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事後強盗と「窃盗の機会」の終了―発見・追跡,現場離脱と再侵入の確認事項(AI作成)

第1 窃盗の後の脅迫でも事後強盗とは限らない

窃盗の後に逮捕を免れるため脅迫をした場合でも,時間的に後であるというだけで事後強盗罪が成立するわけではない。先行する窃盗の機会が続いているかを確認する必要がある。

最高裁平成16年12月10日第二小法廷判決は,発見・追跡されることなく一度現場を離れた窃盗犯人が,改めて盗むため戻った際に脅迫した事案で,窃盗の機会の継続を否定した。本記事は,この判決と刑法238条を基に,現場離脱から脅迫までの事実をどう整理するかを説明する。

第2 条文の目的と機会の継続を分けて確認する

刑法238条は,窃盗が,取得した財物の取返しを防ぎ,逮捕を免れ,又は罪跡を隠滅するために暴行・脅迫をした場合を,強盗として扱う。財物の取返防止,逮捕免脱及び罪跡隠滅は,条文に定められた目的である。

もっとも,逮捕免脱目的があったことと,先行窃盗の機会が続いていたことは別の確認事項である。以下の最高裁判決でも,逮捕を免れるための脅迫であった事実は認定されているが,機会の継続は否定されている。

実務では,まずどの窃盗を先行行為として問題にしているかを特定し,次に暴行・脅迫までの出来事を時系列に並べ,その間の発見・追跡状況を検討する。その上で,目的,暴行・脅迫の内容等のほかの成立要件を確認する。機会の継続が認められれば,それだけで犯罪の全要件が満たされるという関係にはない。

第3 最高裁平成16年12月10日判決

1 現場を離れた後,改めて盗むために戻った事案

判決原文によると,被告人は住宅で財布等を盗み,誰からも発見・追跡されることなく,自転車で約1キロメートル離れた公園へ向かった。そこで盗んだ現金が少ないと考え,再度盗みに入るため引き返した。最初の侵入から約30分後に玄関扉を開けた際,家人がいることに気付き,その後,家人に発見され,逮捕を免れるためナイフを示して脅迫した。

原審は,盗品を持ったまま当初の窃盗の目的を達成するため同じ家へ戻ったこと等から,窃盗の機会が続いていたとした。

2 最高裁が重視した事情

最高裁は,発見・追跡されずに一旦現場を離れ,ある程度の時間を過ごす間に,被害者等から容易に発見され,財物を取り返されたり逮捕されたりし得る状況がなくなったと判断した。その後,再度窃盗をする目的で現場へ戻っても,その際の脅迫は,先行窃盗の機会の継続中に行われたとはいえないとした。

最高裁は,事後強盗罪を認めた原判決を破棄して東京高裁へ差し戻した。事後強盗罪の否定を,住宅への侵入や脅迫等について一切の刑事責任がないという結論へ広げることはできない。

第4 30分・1キロメートルを一律の基準にしない

この判決に現れる約30分,約1キロメートルという数字は,認定された事実の一部である。「30分を過ぎれば終了する」「1キロメートル離れれば終了する」という一般的な線引きを判示したものではない。

また,盗品を所持していたことや,同じ住宅へ戻ったことだけで,機会が当然に継続するともいえない。判決では,それらの事情があっても,その間に容易な発見・取返し・逮捕の可能な状況がなくなった点が重視されている。

同じ場所へ戻った場合には,「逃走・追跡が続く中で戻った」のか,「接触が途切れた後,別の窃盗をするため戻った」のかを分けて事実を確認する。ただし,後者という説明があるだけで結論を決めず,途中の発見・追跡の有無と整合するかを確認する必要がある。

第5 弁護人が整理する時系列と証拠

以下は,判決の判断に対応する事実を整理するための実務上の確認事項である。判決が一律の証拠収集義務や,証拠の優先順位を定めたものではない。

確認する事項照合する資料と注意点
先行窃盗の内容と時点対象財物,取得行為,現場からの離脱を特定する。複数の窃盗が問題になる場合は,各行為を分ける。
発見・追跡の開始と中断被害者・目撃者の供述,防犯映像等を突き合わせる。現場を出たことと,発見・追跡され得る状況の終了を同じ意味にしない。
離脱後の場所と行動移動経路,滞在場所,滞在時間を記録する。映像等に写っていない時間は,そのことだけで追跡がなかったと認定しない。
現場へ戻った経緯戻る意思が生じた時点,目的,それを裏付ける行動や供述を確認する。盗品を持っていた事実だけで継続を決めない。
暴行・脅迫時の状況相手方,場所,発言,凶器,制止・追跡の状況を特定する。逮捕免脱等の目的と,先行窃盗とのつながりを分けて検討する。

時系列表では,窃盗,離脱,滞在,再接触,暴行・脅迫の各時点に,根拠資料と反対資料を付す。映像の時刻と供述上の時刻が食い違うときは,どの時刻が確認できるかを明示する。「逃走中」「取り押さえられた」といったまとめた表現だけでは,途中に機会が終了したかを検討しにくい。

第6 機会を否定した後にも確認する事項

事後強盗罪の成立を否定する場合も,先行する窃盗,脅迫,暴行又は住居侵入等の成否は,それぞれの要件に従って検討する必要がある。最高裁の差戻し判決から,他の罪の成立・不成立まで一律に決めることはできない。

また,先行窃盗が既遂か未遂か,途中で加わった者にどの責任が生じるかは,窃盗の機会の終了とは別の論点である。刑法243条は238条の罪の未遂を処罰するが,未遂や共犯の具体的な成立判断を,今回の最高裁判決が直接示したものではない。

令和元年司法試験刑事系第1問の公式資料は,事後強盗に加わった者の責任や目的・認識の違いを検討するための参考になる。ただし,複数の理論構成を認める試験資料から,特定の共犯構成が最高裁の確立した判断であると扱うことはできない。

第7 出典と確認範囲

1 e-Gov法令検索「刑法」(235条,236条,238条,243条。令和8年10月9日確認。235条・236条の自由刑は拘禁刑の表記である。)

2 最高裁平成16年12月10日第二小法廷判決(平成16年(あ)第92号,刑集58巻9号1047頁。裁判所公開の判決原文全2頁を確認。)

3 法務省「令和元年司法試験論文式試験問題出題趣旨」及び刑事系科目の採点実感(刑事系第1問の設問2を,論点の区別の参考として使用。判例法理の根拠とはしていない。)

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