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和解案を受け入れるか迷ったとき―金額・費用・時間・回収可能性の比較(AI作成)

第1 和解案は「請求額の何割か」だけでは判断できない

1 希望,交渉の提示額及び法的な見通しを分ける

和解案を受け入れるか迷ったときは,現在の案を受け入れる場合と,条件を再交渉する場合及び判決を求める場合を,同じ前提で比べることが出発点となる。提示額が希望額より低いという理由だけでも,早く終わるという理由だけでも,判断に必要な材料はそろわない。

依頼者の希望する結果,交渉で相手方に示した金額及び証拠に基づく法的な見通しは,それぞれ別のものである。請求又は提示をした金額が,判決で認められる金額や現実に回収できる金額を保証するわけではない。反対に,弁護士の現時点の予測だけを理由に,依頼者が大切にしている目的を確認しないまま切り下げることも適切ではない。

例えば,100万円を希望しているところへ70万円の案が出たとしても,「7割だから妥当」という共通の基準はない。争点,証拠,支払時期,相手方の履行可能性及び金銭以外の条件によって評価は変わる。本記事の数字は説明用の仮定であり,和解相場や推奨割合を示すものではない。

2 本記事で扱う判断と,別に確認する事項

本記事は,主に民事紛争で金銭の支払を受ける側が,担当弁護士と和解案を検討するための確認手順を説明するものである。比較表は運用上の提案であり,すべての事件に同一の表を作成する法的義務があるという意味ではない。支払う側も,予想される支払額と防御に必要な費用・時間等を置き換えて考えられる。

和解の効力,代理人の権限,税務及び個別の条項の有効性は,事件と契約に即して別に確認する必要がある。合意書の作成は裁判外の和解契約書・合意書の作り方,裁判上の和解条項は民事訴訟の和解案・和解条項案の作り方を参照されたい。

第2 受諾・再交渉・続行を同じ項目で比較する

1 各案について確認する項目

次の項目を,現在案の受諾,再交渉及び判決を求める場合のそれぞれについて確認する。再交渉で条件が改善するとは限らず,相手方が現在の提案を維持するかも確認事項となる。判決を求める場合は,勝訴,部分的な認容及び請求が認められない場合を分けて考える。

比較する項目弁護士と確認する内容
金額と根拠現在の提示額,認められ得る請求の範囲,争われている部分と証拠。不利な結論となる可能性も確認する。
今後の費用追加の報酬・実費,鑑定,控訴及び執行等の費用。既払額と,今後の選択によって変わる費用を分ける。
時間と負担解決・支払までの見込み,期日,尋問や資料準備,仕事・生活への影響。期間の見込みの前提も確認する。
回収と履行支払原資,一括・分割,担保及び不履行への備え。勝訴可能性と回収可能性を分ける。
金銭以外の条件謝罪,明渡し,引渡し,接触,秘密保持及び関係維持等。何を実現でき,何を義務として負うか。
終結する範囲清算条項でどの請求が終わるか,残す権利,別事件や第三者への影響,保全処分の扱い。
期限と未確認事項提案への回答期限,裁判手続上の期限,追加で必要な資料,誰がいつ確認するか。

2 判決の予測と回収の予測は分ける

「勝てる見込みがある」と「その金額を期限どおり受け取れる」は別の判断である。和解案の金額が大きくても,履行の見込みが乏しければ,再び請求や執行が必要になることがある。相手方の説明だけで支払能力を確定せず,必要に応じて資料や履行確保の方法を確認する。

判決でより高額の支払が認められる可能性を検討するときも,追加費用,支払までの時間及び執行の見込みを併せて考える。詳しくは資産額と実際に払える額の違いを参照されたい。

第3 追加で得られるものと,追加で負担するものを比べる

1 既にかかった費用だけで続行を決めない

既に費用や時間を費やしたことは理解できる事情であるが,それだけでは今後の続行が有利かどうかは決まらない。現在の選択で変わる追加費用と追加の利益を分けて確認する必要がある。和解時の成功報酬,控訴の着手金又は中途終了の清算等は,委任契約によって異なるので,実際の契約を確認する。

例えば,70万円を受け取れる現在案と,続行して100万円が認められる場合を比べると,金額上の上積みは30万円である。ただし,100万円の認容も回収も確実とは限らない。今後20万円の追加費用がかかるという仮定なら,その費用だけを引いた上積みは10万円となるが,報酬の算定,税務,支払時期及び結果の不確実性はなお別に確認する。この計算は続行の結論を自動的に決めるものではない。

2 不確かな勝率を数字で埋めない

見通しを数字にすると比べやすく見えるが,根拠のない勝率を入れれば,計算結果も信頼できない。まず,有利・不利の双方の結論を支える争点と証拠,なお分からない点及び追加調査で判断が変わる点を示すことが重要である。

名誉,安全,安心又は継続的な関係といった利益は,金額へ換算しにくい。経済的な比較と併せて,依頼者自身が何を重視し,何を受け入れられないかを整理する。金額の比較だけで,これらの希望を消さない。

第4 金額以外の条件を組み合わせる

1 双方が受け入れられる組合せを探す

同じ支払額でも,一括払いと長期の分割払いでは意味が異なる。支払時期,物の引渡し,明渡しの猶予,謝罪,接触に関する条件又は秘密保持等を組み合わせれば,金額だけでは解消できない問題に対応できる場合がある。

譲歩を検討するときは,自分にとっての負担と,相手方にとっての便益を分ける。例えば,履行に必要な短い猶予と引換えに,支払原資の確認や履行確保を求める案を検討することも考えられる。ただし,相手方が便益を感じるかは確認を要し,態度や口調だけから相手方の限界を確定しない。

2 希望する内容を条項へ落とし込めるか確認する

謝罪や接触制限等は,意味が曖昧なまま合意すると,履行したかどうかについて再び争いが生じ得る。誰が,何を,いつまでに行うのか,不履行時にどう対応するのかを,可能な範囲で具体化する。

秘密保持や清算の条項は,自分が今後できる行動や残す権利にも影響する。金額を了承したことを,後から追加されたすべての条項への了承と扱わず,最終案の全体を確認する必要がある。

第5 弁護士の推奨と,依頼者の判断を分ける

1 推奨理由と,受け入れない場合の選択肢を尋ねる

弁護士から受諾を勧められたときは,「なぜこの案を勧めるのか」「判決を求めた場合の有利・不利な見通しは何か」「条件を直して交渉する余地はあるか」「追加の費用と期間はどうなるか」を具体的に尋ねるとよい。

弁護士職務基本規程29条は受任時の見通し・処理方法・報酬・費用の説明等を定め,36条は必要に応じた経過・帰趨に関する報告と協議を定める。22条の意思尊重・意思確認と併せて,判断材料と依頼者の意向を共有することが重要となる。20条から22条までについては,同規程82条2項が行動指針又は努力目標として解釈適用する旨を定めている。

最高裁平成25年4月16日第三小法廷判決(平成24年(受)第651号)は,債務整理で消滅時効の完成を待つ方針について,解決遅延・提訴等の不利益とリスク及び回収した過払金で残債務を弁済する現実的な選択肢を説明すべきであったとした。依頼者が方針を承諾していたとしても,必要な説明を尽くしていなければ責任を免れないとし,損害等の審理のため破棄差戻しとした。あらゆる和解に同じ比較書式を義務付けた判決ではないが,賛成を得たことと,判断に必要な説明をしたことを分けて考える上で参考となる。

2 納得できない理由を具体的に伝える

和解案を断りたい場合は,金額,履行への不安,謝罪,安全,清算範囲又は説明への疑問など,何が問題なのかを具体的に伝える。希望額が変わらない場合でも,証拠と見通しの認識が違うのか,金銭以外の目的を重視しているのかによって,次に必要な相談が異なる。

弁護士が強く受諾を勧めることと,依頼者の意思を確認せず合意することは区別する。意思確認の不足から,成立した和解が当然に無効になると結論付けることもできない。権限と効力が問題となった場合には,委任状,最終条項及び協議記録を確認する必要がある。詳しくは依頼者の意思と弁護士の専門判断を参照されたい。

和解拒否や希望額の違いだけで,職務基本規程43条の信頼関係喪失及び回復困難が直ちに認められるわけではない。同条に拒否回数の一律の基準はない。再説明,代替案及び必要な追加相談を検討し,辞任する場合の説明,期限及び引継ぎは別に確認する。詳細は弁護士が受任事件を途中で辞任するときのルールを参照されたい。

第6 回答前に残しておきたい確認メモ

現在の提案原文と最終条項を保存した上で,次の事項を短く記録しておくと,後の条件変更や説明の行き違いを確認しやすい。

① 提案日,回答期限及び裁判手続上の次の期限。
② 希望する結果,譲れない条件及び現在の見通しの前提。
③ 受諾,再交渉及び続行の利点・不利益と,今後変わる費用・時間・回収の見込み。
④ なお必要な資料と,誰がいつ確認するか。
⑤ 弁護士の推奨理由,依頼者の質問と回答及び選んだ方針。
⑥ 金額,支払時期,清算範囲等が変わったときに改めて協議する条件。

回答期限の延長を希望するときは,担当弁護士へ早めに相談する。延長できるとは限らず,相手方への回答期限と裁判手続上の期限も同じではない。口頭の印象だけで合意済みと考えず,どの条件について,どの方法で回答するのかを確認する。

第7 出典と関連資料

本記事の職務上の規律は,令和8年10月13日に取得した日弁連「弁護士職務基本規程」20条~22条,29条,36条,43条及び82条等による。

説明義務に関する裁判例は,最高裁平成25年4月16日第三小法廷判決・平成24年(受)第651号の法廷意見による。補足意見の一般論や,差戻し後の結末を本記事の判断として扱っていない。

交渉の終えどきを考えるきっかけとなる公開論考に,三津谷周平氏のX記事「弁護士11年で気づいた。交渉は『100を取る』より『70で降りる』方が難しい。」がある。同記事の経験上の説明を,一律の和解割合又は辞任基準として採用するものではない。本記事の比較手順・計算例は,依頼者と弁護士が個別事件の判断材料を整理するための提案である。

依頼後の一般的な注意点は弁護士に事件を依頼するときに知っておいてほしい大切なこと,説明・協議の規律は弁護士の説明義務・報告義務を参照されたい。