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裁判所支部・簡易裁判所・家裁出張所の統廃合史―昭和63年・平成2年の再編と支部新設(AI作成)

第1 裁判所の統廃合を読む際の区別

1 支部,簡易裁判所,家裁出張所は別の組織である

昭和63年の簡易裁判所等の統合と,平成2年の地方裁判所・家庭裁判所支部の統合は,別の再編である。
同じ庁舎に地裁支部,家裁支部及び簡易裁判所が置かれていても,支部だけが廃止され,簡易裁判所が残ることがある。
旧家裁支部の所在地に家裁出張所が設置される場合もあり,「裁判所がなくなった」という表現だけでは,何が廃止され,何が存続したのか分からない。

制度の違いは,裁判所支部とは―本庁・支部・出張所の違いと管轄・提出先の調べ方で整理している。
本記事は,昭和63年・平成2年の再編と,その前後の支部新設について,法令・国会答弁等から確認できる経過を説明するものである。

2 廃止と事務移転,決定と開庁を区別する

法令上の組織を廃止することと,組織を残したまま他庁で事務を取り扱うことは,区別する必要がある。
支部新設についても,方針を決定した年,規則を改正した時点,庁舎を整備して実際に開庁した年が一致するとは限らない。
沿革資料を読むときは,日付がどの段階を指すのかを確認することが重要である。

第2 昭和63年の簡易裁判所・家裁出張所の再編

1 昭和62年法律第90号による簡易裁判所の統合

下級裁判所の設立及び管轄区域に関する法律の一部を改正する法律は,昭和62年9月11日法律第90号である。
同法は,簡易裁判所の設立・管轄に関する別表を改め,廃止庁の事件について受入簡易裁判所への引継ぎ等の経過措置を定めた。

昭和62年8月21日の衆議院法務委員会では,小規模独立簡易裁判所101庁の統合について説明が行われた。
最高裁側の答弁によれば,事件数と交通事情だけで一律に決めたのではなく,人口の動向,管内の交通事情,今後の事件増加の見込み等を考慮し,対象候補から統合を見送った庁もあった。

この再編は昭和63年5月に実施された。
平成2年3月29日の参議院法務委員会でも,昭和63年5月1日付けで廃止された簡易裁判所の職員の再配置が説明されている。
「101庁」という小規模独立簡裁の数字を,事務移転庁,大都市の簡裁の集約等まで含む全期間・全区分の廃止総数と読み替えてはならない。

2 併置された家裁出張所37庁の統合

同日の国会答弁では,統合対象の簡易裁判所101庁のうち,家裁出張所が併置されている庁が37庁であり,簡易裁判所の統合に合わせて家裁出張所も統合することが説明された。
当時の説明は,家裁出張所が,利用者の地理的な利便のため,既存の簡易裁判所の庁舎や人員を活用して出張処理をする仕組みであることを前提としていた。

簡易裁判所の再編は,簡易裁判所の事件だけでなく,同じ場所で提供されていた家事手続へのアクセスにも影響したのである。
ただし,出張所の統合と,後に説明する地家裁支部41庁の廃止とは,対象も時期も異なる。

第3 平成2年4月の地家裁支部41庁の廃止

1 併設簡易裁判所は存続した

平成2年3月27日衆議院法務委員会の答弁は,同年4月1日からの支部の適正配置により41支部を廃止する一方,その支部に併設されていた簡易裁判所は存続すると説明している。
従来,地家裁支部と簡易裁判所で使っていた土地・建物は,基本的に簡易裁判所で使うこととされ,そのうち20か所では家裁出張所と簡易裁判所で使うとされた。

したがって,「41支部の廃止」と「41か所から裁判所機能がすべて消滅したこと」は,同じではない。
他方,簡易裁判所が残れば,従前の地裁・家裁支部と同じ事件をすべて扱えることになるわけでもない。
存続した組織の権限と実際の取扱事務を確認する必要がある。

2 20か所で家裁出張所を設置した

同答弁は,廃止する41支部のうち20か所に家裁出張所を置くことを説明した。
現在の受付出張所に関する最高裁通達は,平成元年最高裁判所規則第5号による改正後の家裁出張所設置規則を踏まえ,受付等に取扱事務を限定した出張所と,その区域を管轄する家裁又は家裁支部との事務関係を定めている。

平成2年の廃止後の代替措置と,現在の受付出張所の取扱いは,沿革としてつながるが,個々の場所について現在も同一の取扱いであると推測してはならない。
現在の出張所の数や取扱いについては,第5で説明する。

3 最高裁側の説明と日弁連のコメント

平成2年3月27日の最高裁側の答弁は,近隣庁までの時間が短く,事件数が少なく,統合による不便が比較的小さい範囲で配置を見直し,人的・物的条件を整えて審理を充実させることを目的とすると説明した。
検討対象58支部から41支部へ絞り,20か所に家裁出張所を置いたことも述べている。

日本弁護士連合会の平成元年12月14日会長コメントは,統廃合が国民の裁判を受ける権利を損なうおそれがあり,真の司法の充実強化に反すると指摘してきたことを述べ,廃止決定を遺憾とした。
その上で,関係自治体・住民・弁護士会等の声を受け止め,今後の施策で裁判を受ける権利の保障と司法の充実強化を実現することを求めた。
行政上の効率化の説明と,利用者の不便を減らす要請の両方を読んで,再編の目的と残された課題を把握する必要がある。

第4 苫小牧支部・相模原支部の新設

1 新設の決定と実際の開庁

平成27年5月22日の衆議院法務委員会答弁によれば,平成2年4月の全国的な地家裁支部配置の見直しの際,札幌地家裁苫小牧支部と横浜地家裁相模原支部を新設することを決定した。
実際に開庁したのは,苫小牧支部が平成5年,相模原支部が平成6年である。

「平成2年に新設を決定した」と「平成5年・平成6年に開庁した」は,矛盾する説明ではない。
この区別を省くと,統合だけが行われたように見えたり,開庁年が誤って伝わったりする。

2 再編の主な経過

時期主な出来事読み方の注意
昭和62年法律第90号成立,小規模独立簡裁等の再編を審議法律成立と実施を区別する
昭和63年5月簡易裁判所の統合,併置家裁出張所37庁の統合地家裁支部41庁の廃止とは別の再編
平成2年4月地家裁支部41庁を廃止,20か所に家裁出張所を設置併設簡易裁判所は存続
平成5年地家裁苫小牧支部が開庁新設方針決定は平成2年の見直し時
平成6年地家裁相模原支部が開庁新設方針決定と開庁を区別する

本表は主要な再編の経過を示すものであり,戦後の全裁判所の新設・廃止・名称変更を網羅した一覧ではない。
高裁支部の沿革は,高等裁判所支部を参照されたい。

第5 現在の裁判所配置へどうつながるか

1 令和8年の組織数

裁判所データブック20261頁によれば,地方裁判所は本庁50庁・支部203庁,家庭裁判所は本庁50庁・支部203庁・出張所77庁である。
簡易裁判所は438庁であり,地裁本庁又は支部に併置されたものが253庁,独立簡易裁判所が185庁である。

全国の現在の支部名は,地方裁判所支部及び家庭裁判所支部の全国一覧で確認できる。
沿革から現在の提出先を推測せず,各裁判所の現行の管轄表・提出先案内を確認することが必要である。

2 出張所の名称だけでは審理場所は決まらない

令和8年4月14日の衆議院法務委員会答弁では,家裁出張所77庁のうち57庁が家事審判・家事調停等を自庁で処理し,20庁がいわゆる受付出張所であると説明された。
受付出張所は,事件の受付に関する事務と,裁判官又は調停委員会の判断によって当該出張所へ出張して行う家事審判・家事調停の事務を取り扱う。

受付ができる場所と,通常の審理を行う場所は一致しないことがある。
旧支部所在地で家裁関係の書類を受け付けてもらえることだけから,その場所で事件全体の審理が行われるとは判断できない。

第6 関連記事と出典

1 関連記事

地方裁判所支部及び家庭裁判所支部
高等裁判所支部
検察庁の支部
全国の地方裁判所支部における本庁集約と開廷頻度

2 出典

昭和62年法律第90号。
昭和62年8月21日衆議院法務委員会発言49,76。
平成2年3月27日衆議院法務委員会発言66,140。同年3月29日参議院法務委員会。
平成27年5月22日衆議院法務委員会発言163。
令和8年4月14日衆議院法務委員会発言83。
日本弁護士連合会41庁の地家裁支部の廃止にあたって。
最高裁判所裁判所データブック20261頁,受付出張所及び管轄裁判所における訟廷事務の取扱いについて。