情報公開請求から30日が過ぎても,直ちに「開示が認められた」「文書が届く期限を過ぎた」と判断することはできない。
まず,開示・不開示の決定をする期限と,決定通知を受け取る時点及び実際に文書の開示を受ける時点を分けて確認する必要がある。
本記事は,国の行政機関に対する情報公開法上の開示請求を扱う。
裁判所の司法行政文書開示手続や地方公共団体の条例上の期限へ,そのまま当てはめるものではない。
第1 原則30日は何の期限か
情報公開法10条1項は,開示決定等を,開示請求があった日から30日以内にしなければならないと定めている。
ここでの「開示決定等」は,開示するかどうかについての決定である。
経済産業省の公式案内は,情報公開窓口に請求書が到達した翌日から数えて30日以内に決定する旨を説明している。
郵送した日,窓口に届いた日及び通知が自分の手元へ届いた日は,同じとは限らない。
開示決定等は書面で通知されるが,決定期限と郵送通知の到達日も区別される。
経済産業省の案内も,決定期限に加えて郵送に数日を要する場合があることを明示している。
第2 補正期間は算入されない
情報公開法4条2項に基づいて補正を求めた場合,補正に要した日数は,30日の期間へ算入しない(同法10条1項ただし書)。
例えば,請求対象が特定できないとして補正を求められた場合は,単に請求書が届いてからの日数だけを数えても,正しい期限にならない。
補正依頼,補正回答及び補正完了の扱いを確認する必要がある。
担当部署との連絡がすべて法定の補正になると決め付けず,どの不備について,同法4条2項の補正として,どの期間を算入しない扱いにしたのかを尋ねる。
補正前の経過日数まで当然に消えて,30日が最初から数え直しになるという説明も,同法10条1項の規定とは異なる。
第3 通常の延長は30日以内
事務処理上の困難その他正当な理由があるときは,行政機関の長は,原則の期間を30日以内に限り延長できる(情報公開法10条2項)。
この場合,行政機関の長は,遅滞なく,延長後の期間及び延長の理由を書面で通知しなければならない。
「延長します」とだけ書かれているかではなく,いつまで延長するのか,何を理由とするのかを確認する。
この規定による延長は,単に担当者の判断で何度でも30日ずつ期限を継ぎ足せる仕組みではない。
もっとも,次の大量請求の特例とは区別する必要がある。
第4 大量請求の特例では残りの決定が60日を超えることがある
情報公開法11条は,対象文書が著しく大量であり,請求から60日以内にすべての決定をすることで事務の遂行に著しい支障が生ずるおそれがある場合の特例を定めている。
この場合,対象文書の相当の部分は60日以内に決定し,残りについては相当の期間内に決定すれば足りるとされる。
したがって,情報公開請求には例外なく60日の最終期限がある,とはいえない。
ただし,行政機関の長は,同法10条1項の期間内に,特例を適用する旨及びその理由と,残りの文書について決定する期限を,書面で通知しなければならない。
通常の延長通知と,大量請求の特例の通知を区別して読む必要がある。
特例の通知を受けたら,相当部分として何をいつまでに決定する予定か,残りの文書の決定期限はいつかを確認する。
件数や処理見通しを踏まえた対象の調整を相談することも考えられるが,必要な文書を対象から外すかどうかは,その効果を理解して判断する。
第5 決定後の開示実施にも別の手続がある
開示決定を受けた後は,通知された方法に従って,閲覧や写しの交付等の実施方法を申し出る段階になる。
情報公開法14条3項は,原則として,開示決定の通知があった日から30日以内に申出をする旨を定め,正当な理由がある場合の例外も設けている。
この30日は,行政機関が開示・不開示を決める同法10条の30日とは,起点も行為をする者も異なる。
実施手数料や郵送料等の案内も併せて確認する。
第三者から反対意見書が提出されたのに開示決定をする場合には,同法13条3項による,決定日と実施日との間の少なくとも2週間という別の期間もある。
この2週間も,請求から決定までの30日に置き換わるものではない。
第6 回答が来ないときに窓口へ確認すること
請求書の控え,発送・到達が分かる資料,補正関係の連絡,延長通知及び特例通知を時系列に並べる。
その上で,次の事項を窓口へ確認する。
– 開示請求があった日として扱っている日付
– 補正として算入していない期間及びその根拠
– 情報公開法10条2項の延長か,同法11条の特例か
– 現在の決定期限,既に決定した範囲及び今後の通知予定
期限の根拠や経過が不明なまま,30日を超えたことだけで処理の適法性を決め付けるべきではない。
他方で,延長通知があればすべての遅延が正当化されるわけでもない。
期限を過ぎたまま処分がされない場合の不服申立て等は,請求日,補正,延長及び処理状況を踏まえて個別に検討する。
本記事の確認用リストは,期限を整理するためのものであり,個別事件の申立期間や訴訟要件を判定するためのものではない。
第7 関連する記事と出典
制度全体は,行政機関等に対する情報公開請求の基礎を参照されたい。
行政機関の保有する情報の公開に関する法律9条~11条,13条3項及び14条3項。
経済産業省「Q&A」Q7及びQ8。
法令は令和8年10月24日現在施行中の条文を基準とする。
窓口への確認事項は,本記事で整理した実務上の提案である。