・結論の整合が必要である。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
一つの項目を一つの判定対象に分け,答案に何が書かれていれば充足するかを示した。番号は記事全体で1~56の通し番号とする。表中の「趣旨」「実感」の頁はPDFの物理頁である。「記載なし」は本問の関連範囲を実読した結果であり,未閲覧を意味しない。両資料の欄は要旨であり逐語引用ではない。
「必須」「高評価」「負例」「許容分岐」は重みと別の区分である。負例は誤りを避ける観点,許容分岐はその構成を選んだ場合の観点である。すべての分岐を一つの答案へ積み上げる趣旨ではない。
2 5段階の重み付けの基準
| 重み | 判断基準 |
|---|---|
| 5 | 採点実感が評価の分かれ目とした事項,又は答案の骨格そのもの |
| 4 | 出題の趣旨が検討を求め,採点実感も評価又は具体的な誤りの指摘を通じて取り上げた事項 |
| 3 | 一方が明示した中核の理由付け |
| 2 | 一方が軽く触れた補強,又は典型的な誤りの指摘 |
| 1 | 一方が控えめに触れる事項 |
本記事の重み4は,両資料が取り上げることを基準とし,すべてが「高く評価された事項」であるとはしない。重み5も,条件付きの事項を全答案の必須記載へ格上げするものではない。各段階への件数割当てはしていない。
第3 本問の概要
同じ市内で窓ガラスを半円形に割る侵入窃盗が相次ぐ中,甲は12月1日にX方でガラスカッターを当てているところをWに目撃された。12月3日にはV方で現金10万円が盗まれた。甲は4日夜に任意同行し,黙秘権及び退去自由を告知されたが,取調べは翌5日夜まで約24時間継続した。食事と休憩はあったものの睡眠はなく,甲の疲労が顕在化した後,Qは外出目撃情報があるという虚偽を告げた。甲はその約20分後に自白した。
設問1はこの取調べの適法性,設問2-1は自白法則と違法収集証拠排除法則の適用関係,設問2-2はその立場に従った甲の自白の証拠能力を問う。設問3は,別件のX方行為を本件犯人性の立証に用いるW証人尋問請求について,関連性に関する弁護人の異議を踏まえた採否を問う。W調書の不同意から伝聞例外を長く論じる問題ではない。
第4 評価項目と重み
1 設問1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 被疑者取調べの根拠を198条と特定する。【必須】 | 5 | 物理19頁:任意取調べの根拠 | 物理8頁:実定法との関係 |
| 2 | 強制手段の禁止と任意取調べの相当性の二段階を示す。【必須】 | 5 | 物理19頁:二段階枠組み | 物理7頁:正確な枠組み |
| 3 | 強制手段の問題を197条1項ただし書に接続する。【必須】 | 4 | 物理19頁:強制処分法定主義 | 物理8頁:実質逮捕と条文の接続 |
| 4 | 採用する強制処分の定義を権利・意思との関係で提示する。【必須】 | 5 | 物理19頁:強制手段の意義 | 物理11頁:優秀答案の基準 |
| 5 | 強制処分判断で甲の身体・行動の自由等への実質的制約を評価する。【必須】 | 4 | 物理19頁:侵害利益 | 物理11頁:具体的制約 |
| 6 | 同行への明示同意を取調べの強制性判断の事情として使う。【必須】 | 4 | 物理19頁:同意の用途 | 物理8頁:明示同意の評価 |
| 7 | 当初の同意・拒否申出なしだけで黙示の意思の検討を省かない。【高評価】 | 3 | 記載なし(関連範囲実読) | 物理8頁:当初同意の限界 |
| 8 | 退去告知・単独取調官・退去申出なし等を具体的に強制性へ当てはめる。【必須】 | 4 | 物理19頁:全状況評価 | 物理7頁:状況の当てはめ |
| 9 | 強制性を否定した場合は相当性審査へ進む。【必須】 条件:強制処分該当性を否定する答案。 | 5 | 物理19頁:強制性否定後 | 物理8頁:任意相当性の独立性 |
| 10 | 相当性について比較衡量説又は行為規範説等の自説を明確にする。【必須】 | 5 | 物理19頁:理論の立場 | 物理11頁:優秀答案の一貫した理論 |
| 11 | 比較衡量説では必要性と被侵害利益を具体化する。【高評価】 条件:比較衡量説を採る答案。 | 5 | 物理19頁:利益の内実 | 物理9頁:理論に対応した利益 |
| 12 | 事案の性質・容疑の程度・被疑者の態度を枠組みに従って評価する。【必須】 | 4 | 物理19頁:判例考慮要素 | 物理7頁:事情の抽出・分析 |
| 13 | 長時間・徹夜・疲労・偽計が重なった状態を総合評価する。【必須】 | 5 | 物理19頁:偽計と長時間の評価 | 物理9頁:事情を分断しない |
| 14 | 偽計の内容・程度を外出目撃情報に即して評価する。【必須】 | 4 | 物理19頁:偽計の個別評価 | 物理10頁:偽計の限界と複合作用 |
| 15 | 時間・方法の違法性を198条の取調べ限界として結論へ接続する。【必須】 | 4 | 物理19頁:取調べの終点 | 物理12頁:同意だけで終わらない |
| 16 | 有形力行使判例等の別場面の基準を使う場合は移植根拠を示す。【負例】 条件:別場面の判例枠組みを移植する場合。現答案は移植していない。 | 2 | 記載なし(関連範囲実読) | 物理8頁:事案差と理論根拠 |
| 17 | 相当性違反を理由に後から身体拘束と分類し直さない。【負例】 | 2 | 記載なし(関連範囲実読) | 物理12頁:分類と相当性を混同する負例 |
| 18 | 強制処分とする構成でも取調べを規律する条文・二段階枠組みを維持する。【許容分岐】 条件:強制処分該当性を肯定する答案。 | 3 | 物理19頁:第一段階で違法の可能性 | 物理9頁:肯定枝でも判例枠組みを維持 |
2 設問2-1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 19 | 自白法則の根拠を319条1項に置く。【必須】 | 5 | 物理20頁:明文自白法則 | 物理9頁:法則の根拠 |
| 20 | 自白法則の理論的根拠を任意性説又は違法排除説として説明する。【必須】 | 4 | 物理20頁:虚偽・人権・違法の理論 | 物理11頁:理論根拠の明示 |
| 21 | 自白法則の証拠能力判断基準を自説に対応させる。【必須】 | 5 | 物理20頁:自説と基準 | 物理11頁:根拠・判断の接続 |
| 22 | 違法収集証拠排除法則の根拠を示す。【必須】 | 4 | 物理20頁:排除法則の法的根拠 | 物理7頁:法則の根拠 |
| 23 | 証拠物に関する重大違法・将来抑止の排除基準を示す。【必須】 | 4 | 物理20頁:証拠物判例基準 | 物理11頁:証拠物と自白の関係 |
| 24 | 一般法則が自白にも適用されるか自説を明示する。【必須】 | 5 | 物理20頁:適用有無 | 物理9頁:単なる併記では不足 |
| 25 | 両法則の適用関係を理由付きで説明する。【必須】 | 5 | 物理20頁:各説の関係 | 物理9頁:関係自体が中核 |
| 26 | 違法排除一元説を選ぶとき一般法則と自白特則の関係を示す。【許容分岐】 条件:違法排除一元説を採る答案。二元説答案には累積要求しない。 | 4 | 物理20頁:一般法則と特則 | 物理11頁:理由付きの選択 |
| 27 | 任意性一元説を選ぶとき一般排除法則の不適用を説明する。【許容分岐】 条件:任意性一元説を採る答案。 | 4 | 物理20頁:自白は専ら任意性 | 物理11頁:理由付きの選択 |
| 28 | 二元説を選ぶとき任意性と手続違法を別の排除根拠として扱う。【許容分岐】 条件:二元説を採る答案。 | 4 | 物理20頁:任意性とは別の適用 | 物理11頁:根拠付き二元説 |
| 29 | 一般排除法則を自白に適用するとき令状主義基準を用いるか根拠を示す。【高評価】 条件:一般排除法則の自白への適用を認める答案。 | 5 | 物理20頁:証拠物基準の移転 | 物理11頁:優秀・良好の分かれ目 |
| 30 | 両法則を並列するだけで自白への適用有無を曖昧にしない。【負例】 | 2 | 記載なし(関連範囲実読) | 物理9頁:理論の未接続 |
3 設問2-2
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 31 | 設問2-1の自説に即して甲の自白を判断する。【必須】 | 5 | 物理20頁:一般論と事例の接続 | 物理7頁:採用説と適用の一致 |
| 32 | 設問1の取調べ評価と自白の当てはめを整合させる。【必須】 | 5 | 物理20頁:前問との整合 | 物理9頁:矛盾する答案を指摘 |
| 33 | 任意性説では取調べが心理状態・権利行使へ及ぼした作用を説明する。【必須】 条件:任意性説に立つ自白法則を適用する答案。 | 5 | 物理20頁:心理的強制・黙秘権 | 物理10頁:具体的影響 |
| 34 | 長時間・徹夜による疲労と言葉数の減少を判断能力へ接続する。【必須】 | 4 | 物理20頁:疲労の作用 | 物理11頁:心身の作用 |
| 35 | 虚偽告知が犯行目撃ではなく外出目撃にとどまることを評価する。【必須】 | 4 | 物理20頁:虚偽の内容 | 物理10頁:程度の限定 |
| 36 | 疲労と偽計が相まって自白しかないとの心理状態を生む過程を示す。【必須】 | 5 | 物理20頁:総合的作用 | 物理10頁:相互作用 |
| 37 | 偽計の存在だけで直ちに不任意と決めない。【負例】 | 2 | 物理20頁:偽計の限定 | 物理10頁:偽計のみの機械排除をしない |
| 38 | 外出目撃という軽さだけで疲労状態を無視して採用しない。【負例】 | 2 | 物理20頁:長時間の文脈 | 物理10頁:反対方向の機械採用をしない |
| 39 | 排除法則を適用するとき偽計等が違法である理由から重大性を評価する。【高評価】 条件:一般排除法則の自白への適用を認める答案。 | 5 | 物理20頁:重大性の理由付け | 物理10頁:令状文言の空写しを排除 |
| 40 | 違法捜査抑制の観点から許容が相当でないかを独立に当てはめる。【必須】 条件:一般排除法則の自白への適用を認める答案。 | 4 | 物理20頁:抑止審査 | 物理11頁:基準に沿った適用 |
| 41 | 自白と録取した自白調書を第一次・派生証拠に分けない。【負例】 | 2 | 記載なし(関連範囲実読) | 物理9頁:自白・調書関係の誤解 |
| 42 | 採用法則に即して証拠能力の有無を結論付ける。【必須】 | 4 | 物理20頁:設問の終点 | 物理11頁:結論の回収 |
4 設問3
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 43 | 関連性異議を受けたW証人尋問請求の採否が対象であると特定する。【必須】 | 5 | 物理21頁:立証目的と異議 | 物理11頁:採否の問い |
| 44 | 類似事実で甲の本件犯人性を推認する構造を示す。【必須】 | 5 | 物理21頁:推認の対象 | 物理7頁:応用力 |
| 45 | 犯罪性向を介した推論と特徴自体からの同一性推論を区別する。【高評価】 | 3 | 間接・物理21頁:許容・不許容の理論的根拠を求める総論。推論の区別の具体化は採点実感。 | 物理11頁:人格推認と許容推認の区別 |
| 46 | 犯罪性向という実証的根拠の乏しい人格評価からの推認を制限する理由を示す。【必須】 | 5 | 物理21頁:許容・排除の根拠 | 物理11頁:誤認危険 |
| 47 | 許容要件として顕著な特徴を示す。【必須】 | 4 | 物理21頁:第1要件 | 物理10頁:基準理解 |
| 48 | その特徴が本件と相当程度類似するとの要件を示す。【必須】 | 4 | 物理21頁:第2要件 | 物理10頁:基準理解 |
| 49 | 要件を満たすと余人の可能性が下がり人格評価を介さず同一性を推認できると説明する。【高評価】 | 5 | 物理21頁:許容の理論根拠 | 物理7頁:推認機序の理解 |
| 50 | 前科・併合審理事案と未起訴余罪との相違を捉え適用理由を示す。【高評価】 | 5 | 物理21頁:未起訴への応用 | 物理10頁:判例事案との差 |
| 51 | 窓の位置・錠付近・半円形を手口の特殊性へ具体的に当てはめる。【必須】 | 4 | 物理21頁:具体的手口 | 物理11頁:事実の意味 |
| 52 | 時間的・場所的近接性を同一性推認の強弱へ評価する。【必須】 | 4 | 物理21頁:日時場所 | 物理11頁:具体的当てはめ |
| 53 | 器具の入手容易性を特徴の識別力の評価へ接続する。【必須】 | 4 | 物理21頁:器具の特殊性 | 物理11頁:特徴の個別分析 |
| 54 | 未起訴のX方行為を前科証拠と呼ばない。【負例】 | 2 | 物理21頁:事実の法的地位 | 物理10頁:誤った分類 |
| 55 | 伝聞や尋問必要性へ中心争点をすり替えない。【負例】 | 2 | 物理21頁:関連性の争点 | 物理10頁:設問外論述 |
| 56 | W証人尋問請求を認容又は却下する手続上の結論まで示す。【必須】 | 5 | 物理21頁:設問の終点 | 物理10頁:結論未回収の負例 |
5 答案全体
以下は重みを付さない一般的な指摘であり,56項目の集計には含めない。設問間の結論を整合させ,条文・規範・具体的事実・評価・結論をつなぐ。長時間,疲労,偽計を列挙するだけでなく,相互作用を説明する。判例の法廷意見と個別意見,自説と許容分岐を混同しない。
6 重みの分布
| 重み1 | 重み2 | 重み3 | 重み4 | 重み5 | 合計 |
|---|---|---|---|---|---|
| 0 | 8 | 3 | 22 | 23 | 56 |
N=0+8+3+22+23=56,W=0+2×8+3×3+4×22+5×23=228である。Wは比較のための独自の重み合計であり,試験の配点ではない。
重み5の全23項目と適用条件は次のとおりである。
番号1:被疑者取調べの根拠を198条と特定する。 位置付け:法的入口を定める答案の骨格。 判定対象「被疑者取調べの根拠を198条と特定する。」を欠くと,取調べの分類・限界・具体的結論の論証骨格が閉じない。
番号2:強制手段の禁止と任意取調べの相当性の二段階を示す。 位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「強制手段の禁止と任意取調べの相当性の二段階を示す。」を欠くと,取調べの分類・限界・具体的結論の論証骨格が閉じない。
番号4:採用する強制処分の定義を権利・意思との関係で提示する。 位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「採用する強制処分の定義を権利・意思との関係で提示する。」を欠くと,取調べの分類・限界・具体的結論の論証骨格が閉じない。
番号9:強制性を否定した場合は相当性審査へ進む。 条件:強制処分該当性を否定する答案。位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「強制性を否定した場合は相当性審査へ進む。」を欠くと,取調べの分類・限界・具体的結論の論証骨格が閉じない。
番号10:相当性について比較衡量説又は行為規範説等の自説を明確にする。 位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「相当性について比較衡量説又は行為規範説等の自説を明確にする。」を欠くと,取調べの分類・限界・具体的結論の論証骨格が閉じない。
番号11:比較衡量説では必要性と被侵害利益を具体化する。 条件:比較衡量説を採る答案。位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「比較衡量説では必要性と被侵害利益を具体化する。」を欠くと,取調べの分類・限界・具体的結論の高評価の理由付けが閉じない。
番号13:長時間・徹夜・疲労・偽計が重なった状態を総合評価する。 位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「長時間・徹夜・疲労・偽計が重なった状態を総合評価する。」を欠くと,取調べの分類・限界・具体的結論の論証骨格が閉じない。
番号19:自白法則の根拠を319条1項に置く。 位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「自白法則の根拠を319条1項に置く。」を欠くと,二法則の適用関係の論証骨格が閉じない。
番号21:自白法則の証拠能力判断基準を自説に対応させる。 位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「自白法則の証拠能力判断基準を自説に対応させる。」を欠くと,二法則の適用関係の論証骨格が閉じない。
番号24:一般法則が自白にも適用されるか自説を明示する。 位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「一般法則が自白にも適用されるか自説を明示する。」を欠くと,二法則の適用関係の論証骨格が閉じない。
番号25:両法則の適用関係を理由付きで説明する。 位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「両法則の適用関係を理由付きで説明する。」を欠くと,二法則の適用関係の論証骨格が閉じない。
番号29:一般排除法則を自白に適用するとき令状主義基準を用いるか根拠を示す。 条件:一般排除法則の自白への適用を認める答案。位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「一般排除法則を自白に適用するとき令状主義基準を用いるか根拠を示す。」を欠くと,二法則の適用関係の高評価の理由付けが閉じない。
番号31:設問2-1の自説に即して甲の自白を判断する。 位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「設問2-1の自説に即して甲の自白を判断する。」を欠くと,自説に沿う証拠能力判断の論証骨格が閉じない。
番号32:設問1の取調べ評価と自白の当てはめを整合させる。 位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「設問1の取調べ評価と自白の当てはめを整合させる。」を欠くと,自説に沿う証拠能力判断の論証骨格が閉じない。
番号33:任意性説では取調べが心理状態・権利行使へ及ぼした作用を説明する。 条件:任意性説に立つ自白法則を適用する答案。位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「任意性説では取調べが心理状態・権利行使へ及ぼした作用を説明する。」を欠くと,自説に沿う証拠能力判断の論証骨格が閉じない。
番号36:疲労と偽計が相まって自白しかないとの心理状態を生む過程を示す。 位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「疲労と偽計が相まって自白しかないとの心理状態を生む過程を示す。」を欠くと,自説に沿う証拠能力判断の論証骨格が閉じない。
番号39:排除法則を適用するとき偽計等が違法である理由から重大性を評価する。 条件:一般排除法則の自白への適用を認める答案。位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「排除法則を適用するとき偽計等が違法である理由から重大性を評価する。」を欠くと,自説に沿う証拠能力判断の高評価の理由付けが閉じない。
番号43:関連性異議を受けたW証人尋問請求の採否が対象であると特定する。 位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「関連性異議を受けたW証人尋問請求の採否が対象であると特定する。」を欠くと,立証趣旨に即した証拠採否の論証骨格が閉じない。
番号44:類似事実で甲の本件犯人性を推認する構造を示す。 位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「類似事実で甲の本件犯人性を推認する構造を示す。」を欠くと,立証趣旨に即した証拠採否の論証骨格が閉じない。
番号46:犯罪性向という実証的根拠の乏しい人格評価からの推認を制限する理由を示す。 位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「犯罪性向という実証的根拠の乏しい人格評価からの推認を制限する理由を示す。」を欠くと,立証趣旨に即した証拠採否の論証骨格が閉じない。
番号49:要件を満たすと余人の可能性が下がり人格評価を介さず同一性を推認できると説明する。 位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「要件を満たすと余人の可能性が下がり人格評価を介さず同一性を推認できると説明する。」を欠くと,立証趣旨に即した証拠採否の高評価の理由付けが閉じない。
番号50:前科・併合審理事案と未起訴余罪との相違を捉え適用理由を示す。 位置付け:答案の骨格又は優秀と良好を分ける理由付けである。 判定対象「前科・併合審理事案と未起訴余罪との相違を捉え適用理由を示す。」を欠くと,立証趣旨に即した証拠採否の高評価の理由付けが閉じない。
番号56:W証人尋問請求を認容又は却下する手続上の結論まで示す。 位置付け:設問が要求した成果物そのものである。結論方向自体に重みを置かない。 判定対象「W証人尋問請求を認容又は却下する手続上の結論まで示す。」を欠くと,立証趣旨に即した証拠採否の論証骨格が閉じない。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
実際の刑事系試験日である2020年8月15日の法状態を基準とする。答案は1→(1)→アの階層で,設問1,設問2,設問3の順に論じる。答案本文は空白・改行を除いて5,105字である。任意取調べの相当性について比較衡量説,自白法則の根拠について任意性説,二法則の適用関係について二元説を採用する。これは許容される構成の一例であり,別説の採用を排除しない。
2 答案
1 設問1
(1) 取調べの法的性質
甲に対する下線部①の取調べは,逮捕・勾留前に行われた被疑者取調べであり,刑事訴訟法198条1項に根拠がある。ただし,逮捕・勾留されていない被疑者には出頭拒否及び退去の自由が保障されるから,同項ただし書の限界内で行われなければならない。
197条1項ただし書の強制処分とは,相手方の明示又は黙示の意思に反して,身体・行動の自由や供述の自由等の重要な権利・利益を実質的に制約し,特別の根拠規定を必要とする処分をいう。198条1項は,逮捕・勾留前の被疑者の退去自由を奪って取り調べる根拠ではない。
甲は,玄関先で本件事件について協力を求められ,自ら応じて徒歩で警察署に同行した。取調べ開始時には黙秘権及びいつでも退去できる旨を告知され,取調べを拒否して帰宅しようとしたこともない。取調室及び周辺には取調官1名のほか警察官が待機せず,トイレの申出も認められていた。もっとも,当初の協力意思は,睡眠を取らず偽計を受けても取調べに応じ続ける意思まで含まない。後半には疲労のため自由な意思決定が弱まったと考えられる。しかし,告知された退去自由の行使を阻む監視・威迫等はなく,疲労による供述への影響と,身体・行動を実質的に拘束する手段とは区別すべきである。これらを総合すると,本件では身体・行動の自由を奪う強制手段を用いたとまでは認めず,任意取調べとしての方法・限度の問題として検討する。長時間であるというだけで,当然に実質的逮捕とすることはできない。
(2) 任意取調べとしての限界
しかし,任意捜査であっても被疑者の人格・供述の自由を侵害し得るから,同意があるだけでどのような方法も許されるわけではない。比較衡量説の立場から,197条1項及び198条の趣旨に照らし,事案の性質,被疑者に対する嫌疑の程度,被疑者の態度,取調べの必要性,方法・時間及び心身への影響等を総合し,社会通念上相当な方法・態様及び限度にとどまる必要があると考える。捜査上の必要性と,睡眠・休息を含む身体の健康,生活の平穏及び自由な供述の意思決定への侵害を比較衡量する。
殊に徹夜で長時間継続する取調べは,心身に苦痛・疲労を与え,供述の自由を損なう危険が高いから,これを必要とする特段の事情を慎重に検討すべきである。被疑者が積極的に帰宅又は仮眠を求めなかったことは考慮事情となるが,それだけで徹夜の取調べを積極的に希望したことにはならない。
(3) 本件の具体的評価
本件は,民家への侵入窃盗が連続し,住民から早期検挙の要望が多数寄せられていた事案である。財産だけでなく住居の平穏も侵害するから,事件を解明し被害を防止する必要は相応に高い。また,甲がX方のクレセント錠付近にガラスカッターを当てるところを顔見知りのWが目撃し,残された半円形の傷跡と本件の割れ跡も類似する。甲に嫌疑を向け,事情を聴く合理的理由はある。
もっとも,Wが目撃したのは12月1日の別件行為であり,本件犯行時の甲の行動を直接裏付ける情報ではない。手口の類似も,それだけで本件を甲の犯行と断定するほど強い事情ではない。後に発見された現金及びガラスカッターを,取調べ当時既に存在した嫌疑資料として扱うこともできない。生命への急迫した危険や,その夜の取調べを継続しなければ証拠を失う事情も示されていない。
取調べは4日午後9時20分頃から翌5日午後9時30分頃まで約24時間に及んだ。3食,トイレ及び食事時の休憩が与えられ,甲が仮眠を申し出なかったことは相当性を支える。しかし,食事休憩は睡眠を代替せず,甲は時間の経過とともに疲労し,5日午後3時頃には言葉数が減っていた。否認を続ける被疑者に同じ追及を継続する必要性を再検討すべき段階であり,帰宅させ,改めて取調べる等の方法が考えられた。
それにもかかわらず,Qは疲労している今なら軽微なうそで自白を得られると考え,午後7時10分頃,実際には情報がないのに,犯行当日の夜に甲が外出したのを見た人がいると告げた。この虚偽は犯行そのものを目撃したという内容ではないが,甲の否認を維持する意思を崩す目的で,蓄積した疲労を利用して行われた。甲は疲労と虚偽告知が相まって自白するしかないと思い込んだのであり,単なる客観証拠の提示による追及とは異なる。
以上から,開始段階の取調べの必要性及び任意性は認められるとしても,疲労が顕在化した後も徹夜の取調べを継続し,これを利用した偽計によって自白へ導いた一連の取調べは,社会通念上相当な限度を超え違法である。
2 設問2
(1) 両排除法則の適用関係
自白法則は,憲法38条2項及び刑訴法319条1項に基づき,任意にされたものでない疑いのある自白を排除する。その根拠は任意性説に求め,虚偽自白による誤判の防止及び被疑者・被告人の供述の自由の保障を重視する。強制,拷問,脅迫,長期の抑留・拘禁は例示であり,身体的強制を用いない心理的圧迫も任意性を失わせ得る。実際に虚偽の自白であったと証明されることまでは必要なく,任意性に疑いが残れば排除される。
他方,違法収集証拠排除法則は,適正な刑事手続を確保し,将来の違法捜査を抑制するため,収集過程に重大な違法があり,証拠として許容することが違法捜査抑制の見地から相当でない証拠を排除する。自白以外の証拠についても適用され,証拠内容の信用性だけを問題とするものではない。
両法則を適正手続という共通原理に基づくものと捉え,一般の違法収集証拠排除法則に対して自白法則を特別規定と位置付ける違法排除一元説もある。この立場は自白獲得手続の違法に重点を置く。ただし,自白について明文の任意性審査があることを踏まえ,一般法則と特別規定との関係及び自白に即した排除基準を説明する必要がある。
これに対し,自白の証拠能力は専ら任意性で判断し,一般の違法収集証拠排除法則を適用しない任意性一元説によると,供述自体が任意でも,その獲得手続に重大な違法がある場合を十分に排除できない。自白法則が存在することは,適正手続及び違法捜査抑止による保護を自白について放棄したことを意味しない。
そこで,私は,自白の内容の真実性と供述自由の保護,手続の適正と捜査抑止とでは保護の焦点が異なることから,両法則を独立に適用する二元説に立つ。まず自白の任意性を審査し,不任意の疑いがあれば319条1項により排除する。任意性が肯定されても,収集手続の重大な違法と抑止の必要性があれば一般の排除法則により排除する。少なくともいずれかの排除要件が満たされれば証拠能力を認めないという関係であって,両法則の要件を累積的に満たすことを要求するものではない。
(2) 甲の自白の証拠能力
ア 自白法則
甲の自白は,本件住居侵入窃盗を自己が行ったことを認めるものであるから,319条1項の対象となる。甲が任意同行に同意したことや,取調べが任意捜査と分類されることから,供述の任意性が当然に認められるわけではない。
甲は約22時間の取調べを経て,疲労し言葉数が少なくなっていたにもかかわらず否認を続けた。この状態を認識したQが,否認を打開するため存在しない外出目撃情報を告げ,その20分後に甲は自白を始めた。否認を続けていた甲が自白するしかないと思い込んだのは,長時間の疲労に虚偽告知が重なり,防御意思及び正常な判断を弱められた結果とみることができる。
外出情報は犯人であることを直接示さず,単独なら直ちに供述の自由を奪うほどのものではないともいえる。また,暴行・脅迫はなく,食事・休憩も保障されていた。しかし,偽計の程度は告知内容だけでなく,供述者の心身状態及び作用と合わせて判断する。本件では,疲労を意図的に利用することと虚偽告知が一体となって自白を生じさせた。甲が自白後も問われたことにポツリポツリと答えたことは,疲労状態が続いたことを示す。
偽計により心理的強制を受け,虚偽自白が誘発されるおそれがある場合,任意性に疑いがある。本件自白はこれに当たり,319条1項により証拠能力を否定すべきである。自白内容が現金や器具に関する他の証拠と整合し得ることは信用性の問題であり,供述の自由を侵害した疑いを取り除くものではない。
イ 違法収集証拠排除法則
独立の適用関係を確認するため,仮に自白の任意性を肯定した場合も検討する。証拠物についての判例は,令状主義の精神を没却するような重大違法及び将来の違法捜査抑制を排除の基準としている。しかし,取調べ自体は令状を得れば許される処分ではない。自白にも同法則を適用する根拠を適正手続の確保と違法捜査抑止に求める以上,自白に即して,198条等が保障する供述の自由を含む適正手続を著しく害する重大違法があるかに読み替え,抑止の必要性と合わせて判断すべきである。
本件では,取調べ開始時の告知,退去妨害の不存在,食事・休憩等の配慮があるから,すべての手続が違法であったわけではない。しかし,約24時間にわたる徹夜の取調べを,甲の疲労が顕在化した後も続け,その疲労を利用して虚偽情報により自白を得た。単なる手続上の過失又は軽微な不備ではなく,供述の自由を害する状態を捜査官が意図的に利用したもので,違法は重大である。
自白はその状態を直接利用して得られ,後日の独立した取調べで影響が解消した事情もない。逮捕・勾留後は甲が黙秘し,問題となる調書はこの取調べによる1通だけである。この自白を許容すると,否認する被疑者を疲労させ,偽計で自白へ導く捜査を助長する。違法捜査抑制の見地からも相当でなく,同法則によっても証拠能力を否定する。
3 設問3
(1) 証拠請求の対象と問題の所在
検察官は,甲がX方でガラスカッターを当てた別件行為を,その手口が本件と類似することから,甲がV方における本件犯人であると推認するため,Wの証人尋問を請求している。Wの調書について不同意であったことに対し,直接証言を求めることで伝聞の問題は解消し得るが,関連性の問題はなお残る。裁判所は298条の証拠請求について,弁護人の関連性に関する異議を踏まえ,この立証目的で証拠にできるかを判断すべきである。
(2) 別件犯罪事実による犯人性立証の限界
被告人が他の同種行為をしたという事実には,本件を行った可能性をうかがわせる自然的関連性があり得る。しかし,単に同種犯罪を行う性向があるという実証的根拠の乏しい人格評価を介し,本件犯人であると推認すると,事実認定を誤る危険が高い。別件の存否・内容をめぐり争点が拡散するおそれもあるから,自然的関連性だけで証拠能力を認めるべきではない。
犯人の同一性の証明に用いるには,別件犯罪事実が顕著な特徴を有し,その特徴が本件犯罪事実と相当程度類似するため,犯罪性向という一般的評価を介さず,その特徴自体から両者の犯人が同一であることを合理的に推認できることを要する。顕著な特徴が相当程度一致するなら,余人が偶然同じ特徴を示す可能性が低くなるため,特徴自体から同一性を推認できるのである。前科や併合審理中の別罪だけでなく,未立件の別件犯罪事実も人格評価を介する推認の危険は同じであり,この趣旨が当てはまる。
(3) 本件への適用
X方とV方は同じ市内の一戸建てで,庭に面した1階掃き出し窓のクレセント錠付近を狙い,ガラスカッターによる半円形の傷跡又は割れ跡が残されていた。時間も2日程度と近接し,具体的な侵入手段に類似性がある。Wは甲を知る住民であり,X方の行為者が甲であることの識別にも意味がある。
しかし,窓の施錠を外すためクレセント錠付近のガラスを切ることは,施錠の構造に応じた方法である。ガラスカッターは一般に流通し容易に入手できるから,半円形の傷跡又は割れ跡も,甲以外の者には困難な特殊な技術・器具の使用を示すものではない。同市内・近接した日時という事情を合わせても,甲個人の犯行を識別するほど顕著な特徴とはいえない。
押収器具で両方の跡を形成できることも,形成可能性を示すにとどまり,両現場で同じ器具が使用されたことや甲が使用者であることまで裏付けない。Vに直接結び付く付着物等がなく,客観的な個人識別性を補う事情もない。5件の先行事件を甲の犯行と認定した前提で,連続性を根拠にすることもできない。
結局,別件行為から本件犯人性を推認するには,侵入窃盗をする者だから本件も行ったはずだという犯罪性向の評価に依存せざるを得ない。したがって,この立証趣旨でのW証人尋問には証拠能力を認められず,裁判所は請求を却下すべきである。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案1は番号1~18,答案2(1)は19~30,答案2(2)は31~42,答案3は43~56に対応する。ただし非採用の強制処分肯定説・一元説の分岐は,その説を採る答案の評価項目である。負例は誤った論証を避けるための確認項目として読む。
(2) 取調べの分類と相当性
番号2・4・9・10・11・13が中心となる。強制処分の定義を示した後,明示の同行同意だけで後半の取調べへの意思まで確定しない。強制性を否定しても,睡眠・休息,健康,生活の平穏,供述自由と捜査の必要性を比べる。約24時間の継続,午後3時頃からの疲労,虚偽情報の内容と利用目的を一体として評価した。取調べの違法性を示した後に,同じ理由だけで身体拘束へ分類し直すことは避ける。
(3) 排除法則の関係と自白への適用
番号19・21・24・25・29・31・32・33・36・39を参照。二つの法則の基準を並べるだけでは,設問2-1の適用関係に答えたことにならない。二元説は別個の排除根拠を認める構成であり,両要件の累積を要求しない。一般排除法則を自白へ及ぼす場合,証拠物の令状主義基準をそのまま使わず,供述自由を含む適正手続との関係を説明する。
虚偽の内容は「犯行を見た」ではなく「外出を見た」である。これだけなら影響が小さいとの反論を処理し,疲労した甲の心理への複合作用を示した。取調べが違法であることと,自白の任意性に疑いがあることは独立の判断である。
(4) 類似事実の証拠利用
番号43・44・46・49・50・56が中心となる。X方行為は前科ではなく,起訴されていない別件の事実である。犯罪性向という人格評価を介する危険は同じである一方,判例の事案と同一とはしない。顕著な特徴が相当程度一致すると,余人が偶然一致する可能性が低くなり,特徴自体から犯人の同一性を推認できる。しかし本件の器具は一般に流通し,窓と錠の位置に対応する切断方法から甲個人の識別まではできないと評価した。
(5) 答案の弱点と扱わなかった事項
強制性,任意相当性及び手口の識別力は,提示された事実をどう評価するかで結論が分かれ得る。本答案は告知や退去妨害の不存在を強制性否定へ,疲労の利用を相当性・任意性否定へ分けて用いる。身体・行動の自由の制約に重点を置く判断には,供述自由への実質的制約を軽視していないかという反論が残る。違法収集証拠排除法則の自白への一般的適用は学説上の選択を含み,判例が本件と同じ二元説の結論を直接確定したとするものではない。
設問の中心でない伝聞例外,補強法則,派生証拠論や捜査実務の改善提案は広げていない。自白の信用性と証拠能力,器具の形成可能性と使用者の特定も区別している。
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第7 出典及び確認状態
1 公式資料
法務省・令和2年司法試験論文式試験問題集〔刑事系科目第2問〕(物理4~6頁)
法務省・令和2年司法試験論文式試験問題の出題の趣旨(刑事系第2問:物理18~21頁)
法務省・令和2年司法試験の採点実感(刑事系科目第2問:物理6~13頁)
2 法令
e-Gov法令API・2020年8月15日時点の刑事訴訟法(2020年4月1日施行版)。197条,198条,298条,309条,317条,318条,319条及び322条の関係部分を確認した。後発の法改正を当時の答案へ持ち込んでいない。
3 裁判例
最高裁平成元年7月4日決定・任意取調べの限界(法廷意見と反対意見を区別)
最高裁昭和61年4月25日判決・違法収集証拠排除(法廷意見と反対意見を区別)
最高裁平成25年2月20日決定・類似事実による犯人性の証明(法廷意見と補足意見を区別)
4 確認状態
問題本文は物理5~6頁を文字抽出と画像で確認した。出題の趣旨は物理18頁の〔第2問〕から21頁の【選択科目】直前まで,採点実感は物理6~13頁の第2問関連部分を実読した。PDF全頁の抽出文字数を点検し,文字数0の頁はない。別問・別科目の本文は本問の根拠に使用していない。
上記裁判例は取得した原文の関係判示を確認した。公式資料が参照する昭和59年2月29日決定及び昭和53年9月7日判決の原文全体を確認した扱いにはせず,後続の原文で確認した枠組みと区別する。学説の選択,具体的事実への評価,項目の抽出及び重み付けは本記事の判断である。公式の個別配点は不明であり,これらの数値から得点・合格可能性は算定できない。