第1 この記事の対象と結論
本記事は,平成29年司法試験の民事系第3問(民事訴訟法)を対象に,法務省の出題の趣旨及び採点実感から評価項目を抽出し,模範解答と解説を示すものです。
評価項目と重みは記事独自の分析であり,法務省の公式採点基準,配点又は合格可能性の推計ではありません。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 対象問題 | 平成29年司法試験・民事系科目の問題のPDF12〜14頁,第3問 |
| 答案の基準時 | 平成29年5月18日(当該科目の試験日) |
| 公式資料 | 出題の趣旨のPDF11〜13頁及び採点実感のPDF16〜23頁を実読 |
| 中心となる事項 | 主張原則,訴訟物,追加的変更,申立拘束,引換給付判決の既判力と信義則 |
| 評価項目・重み | 34項目,重み5は10項目,重み合計131 |
| 答案分量 | 見出しを含む答案本文4332字(空白・改行を含む)。上限5000字以内 |
| 主要な裁判例 | 最高裁昭和33年7月8日判決,昭和35年5月24日判決,昭和39年2月4日判決。書誌・原文は第7参照 |
| 試験後の改正 | 当時の民訴法・民法・民事執行法の施行済み版を使用し,後の改正を答案に遡及させない |
| 確認日 | 令和8年10月27日 |
答案は,贈与と売買の契約上の引渡請求権を別の訴訟物とする立場を採ります。
設問1は代理の主要事実を釈明してから判断する構成,設問2は必要な請求追加・抗弁を経て220万円又は180万円との引換給付を認める構成,設問3は既判力及び信義則を検討して後訴の再審理を認める構成です。
別の構成を排除する趣旨ではなく,判断理由と事実評価を一貫させることが必要です。
第4で全評価項目,第5で答案と対応・解説,第7で資料と確認状態を示します。
第2 評価項目の示し方と重み付けの基準
1 評価項目の示し方
各項目は,一つの判定対象を示すよう公式資料から独自に抽出しました。
出典欄の頁はPDFの先頭から数えた頁であり,印刷された頁番号と異なる場合があります。
評価項目本文は記事独自の要約です。
出典欄は関連原文の短い抜粋であり,PDF抽出上の改行は省略しています。
原文からの推論である箇所は「間接」と明記し,該当する設問又は採点実感の節も区別しています。
「記載なし」は当該問題の関連範囲を実読した結果を示します。
注意項目も同じ1〜5で重み付けし,別枠の減点にしません。
条件付きの項目は明記した構成を採る場合だけ評価し,不採用の構成を全答案に累積要求しません。
2 5段階の重み付けの基準
| 重み | 判断基準 |
|---|---|
| 5 | その設問の判断を大きく分ける核心 |
| 4 | 結論を理由付きで支える主要な論証・当てはめ |
| 3 | 通常押さえる法的処理・事情の評価 |
| 2 | 論証を補強する説明・個別事情・誤りの注意 |
| 1 | 補充的な引用・記述範囲の確認 |
両公式資料に登場する件数だけで重みを決めず,各項目の役割から個別に判断しています。
重み5は結論への経路を大きく分ける事項,重み4はその結論を支える論証や当てはめです。
第3 本問の概要
1 問題文と事実関係
Xは贈与契約に基づきYへ浮世絵版画の引渡しを求め,Yは時価相当額を代金とする売買であり300万円であると主張しました。
Xは売買だとしても時価は200万円と述べました。
証人AはYの代理人として契約したと証言しましたが,両当事者は代理の点を問題にしませんでした。
その後,200万円との引換給付判決が確定し,YがXへ代金200万円を請求する後訴では,Xが贈与であったこと,又は仮に売買でも時価相当の代金額は150万円であることを主張しています。
2 設問が求めること
| 設問 | 立場・対象 | 指定・仮定・除外 | 到達点 |
|---|---|---|---|
| 1 | 修習生PからJ1へ。代理事実の認定 | 証言への当事者の対応を評価する | 判決の基礎にできるかと,必要な対応 |
| 2⑴ | PからJ1へ。申立て・主張 | 訴訟物の立場を明示。売買成立を前提。設問1は除外 | 200万円引換給付判決のための最少の手続・主張 |
| 2⑵ | PからJ1へ。異なる時価 | 前問で必要な申立て・主張がされた前提 | 220万円・180万円それぞれの具体的主文 |
| 3 | 修習生QからJ2へ。後訴の審理 | 前訴引換給付判決確定を前提。主文の趣旨を検討 | 売買の成否と代金額の再審理可否 |
第4 評価項目と重み
1 設問1
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 1 | 主要事実についての主張原則と,資料収集を当事者の責任に委ねる趣旨を説明する。 | 3 | PDF11頁・設問1の関連記述。「主張原則の対象となる事実は少なくとも主要事実を含むと解されている」 | PDF17頁・3の該当設問の関連記述。「主張原則の対象となる事実は少なくとも主要事実を含むと解されている」 |
| 2 | 主要事実を,法律効果を直接基礎付ける実体法上の要件に該当する具体的事実として定義する。 | 3 | 間接(関連記述からの推論)。PDF11頁・設問1の関連記述。「代理の主要事実は何かを明らかにした上で」 | PDF17頁・3の該当設問の関連記述。「主要事実とは何かという点について,触れている答案は必ずしも多くなかった。」 |
| 3 | 代理権授与,顕名及び代理人による意思表示を,意思表示者以外への効果帰属を根拠付ける主要事実として特定する。 | 5 | PDF11頁・設問1の関連記述。「代理の主要事実は何かを明らかにした上で」 | PDF17頁・3の該当設問の関連記述。「代理権の授与,顕名及び代理人による意思表示が主要事実となる」 |
| 4 | Aの証言という証拠資料と,当事者による主要事実の主張という訴訟資料を区別する。 | 4 | 間接(関連記述からの推論)。PDF11頁・設問1の関連記述。「証拠上その事実の心証が得られた場合」 | PDF17頁・3の該当設問の関連記述。「訴訟資料と証拠資料の区別が理解できておらず,答案の評価は低いものとなった。」 |
| 5 | 双方が証言中の代理を問題にしなかった事情を,主張原則の存在意義と不意打ち防止の関係から具体的に評価する。 | 5 | PDF11頁・設問1の関連記述。「主張原則との関係をどのように評価するかの検討も必要である。」 | PDF17頁・3の該当設問の関連記述。「不意打ち防止機能を踏まえつつ,代理人による契約締結の事実を認定することの可否を論ずる必要がある。」 |
| 6 | 代理の未主張認定に関する先例の結論・理由を示し,本件での当事者の対応との同異から自己の立場を説明する。 | 3 | PDF11頁・設問1の関連記述。「最判昭和33年7月8日民集12巻11号1740頁」 | PDF17頁・3の該当設問の関連記述。「結論や理由に言及した上で,自己の立場から何らかの考察をすることも期待される」 |
| 7 | 代理の認定を否定する立場では,そのままの請求棄却による不意打ちにも目を向け,必要な釈明の内容を示す。【適用条件】代理事実を現状では判決の基礎にできない立場を採る場合。 | 2 | 記載なし(第3問関連範囲を実読)。 | PDF17頁・3の該当設問の関連記述。「釈明権を行使すべきであることに付言した答案も少数ながら見られ,このような答案は一定の評価をした。」 |
2 設問2⑴
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 8 | 246条の申立拘束原則を,訴訟物の異同を検討する入口として示す。 | 4 | PDF11頁・設問2⑴の関連記述。「申立拘束原則(民事訴訟法第246条)」 | PDF18頁・3の該当設問の関連記述。「申立拘束原則及びその根拠条文を指摘していた」 |
| 9 | 訴訟物理論を理由付きで選び,本件の贈与契約に基づく引渡請求権と売買契約に基づく引渡請求権の異同を説明する。 | 5 | PDF12頁・設問2⑴の関連記述。「どのような立場でも,論理的に筋が通った答案が展開されていれば同様に評価した。」 | PDF18頁・3の該当設問の関連記述。「訴訟物の捉え方を示すことが求められる。」 |
| 10 | 契約ごとに訴訟物を分ける立場では,Xが売買に基づく引渡請求を予備的に追加する訴えの変更を明確に求める。【適用条件】贈与と売買の契約上請求権を別訴訟物とする立場。 | 5 | PDF12頁・設問2⑴の関連記述。「売買契約に基づく本件絵画の引渡請求を追加的に併合する訴えの変更」 | PDF18頁・3の該当設問の関連記述。「追加的に併合する訴えの変更(民事訴訟法第143条)の申立てがされることが必要となる」 |
| 11 | 追加的変更について,同一取引・絵画・共通する審理を用いて請求の基礎の同一性と著しい遅滞の有無を検討する。【適用条件】訴えの追加的変更を要する立場。 | 4 | 間接(関連記述からの推論)。PDF12頁・設問2⑴の関連記述。「訴えの変更(民事訴訟法第143条)の申立てがされることが必要となる。」 | PDF18頁・3の該当設問の関連記述。「請求の基礎に変更がないといえるかなどといった要件該当性」 |
| 12 | 請求追加の書面性について143条2・3項を検討し,請求の趣旨を変更せず請求原因だけを変更する場合の書面不要の先例を本件と比較する。【適用条件】訴えの追加的変更を要する立場。 | 2 | 記載なし(第3問関連範囲を実読)。 | PDF18頁・3の該当設問の関連記述。「最判昭和35年5月24日民集14巻7号1183頁」 |
| 13 | Yの売買・代金額の主張を,贈与に基づく請求原因に対する積極否認として整理する。 | 4 | PDF12頁・設問2⑴の関連記述。「それぞれ否認か自白かを整理するとともに」 | PDF19頁・3の該当設問の関連記述。「Yの主張が上記①の否認に当たると正しく論じていた」 |
| 14 | Yの既存の売買主張を,予備的な売買の各請求原因事実に対する自白又は否認として整理し直す。 | 4 | PDF12頁・設問2⑴の関連記述。「予備的な請求原因又は主張(売買)を構成する各事実との関係で」 | PDF19頁・3の該当設問の関連記述。「上記②との関係についてまで適切に解答した答案は多くはなかった。」 |
| 15 | Yが代金の履行提供を受けるまで引渡しを拒む同時履行の抗弁権を権利主張することを必要とする。 | 5 | PDF12頁・設問2⑴の関連記述。「Yから権利抗弁である同時履行の抗弁権の主張が明確にされる必要がある」 | PDF19頁・3の該当設問の関連記述。「抗弁権の権利主張が必要である旨の指摘までできたものは必ずしも多くなく」 |
| 16 | 同時履行はYが主張する権利抗弁であるため,Xの追加する給付請求に200万円引換えという限定を付す必要がないと説明する。 | 3 | PDF12頁・設問2⑴の関連記述。「限定を付す必要はなく,単純に,売買契約に基づき本件絵画の引渡しを求める」 | PDF19頁・3の該当設問の関連記述。「Yから権利抗弁である同時履行の抗弁権の主張を明確にすべきこと」 |
| 17 | 【注意】引換給付判決を得るための同時履行の抗弁と,代金の積極的支払を命ずる反訴を混同しない。 | 2 | 間接(関連記述からの推論)。PDF12頁・設問2⑴の関連記述。「同時履行の抗弁はYから主張することを要する権利抗弁」 | PDF19頁・3の該当設問の関連記述。「反訴に対する請求認容判決の主文を意識することなく,出題趣旨から離れた解答をしたものと考えられる。」 |
3 設問2⑵
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 18 | 請求の趣旨が単純な絵画引渡しであることを起点に,引換給付を質的一部認容として検討する。 | 4 | PDF12頁・設問2⑵の関連記述。「請求の趣旨としては単純に本件絵画の引渡しを求めるもの」 | PDF20頁・3の該当設問の関連記述。「請求の趣旨としては単純に本件絵画の引渡しを求めるもの」 |
| 19 | 220万円の場合,200万円の価格主張と絵画を取得するXの合理的意思を区別し,その意思に反しないかを具体的に評価する。 | 4 | PDF12頁・設問2⑵の関連記述。「上記の引換給付判決も基本的にはXの合理的意思に反しない」 | PDF20頁・3の該当設問の関連記述。「Xの意思に反せず,Yにも不意打ちにならない」 |
| 20 | 220万円の場合,Yが300万円の抗弁を出したことを踏まえ,敗訴リスクの上限と不意打ちの有無を評価する。 | 4 | PDF12頁・設問2⑵の関連記述。「被告の敗訴リスクの上限を画するという意義」 | PDF20頁・3の該当設問の関連記述。「220万円という金額が両当事者の主張する金額の間にあり」 |
| 21 | 220万円自体が未主張である点を,時価相当額を代金とする合意と具体的評価額の違いから検討し,その認定の可否を理由付きで論ずる。 | 5 | PDF12頁・設問2⑵の関連記述。「220万円や180万円という金額自体は両当事者とも主張していない」 | PDF20頁・3の該当設問の関連記述。「申立拘束原則の観点からだけでなく,設問1と同様の弁論主義の観点からも検討が必要」 |
| 22 | 180万円の場合,200万円より少額の反対給付で絵画を得られることがXの意思に反するかを評価する。 | 4 | PDF12頁・設問2⑵の関連記述。「180万円はその間にはない(Xの主張額より更にXに有利である。)」 | PDF20頁・3の該当設問の関連記述。「Xの主張する代金額よりXに有利である180万円」 |
| 23 | 180万円の場合,Xの主張額を下回る給付がYの予測可能性を害するかを,時価争点への審理参加から評価する。 | 4 | PDF12頁・設問2⑵の関連記述。「Yの敗訴リスクの関係では,時価相当額が220万円又は180万円のいずれと判断されるかにより評価が分かれる可能性」 | PDF20頁・3の該当設問の関連記述。「Yの予測可能性を害するため,Xの主張する200万円との引換給付判決にとどめるべきであるとしていた」 |
| 24 | 180万円自体が未主張である点につき,時価相当額とする合意の同一性,金額差及び主張・証拠提出機会から認定可否を論証する。 | 5 | PDF12頁・設問2⑵の関連記述。「時価相当額の評価が分かれているにすぎない」 | PDF20頁・3の該当設問の関連記述。「弁論主義の観点からの検討が必要となる」 |
| 25 | 【注意】両者が同じ売買代金額を認めていないのに,200万円以上・300万円以下の数値範囲について一部自白が成立するとしない。 | 4 | 間接(関連記述からの推論)。PDF12頁・設問2⑵の関連記述。「時価相当額を代金額とすることにつき主張が一致しており」 | PDF20頁・3の該当設問の関連記述。「売買契約における代金額の意義及び裁判上の自白の意義について,十分な理解ができていないように思われる。」 |
| 26 | 220万円・180万円の各場面について,採用した理由に対応する具体的な判決主文を示す。 | 3 | 間接(関連記述からの推論)。PDF12頁・設問2⑵の関連記述。「220万円又は180万円との引換給付判決をすることの可否」 | PDF20頁・3の該当設問の関連記述。「それぞれどのような判決をすることになるのかが問われている」 |
4 設問3
| 番号 | 評価項目 | 重み | 出題の趣旨 | 採点実感 |
|---|---|---|---|---|
| 27 | 114条1項の主文に包含するものを訴訟物の判断と捉え,前訴の引渡請求と後訴の代金支払請求の異同から既判力を検討する。 | 5 | PDF12頁・設問3の関連記述。「「主文に包含するもの」とは一般的に訴訟物と理解されている」 | PDF21頁・3の該当設問の関連記述。「既判力が訴訟物についての判断に生ずる」 |
| 28 | 旧訴訟物理論の下で主位的な贈与引渡請求棄却の既判力も特定し,贈与不成立という理由判断へ拡張しない。【適用条件】贈与と売買を別訴訟物とし,主位贈与請求を棄却した構成。 | 4 | 間接(関連記述からの推論)。PDF12頁・設問3の関連記述。「設問2⑴における前訴の訴訟物の捉え方を前提にして」 | PDF21頁・3の該当設問の関連記述。「主位的請求を棄却した判決の既判力について論じた答案は稀であった。」 |
| 29 | 引換給付の記載は,双務契約の牽連性を執行にも及ぼし,反対給付又はその提供の証明を執行開始条件とする趣旨だと31条1項に結び付けて説明する。 | 5 | PDF13頁・設問3の関連記述。「債権者が反対給付又はその提供をしたことを証明したときに限り強制執行を開始することができること」 | PDF21頁・3の該当設問の関連記述。「債権者が反対給付又はその提供をしたことを証明したときに限り強制執行を開始することができること」 |
| 30 | 引換給付部分はYに代金の執行名義を与えるものではなく,反対債権の存在・数額に当然に既判力を生じさせないと説明する。 | 4 | 間接(関連記述からの推論)。PDF13頁・設問3の関連記述。「既判力又はこれに準ずる効力等の拘束力が導かれるというわけではない」 | PDF21頁・3の該当設問の関連記述。「その代金額の支払につき強制執行の申立てができたわけではない」 |
| 31 | 既判力に準ずる効力を検討する場合は,限定承認の留保付判決と本件の制度・手続保障の違いを比較して結論を出す。【適用条件】既判力に準ずる効力の構成を採用又は具体的に検討する場合。 | 2 | 記載なし(第3問関連範囲を実読)。 | PDF22頁・3の該当設問の関連記述。「この判例と本件の事案とを比較しつつ,既判力に準ずる効力の有無について論ずる答案などは一定の評価をした」 |
| 32 | 既判力否定後も,Xの予備的主張と自己の200万円評価,前訴の不可欠な争点,Yの反訴可能性の双方を踏まえて信義則による主張制限を判断する。 | 5 | PDF13頁・設問3の関連記述。「前訴において反訴を提起することができた」 | PDF22頁・3の該当設問の関連記述。「後訴におけるXの主張が許されるという方向の事情も掲げて,これらの事情を比較衡量する答案は極めて少なかった」 |
| 33 | 前訴が本人訴訟で第一審確定したこと,後訴に至る事情と新たな資料を,信義則の当てはめに位置付ける。 | 4 | PDF13頁・設問3の関連記述。「前訴が本人訴訟であり第一審で判決が確定していること」 | PDF22頁・3の該当設問の関連記述。「具体的な事情の検討が極めて重要である」 |
| 34 | 争点効を用いる場合は,その要件を具体的に特定して本問へ当てはめ,争点だったというだけで拘束を認めない。【適用条件】争点効を根拠として拘束を認める構成を採る場合。 | 2 | 記載なし(第3問関連範囲を実読)。 | PDF22頁・3の該当設問の関連記述。「その要件を掲げて具体的に当てはめを行う答案は,ほとんどなかった。」 |
5 重みの分布
重み1は0項目,重み2は5項目,重み3は5項目,重み4は14項目,重み5は10項目です。
総項目数は34,重みの合計は131です。
重み5は番号3・5・9・10・15・21・24・27・29・32です。
代理の主要事実と証言への対応,訴訟物と請求追加,権利抗弁,両金額についての主張原則,前後訴の訴訟物,引換給付の執行上の趣旨及び信義則の具体的比較が判断経路を分けるためです。
重み合計は公式得点ではなく,番号31・34など採用しない条件付き構成を一つの答案に要求する数値でもありません。
第5 模範解答
1 答案の前提と表記
試験当時の法令を基準とし,条番号のみの表記は民事訴訟法を指します。
訴訟物は契約ごとの実体的請求権を区別する立場です。
答案中の「判例」は,第7記載の原文を確認した最高裁判決を指し,本件への適用や批判は答案の独自の検討です。
2 答案
1 設問1
(1)民事訴訟では,私的自治を訴訟面に反映して,裁判の基礎となる資料の収集を当事者の権限と責任に委ねる弁論主義が妥当する。その一環として,当事者が主張しない主要事実を裁判所が判決の基礎にすることは許されない。当事者に攻撃防御の機会を保障し,不意打ちを防ぐ趣旨もある。
主要事実は,実体法上の法律効果を直接基礎付ける要件に該当する具体的事実である。代理は,意思表示者以外の本人に効果を帰属させる制度であるから,代理人による意思表示,顕名及び代理権授与は主要事実となる。本件では,Y本人との契約の主張と,AがYの代理人として契約したという事実とを区別しなければならない。
(2)判例は,本人と代理人のいずれが契約しても法律効果に変わりがないとして,当事者本人間の契約が主張された場合に代理人による締結を認定しても弁論主義に反しないとする。また,その事案では代理に言及した供述が当事者に援用されていた。
確かに,本件でもAの証言を双方が聞き,代理について争わなかったから,防御の機会があり,代理の事実も審理に取り込まれたと評価する余地はある。しかし,同じ法律効果が生じることだけでは,代理権や顕名を争う必要がないことにはならない。本件では争点が贈与か売買か及び代金額へ絞られ,訴訟代理人もいない。代理を問題にしなかったことが,代理の要件事実を主張・援用する意思を意味するとは限らない。
証言は証拠資料であって訴訟資料そのものではなく,沈黙だけで当事者の主張やその一致を補うべきではない。そこで,現状のまま直ちに代理の事実を判決の基礎とすることは否定する。他方,主張がないとの理由だけで契約不成立として請求を棄却することも,当事者にとって不意打ちとなり得る。J1は149条1項により,Aによる締結,顕名及び代理権について主張・認否を明確にさせ,必要な反証の機会を与えた上で判断すべきである。
2 設問2⑴
(1)246条は,当事者が申し立てていない事項についての判決を禁ずる。私的自治に由来する原告の審判対象選択を尊重し,被告にも防御すべき対象と敗訴リスクの範囲を示すためである。
訴訟物は,実体法上の個々の請求権ごとに区別する立場を採る。贈与と売買は発生要件の異なる契約上の請求権であり,本件の当初の訴訟物は,贈与契約に基づく絵画引渡請求権だけである。売買に基づく請求権は別の訴訟物だから,Yが売買を主張しただけで当然に審判対象にはならない。
(2)Xからは,贈与に基づく主位的請求が認められない場合に備えて,売買に基づく絵画引渡請求を予備的に追加する訴えの変更をする必要がある。「仮に売買なら時価は200万円」という既存の陳述は,売買でも給付を求める意思を示す可能性はあるが,単なる仮定的な反論とも解し得る。J1は本人訴訟であることも踏まえて釈明し,この請求追加と,絵画を時価相当額で売買する合意の主張を明確にさせるべきである。
両請求は同じ当事者間の同一絵画の取引に基づき,紛争の基礎を共通にする。既に贈与・売買の別と代金額が審理されているので,請求の基礎に変更がなく,著しい遅滞も生じず,143条1項の変更を許すことができる。
同条2項は請求の変更を書面ですると定めるが,判例は,所有権に基づく明渡請求から使用貸借終了に基づく明渡請求へ原因を変更した事案で,請求の趣旨を変えず原因のみを変更する場合は書面を要しないとする。本件は予備的追加という違いがあるものの,同じ絵画の単純な引渡しを求める趣旨は変わらず,給付の原因を追加する点では共通する。そのため,本件にもこの取扱いが及び,追加の申立てを口頭弁論で明確にすれば足りると解する。この場合,3項による変更書面の送達も要しない。別の訴訟物となることだけから書面を要するとはいえない。
同時履行は被告が提出する権利抗弁であるから,Xが自ら200万円との引換えという限定を付す必要はない。予備的にも単純な絵画引渡しを求めればよい。
(3)Yの「贈与でなく売買」という主張は,主位的な贈与の請求原因に対し,特に無償で譲渡する合意を争う積極否認であり,抗弁ではない。他方,予備的な売買請求との関係では,絵画を時価相当額で譲渡する合意を認める点は請求原因事実に対する自白となるが,時価200万円という評価については否認となる。同じ陳述でも,対象とする請求原因の各事実との関係で位置付けを分ける。
さらにYから,代金の履行の提供を受けるまで絵画引渡しを拒む旨の同時履行の抗弁権の権利主張が必要である(民法533条)。従前の引渡拒絶の陳述についても,単に贈与を否認した趣旨か,売買に基づく請求に対する権利行使も含むかを明確にさせる必要がある。代金債権が存在するだけで裁判所が職権で引換給付を命じてはならない。ここではYに代金支払の執行名義を与えるわけではないから,反訴の提起は必要ない。
(4)以上の申立て・主張がされ,売買代金が200万円と認められれば,主位的請求を棄却し,予備的請求につき,「Yは,Xから200万円の支払を受けるのと引換えに,Xに対し,本件絵画を引き渡せ。」との判決をすることができる。
3 設問2⑵
(1)申立拘束原則
前問で追加されるのは単純な絵画引渡請求であり,200万円との引換給付に申立て自体を限定するものではない。引換給付は無条件給付に制限を付す質的一部認容であるが,その可否はXの意思の尊重とYへの不意打ち防止の双方から検討する。
220万円の場合,Xは無償取得が認められなくても売買による引渡しを予備的に求めている。200万円という価格評価だけで,それを少しでも超えるなら取得しないとの意思を示したとはいえず,220万円との引換給付はXの合理的意思に反しない。Yも300万円の代金債権による履行拒絶を主張しており,両者の評価額の間にある220万円の抗弁を認めることは,その防御の範囲内で,不意打ちとならない。
180万円の場合も,Xは,200万円との引換えより少ない出捐で絵画を得られるので,その意思に反しない。他方,Yについては,Xの主張額を下回るため,200万円分は引渡しを拒めるとの期待を害するとの反論がある。しかし,本件で争われたのは,代金を時価とする共通の合意の下でその時価が幾らかである。Yも時価の評価について主張立証しており,200万円から大きく離れない180万円への評価の変動を,当然に予測不能と扱うべきではない。必要な釈明・反証の機会を確保すれば,Yの防御を害しないと解する。
(2)弁論主義
売買の代金を定める合意とその具体的金額は,同時履行の抗弁を基礎付ける主要事実であり,具体的時価を単なる間接事実としたり,その認定を裁判所の自由裁量に委ねたりすることはできない。双方が220万円又は180万円という金額自体を主張していない以上,申立拘束原則とは別に,主張原則との関係が問題となる。
もっとも,本件は,200万円又は300万円という確定額で合意したという別々の契約事実の主張ではなく,時価相当額を代金とする合意の主張は共通し,その具体的評価が異なる。両額ともXの主張額とかけ離れず,同じ時点の同じ絵画の時価として審理される点を踏まえると,別の価格合意を持ち込む場合とは異なる。ただし,これらの事情だけで未主張額を当然に認定できるとはせず,特に180万円についてはYの予測可能性にも配慮し,具体額に関する主張・反証の機会を確保する必要がある。その上で,本件の両額の認定は当事者の主張の枠内のものとして許されると解する。
また,両者は具体的金額について一致していないので,代金が200万円以上又は300万円以下であることにつき裁判上の自白が成立したと扱うことはできない。
(3)したがって,主位的な贈与請求を棄却した上で,予備的請求について,時価220万円なら「Yは,Xから220万円の支払を受けるのと引換えに,Xに対し,本件絵画を引き渡せ。」,時価180万円なら,その反対給付額を180万円とする同旨の判決をする。
4 設問3
(1)114条1項の「主文に包含するもの」とは,主文に文字として現れる全事項ではなく,訴訟物である権利・法律関係の存否の判断をいう。判決理由中の先決問題まで一般に拘束すると,審判対象を過度に拡張し,当事者の手続保障を害するからである。
前訴では,贈与に基づく引渡請求を棄却し,売買に基づく引渡請求につき引換給付を命じたから,それぞれの請求権の不存在・存在について既判力が生じる。しかし,贈与不成立という理由中の判断に独立の既判力が生じるものではない。後訴の訴訟物はYのXに対する売買代金支払請求権であり,前訴の各引渡請求権と同一でも,その存否だけで後訴の結論が決まる関係でもない。
(2)引換給付の記載は,双務契約の牽連性を執行段階でも保障するためのものである。民事執行法31条1項により,Xが反対給付又はその提供をしたことを証明したときに限り,前訴判決に基づく強制執行を開始できることを主文に示している。Yに代金支払の執行名義を与えたわけではない。
反対債権の存否・数額は抗弁についての判断であり,訴訟物ではないから,主文に200万円と記載されていても当然に既判力を有しない。民事訴訟法114条2項の相殺に関する特例にも当たらない。したがって,既判力によって売買の成否・代金額の再審理が禁じられるわけではない。
(3)もっとも,既判力が及ばないことと,信義則(2条)による主張制限がないことは別である。Xは前訴で予備的に売買を主張し,自ら200万円と評価して有利な給付判決を得た。売買の成否・代金額は引換給付に不可欠な争点であり,経営悪化によって取得意欲を失った後の主張変更は,Yの期待を害する方向に働く。
他方,Yは前訴で反訴を提起し,代金債権について既判力ある判断と執行名義を得ることができた。本人訴訟のXが第一審で確定した給付判決を得たことだけから,反対債権についても将来の争いを放棄したとはいえない。新たなBの証言見込みや古物商の評価もあり,前訴の予備的な評価をそのまま後訴での争いの禁止へ転化することは,相当でない。
本件では,前訴判決の射程を超えるYの信頼を当然に保護し,Xの主張を全て信義則で遮断すべき事情までは認め難い。よって,後訴で売買の成否及び代金額を審理・判断することができ,前訴判決だけを理由に直ちに請求認容判決をすべきではない。
以上
3 出題の趣旨・採点実感を踏まえた解説
(1) 答案と評価項目の対応
答案の1は番号1〜7,2は8〜17,3は18〜26,4は27〜34に対応します。
番号1・2は代理の主要事実性の前提,16・17は申立てと抗弁・反訴の分担,26は具体的主文の回収に対応します。
第4の重み5・4の項目及び条件付きの項目について,模範解答との対応を次の表に示します。
| 番号 | 重み | 評価項目 | 答案の該当箇所・留保 |
|---|---|---|---|
| 3 | 5 | 代理権授与,顕名及び代理人による意思表示を,意思表示者以外への効果帰属を根拠付ける主要事実として特定する。 | 答案1⑴ |
| 4 | 4 | Aの証言という証拠資料と,当事者による主要事実の主張という訴訟資料を区別する。 | 答案1⑵ |
| 5 | 5 | 双方が証言中の代理を問題にしなかった事情を,主張原則の存在意義と不意打ち防止の関係から具体的に評価する。 | 答案1⑵ |
| 7 | 2 | 代理の認定を否定する立場では,そのままの請求棄却による不意打ちにも目を向け,必要な釈明の内容を示す。【適用条件】代理事実を現状では判決の基礎にできない立場を採る場合。 | 答案1⑵ |
| 8 | 4 | 246条の申立拘束原則を,訴訟物の異同を検討する入口として示す。 | 答案2⑴ |
| 9 | 5 | 訴訟物理論を理由付きで選び,本件の贈与契約に基づく引渡請求権と売買契約に基づく引渡請求権の異同を説明する。 | 答案2⑴ |
| 10 | 5 | 契約ごとに訴訟物を分ける立場では,Xが売買に基づく引渡請求を予備的に追加する訴えの変更を明確に求める。【適用条件】贈与と売買の契約上請求権を別訴訟物とする立場。 | 答案2⑵ |
| 11 | 4 | 追加的変更について,同一取引・絵画・共通する審理を用いて請求の基礎の同一性と著しい遅滞の有無を検討する。【適用条件】訴えの追加的変更を要する立場。 | 答案2⑵ |
| 12 | 2 | 請求追加の書面性について143条2・3項を検討し,請求の趣旨を変更せず請求原因だけを変更する場合の書面不要の先例を本件と比較する。【適用条件】訴えの追加的変更を要する立場。 | 答案2⑵ |
| 13 | 4 | Yの売買・代金額の主張を,贈与に基づく請求原因に対する積極否認として整理する。 | 答案2⑶ |
| 14 | 4 | Yの既存の売買主張を,予備的な売買の各請求原因事実に対する自白又は否認として整理し直す。 | 答案2⑶ |
| 15 | 5 | Yが代金の履行提供を受けるまで引渡しを拒む同時履行の抗弁権を権利主張することを必要とする。 | 答案2⑶ |
| 18 | 4 | 請求の趣旨が単純な絵画引渡しであることを起点に,引換給付を質的一部認容として検討する。 | 答案3⑴ |
| 19 | 4 | 220万円の場合,200万円の価格主張と絵画を取得するXの合理的意思を区別し,その意思に反しないかを具体的に評価する。 | 答案3⑴・220万円の段落 |
| 20 | 4 | 220万円の場合,Yが300万円の抗弁を出したことを踏まえ,敗訴リスクの上限と不意打ちの有無を評価する。 | 答案3⑴・220万円の段落 |
| 21 | 5 | 220万円自体が未主張である点を,時価相当額を代金とする合意と具体的評価額の違いから検討し,その認定の可否を理由付きで論ずる。 | 答案3⑵ |
| 22 | 4 | 180万円の場合,200万円より少額の反対給付で絵画を得られることがXの意思に反するかを評価する。 | 答案3⑴・180万円の段落 |
| 23 | 4 | 180万円の場合,Xの主張額を下回る給付がYの予測可能性を害するかを,時価争点への審理参加から評価する。 | 答案3⑴・180万円の段落 |
| 24 | 5 | 180万円自体が未主張である点につき,時価相当額とする合意の同一性,金額差及び主張・証拠提出機会から認定可否を論証する。 | 答案3⑵ |
| 25 | 4 | 【注意】両者が同じ売買代金額を認めていないのに,200万円以上・300万円以下の数値範囲について一部自白が成立するとしない。 | 答案3⑵末尾 |
| 27 | 5 | 114条1項の主文に包含するものを訴訟物の判断と捉え,前訴の引渡請求と後訴の代金支払請求の異同から既判力を検討する。 | 答案4⑴ |
| 28 | 4 | 旧訴訟物理論の下で主位的な贈与引渡請求棄却の既判力も特定し,贈与不成立という理由判断へ拡張しない。【適用条件】贈与と売買を別訴訟物とし,主位贈与請求を棄却した構成。 | 答案4⑴ |
| 29 | 5 | 引換給付の記載は,双務契約の牽連性を執行にも及ぼし,反対給付又はその提供の証明を執行開始条件とする趣旨だと31条1項に結び付けて説明する。 | 答案4⑵ |
| 30 | 4 | 引換給付部分はYに代金の執行名義を与えるものではなく,反対債権の存在・数額に当然に既判力を生じさせないと説明する。 | 答案4⑵ |
| 31 | 2 | 既判力に準ずる効力を検討する場合は,限定承認の留保付判決と本件の制度・手続保障の違いを比較して結論を出す。【適用条件】既判力に準ずる効力の構成を採用又は具体的に検討する場合。 | 既判力に準ずる効力は採用しない。後記の弱点・扱わなかった事項参照。 |
| 32 | 5 | 既判力否定後も,Xの予備的主張と自己の200万円評価,前訴の不可欠な争点,Yの反訴可能性の双方を踏まえて信義則による主張制限を判断する。 | 答案4⑶ |
| 33 | 4 | 前訴が本人訴訟で第一審確定したこと,後訴に至る事情と新たな資料を,信義則の当てはめに位置付ける。 | 答案4⑶ |
| 34 | 2 | 争点効を用いる場合は,その要件を具体的に特定して本問へ当てはめ,争点だったというだけで拘束を認めない。【適用条件】争点効を根拠として拘束を認める構成を採る場合。 | 争点効は採用しない。後記の弱点・扱わなかった事項参照。 |
(2) 設問1
公式資料は,代理の主要事実を挙げるだけでなく,Aの証言を双方が問題にしなかった事情を,主張原則の趣旨から評価することを求めています。
答案は代理権授与・顕名・意思表示と効果帰属の関係を示し(番号3),判例の許容する理由と供述援用の事情を分けた上で,本人訴訟で争点が他へ集中した本件では沈黙から主張・援用を補わず,釈明で防御機会を確保する構成です(番号5〜7)。
判例と異なる立場を採る以上,法律効果の同一性だけでは個別の攻撃防御機会を代替しないという理由を示しています。
単に「未主張だから認定不可」とだけ書く答案にも,証言をそのまま当事者の主張と扱う答案にもしていません。
(3) 設問2小問1
公式資料は訴訟物理論の名称の正解を一つに固定せず,選んだ立場から必要な申立てと主張を一貫して導くことを求めています。
答案は契約ごとに別訴訟物とする立場から,予備的な売買引渡請求の追加へ進み(番号9〜11),請求の趣旨が同じ場合の書面性を先例に照らして検討しています(番号12)。
Yの陳述は,贈与に対する積極否認と,追加された売買の合意に対する認否を分け,具体的な価格評価まで自白したことにはしていません(番号13・14)。
引換給付判決にはYの同時履行の抗弁権の権利主張が必要であり(番号15),Xが申立てを200万円引換えに限定する必要や,Yが反訴を提起する必要はありません(番号16・17)。
(4) 設問2小問2
公式資料が求めるのは,申立拘束原則と弁論主義の二つの検討です。
請求は単純な引渡しであり,Xの価格主張をそのまま申立上限へ置き換えることはできません(番号18・19)。
220万円についても180万円についても,Xの利益とYの防御上の予測可能性を別に評価しています(番号19・20・22・23)。
また,時価を代金とする共通の合意と,その合意に基づく具体的な評価額の相違を区別しています(番号21・24)。
本記事は,時価の審理における主張立証機会,金額差及び必要な釈明を踏まえて両額の認定を許す立場であり,時価額は主要事実ではないとか,裁判所の自由裁量でいかなる額も選べるとするものではありません。
採点実感は,両評価額の間に自白による上限・下限があるという処理に理解不足を指摘しており,答案もその処理を採りません(番号25)。
180万円を認めない立場を採る場合にも,具体的なYの不利益と,代わりにどの主文とするかを示す必要があります(番号26)。
(5) 設問3
公式資料は,主文に200万円と書かれていることから拘束力を直ちに導くのではなく,前後訴の訴訟物を特定し,引換給付の執行上の意味を説明することを求めています。
答案は主位的贈与請求棄却も含む前訴の審判対象を落とさず(番号27・28),民事執行法31条1項により反対給付又はその提供の証明が執行開始条件となることを示します(番号29・30)。
既判力の否定後に信義則を独立に検討し,Xの先行主張・前訴の争点化・取得意欲の変化に加え,Yの反訴可能性と本人訴訟での第一審確定も比較しています(番号32・33)。
新資料があるというだけで再審理を認めるのでも,蒸し返しという語だけで禁止するのでもなく,本問の手続経過から結論を導く本記事の判断です。
(6) 答案の弱点と扱わなかった事項
設問1で認定を許す構成,設問2小問2でYの期待を重視する構成,設問3で信義則による制限を認める構成も,その理由と事実評価を具体化して検討する余地があります。
本答案の結論を,公式資料が一義的に指定した唯一の正解と扱うことはできません。
限定承認の留保付判決を用いた既判力に準ずる効力の構成(番号31)及び争点効の構成(番号34)は採用していません。
これらは条件付きの発展的検討として表に残し,不採用を答案の欠落又は当然の減点とはしません。
書面性については,同じ請求の趣旨の下で原因を追加する本件に限って論じており,あらゆる訴えの追加的変更が口頭で足りると一般化しません。
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1 同じ年度の司法試験の記事
平成29年司法試験論文式試験の主要7科目の模範解答と評価項目では,同年度の主要7科目を一覧・比較している。
同年度の関連記事は,平成29年司法試験の記事をブログ内で探すから参照できます。
2 同じ科目の別の年度の記事
平成30年司法試験民事系第3問(民事訴訟法)の模範解答と評価項目―40項目と5段階の重み付け(AI作成)を参照できます。
3 本問の論点に関連する山中弁護士ブログの記事
引換給付判決で何が確定するか―同時履行の抗弁,反対債権の既判力,代金回収と強制執行(AI作成)及び反訴か別訴か―重複起訴,併合審理,請求の関連性と債務名義から考える選択(AI作成)を参照できます。
第7 出典及び確認状態
1 公式資料
① 平成29年司法試験・民事系科目の問題:PDF12〜14頁の第3問。
② 平成29年司法試験論文式試験問題出題趣旨:PDF11頁の第3問見出しから13頁の刑事系見出し直前まで。
③ 平成29年司法試験の採点実感(民事系科目):PDF16〜23頁の第3問全体。
④ 平成29年司法試験の実施日程等について:当該科目の実施日を確認。
2 法令
平成29年5月18日時点の施行版をe-Govの公式改正履歴から選んで確認しています。
① 民事訴訟法・当時施行版の公式データ:2条,114条,143条,149条,159条,179条,246条,247条。
② 民法・当時施行版の公式データ:99条,533条,555条。
③ 民事執行法・当時施行版の公式データ:31条1項。
3 裁判例
① 最高裁第三小法廷昭和33年7月8日判決・昭和31年(オ)第764号・民集12巻11号1740頁:代理事実の認定に関する全2頁を実読。
② 最高裁第三小法廷昭和35年5月24日判決・昭和32年(オ)第487号・民集14巻7号1183頁:請求原因の変更と書面性に関する全3頁を実読。
③ 最高裁第三小法廷昭和39年2月4日判決・昭和36年(オ)第1299号・民集18巻2号233頁:反対債権の存否・数額と既判力に関する全3頁を実読。
4 確認状態
問題文,出題の趣旨及び採点実感は,上記の対象範囲を実読済みです。
公式資料の記載,法令・判決原文の確認及び本記事による具体的評価を区別しています。
他問の公式解説及び後発の法令・判例を,本問当時の答案の根拠に使用していません。
採点実感が紹介する全ての発展的な先例を答案の共通要求へ格上げするものではありません。