地方裁判所支部及び家庭裁判所支部

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目次
1 総論
2 地家裁支部の権限
3 地家裁支部等の統合及び新設,並びに簡易裁判所の統合及び新設
4 弁護士ゼロ・ワン支部
5 本庁及び支部の間の事件回付に対する不服申立てはできないこと等
6 弁護士会連合会(弁連)の要望事項
7 地家裁支部の設置に関する国会答弁
8 ゼロワン地区に関する国会答弁
9 臨時司法制度調査会意見書(昭和39年8月28日付)の記載
10 関連記事

1 総論
  地方裁判所の支部は,裁判所法施行の際,経過的に裁判所法施行令7条によってその当時設置されていた各区裁判所の所在地に設けたものとされ,地方裁判所及び家庭裁判所支部設置規則(昭和22年12月20日最高裁判所規則第14号)においても原則として,この状態を引き継ぎ,家庭裁判所の支部も同一の地に設けられることとなりました(昭和39年8月28日付の臨時司法制度調査会意見書第八章参照)。

2 地家裁支部の権限
(1)   地家裁支部は,簡裁の民事事件の判決に対する控訴事件(=レ号事件)及び行政訴訟事件を取り扱うことはできません(地家裁支部設置規則1条2項)。

(2)   レ号事件は必ず合議事件となります(裁判所法26条2項3号)し,行政訴訟事件は通常,合議事件となります(裁判所法26条2項1号参照)。
(3) 平成2年4月1日,改正後の地家裁支部設置規則1条(地裁)及び2条(家裁)が施行された結果,権限甲号の支部(=合議事件取扱支部)及び権限乙号の支部(=合議事件非取扱支部)の区別が廃止されました。
   しかし,そのときに追加された地家裁支部設置規則3条1項(地裁)又は2項(家裁)に基づき,旧乙号支部における合議事件に関する事務を引き続き本庁又は旧甲号支部に取り扱わせることができるようになりました。
   そのため,合議事件を取り扱う支部であるかどうかは現在,それぞれの地家裁の裁判官会議決議に基づく事務分配という形で決まっています。
(4) 東京地家裁多摩支部の状況については,東弁リブラ2009年10月号に掲載されている「多摩支部の活動-裁判所本庁化への期待も-」が参考になります。


 
3 地家裁支部等の統合及び新設,並びに簡易裁判所の統合及び新設
(1) 地家裁支部及び家裁出張所の廃止及び新設

ア 昭和63年5月1日,96庁の家裁出張所のうち37庁が廃止された結果,家裁出張所は59庁となりました。
イ 平成2年4月1日,242庁の地家裁支部のうち,41庁が廃止された(外部ブログの「裁判所~廃止された裁判所」参照)結果,地家裁支部は201庁となりました。
   その反面,20庁の家裁出張所が新設された結果,家裁出張所は79庁となりました。
ウ 平成5年4月1日,札幌家裁苫小牧(とまこまい)出張所に代えて,札幌地家裁苫小牧支部が新設されました。
   その結果,地家裁支部は202庁となり,家裁出張所は78庁となりました。
エ 平成6年4月1日,横浜家裁相模原(さがみはら)出張所に代えて,横浜地家裁相模原支部が新設されました。
   その結果,地家裁支部は203庁となり,家裁出張所は77庁となりました。
(2) 簡易裁判所の廃止及び新設
ア(ア)   昭和63年5月1日,575庁の簡易裁判所のうち,小規模の独立簡易裁判所(略称は「独簡」です。)101庁が廃止され,事務移転庁が21庁廃止され,北九州市内の門司簡裁が小倉簡裁に集約されました(外部ブログの「裁判所~廃止された簡易裁判所」参照)。
   ただし,統廃合された簡裁等の管轄区域のうち81か所において出張事件処理が実施されていたものの,平成20年12月18日時点で,そのうち41か所が廃止され,40か所(実施庁数35)の出張事件処理が存続していました(日弁連HPの「簡易裁判所及び家庭裁判所の出張事件処理について(意見)」参照)。
(イ) 大阪地裁管内の場合,都島簡裁,東淀川簡裁及び西成簡裁は,昭和22年5月3日の設立当初から大阪簡裁に事務移転していました。
イ 平成4年1月1日,所沢簡裁が新設されました。
ウ 平成5年4月1日,大阪市内の3簡裁(生野簡裁,西淀川簡裁及び阿倍野簡裁)が大阪簡裁に集約されました。
エ 平成5年4月8日,名古屋市内の2簡裁(愛知中村簡裁及び昭和簡裁)が名古屋簡裁に集約されました。
オ 平成6年9月1日,都内11簡裁(新宿簡裁,台東簡裁,墨田簡裁,大森簡裁,渋谷簡裁,中野簡裁,豊島簡裁,東京北簡裁,足立簡裁,葛飾簡裁及び江戸川簡裁)が東京簡裁に集約されました。
カ 平成8年4月1日,町田簡裁が新設されました。
キ 平成23年4月22日,福島富岡簡裁の事務が当分の間,裁判所法38条に基づき,いわき簡裁及び郡山簡裁に事務移転しました(福島地裁HPの「平成23年4月18日 福島地方裁判所からのお知らせ(福島富岡簡易裁判所の事務移転)」参照)。
(3) 矢口洪一 元最高裁判所長官の回想
最高裁判所とともに(著者は高輪1期の矢口洪一 元最高裁判所長官)121頁には以下の記載があります。
   退官時、大法廷に二つ審理中の事件があったほか、やり残した仕事も多かったが、懸案だった全国の地・家裁支部、簡裁の配置の見直しでも、関係する法律や最高裁規則の改正が実現した。
   明治以来の人口分布や産業配置に対応して設けられた地・家裁支部と戦後そのままの簡裁の配置を見直したのである。地・家裁四一の支部を廃止する一方、苫小牧、相模原に新たに支部が設けられ、一二三の簡裁が統合されて町田、所沢に簡裁が新設されることになった。法曹三者の協力が可能にした事業であったことはいうまでもない。

 
4 弁護士ゼロ・ワン支部
(1) 弁護士ゼロ・ワン支部とは,地家裁支部管轄区域を単位として,登録弁護士が全くいないか,1人しかいない地域をいいます。
(2) 法務省の法曹養成制度改革連絡協議会の第8回協議会(平成29年10月11日開催)資料1-4「弁護士ゼロ・ワン地方裁判所支部数の変遷等」によれば,以下のとおりです。
① 弁護士ゼロ支部数の変遷
平成 5年 7月:50個,平成 8年 4月:47個,平成 9年 4月:40個
平成10年 4月:43個,平成11年 4月:39個,平成12年 4月:35個
平成13年10月:31個,平成14年10月:25個,平成15年10月:19個
平成16年10月:16個,平成17年10月:10個,平成18年10月: 5個
平成19年10月: 3個,平成20年10月: 0個,平成21年10月: 2個
平成22年10月: 0個,平成23年10月: 0個,平成24年10月: 0個
平成25年10月: 0個,平成26年10月: 0個,平成27年10月: 0個
平成28年10月: 0個
② 弁護士ワン支部数の変遷
平成 5年 7月:24個,平成 8年 4月:31個,平成 9年 4月:32個
平成10年 4月:30個,平成11年 4月:34個,平成12年 4月:36個
平成13年10月:33個,平成14年10月:36個,平成15年10月:39個
平成16年10月:35個,平成17年10月:37個,平成18年10月:33個
平成19年10月:24個,平成20年10月:20個,平成21年10月: 9個
平成22年10月: 5個,平成23年10月: 2個,平成24年10月: 2個
平成25年10月: 1個,平成26年10月: 1個,平成27年10月: 1個
平成28年10月: 1個

5 本庁及び支部の間の事件回付に対する不服申立てはできないこと等
(1)   地方裁判所の本庁と支部間,又は支部相互間の事件の回付は,訴訟法上の手続ではありませんから,回付の措置に対しては,当事者は,訴訟法に準拠する不服申立をすることはできません(最高裁昭和44年3月25日決定)。

(2) 東弁リブラ2013年8月号「東京地裁書記官に訊く-交通部編-」(末尾4頁及び5頁)に以下の記載があります。
   土地管轄とは異なりますが,当事者双方の住所地及び交通事故発生場所が立川支部管内にあるにもかかわらず,当庁(本庁)に訴訟提起をされることがあります。これについても,当該事件に即して本庁で審理をする必要性を記載した上申書を提出してください(上申書の内容によっては原則どおり回付の措置をとることもあります)。

6 弁護士会連合会(弁連)の要望事項
(1)   「東京高等裁判所管内の司法基盤の整備充実を求める決議」(平成23年9月30日の関東弁護士会連合会の決議)によれば,以下の4点は早急に実現すべきとされています。

① 東京地方・家庭裁判所立川支部は,独立した地家裁本庁とすべきである。
② 市川簡易裁判所と千葉家庭裁判所市川出張所の管轄地域に地家裁支部を新設すべきである。
③ 横浜地方裁判所相模原支部において,民事・刑事の合議事件が扱えるようにすべきである。
④ 東京高裁管内に設置されているさいたま地方・家庭裁判所秩父支部,前橋地方・家庭裁判所沼田支部,千葉地方・家庭裁判所館山支部,同佐原支部,水戸地方・家庭裁判所麻生支部,静岡地方・家庭裁判所掛川支部には裁判官が常駐していない。これらの裁判所に,早急に,裁判官が常駐するようにすべきである。
(2) 「大阪高等裁判所管内の地家裁支部の司法基盤の整備充実を求める決議」(平成23年9月20日の近畿弁護士連合会の決議)によれば,以下の4点は早急に実現すべきとされています。
① 京都地方・家庭裁判所管内の南部地域及び和歌山地方・家庭裁判所管内の橋本市に各支部を新設すること。
② 神戸地方裁判所姫路支部及び神戸地方裁判所尼崎支部において,労働審判を取り扱えるようにすること。
③ 奈良地方裁判所葛城支部において,民事の合議事件をより多く取り扱えるように,裁判官の増員を図ること。
④ 京都地方裁判所園部支部,神戸地方裁判所柏原支部及び和歌山地方裁判所御坊支部には裁判官が常駐していないので,裁判官が常駐するようにすること。
(3) 「すべての裁判所支部管内における司法の機能充実を求める決議」(平成24年7月6日付の東北弁護士会連合会の決議)には,以下の3点を国に対して要請すると書いてあります。
① すべての地方・家庭裁判所及び地方検察庁において裁判官・検事を速やかに常駐させ,裁判所支部・検察庁支部の人的・物的基盤を整備すること
② 地裁本庁に集約されている労働審判・不動産競売・債権執行事件等を含め支部管内の事件は可能な限り当該支部において取り扱うようにすること
③ 執行官,公証人役場,法務局出張所,検察審査会等の司法関係機関の配置を見直し,これらが不足している地域に当該機関を設置すること
(4) 「裁判官・検察官非常駐支部の解消に向けた行動をとることの宣言」(平成22年12月11日付の北海道弁護士会連合会の決議)には,「裁判官・検察官が一人も常駐していない支部に少なくとも一人の裁判官・検察官が常駐する体制を早急に実現するため、従前にも増して主導的かつ精力的に運動を行っていくことを決意し、ここに宣言する。」などと書いてあります。

7 地家裁支部の設置に関する国会答弁
   40期の中村慎最高裁判所総務局長は,平成27年5月22日の衆議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しました。)。
① 支部の配置を含めました裁判所の配置は、人口動態、交通事情、事件数の動向、あるいはIT技術の進展等も考慮しながら、裁判所へのアクセス、提供する司法サービスの質等を総合した、国民の利便性を確保するという見地から検討していかなければならない問題だと承知しているところでございます。
   現在、委員御指摘のとおり、複数の地域におきまして、裁判所の支部設置の要望が出されていることは承知しているところでございます。
   今申し上げました観点からいたしますと、直ちに新たな支部を設置したり、廃止した支部を復活させなければならないという状況にあるものとは考えておりません。
   もっとも、今後とも、事件動向や、人口、交通事情の変化、IT技術等を注視しながら、必要があれば、支部の新設、統廃合を含めまして、裁判所の配置について見直しを行ってまいりたいというふうに考えております。
② (注:裁判所支部の増設に関する)比較的最近の例を二例お答えいたします。
   昭和四十七年に沖縄県が我が国に復帰したことに伴いまして、那覇地方・家庭裁判所の支部として、コザ支部、名護支部、平良支部、石垣支部の四つの支部が設置されました。コザ支部については、名称は今、沖縄支部と変更されております。
   その次の新設でございますが、平成二年四月に全国的な地家裁支部の配置の見直しを実施いたしました際に、札幌地家裁苫小牧支部、横浜地家裁相模原支部を新設することを決定しました。なお、実際に開庁したのは、苫小牧支部が平成五年、相模原支部が平成六年でございます。
③ 平成二十六年六月に、市川市、船橋市、浦安市の各市議会で、支部の設置を求める意見書が可決されております。京葉地区は、人口が多い地域であるにもかかわらず、司法基盤が人的、物的に不十分、未整備であるという指摘がその意見書の中でされているということは承知しているところでございます。
(中略)
   現時点におきまして、現状の京葉地区の千葉本庁までの交通事情を鑑みますと、他の地域に比較した場合に不便であるという実情にあるとまでは言えないというふうに考えております。
   いずれにいたしましても、最高裁といたしましては、今申し上げましたような観点から諸事情を注視いたしまして、必要があれば、支部の新設等を考慮していくということになろうと思います。

8 ゼロワン地区に関する国会答弁
   小山太士法務省大臣官房司法法制部長は,平成29年4月11日の参議院法務委員会において以下の答弁をしています(ナンバリングを追加しました。)。
① 委員御指摘の民事訴訟の事件数の増減でございますけれども、訴訟の事件数の増減は、国民が紛争解決のため司法を活用しているかどうかの一つの指標ではあるかとは思いますが、法律的な問題の解決に裁判外の手続などもあるところもございまして、訴訟事件数の増減自体を一定の方向で評価することについては様々な御意見もあるのではないかと思っております。
   このため、政府として民事訴訟の事件数そのものを増加させることを直接の目的とする施策はこれまで講じてはおりませんけれども、一方で、この利用を促進するという意味で、国民の司法アクセスを一層向上させるための取組が必要であるとの観点から施策を講じております。
② 例を挙げさせていただきますと、法テラス、日本司法支援センターの司法過疎地域事務所の設置等による司法アクセスの向上の取組というのがございます。その結果、地方裁判所支部の管轄単位、これは二百三か所全国にございますが、ここで弁護士が全くいないか一人しかいない地域、これは弁護士ゼロワン地域と言われておりますけれども、これが平成十六年十月当時には五十一か所、これはゼロが十六か所、ワンが三十五か所ございましたが、平成二十年十月には合計二十か所、ゼロはゼロか所、ワンが二十か所となりまして、平成二十九年四月には合計二か所、これはゼロがゼロか所、ワンが二か所まで減少しているところでございます。
   政府といたしましては、今後ともこのような司法アクセス向上のための必要な取組を行ってまいりたいと考えております。

9 臨時司法制度調査会意見書(昭和39年8月28日付)の記載
   臨時司法制度調査会意見書(昭和39年8月28日付)の決議要目には以下の記載があります。
第八 裁判所の配置等
 一 高等裁判所支部の廃止
   高等裁判所の支部を原則として廃止すること。
 二 地方裁判所・家庭裁判所支部の整理統合
   地方裁判所及び家庭裁判所の支部を整理統合して、甲号、乙号の別を廃し、現在の乙号支部を原則として廃止すること。
 三 簡易裁判所の名称の変更
   簡易裁判所の名称を「区裁判所」(仮称)に改めること。
 四 簡易裁判所の整理統合
   人口、交通事情等の社会事情の著しい変動に伴い、簡易裁判所を整理統合することを考慮すること。
 五 簡易裁判所の事務移転
   最高裁判所は、簡易裁判所の調停を除く事務の全部又は一部を他の簡易裁判所に取り扱わせることができるものとすること。

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