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最高裁判所の司法行政文書-短期保有・廃棄・不存在に関する答申12件(AIリライト)

第1 この記事の対象と答申の読み方

この記事は,最高裁判所が保有する司法行政文書について,平成27年度から平成30年度までに出された情報公開・個人情報保護審査委員会の答申12件を整理したものです。
基準日は令和8年9月9日であり,現行の文書管理ルールと近時の答申も併せて確認しています。

12件の答申には,短期保有文書として事務処理上必要な期間の経過後に廃棄したとされたものだけでなく,文書を作成していなかったもの,執筆者に交付済みで最高裁判所が保有していなかったもの,探索しても見当たらず過去の取扱いも不明であったものが含まれます。
したがって,これらを一括して「最高裁判所が直ちに廃棄している文書」と理解するのは正確ではありません。

裁判所の司法行政文書の開示は,情報公開法が直接適用される手続ではなく,裁判所が定めた司法行政文書開示手続によって行われます。
不開示等の判断に不服がある場合の苦情申出については,最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会が諮問を受けて答申を行います。

第2 答申12件の整理

次の表では,旧記事が取り上げていた12件を,答申が実際に認定した理由に即して整理しています。
答申年月日は各答申書の冒頭記載によります。

番号答申開示申出の対象答申が認めた保有状況・理由
平成27年度(最情)答申第4号(平成28年2月18日)報道発表資料並びに判決要旨・骨子等の配布物報道機関への配布分又は庁内周知分とその余部であり,短期保有文書として随時廃棄したとの説明を認めた。
平成28年度(最情)答申第23号(平成28年7月15日)最高裁判所及び下級裁判所ごとの女性裁判官数全国の合計数は内閣府作成資料で情報提供し,裁判所別の文書は作成していないとした。データ提供用文書の廃棄は仮定的な補足であり,現実に直ちに廃棄したとの認定ではない。
平成28年度(最情)答申第31号(平成28年10月24日)憲法週間における最高裁判所判事の視察日程等視察基本日程,詳細日程,出席者名簿等は,平成28年5月16日,17日又は19日の視察終了後に必要期間が満了して廃棄したとの説明を認めた。
平成28年度(最情)答申第33号(平成28年10月24日)ハンセン病患者の裁判に関する記者会見の根拠資料日時・場所の記載文書と記者会見の進行又はメモは,会見後2日以内に廃棄したとの説明を認めた。他方,配布資料は公表済みの調査報告書等であり,開示申出の対象外とした。
平成28年度(最情)答申第34号(平成28年12月2日)高等裁判所長官事務打合せに関する配布資料通達,開催通知,進行予定及び配布資料の計24文書を特定した。別紙6及び12から24まで以外の文書は打合せ後に廃棄し,前年度資料は作成していないとの説明を認めた。
平成28年度(最情)答申第37号(平成28年12月2日)最高裁判所調査官室が判例時報への投稿用に作成した統計メモ執筆者の要望に応じて作成されたメモは執筆者に交付済みであり,最高裁判所は保有していないとの説明を認めた。
平成29年度(最情)答申第7号(平成29年6月9日)第70期司法修習生の導入修習に関する週間日程表平成28年12月12日以降の4文書は開示し,同月9日以前の週間日程表は各週の経過後に必要期間が過ぎたため廃棄したとの説明を認めた。
平成29年度(最情)答申第8号(平成29年6月9日)第69期司法修習生A班の週間日程表平成28年11月14日から16日までの文書は開示し,同月13日以前の週間日程表は当該週の経過後に必要期間が過ぎたため廃棄したとの説明を認めた。
平成29年度(最情)答申第72号(平成30年3月23日)司法修習生の配属換えに関して作成又は取得した文書依頼,通知,同意書等を対象文書として特定し,その一部を不開示とした。対象文書以外の文書は配属換え手続の終了後に廃棄したとの説明を認めた。
10平成30年度(最情)答申第15号(平成30年6月15日)平成28年の裁判官・裁判所職員の懲戒処分等について発表の有無が分かる文書紙の文書だけでなくデータも含め,事務処理上必要な期間の満了後に廃棄したとの説明を認めた。
11平成30年度(最情)答申第46号(平成30年11月16日)裁判官が所持する裁判書の写し等の廃棄に関する申合せの作成経緯照会,回答及び報告の10文書を特定した。これら以外の協議文書は申合せの作成後に不要となり廃棄したとの説明を認めた。
12平成30年度(最情)答申第70号(平成31年2月22日)第40期から第48期までの司法修習開始時点の司法修習生配属現員表探索しても見当たらなかった。現行基準の保存期間は30年であるが,当時の保存期間は不明であり,保存期間経過後又は用済み後に廃棄されたものと考えられるとの説明を認めた。

1 短期保有文書として廃棄済みとされた例

第1号,第3号,第4号,第7号,第8号及び第10号は,対象文書又はその一部について,短期保有文書として必要期間の満了後に廃棄したとの説明が認められた例です。
ただし,廃棄時期は,配布又は庁内周知の後,会見又は視察の後,対象週の経過後など,文書の用途によって異なります。

第4号の「2日以内」という時間関係は,会見の日時・場所に関する文書及び進行又はメモについてのものです。
会見時の配布資料は公表済みの調査報告書等であり,同じ範囲の文書が全て2日以内に廃棄されたわけではありません。

第10号の答申日は平成30年6月15日です。
紙だけでなく作成時のデータも探索対象とされ,データを含めて廃棄済みであるとの説明が認められています。

2 一部保有・一部廃棄とされた例

第5号,第9号及び第11号では,開示申出に関係する文書の一部が対象文書として特定されています。
そのうえで,対象文書以外の補助的な文書について,事務の終了後又は最終的な文書の作成後に廃棄したとの説明が認められました。

とりわけ第5号は,計24文書が対象として特定されており,「事務打合せの配布資料を全て廃棄した」という内容ではありません。
第9号と第11号も,主要な依頼・通知・照会・回答等を特定したうえで,そのほかの文書を保有していないと判断したものです。

3 未作成・交付済み・所在不明とされた例

第2号は,裁判所別の女性裁判官数が分かる文書を作成していなかった例です。
答申は,仮にデータ提供用文書を作成して提供後すぐに廃棄したとしても不合理ではないと述べていますが,現実にその文書を作成して直ちに廃棄したと認定したものではありません。

第6号は,執筆者用の統計メモが既に執筆者へ交付され,最高裁判所が保有していないとされた例です。
第12号は,古い配属現員表が探索で見当たらず,当時の保存期間等の取扱いも不明であったため,用済み後等の廃棄が推認された例です。

このように,不存在を理由とする不開示でも,未作成,交付済み,廃棄済み又は所在不明という事実関係を区別する必要があります。
なお,最高裁判所平成26年7月14日第二小法廷判決は情報公開法上の行政文書に関する事案ですが,過去に存在した文書を不開示決定時にも保有していたかは,文書の内容・性質,作成又は取得の経緯,経過期間及び保管体制等に応じて個別具体的に判断すべきであるとしています。

第3 現行の短期保有文書の管理

1 保存期間を1年未満とできる文書

「司法行政文書の管理について」は,司法行政文書の作成・取得,整理,保存,移管,廃棄等の基本事項を定めています。
同通達は令和8年3月4日に改正され,同年4月1日から実施されています。

保存期間を1年未満とすることができる文書には,別に正本又は原本が管理されている写し,定型的又は日常的な業務連絡・日程表,刊行物又は公表物を編集した文書,事実関係の問合せへの応答,明白な誤り等により客観的に利用できない文書,意思決定過程の途中段階で作成され意思決定に影響せず長期保存を要しない文書,保存期間表で特定した定型的又は日常的な業務に関する文書があります。
もっとも,歴史公文書等,業務の合理的な跡付け又は検証に必要な文書,重要又は異例な事項に関する文書については,原則として1年以上の保存期間を定める必要があります。

2 短期保有でも直ちに廃棄するとは限らない

最高裁判所の実施通達は,短期保有文書も廃棄するまでの間は年度ごとに整理するなど適切に管理し,事務処理上必要な期間が満了したときに廃棄すると定めています。
したがって,「保存期間が1年未満であること」と「作成直後に廃棄すること」は同義ではありません。

さらに,同通達に列挙された類型以外の短期保有文書を廃棄するときは,文書管理者が,歴史公文書等,業務の跡付け・検証に必要な文書又は重要・異例な文書に当たらないことを確認します。
その場合,廃棄した文書に係る業務の類型と廃棄日を記録し,総括文書管理者へ報告したうえで公表する仕組みです。

3 開示申出等があった文書の保存期間延長

現行通達では,監査又は検査の対象となっている文書,係属中の訴訟で必要な文書,不服申立てにおける審理等に必要な文書,開示申出があった文書などについて,手続が終わるまで保存期間を延長します。
開示申出がされた時点で存在する文書を,通常の保存期間が来たという理由だけで手続中に廃棄する運用ではありません。

各部署の具体的な文書類型と保存期間は,裁判所ウェブサイトの標準文書保存期間基準で公表されています。
文書の保存期間を検討するときは,抽象的な名称だけでなく,作成部署,具体的な業務,意思決定との関係及び保存期間表上の分類を確認する必要があります。

第4 近時の答申による補足

1 途中段階の文書とファイル管理簿

令和5年度(最情)答申第2号は,裁判所データブックの記載修正過程で作成された可能性のある文書について,意思決定過程の途中段階で作成され,意思決定に影響せず長期保存を要しない短期保有文書であったとして,廃棄済みとの説明を認めました。
答申は,短期保有文書であればファイル管理簿への記載がないことも指摘しています。

この答申は,文書が存在した可能性と,開示申出時に保有しているかという問題を分けて判断しています。
過去の作成可能性だけから,現在も保有しているとはいえません。

2 別の開示申出による保存と作成・廃棄不明

令和7年度(情)答申第89号は,短期保有文書に当たるとされた文書についても,別の開示申出があったため保存されていた事情を扱っています。
短期保有文書であることは,あらゆる事情にかかわらず直ちに廃棄されることを意味しません。

令和7年度(最情)答申第65号は,10年以上前の研修資料について,作成又は廃棄の有無が分からず,探索でも見当たらなかったとの説明を認めました。
答申の記載から確認できる範囲が「作成・廃棄不明」である場合には,廃棄を断定しないことが重要です。

第5 令和6年度の文書管理状況

令和6年度における裁判所の司法行政文書の管理状況によると,令和6年度末の保有ファイル数は29万407件であり,同年度に新たに作成・取得されたファイルは5万4617件でした。
同年度に保存期間が満了した6万7517件のうち,移管は68件,廃棄は6万324件,保存期間の延長は7125件でした。

ここでいう保存期間満了後の通常の「廃棄」と,「紛失・誤廃棄」は別の集計です。
同報告書では紛失・誤廃棄が36件あり,内訳は紛失23件,誤廃棄13件で,21件について復元措置が行われたとされています。

第6 関連記事

司法行政文書の管理制度全体は「司法行政文書に関する文書管理(AIリライト)」を,国立公文書館への移管は「司法行政文書の移管」を参照してください。
下級裁判所の答申例は「下級裁判所が直ちに廃棄しているとされた司法行政文書」に,最高裁判所の不開示例は「最高裁判所が不開示とした司法行政文書」に整理しています。

第7 出典・参考資料

1 司法行政文書の管理・開示に関する資料

最高裁判所事務総局秘書課長通達「司法行政文書の管理について」(平成24年12月6日付け,令和8年3月4日改正)は,司法行政文書の管理に関する基本通達です。
最高裁判所事務総局秘書課長通達「最高裁判所における司法行政文書の管理の実施等について」は,最高裁判所における整理,保存,移管及び廃棄の実施事項を定めています。

裁判所の「司法行政文書開示手続」は,申出方法,開示・不開示の通知及び苦情申出の概要を案内しています。
最高裁判所の「情報公開・個人情報保護審査委員会」には,委員会の概要と年度別答申が掲載されています。

2 答申・裁判例・統計

第2の表に掲げた12件の答申書は,最高裁判所情報公開・個人情報保護審査委員会が平成28年2月18日から平成31年2月22日までに答申した一次資料です。
各答申書へのリンクは表中に付しています。

最高裁判所平成26年7月14日第二小法廷判決・平成24年(行ヒ)第33号は,情報公開法上の行政文書の保有に関する主張立証責任と推認の方法を示した裁判例です。
令和6年度管理状況報告は,裁判所の保有ファイル数,保存期間満了後の措置及び紛失・誤廃棄を別項目で集計した公表資料です。