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M&A後に経営者保証が解除されないとき―銀行からの請求,買主への補償請求と買戻し(AI作成)

第1 売却後も保証が残っているときの初動

1 まず現在の状態を三つに分ける

株式を売却して代表取締役を退任した後も,会社の借入金について旧経営者の個人保証が残っていることがある。
この場合,誰に何を求めるかは,金融機関からの請求の有無と,既に支払ったかどうかで大きく変わる。
次の表で自分の状態を確認し,該当する節を先に読んでほしい。

現在の状態まず行うこと
①保証は残っているが,請求はない金融機関に保証の解除を申し入れ,借入れの返済状況を確認する(第3)。買主には,契約で約束された解除の実施と報告を書面で求める(第4)。解除の約束の期限と,解除・買戻しの権利行使期間を管理する(第5)。
②金融機関から請求・通知が来た請求の根拠,金額及び支払期限を確認し,支払う前に会社へ通知する(第6・1)。買主には借換え・一括弁済等の実施と補償を求め,会社に対する事前の求償も検討する(第4・第6)。
③既に保証債務を支払った支払の証明書類を受け取り,金融機関の担保等を引き継げるかを確認する。会社への求償と,買主への契約上の補償請求を分けて進め,契約上の請求期限と消滅時効を管理する(第6・2)。

本記事は,株式譲渡で会社を売却した旧経営者が,売却後に保証の解除を受けられていない場面を対象とする。
売却前の予防,すなわち金融機関との事前相談,クロージング(株式の移転や代金の支払等の取引の実行)の条件及び契約書例の読み方は,中小M&Aで経営者保証を残さないためにで扱っている。

2 この記事が依拠する資料

本記事は,中小企業庁の中小M&A時の経営者保証の取扱いについて(中小M&Aガイドライン参考資料13。以下「保証資料」という。),各種契約書等サンプル(令和7年12月15日時点版)のうち株式譲渡契約書サンプル(以下「契約書サンプル」という。頁は同サンプル集の通し頁),全国銀行協会が公表する経営者保証に関するガイドライン及び事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則(以下「特則」という。)並びに民法の条文に基づいて説明する。
契約書サンプルは行政が示す規定例であり,実際の株式譲渡契約に同じ条項があるとは限らない。
本記事は,個別の紛争について責任の有無を判断した裁判例を根拠にした説明をしていないので,具体的な結論は契約書と経緯に基づいて検討する必要がある。

第2 手元の資料を揃える

1 保証契約と借入れの資料

民法446条2項は,保証契約は書面でしなければ効力を生じないと定める。
まず保証契約書を探し,どの金融機関の,どの借入れについて,どの範囲で保証したのかを確定する。
連帯保証か,極度額(保証の上限額)のある根保証か,個人の不動産に担保を設定しているかも確認する。

あわせて,金銭消費貸借契約書,返済予定表,担保の登記事項及び信用保証協会の保証の有無を確認する。
信用保証協会の保証が付いた借入れでは,金融機関だけでなく信用保証協会の判断も関係する(保証資料2頁・8頁)。

手元に資料がなくても,借入れの状況を確認する方法がある。
民法458条の2は,主たる債務者の委託を受けて保証をした保証人が請求したときは,債権者は,主たる債務の元本・利息等についての不履行の有無,残額及び弁済期が到来しているものの額に関する情報を,遅滞なく提供しなければならないと定める。
会社の依頼で保証人となった旧経営者は,この規定に基づいて金融機関に情報の提供を求めることを検討できる。

2 株式譲渡契約と解除の約束

株式譲渡契約書は,署名した最終版と,その後の変更合意・覚書を揃える。
確認する条項は,保証解除の義務,その期限と報告の方法,補償,契約の解除・株式の買戻し,責任の上限・請求期限及び通知の方法である。

通知の方法は,後の権利行使の効力に直結する。
契約書サンプル第21条(通し頁28頁)は,通知を契約書記載の住所・所在地へ行い,延着又は未着の場合には通常到達すべき日に到達したものとみなす例を示している。
実際の契約で通知先,方法及び到達の扱いを確認し,内容証明郵便等,到達日を証明できる方法を選ぶ。

3 やり取りの記録

金融機関の回答,買主や対象会社からの報告,仲介者・FAとの連絡,メール及び面談の記録を日付順に整理する。
保証の解除がいつまでに,誰によって,どの方法で行われる予定だったのかを示す資料は,後の交渉や請求の基礎になる。

退任後に,会社のメール,会計システム,銀行口座等へ権限なくアクセスして資料を取得することはしない。
会社が管理する資料が必要な場合は,契約上の報告請求,金融機関への照会又は弁護士を通じた方法を検討する。

第3 金融機関との関係と買主との約束を分ける

1 買主の約束は金融機関を拘束しない

保証は,旧経営者と金融機関との契約である。
民法446条1項は,保証人は,主たる債務者がその債務を履行しないときに,その履行をする責任を負うと定める。
株式を売却し,代表取締役を退任しても,金融機関が保証の解除に応じない限り,保証契約は続く。

契約書サンプル23頁の注記も,株式譲渡契約は売主と買主の合意であり,金融機関等を拘束するものではないとしている。
買主が「保証を外す」と約束していても,金融機関に対して支払を拒む理由にはならない。
買主の約束は,旧経営者が買主に履行や補償を求める根拠として使うものである。

会社が返済を続けている間は,保証人が直ちに請求を受けるとは限らない。
しかし,保証資料1頁は,譲受側が会社から資金を流出させ,経営者保証を解除しないまま会社に負債を残して連絡を絶つ手口が報告されていると指摘している。
返済が続いていることだけで安心せず,返済状況と会社の状態を確認し続ける。

連帯保証人は,民法454条により,同法452条の催告の抗弁(まず主たる債務者に催告するよう求めること)及び同法453条の検索の抗弁(まず主たる債務者の財産に執行するよう求めること)を有しない。
連帯保証かどうかは,保証契約書の文言で確認する。

2 旧経営者から金融機関へ解除を申し入れる

経営者保証に関するガイドライン第6項(2)②ロは,前経営者から保証契約の解除を求められた場合,金融機関は,前経営者が引き続き実質的な経営権・支配権を有しているか否か,保証以外の手段による既存債権の保全の状況及び法人の資産・収益力による借入返済能力等を勘案しつつ,解除について適切に判断するとしている。
特則第2項(3)は,前経営者は,実質的な経営権・支配権を保有しているといった特別の事情がない限り,いわゆる第三者に該当する可能性があるとし,取締役等の役員でも議決権の過半数を有する株主等でもない前経営者に保証の継続を求める場合には,より慎重な検討を求めている。

株式を全部売却し,役員も退任した旧経営者は,これらの考慮要素に沿った事情を示して解除を申し入れることができる。
申入れは書面で行い,株式譲渡の実行日,役員の退任日,履歴事項全部証明書等の資料を添えて,検討結果と理由の説明を求める。
特則第2項(4)及び保証資料7頁は,解除できない場合に,どのような改善を図れば保証契約の変更・解除の可能性が高まるか等を,個別・具体的に説明することを金融機関に求めている。

ただし,経営者保証に関するガイドラインは,その「はじめに」及び第2項(1)のとおり,法的拘束力のない自主的自律的な準則である。
ガイドラインや特則から,旧経営者が金融機関に対して保証の解除を当然に請求できる権利が生じるわけではない。
解除の判断は最終的に金融機関が行うので,金融機関への申入れと並行して,買主に対する契約上の請求を進める。

信用保証協会が保証人を必要と判断する場合について,保証資料8頁は,どの部分が十分でないために保証契約が必要なのか等の客観的合理的理由を,金融機関を介して説明し,必要に応じて信用保証協会から直接説明することを求めている。

第4 買主に具体的な実施と報告を求める

1 契約上の義務を特定して書面で求める

契約書サンプル第14条3項(通し頁21頁)は,買主が,クロージング後速やかに,対象会社をして金融機関等と交渉させ,保証の解除を合意させる義務を負う例を示している。
同項は,解除を示す書類を売主に交付するよう最大限努力する義務と,売主が保証債務の履行等により被った損害等を補償する義務も定めている。
同条4項・5項は,義務が履行されるまで株式を処分してはならず,処分しても義務を免れない旨を定める。

実際の契約にこれに相当する条項があれば,買主への書面には次の事項を書く。
①対象となる保証契約と借入れ。
②根拠となる契約条項。
③求める行為(金融機関との具体的な協議,借換え,一括弁済,追加資料の提出等)。
④報告の期限と報告に添付する資料(金融機関の回答書等)。
⑤解除を示す書面の交付。
⑥回答の期限と,期限内に回答がない場合に検討する対応。

民法412条は,確定期限のある債務は期限の到来した時から,期限を定めなかった債務は履行の請求を受けた時から,債務者が遅滞の責任を負うと定める。
契約で解除の期限が定められていない場合でも,書面で履行を請求した日を記録に残すことには意味がある。

保証資料4頁は,借換えをせずにM&Aの成立後に保証の解除等を図ることとした場合について,事後的に解除が難しくなったときは義務履行の観点から譲受側が借換えを検討すべきであり,譲渡側に損害が生じた場合には最終契約に基づき適切な補償を行わなければならないとしている。
これは譲受側に求められる対応を示した行政資料であり,契約に定めのない借換え義務を当然に生じさせるものではない。

2 金融機関の判断が必要な義務と,買主が自らできる義務

保証の解除は,最終的には金融機関の判断である。
そのため,「保証の解除を合意させる」という義務について,金融機関の同意そのものを買主に強制できるとは限らない。
民法414条は,債務者が任意に履行しないときの履行の強制を定めるが,ただし書で債務の性質がこれを許さないときは除いている。

これに対し,借換えや一括弁済のように買主側の負担でできる行為や,金融機関との協議・資料提出・報告は,買主自身が実行できる。
契約書でこれらが買主の義務として具体的に定められているかが,請求の実効性を左右する。
契約書サンプル第15条の2第1項3号は,金融機関等が解除できないとの見解を示し,又は解除の条件を設けた場合に,買主が自らの負担で借換え・一括弁済,条件の充足等を実施しないことを,売主の解除・買戻しの事由としている。

3 損害賠償・補償と責任の制限

民法415条1項は,債務者が債務の本旨に従った履行をしないときは,債権者はこれによって生じた損害の賠償を請求できると定める。
ただし,債務不履行が契約その他の債務の発生原因及び取引上の社会通念に照らして債務者の責めに帰することができない事由によるときは,この限りでない。
保証が解除されないことだけで,直ちに損害額が確定するわけではない。
実際に保証債務を支払ったか,金融機関から請求を受けているか等によって,請求できる内容と時期が変わる。

契約書サンプル第17条(通し頁26頁)は,買主の表明保証違反又は義務違反による売主の損害等の補償を定め,表明保証違反に基づく補償については上限額,下限額及び請求期限を設ける例を示している。
実際の契約では,補償の上限・請求期限が義務違反にも及ぶ形になっていないかを確認する。

第5 契約の解除・株式の買戻しを検討する

1 条項の有無と期限の管理

契約書サンプル第15条1項(通し頁22頁)は,表明保証や義務の違反があった場合の催告による解除を,クロージング前に限って認めている。
これと別に,同第15条の2は,クロージング後も経営者保証が解除されない場合等に,売主が契約の解除又は株式の買戻しを選べる特則を置いている。
クロージング後の解除・買戻しは,このような特則が実際の契約にあるかどうかで大きく変わる。

同条の要件と期限の詳細は,中小M&Aで経営者保証を残さないためにの第5で説明している。
売却後の旧経営者にとって特に重要なのは,同条4項・5項である。
クロージング日から6か月が経過し,かつ解除・買戻しの事由がある場合,買主は売主に解除又は買戻しを行うかを書面で催告でき,催告後1か月が経過すると売主は解除・買戻しをできなくなる。
買主から催告書が届いた場合は,到達日と期限を直ちに確認する。
権利の行使は同条1項によりクロージング日から1年を経過するまでとされているので,催告がなくても期限を管理する。

これらは契約書サンプルの規定例の期限であり,法律で定められた期限ではない。
実際の契約の文言,起算日,通知の方法及び到達日を確認する。

2 解除と買戻しでは精算が異なる

契約書サンプル26頁~27頁の注記は,第15条の2に基づく解除を行った場合には,売主と買主がそれぞれ民法上の原状回復義務を負い,これに基づいて精算が図られるとしている。
民法545条は,解除権が行使されたときは各当事者が相手方を原状に復させる義務を負い,金銭を返還するときは受領の時から利息を付さなければならないと定める。
解除を選ぶ場合は,受領した譲渡代金の返還が問題になる。

買戻しを選ぶ場合,契約書サンプル第15条の2第1項ただし書は,売主が通知到達時点における相当な価額を支払う例を示す。
同第17条の2は,買戻しまでに対象会社の純資産の減少等の損害が生じているときに,売主が買主に回復を請求し,買戻し代金と相殺できる例を示す。
同条の注記は,この直接請求が,債務超過企業等を対象とし譲渡価額が低廉なM&Aで,会社の現預金等が不当に流出させられた場合に機能することを想定した特別の規定であると説明している。

3 株式が戻っても会社が元に戻るとは限らない

契約書サンプル23頁の注記は,クロージング後は対象会社の経営権が買主に支配され,預金口座や印鑑も買主が保有しているため,実際の対応は困難を極めることが予想されるとし,早期に弁護士等へ相談することを求めている。

株式を取り戻しても,会社に返済資金が残っていなければ,借入れと保証の問題は解決しない。
解除・買戻しを選ぶかどうかは,会社の資産・負債の状況,取り戻せる資料と管理手段,支払うべき代金の額及び買主への補償請求との関係を比べて判断する。
解除・買戻しの通知と並行して,会社の資産や資料の保全,金融機関との協議を検討する。

第6 保証債務を支払う前後の注意

1 支払う前:会社への通知と事前の求償

民法463条1項は,主たる債務者の委託を受けた保証人が,主たる債務者にあらかじめ通知しないで弁済等をしたときは,主たる債務者は,債権者に対抗することができた事由をもってその保証人に対抗できると定める。
金融機関に支払う前に,会社に対して支払予定の内容を書面で通知しておく。
買主にも同時に知らせ,契約上の補償義務の履行を求める。

民法460条は,委託を受けた保証人は,債務が弁済期にあるとき等に,主たる債務者に対してあらかじめ求償権を行使できると定める。
同法461条は,その場合に主たる債務者が保証人に担保を供させること等を請求できると定める。
金融機関から支払を求められた段階で,会社に対する事前の求償を検討する余地がある。

支払う前には,民法458条の2による情報提供も利用して,請求額の内訳,期限の利益を失ったかどうか及び他の保証人・担保の有無を確認する。

2 支払った後:会社への求償と買主への補償請求

民法459条1項は,委託を受けた保証人が主たる債務者に代わって弁済等をしたときは,主たる債務者に対して求償権を有すると定める。
支払った旧経営者は,まず借入れの債務者である会社に対して求償できる。

民法499条は,債務者のために弁済をした者は債権者に代位すると定め,同法501条1項は,代位した者は債権の効力及び担保としてその債権者が有していた一切の権利を行使できると定める。
会社の不動産に金融機関の担保がある場合等には,代位によってその担保を行使できるかを確認する。
支払の際は,金融機関から弁済の証明書と,担保に関する書類の扱いについての説明を受ける。

会社への求償と別に,買主に対しては,株式譲渡契約の補償条項や義務違反に基づく請求を検討する。
会社に対する求償権と,買主に対する契約上の請求は,相手方も根拠も異なる。
どちらから,どの順序で回収を図るかは,会社と買主それぞれの資力と,契約条項の内容を見て決める。

民法166条1項は,債権は,権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき,又は権利を行使することができる時から10年間行使しないときは,時効によって消滅すると定める。
契約上の補償請求には,これより短い請求期限が定められていることがあるので,契約書を確認する。

3 会社が支払えなくなったとき

会社が返済できなくなり,旧経営者が保証債務の全額を支払えない場合には,個人の債務の整理も問題になる。
経営者保証に関するガイドライン第7項(1)は,主たる債務者が破産等の法的債務整理手続又は準則型私的整理手続を申し立てている等の要件を満たす場合に,保証人がガイドラインに基づく保証債務の整理を申し出ることができるとしている。
特則第2項(4)は,ガイドラインに基づいて保証債務を整理する場合には,一定期間の生計費に相当する額や華美ではない自宅等を,保証債務履行時の残存資産に含めることが可能であることを説明するよう金融機関に求めている。

どの手続が適するかは,会社と保証人の資産・負債の状況によって異なり,一律に結論を示すことはできない。
会社の状況が悪化している兆候があれば,支払や財産の処分をする前に弁護士に相談する。

第7 相談の準備と急ぐべき場面

1 急ぐべき場面

次の場合は,期限が迫っている可能性があるので早めに弁護士へ相談する。
①金融機関から,期限の利益の喪失や保証債務の履行を求める通知が届いた。
②買主から,解除又は買戻しを行うかについての催告書が届いた。
③契約上の解除・買戻しの権利行使期間や,補償の請求期限が近い。
④会社の預金の不審な移動,買主との連絡不能,会社の資産の処分の情報がある。

中小M&Aガイドライン第3版50頁は,仲介者・FAの役務提供は基本的にクロージング時点で終了しており,クロージング後の紛争解決への関与・支援は非弁行為(弁護士法72条)に該当する可能性があるとして,紛争が生じた場合には弁護士に支援を求めることを検討する必要があるとしている。
仲介者・FAに経緯の説明や資料の提供を求めることはできても,買主との交渉そのものを任せることはできない場合がある。

2 相談時に持参する資料

保証契約書,金銭消費貸借契約書と返済予定表,担保の資料,株式譲渡契約書と変更合意,譲渡代金の受領記録,役員退任の登記資料,金融機関・買主・仲介者とのやり取りの記録,金融機関や買主から届いた通知及びその封筒を持参する。
既に支払った場合は,支払の証明書類と,金融機関から受け取った書類も持参する。

弁護士に依頼する範囲(金融機関との協議,買主への請求,解除・買戻しの通知,会社への求償,保全手続)と報酬の決め方は,中小M&Aにおける弁護士報酬の決め方で整理している。

第8 よくある質問

1 買主が保証を外すと約束したのに,金融機関から請求されるのか

請求される可能性がある。
保証は旧経営者と金融機関との契約であり,株式譲渡契約は金融機関を拘束しない(契約書サンプル23頁の注記)。
金融機関の請求に対しては保証契約に基づいて対応し,買主には契約上の解除義務・補償義務の履行を求める。

2 金融機関に直接,保証を外してほしいと頼めるか

頼むことはできる。
経営者保証に関するガイドライン第6項(2)②ロと特則第2項(3)は,前経営者から解除を求められた金融機関が,経営への関与の状況等を勘案して適切に判断することを求めている。
ただし,ガイドラインには法的拘束力がなく,解除の判断は金融機関が行う。

3 保証債務を支払ったら,誰に返してもらえるか

借入れの債務者である会社に求償でき(民法459条1項),金融機関の担保等に代位できる場合もある(同法499条・501条)。
これとは別に,株式譲渡契約に補償条項があれば,買主に補償を求める。
支払う前に会社へ通知しておく(同法463条1項)。

4 仲介会社に解決を任せられるか

仲介者・FAの支援はクロージング時点で終了していることが基本であり,紛争解決への関与は非弁行為に該当する可能性がある(中小M&Aガイドライン第3版50頁)。
経緯の説明や資料の提供を求めることと,買主との交渉を任せることは分けて考える。
仲介契約・FA契約で約束された調査や説明が行われていなかった場合の責任は,契約内容と具体的な経緯によるので,中小M&Aの仲介・FA契約を締結する前にで整理した契約条項と照らして確認する。

第9 出典と関連記事

中小企業庁・中小M&Aガイドライン等の掲載ページ
中小M&Aガイドライン第3版50頁~52頁
中小M&A時の経営者保証の取扱いについて1頁~8頁
各種契約書等サンプル(令和7年12月15日時点版)のうち株式譲渡契約書サンプル(通し頁21頁~23頁,26頁~28頁)
経営者保証に関するガイドライン第2項,第6項,第7項
事業承継時に焦点を当てた「経営者保証に関するガイドライン」の特則第2項
民法166条,412条,414条,415条,446条,452条~454条,458条の2,459条~461条,463条,499条,501条,545条

上記の資料は令和8年10月10日に確認した。
行政資料と契約書例は実務上の検討材料であり,特定の条項の有効性や損害賠償の可否を裁判例で確定したものとして用いていない。
中小M&Aで経営者保証を残さないために
中小M&Aの仲介・FA契約を締結する前に
中小M&Aにおける弁護士報酬の決め方
中小M&Aの売却代金と役員退職金