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M&A後に売主経営者が残るとき―取締役・顧問・従業員の違い,任期,権限及び退任条件(AI作成)

中小企業M&Aでは,顧客・従業員・技術の引継ぎのため,売主経営者がクロージング後も一定期間関与することがある。
しかし,「当面残る」とだけ合意すると,権限,報酬,終了時期及び責任が曖昧になり,新経営陣との対立や労働者性をめぐる紛争につながる。
本記事では,取締役,顧問及び従業員の違いと,契約で定めるべき事項を整理する。

第1 残留の目的と期間を先に決める

残留の目的は,顧客紹介,技術承継,許認可要件の維持,従業員の不安軽減又は買主への経営引継ぎ等,案件ごとに異なる。
目的を具体化すれば,必要な地位,権限,執務日数及び期間を選びやすい。

「必要な期間」や「当面」とせず,開始日,終了日,中間評価日及び延長方法を定める。
引継ぎ項目を別紙にし,完了基準を設ける方法も有効である。

第2 取締役として残る場合

1 会社法上の地位を理解する

会社法330条により,会社と役員との関係は委任に関する規定に従う。
取締役は,単なる助言者ではなく,会社法上の権限・義務を負う機関であるため,担当業務が狭くても取締役としての責任が当然に消えるわけではない。

代表権を残すか,業務執行権限をどこまで持たせるか,取締役会・株主総会との関係を明確にする。
対外的に代表者と誤認される肩書や名刺・ウェブサイト表示も見直す必要がある。

2 退任条件を契約期間と混同しない

会社法339条1項により,役員は株主総会の決議によっていつでも解任できる。
同条2項は,正当な理由がなく任期満了前に解任された役員の損害賠償請求を定めるため,M&A契約上の在任合意があっても,会社法上の解任可能性と損害処理を分けて考える必要がある。

在任期間,辞任事由,解任時の報酬・補償,競業避止の開始時期及び引継ぎ未了時の扱いを定める。
辞任届をクロージング時に預ける方法を採る場合は,使用条件と本人の意思を明確にし,無限定に利用できる状態にしない。

第3 顧問として残る場合

1 助言業務と権限を限定する

顧問には会社法上の機関としての権限がないため,契約で業務内容を定める。
顧客紹介,月例会議,技術相談,従業員説明等の具体的業務,稼働日数,報告先,会社を代理する権限の不存在及び秘密保持を記載する。

顧問が従業員へ直接指示し続けると,新しい指揮命令系統が機能しない。
助言はPMI責任者を通じて行うなど,意思決定権者を一本化する。

2 準委任契約の終了を設計する

顧問契約は,業務内容によって委任又は準委任として扱われることが多く,民法651条は各当事者がいつでも委任を解除できることを原則とする。
一定期間の関与を期待する場合でも,解除を全面的に禁止するだけでなく,予告期間,解除事由,報酬精算,引継ぎ及び損害の扱いを具体化する必要がある。

株式又は事業の譲渡対価を,実態のない高額な顧問報酬として後払いする設計は避ける。
譲渡対価と実際の役務への報酬を区別し,税務上の取扱いも専門家に確認する。

第4 従業員として残る場合

1 肩書ではなく実態で整理する

役員を退任して雇用契約を締結し,会社の指揮監督下で働いて賃金を受ける場合,労働関係法令の適用が問題となる。
労働基準法9条は,職業の種類を問わず,事業に使用される者で賃金を支払われる者を労働者と定義する。

「顧問」等の名称だけで労働者性が否定されるわけではない。
勤務時間・場所,業務指示,報酬の性質,代替可能性及び組織への組込み等の実態に応じて判断される。

2 雇用終了は自由ではない

従業員となれば,期間の定め,配置転換,労働時間,社会保険及び退職条件を雇用契約で定める。
解雇は,客観的に合理的な理由を欠き,社会通念上相当でない場合には無効となる(労働契約法16条)。

短期の引継ぎを目的とするのに,期間・業務を定めない無期雇用とすると,M&A契約で想定した終了時期に退職を実現できないことがある。
雇用を選ぶ必要性と,期間満了・更新・退職の条件を慎重に設計する。

第5 共通して定めるべき事項

項目主な内容
目的顧客,技術,許認可,従業員又は経営の引継ぎ
期間開始日,終了日,延長,評価時期
役割具体的業務,成果物,稼働日数
権限代理権,決裁権,人事権,指揮命令の有無
報告報告先,会議,記録,利益相反時の対応
報酬金額,費用,日割り,譲渡対価との区別
終了辞任,解任,解除,退職,予告,精算
保護秘密保持,知的財産,競業避止,勧誘禁止

競業避止義務の開始時期は,在任・在職期間と重複しないかを確認する。
終了後から一定期間とする場合は,対象事業,地域,行為及び例外を具体化し,過度な制約とならないようにする。

第6 M&A契約と個別契約を整合させる

M&A契約には,売主経営者の地位,予定期間,個別契約締結,辞任書類,クロージング条件及び競業避止の大枠を定める。
具体的な業務,報酬,稼働,権限,解除及び秘密保持は,役員委任契約,顧問契約又は雇用契約で詳細に定める。

両契約で期間,解除事由又は損害賠償期間が食い違うと,片方の義務だけが残ることがある。
締結当事者も,買主,対象会社及び売主経営者のうち誰かを明確にし,義務の主体を取り違えないようにする。

第7 PMIでは旧経営者の敬意と新体制を両立させる

売主経営者の経験や顧客関係を尊重することは,従業員の安心と引継ぎに役立つ。
同時に,最終決定権と報告先を曖昧にすると,従業員が旧経営者と新経営者のどちらに従うか迷う。

従業員説明では,旧経営者の役割と期限,新しい責任者及び相談経路を明確に伝える。
引継ぎの完了を段階的に確認し,予定期間が終わったときに円滑に退任・契約終了できる設計が重要である。

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