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時効の完成猶予と更新の違い―旧法の中断・停止との対応関係と事由の一覧(AI作成)

第1 本記事の対象と結論

1 本記事の対象

本記事は,現行民法の「時効の完成猶予」と「時効の更新」がそれぞれ何を意味するか,改正前民法の「時効の中断」「時効の停止」とどう対応するか,及びどのような事由がどちらの効果を生ずるかを一覧で整理するものである。
調査基準日は令和8年9月19日であり,条文はe-Gov法令検索で取得した現行民法及び令和2年3月31日時点の民法(改正前民法)の本文と照合した。
個々の事由の詳細(催告と協議合意,訴えの提起,強制執行,承認,判断能力を欠く人の場合)は,それぞれの記事に送り,本記事では全体の地図を示すことに徹する。
消滅時効全体の見取り図は,ハブ記事である消滅時効に関するメモ書きにある。

2 結論

完成猶予とは,一定の事由がある間(又はその事由が終わってから一定期間が経過するまで)は時効が完成しないという効果であり,それまでに経過した時効期間は消えない。
更新とは,それまでに経過した時効期間を無にして,その時から時効期間が改めて進行を始めるという効果である。
改正前民法の「中断」は,この二つの効果を一つの言葉で表していたため,改正によって,事由ごとに「完成猶予」と「更新」に振り分けられた。
改正前民法の「停止」は,現行法ではすべて「完成猶予」になった。
内容証明郵便による催告(民法150条)や仮差押え(民法149条)は完成猶予だけを生じ,時効期間を振り出しに戻す効果はない。
時効期間を振り出しに戻すのは,確定判決等による権利の確定(民法147条2項),強制執行等の終了(民法148条2項)及び債務者の承認(民法152条)である。
令和2年3月31日以前に生じた中断事由・停止事由の効力は,今でも改正前民法で判断する(平成29年法律第44号附則10条2項)。

第2 完成猶予と更新の意味

1 完成猶予

完成猶予は,時効期間が満了しても,一定の時点までは時効の完成を認めないという効果である。
たとえば,民法150条1項は「催告があったときは、その時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」と定める。
完成猶予の間に時効期間が満了していなければ,猶予の効果は表に出ず,本来の満了日がそのまま意味を持つ。
完成猶予の間に本来の満了日が来た場合に限り,猶予期間の終わりまで時効の完成が先送りされる。
したがって,完成猶予は時効期間を延ばすものというより,時効の完成を一時的にせき止めるものと理解するのが正確である。

2 更新

更新は,それまでの時効期間の経過を無にして,新たに時効期間が進行を始めるという効果である。
民法152条1項は「時効は、権利の承認があったときは、その時から新たにその進行を始める。」と定める。
更新があれば,本来の満了日は意味を失い,更新の時点から改めて時効期間を数えることになる。
確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって確定した権利は,更新後の時効期間が10年になる(民法169条1項)。
この点は判決で確定した債権の消滅時効は10年―民法169条と改正前169条(定期給付債権)の違いで扱う。

3 日付で比べた例

債権者が弁済期(令和3年10月1日)を知っていた貸金債権は,民法166条1項1号により,令和8年10月1日の経過をもって時効期間が満了する(民法140条・143条)。
債権者が令和8年9月1日に内容証明郵便で催告し,同日に到達した場合,その時から6か月を経過するまで,すなわち令和9年3月1日の経過までは時効が完成しない。
この6か月の間に訴えを提起しなければ,令和9年3月1日の経過によって時効が完成する。
これに対し,債務者が令和8年9月1日に債務を承認した場合は,その時から新たに5年の時効期間が進行し,令和13年9月1日の経過まで時効は完成しない。
同じ日の出来事でも,完成猶予か更新かによって,時効が完成する時期が4年半ほど違うことになる。

第3 旧法の中断・停止との対応関係

1 改正前民法の中断と停止

改正前民法147条は「時効は、次に掲げる事由によって中断する。」として,「請求」「差押え、仮差押え又は仮処分」「承認」を掲げていた。
中断した時効は,中断の事由が終了した時から新たに進行を始めるとされ(改正前民法157条1項),裁判上の請求によって中断した時効は裁判が確定した時から新たに進行を始めるとされていた(同条2項)。
他方,改正前民法158条から161条までは「時効の停止」として,未成年者・成年被後見人に法定代理人がない場合,夫婦間の権利,相続財産,天災等の場合に,一定期間時効が完成しないとしていた。

2 中断の効果を二つに分けた理由

改正前民法の中断には,事由が続いている間は時効が完成しないという効果と,事由が終わった時から時効期間が改めて進行するという効果の二つが含まれていた。
法務省民事局の説明資料は,中断の効果としては「完成の猶予」と「新たな時効の進行(時効期間のリセット)」の二つがあり,それぞれ内容も発生時期も異なるから,新たに二つの概念を用いて整理したと説明している(「民法(債権関係)の改正に関する説明資料-主な改正事項-」9頁)。
同資料は,承認を更新事由,裁判上の請求などを完成猶予事由かつ更新事由,催告などを完成猶予事由とし,停止事由は完成猶予事由とすると整理している(同頁)。
したがって,「旧法の中断=現行法の更新」「旧法の停止=現行法の完成猶予」という一対一の置換えは,停止については正しいが,中断については正確でない。

3 対応表

主な事由について,改正前民法の扱いと現行民法の扱いを並べると,次のとおりである。

事由改正前民法現行民法
裁判上の請求・支払督促・和解・調停・破産手続参加等中断(147条1号・149条~152条・157条2項)完成猶予(147条1項)+権利が確定すれば更新(同条2項)
強制執行・担保権の実行差押えとして中断(147条2号・154条)完成猶予(148条1項)+事由の終了で更新(同条2項)
財産開示手続・第三者からの情報取得手続中断事由としての規定なし完成猶予(148条1項4号)+事由の終了で更新(同条2項)
仮差押え・仮処分中断(147条2号)完成猶予のみ(149条)
催告6か月以内に裁判上の請求等をしなければ中断の効力を生じない(153条)完成猶予のみ(150条)
協議を行う旨の合意規定なし完成猶予のみ(151条。新設)
承認中断(147条3号)更新のみ(152条)
未成年者等・夫婦間・相続財産停止(158条~160条)完成猶予(158条~160条)
天災等停止(障害消滅から2週間。161条)完成猶予(障害消滅から3か月。161条)

4 呼び名の変更にとどまらない変更点

第一に,仮差押え・仮処分は,改正前民法では中断事由であったが,現行法では完成猶予事由にとどまり,保全命令を得ても時効期間が改めて進行することはない。
そのため,仮差押えをした後も,本案の訴えの提起その他の更新につながる手続をとる必要がある。
第二に,天災等による猶予期間は,障害が消滅してから2週間から3か月に延ばされた(民法161条)。
第三に,協議を行う旨の合意という新しい完成猶予事由が設けられた(民法151条)。
第四に,訴えの取下げ等によって権利が確定しないまま手続が終わった場合にも,終了の時から6か月は時効が完成しないことが条文に書かれた(民法147条1項括弧書)。
同じく,強制執行等の申立てが取り下げられた場合にも,終了の時から6か月の完成猶予が残る(民法148条1項括弧書)。
改正前民法149条は,裁判上の請求は訴えの却下又は取下げの場合には時効の中断の効力を生じないとしていたから,この点は条文の上では大きな変化である。
もっとも,改正前民法の下でも,判例は訴えの提起による「裁判上の催告」という考え方で同様の結論を導いており,法務省民事局の説明資料もこれを明文化したものと説明している(前掲説明資料7頁,9頁~10頁)。

第4 完成猶予・更新の事由の一覧

1 一覧表

現行民法が定める完成猶予・更新の事由を,効果ごとにまとめると,次のとおりである。

条文事由完成猶予の期間更新
147条裁判上の請求,支払督促,訴え提起前の和解・民事調停・家事調停,破産手続参加・再生手続参加・更生手続参加事由が終了するまで(権利が確定せずに終了したときは終了から6か月)権利が確定したとき,事由の終了時から
148条強制執行,担保権の実行,形式競売,財産開示手続,第三者からの情報取得手続事由が終了するまで(取下げ・取消しで終了したときは終了から6か月)事由の終了時から(取下げ・取消しの場合を除く)
149条仮差押え,仮処分事由の終了から6か月なし
150条催告催告から6か月なし
151条協議を行う旨の書面による合意合意から1年,合意で定めた1年未満の期間又は続行拒絶の通知から6か月のいずれか早い時までなし
152条承認なし承認の時から
158条未成年者・成年被後見人に法定代理人がない等行為能力者となった時又は法定代理人の就職から6か月なし
159条夫婦間の権利婚姻の解消から6か月なし
160条相続財産相続人の確定,管理人の選任又は破産手続開始の決定から6か月なし
161条天災その他避けることのできない事変障害の消滅から3か月なし

2 裁判上の請求等(民法147条)

民法147条1項は,裁判上の請求,支払督促,民事訴訟法275条1項の和解又は民事調停法若しくは家事事件手続法による調停,破産手続参加・再生手続参加・更生手続参加について,「その事由が終了する(確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定することなくその事由が終了した場合にあっては、その終了の時から六箇月を経過する)までの間は、時効は、完成しない。」と定める。
同条2項は,確定判決又は確定判決と同一の効力を有するものによって権利が確定したときは,時効は,事由が終了した時から新たにその進行を始めると定める。
訴えの提起による完成猶予の効力が生ずる時点について,民事訴訟法147条は,訴えが提起されたとき又は訴えの変更等の書面が裁判所に提出されたときに,時効の完成猶予のために必要な裁判上の請求があったものとするとしている。
一部請求,訴えの取下げ及び訴えの変更の扱いは,訴えの提起と時効の完成猶予・更新―明示的一部請求,訴えの取下げ及び訴えの変更で扱う。
支払督促の督促異議と通常訴訟への移行は,支払督促の督促異議と仮執行宣言―期間,効果及び通常訴訟への移行で扱っている。

3 強制執行等(民法148条)

民法148条1項は,強制執行,担保権の実行,民事執行法195条に規定する担保権の実行としての競売の例による競売,及び民事執行法196条に規定する財産開示手続又は同法204条に規定する第三者からの情報取得手続について,事由が終了するまで(申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによって終了した場合は,その終了の時から6か月を経過するまで)時効が完成しないとする。
同条2項は,事由が終了した時から新たに時効が進行を始めるとしつつ,申立ての取下げ又は法律の規定に従わないことによる取消しによって終了した場合を除いている。
財産開示手続と第三者からの情報取得手続が明文で掲げられたことは,改正前民法にはなかった点である。
差押えの了知の要否,申立ての取下げ,配当要求の扱いは,強制執行・財産開示手続と時効の完成猶予・更新―差押えの了知不要,申立ての取下げ及び配当要求で扱う。

4 仮差押え・仮処分(民法149条)

民法149条は,仮差押え及び仮処分について「その事由が終了した時から六箇月を経過するまでの間は、時効は、完成しない。」と定める。
仮差押えと差押えの効力の違い,「その事由が終了した時」の意味及び破産手続開始による失効は,仮差押えと差押えの違い―処分禁止の効力,時効の完成猶予及び破産手続開始による失効で扱っている。

5 催告(民法150条)と協議を行う旨の合意(民法151条)

催告は,その時から6か月の完成猶予を生ずるにとどまり,催告によって完成が猶予されている間にされた再度の催告は,完成猶予の効力を有しない(民法150条2項)。
協議を行う旨の合意が書面又は電磁的記録でされたときは,合意から1年等のいずれか早い時まで時効が完成しない(民法151条1項・4項)。
催告による猶予期間中にされた協議の合意,及び協議の合意による猶予期間中にされた催告は,完成猶予の効力を有しない(同条3項)。
具体的な使い方と記載例は,内容証明による催告と協議を行う旨の合意―6か月の完成猶予,再度の催告及び民法151条の使い方で扱う。

6 承認(民法152条)

承認は,更新だけを生ずる事由であり,承認の時から新たに時効が進行する(民法152条1項)。
承認をするには,相手方の権利についての処分につき行為能力の制限を受けていないこと又は権限があることを要しない(同条2項)。
一部弁済や破産管財人の承認などの具体例は,債務の承認による時効の更新―一部弁済,破産管財人の承認及び相続人への通知で扱う。
時効が完成した後に承認した場合の問題は,更新とは別の論点であり,時効完成後に債務を承認・一部弁済したら時効を援用できないか―最高裁昭和41年4月20日大法廷判決と再度の時効で扱う。

7 権利者側の事情による完成猶予(民法158条~161条)

民法158条から161条までは,権利者が時効の完成を阻止する手段をとりにくい事情がある場合に,時効の完成を猶予する規定である。
民法158条から160条までの文言は,見出しが「時効の停止」から「時効の完成猶予」に改められたほかは,改正前民法と同じである。
民法161条は,時効の期間の満了の時に当たり,天災その他避けることのできない事変のため民法147条1項各号又は148条1項各号に掲げる事由に係る手続を行うことができないときは,その障害が消滅した時から3か月を経過するまでの間は時効が完成しないとする。
判断能力を欠く人に法定代理人がない場合に民法158条1項を類推適用した判例は,判断能力を欠く人に対する時効の完成猶予―民法158条の類推適用と最高裁平成26年3月14日判決で扱う。

8 民法以外の法律が定める事由

民法以外の法律にも,完成猶予・更新に関する規定がある。
①民事調停法19条は,調停が不成立等で終了した場合に,申立人が通知を受けた日から2週間以内に調停の目的となった請求について訴えを提起したときは,調停の申立ての時に訴えの提起があったものとみなす。
②家事事件手続法272条3項も,家事調停が不成立で終了した場合について,通知を受けた日から2週間以内の訴えの提起を家事調停の申立ての時にさかのぼらせる。
③裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律25条1項は,認証紛争解決手続が和解成立の見込みがないとして終了した場合に,通知を受けた日から1か月以内に訴えを提起したときは,時効の完成猶予に関しては,認証紛争解決手続における請求の時に訴えの提起があったものとみなす。
④仲裁法29条2項は,仲裁手続における請求は時効の完成猶予及び更新の効力を生ずるとし,ただし仲裁手続が仲裁判断によらずに終了したときはこの限りでないとする。
このほか,地方自治法236条4項のように,公法上の債権について納入の通知及び督促に更新の効力を与える規定もある。

第5 効力が及ぶ人の範囲

1 相対効の原則(民法153条)

民法153条は,147条又は148条による完成猶予又は更新,149条から151条までによる完成猶予,及び152条による更新について,いずれも,その事由が生じた当事者及びその承継人の間においてのみ効力を有すると定める。
改正前民法148条も,中断の効力が及ぶ者の範囲を同じように定めていた。
したがって,債務者が複数いる場合や,担保を提供した第三者がいる場合には,誰に対して,どの手続をとったかを人ごとに管理する必要がある。

2 保証人と連帯債務者

主たる債務者に対する履行の請求その他の事由による時効の完成猶予及び更新は,保証人に対しても効力を生ずる(民法457条1項)。
これは民法153条の相対効の例外であり,改正前民法457条1項も「時効の中断」について同じ定めを置いていた。
逆に,保証人に対する請求や保証人の承認は,主たる債務者の時効には影響しない。
連帯保証人について生じた事由については,民法458条が438条,439条1項,440条及び441条を準用するにとどまるから,連帯保証人に対する履行の請求は,主たる債務者との関係で完成猶予・更新の効力を生じない。
改正前民法の下では,連帯債務者の一人に対する履行の請求は他の連帯債務者に対しても効力を生ずるとされ(改正前民法434条),連帯保証人にも準用されていた(改正前民法458条)が,この規定は改正で削除された。
現行民法441条は,更改・相殺・混同を除き,連帯債務者の一人について生じた事由は他の連帯債務者に対して効力を生じないとする相対的効力の原則を定めている。
共同不法行為者の責任と時効の関係は,共同不法行為の連帯責任と連帯債務―不真正連帯債務,示談,時効及び求償で扱っている。

3 時効の利益を受ける者以外に対する手続と通知(民法154条)

民法154条は,民法148条1項各号又は149条各号に掲げる事由に係る手続は,時効の利益を受ける者に対してしないときは,その者に通知をした後でなければ,完成猶予又は更新の効力を生じないと定める。
典型は,物上保証人の不動産に対して担保権を実行する場合であり,債務者に通知がされて初めて,債務者の被担保債権について完成猶予・更新の効力が生ずる。
改正前民法155条が差押え・仮差押え・仮処分について同じ趣旨を定めていた規定を引き継いだものである。

第6 経過措置と旧法判例を読むときの注意

1 施行日前に生じた事由(附則10条2項)

平成29年法律第44号附則10条2項は,「施行日前に旧法第百四十七条に規定する時効の中断の事由又は旧法第百五十八条から第百六十一条までに規定する時効の停止の事由が生じた場合におけるこれらの事由の効力については、なお従前の例による。」と定める。
したがって,令和2年3月31日以前にされた催告,承認,訴えの提起等の効力は,現行法の完成猶予・更新ではなく,改正前民法の中断・停止として判断する。
たとえば,令和2年3月に内容証明郵便で催告した場合は,改正前民法153条により6か月以内に裁判上の請求等をしなければ中断の効力を生じないという枠組みで考える。
また,施行日前に書面でされた協議を行う旨の合意には,民法151条は適用されない(同条3項)。
そもそも時効期間が改正前民法によるか現行民法によるかは,債権の発生時期等で決まる別の問題であり(同条1項・4項),消滅時効は改正前民法と改正後民法のどちらで判断するか―附則10条・35条の経過措置と振り分け表で扱う。

2 旧法判例の読み替え

改正前民法の下での時効中断に関する判例を現行法の下で使うときは,その判例が中断のどの効果について述べたものかを確かめる必要がある。
たとえば,最高裁判所第一小法廷平成25年6月6日判決(平成24年(受)第349号,民集67巻5号1208頁)は,数量的に可分な債権の一部についてのみ判決を求める旨を明示して訴えが提起された場合,特段の事情のない限り,その訴えの提起は残部について裁判上の催告として(改正前民法の下での)時効中断の効力を生じ,訴訟の終了後6か月以内に改正前民法153条所定の措置を講ずることにより残部について時効を確定的に中断することができるとした。
同判決は,消滅時効期間が経過した後,その経過前にした催告から6か月以内に再び催告をしても,第1の催告から6か月以内に所定の措置を講じなかった以上は,第1の催告から6か月を経過することにより消滅時効が完成するとも判示している。
現行法の下では,「裁判上の催告」は完成猶予の問題として,再度の催告の扱いは民法150条2項の問題として読み替えることになる。
明示的一部請求の残部については,民法147条1項の「裁判上の請求」に当たるか,民法150条の催告に準ずるものとみるかという問題が残り,訴えの提起と時効の完成猶予・更新―明示的一部請求,訴えの取下げ及び訴えの変更で扱う。

3 条番号のずれ

改正の前後で,同じ条番号が別の内容を定めている箇所が多いから,旧法判例や古い文献を読むときは条番号をそのまま現行法に当てはめない。
①改正前民法147条は中断事由の列挙であり,現行民法147条は裁判上の請求等による完成猶予及び更新である。
②改正前民法148条は中断の効力が及ぶ者の範囲であり,現行民法では153条がこれに当たる。
③改正前民法149条は裁判上の請求(訴えの却下・取下げ)であり,現行民法149条は仮差押え・仮処分である。
④改正前民法153条は催告であり,現行民法153条は完成猶予・更新の効力が及ぶ者の範囲である。
⑤改正前民法155条は差押え等を時効の利益を受ける者に対してしない場合の通知であり,現行民法では154条がこれに当たる。
⑥改正前民法156条は承認に行為能力等を要しないとする規定であり,現行民法では152条2項がこれに当たる。

第7 関連記事

消滅時効全体の見取り図は,消滅時効に関するメモ書きにある。
完成猶予・更新の個別の事由については,内容証明による催告と協議を行う旨の合意―6か月の完成猶予,再度の催告及び民法151条の使い方訴えの提起と時効の完成猶予・更新―明示的一部請求,訴えの取下げ及び訴えの変更強制執行・財産開示手続と時効の完成猶予・更新―差押えの了知不要,申立ての取下げ及び配当要求債務の承認による時効の更新―一部弁済,破産管財人の承認及び相続人への通知及び判断能力を欠く人に対する時効の完成猶予―民法158条の類推適用と最高裁平成26年3月14日判決で扱う。
仮差押えについては,仮差押えと差押えの違い―処分禁止の効力,時効の完成猶予及び破産手続開始による失効及び仮差押えとは―要件・手続の流れ・担保・効力・解放金・担保の取戻しの全体像がある。
新旧民法の振り分けは,消滅時効は改正前民法と改正後民法のどちらで判断するか―附則10条・35条の経過措置と振り分け表で扱う。

第8 出典・参考資料

1 法令

①民法(明治29年法律第89号)140条,143条,145条,147条~154条,158条~161条,166条,169条,441条,457条,458条(e-Gov法令検索で現行条文を確認)
②改正前民法(令和2年3月31日時点)147条~161条,434条,457条,458条(e-Gov法令検索の時点指定で確認)
③民法の一部を改正する法律(平成29年法律第44号)附則10条(e-Gov法令検索で確認)
④民事訴訟法(平成8年法律第109号)147条,275条
⑤民事調停法(昭和26年法律第222号)19条
⑥家事事件手続法(平成23年法律第52号)272条
⑦裁判外紛争解決手続の利用の促進に関する法律(平成16年法律第151号)25条
⑧仲裁法(平成15年法律第138号)29条

2 裁判例

①最高裁判所第一小法廷平成25年6月6日判決(平成24年(受)第349号,民集67巻5号1208頁)裁判所ウェブサイト

3 公的資料

①法務省民事局「民法(債権関係)の改正に関する説明資料-主な改正事項-」7頁~11頁 法務省ウェブサイト