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電子公正証書を債務名義として強制執行する方法―公正証書正本情報,執行文,送達及び紙申立て(AI作成)

第1 結論

1 令和7年10月1日以後,公正証書は原則として電磁的記録で作成・保存されます。しかし,電子公正証書を取得したことと,強制執行をオンラインで申し立てられることは別問題です。

2 令和8年9月29日現在,電子公正証書に基づいて債権差押え等を申し立てる場合,裁判所の現行案内は,公証役場から公証人法44条1項2号の書面(記録事項記載書面),執行文及び送達証明書を取得して提出する取扱いを示しています。

3 裁判所が作成した電子判決書・電子調書等では「事件特定情報」を申立書に記載して債務名義正本等の提出を省略できる場合がありますが,公証人が作成した電子公正証書について同じ仕組みをそのまま用いるものではありません。

4 以下は金銭債権について強制執行認諾文言を備えた公正証書を主な対象とする一般的な整理です。条件成就,承継,複数債務者,期限の利益喪失条項等が問題となる事件では,執行文の種類及び必要資料を公証役場・申立先裁判所に個別確認する必要があります。

第2 電子公正証書が執行証書となる要件

1 民事執行法22条5号は,金銭の一定額の支払又は代替物・有価証券の一定数量の給付を目的とする請求について作成された公正証書で,債務者が直ちに強制執行に服する旨を陳述したものを債務名義(執行証書)としています。

2 したがって,公正証書であれば常に強制執行できるわけではありません。少なくとも,対象となる給付請求が特定され,債務者の強制執行認諾の陳述が記載又は記録されていることが必要です。

3 電子化によって変わったのは主に作成・保存・提供の媒体です。執行証書となるための実体的要件や,執行文及び送達を要する原則までなくなったわけではありません。

第3 原本・記録事項記載書面・公正証書正本情報の違い

1 原本である電磁的記録
公証人が電磁的記録で作成し,公証役場側で保存する公正証書そのものです。依頼者が受け取るデータ又は紙は,この保存原本と同一ではありません。

2 公証人法44条1項2号の書面(記録事項記載書面)
公正証書である電磁的記録に記録された事項を記載し,その内容が当該電磁的記録と同一であることを公証人が証明した書面です。裁判所の債権執行案内は,電子公正証書に基づく申立てについて,この書面を準備するよう案内しています。単なる印刷物・写しでは足りません。

3 公証人法44条1項3号の電磁的記録(公正証書正本情報)
公正証書の記録事項を記録し,原本との同一性を確認するために必要な措置が講じられた電磁的記録です。電子データとして提供を受けることができますが,令和8年9月29日現在の民事執行申立てが全面オンライン化されているわけではないため,受領したデータだけで直ちにオンライン申立てが完結するとは限りません。

第4 執行文

1 強制執行は,原則として執行文の付された債務名義の正本に基づいて行います。電子執行証書に対する執行文は,電磁的記録に記録され,公証人法44条1項2号の書面又は同項3号の電磁的記録に付記される仕組みです(民事執行法26条2項2号)。

2 単純執行文で足りるか,条件成就執行文又は承継執行文が必要かは事案により異なります。期限の利益喪失,反対給付,債権譲渡,相続・法人承継等がある場合は,執行文付与の申立てと立証資料を先に確認します。

3 電子公正証書のデータを持っているだけでは,執行文付与を受けたことにはなりません。公証役場への申請時に,執行文を付した書面又は電磁的記録のどちらを必要とするかを明確に伝えるのが安全です。

第5 送達と送達証明

1 強制執行は,債務名義の正本又はこれに代わる所定の書面・電磁的記録が,あらかじめ又は同時に債務者へ送達されたときに開始できます(民事執行法29条)。

2 公証人が行う電磁的記録の電子送達は,民事執行規則20条3項により,送達を受ける債務者が同意した場合に利用する仕組みです。同意がない場合を含め,公証人送達,執行官送達又は公示送達のいずれになるかを確認します。

3 債権執行の申立てでは,送達が実施済みであることを示す送達証明書を求められます。電子公正証書の提供を受けるときは,執行文だけでなく,債務者への送達と送達証明の取得までを一連の手続として依頼する必要があります。

第6 現在の債権執行申立て

1 令和8年9月29日現在,裁判所の全国案内は,公証人が作成した電磁的な執行証書に基づく債権執行について,次の書類を準備するよう案内しています。

  • 公証人法44条1項2号の書面(記録事項記載書面)
  • 執行文
  • 送達証明書

2 これに対し,裁判所が作成した電子判決書・電子調書等については,申立書に事件特定情報を記載することにより,債務名義正本及び送達証明書の提出を省略できる場合があります。電子で作成されたという共通点だけから,両者を混同してはいけません。

3 現在は民事執行の申立て自体が全面オンライン化されていないため,電子公正証書を債務名義とする場合も,原則として申立先裁判所へ紙の申立書・必要書類を提出します。必要部数,添付書類,予納金・郵便料及び第三債務者の資格証明等は,申立先裁判所の最新案内で確認します。

第7 申立て前チェックリスト

  1. 公正証書に対象債権と強制執行認諾文言が明確に記録されているか。
  2. 期限が到来しているか,期限の利益喪失又は条件成就の立証が必要か。
  3. 債権者・債務者に承継がなく,承継執行文が不要か。
  4. 公証人法44条1項2号の書面を取得したか(単なるコピーではないか)。
  5. 必要な執行文が付与されているか。
  6. 債務者への送達が完了し,送達証明書を取得したか。
  7. 申立先,差し押さえる債権,第三債務者及び請求債権目録を正確に特定したか。
  8. 申立先裁判所の最新書式,必要部数,予納金及び郵便料を確認したか。

第8 民事執行デジタル化との関係

1 裁判所は,民事訴訟手続のデジタル化と,民事執行・倒産・家事事件等のデジタル化を段階的に進めています。令和8年5月21日に民事訴訟の全面デジタル化が始まった後も,民事執行等はオンライン申立ての対象外と案内されています。

2 裁判所の案内では,民事執行等の全面デジタル化は遅くとも令和10年6月までとされています。ただし,具体的な施行日・運用・必要データは今後の政令,最高裁判所規則及び裁判所案内で確認する必要があります。

3 したがって,現時点では「債務名義が電子であること」と「申立てがオンラインであること」を切り分け,現在の提出方法に合わせて公証役場から必要な書面を取得することが重要です。

第9 根拠資料

上記説明資料が述べる制度趣旨・数値は資料作成者の説明(Source statement)として扱っています。判例秘書は本記事作成時には未検索であり,これは関連裁判例が存在しないという意味ではありません。個別事件では,申立先裁判所及び公証役場の最新運用を確認してください。