第1 対象資料と12項目の現在
1 資料の性質と確認日
厚生労働省の「厚生労働省関係の主な制度変更(平成27年10月)について」は,平成27年9月30日に政策統括官付社会保障担当参事官室が公表した一覧である。
平成27年(2015年)10月に実施される制度変更のうち,特に国民生活に影響を与える事項を,年金,医療,疾病対策及び雇用・労働の4分野に分けて掲げている。
この記事では,掲載された12項目について,その後の改正と現在の運用を一次資料で確かめ,相談や訴訟で古い資料を使うときに取り違えやすい点を整理する。
確認日は令和8年(2026年)10月4日である。
一覧は当時の制度の説明であり,その後に終了し,又は改正された制度が含まれる。
本文の条文は,確認日にe-Gov法令検索で取得した現行の条文による。
2 12項目の一覧
| 項目 | 平成27年10月の変更 | 確認日現在の状況 |
|---|---|---|
| 被用者年金の一元化 | 公務員・私学教職員も厚生年金に加入 | 一元化後の制度が続く。職域部分は廃止され,年金払い退職給付を創設 |
| 厚生年金保険料率 | 9月分から17.828% | 平成29年9月分以後は18.3%で固定 |
| 国民年金の5年後納 | 時効消滅した過去5年分の納付を可能に | 平成30年9月30日で終了 |
| 医療事故調査制度 | 予期しなかった死亡・死産の報告と院内調査 | 令和8年8月末までの医療事故報告は累計3,907件 |
| 看護師等の届出制度 | 免許保持者によるナースセンターへの届出 | 努力義務のまま。届出サイトで受付 |
| 特定行為研修 | 手順書による特定行為の研修制度を創設 | 令和8年3月現在,指定研修機関505,修了者14,266名 |
| 特定配偶者等支援金 | 退所者給与金受給者の遺族に月額12万8千円 | 根拠はハンセン病問題基本法15条2項。現行の月額は未確認 |
| 最低賃金 | 全国加重平均798円 | 令和8年度の改定額の全国加重平均は1,177円 |
| ユースエール認定 | 若者の雇用管理が優良な中小企業を認定 | 常時雇用300人以下の事業主が対象 |
| ジョブ・カード | キャリア・プランニングと職業能力証明の道具に | 令和4年にウェブサイト「マイジョブ・カード」を公開 |
| 労働者派遣法の改正 | 許可制への一本化,期間制限の見直し等 | 旧特定派遣の経過措置は平成30年9月29日まで。その後も改正が続く |
| 労働契約申込みみなし制度 | 違法派遣の受入れで労働契約の申込みを擬制 | 大阪高裁令和3年11月4日判決が契約の成立を認めた |
第2 年金関係の3項目
1 被用者年金の一元化
被用者年金制度の一元化等を図るための厚生年金保険法等の一部を改正する法律(平成24年法律第63号)は,附則1条で「この法律は、平成二十七年十月一日から施行する。」と定めている。
同日から,公務員と私立学校教職員も厚生年金保険に加入し,共済年金は厚生年金に統一された。
日本年金機構の解説によれば,統一後の厚生年金に関する届書等は,日本年金機構又は各共済組合等のどの窓口でも受け付けるワンストップサービスとなり,共済年金にあった公的年金としての3階部分(職域部分)は廃止され,新たに「年金払い退職給付」が創設された。
厚生年金の事務は,被保険者の種別に応じて,厚生労働大臣(第1号厚生年金被保険者),国家公務員共済組合等(第2号),地方公務員共済組合等(第3号)及び日本私立学校振興・共済事業団(第4号)が実施している。
厚生労働省の資料は,平成27年9月30日までの共済年金の加入期間分については,同年10月以後も加入期間に応じた職域加算部分を支給するとしている。
離婚時の年金分割や遺族年金の相談では,公務員・私学教職員としての期間を含むかどうか,その期間が一元化の前か後かを分けて,各実施機関の記録を確かめる必要がある。
2 厚生年金保険料率は18.3%で固定
一覧は,厚生年金保険料率が平成27年9月分から0.354%引き上げられ,17.828%になると説明している。
厚生年金保険法81条4項の表は,平成27年9月から平成28年8月までの月分を「千分の百七十八・二八」とし,最終行で「平成二十九年九月以後の月分」を「千分の百八十三・〇〇」としている。
したがって,平成29年9月分以後の保険料率は18.3%で固定されている。
過去の未払保険料や損害額を計算するときは,対象となる月分の率を同条の表で確かめる必要がある。
保険料は月分ごとに率が決まるので,「納付した月」ではなく「何月分の保険料か」で率を選ぶ。
3 5年後納制度は平成30年9月で終了
一覧の5年後納制度は,政府管掌年金事業等の運営の改善のための国民年金法等の一部を改正する法律(平成26年法律第64号)附則10条1項による時限措置である。
同項は,「平成二十七年十月一日から平成三十年九月三十日までの間」に限り,承認の日の属する月前5年以内の期間で,保険料を徴収する権利が時効によって消滅したものについて,後納保険料を納付できるとしていた。
この期間は終了しており,確認日現在,時効で消滅した国民年金保険料を後から納める一般的な制度はない。
日本年金機構も,「「10年後納制度」は、平成27年9月30日をもって、「5年後納制度」は、平成30年9月30日をもって終了しています。」と案内している。
これに対し,免除や納付猶予を受けた保険料は,国民年金法94条1項により,承認の日の属する月前10年以内の期間に係るものに限り追納できる。
未納と免除・猶予は,後から納められるかどうかが異なる。
年金の受給資格や年金額の相談では,未納期間なのか,免除・猶予期間なのかを,ねんきん定期便や被保険者記録で先に確かめる必要がある。
第3 労働者派遣法の平成27年改正
1 施行日と許可制への一本化
労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律等の一部を改正する法律(平成27年法律第73号)は,附則1条で平成27年9月30日から施行するとしている。
一覧は,この改正の内容として,派遣事業の健全化,派遣労働者の雇用安定とキャリアアップ,派遣期間規制の見直し及び均衡待遇の強化を挙げている。
届出制だった特定労働者派遣事業は廃止され,労働者派遣事業は許可制に一本化された。
同法附則6条1項は,施行の際に届出をして特定労働者派遣事業を行っていた者について,「施行日から起算して三年を経過する日までの間」は許可を受けずに事業を続けられるとした。
この経過措置の期間は,計算上,平成30年9月29日までである。
現行の労働者派遣法2条には特定労働者派遣事業の定義はなく,確認日現在,許可を受けずに労働者派遣事業を行うことはできない。
2 事業所単位と個人単位の期間制限
労働者派遣法40条の2第1項は,派遣先の事業所その他派遣就業の場所ごとの業務について,派遣可能期間を超える受入れを禁止し,同条2項は派遣可能期間を3年としている。
派遣先が3年を超えて受け入れるには,同条3項・4項により,意見聴取期間内に過半数労働組合等の意見を聴いて延長する必要がある。
これとは別に,同法40条の3は,組織単位ごとの業務について,同一の派遣労働者を3年を超えて受け入れることを禁止している。
期間制限は,平成27年改正法附則9条により,施行日以後に締結された労働者派遣契約に基づく労働者派遣に適用された。
そのため,施行日から3年を経過する平成30年9月30日以降に,期間制限への対応が多くの派遣先で問題となった。
無期雇用派遣労働者に係る派遣等は,40条の2第1項ただし書により,期間制限の対象から除かれている。
3 雇用安定措置とキャリアアップ
派遣元事業主は,同一の組織単位の業務に継続して1年以上従事する見込みがある有期雇用派遣労働者等について,派遣先への直接雇用の依頼,新たな派遣先の提供,派遣労働者以外としての無期雇用等の措置を講ずるよう努めなければならない(労働者派遣法30条1項)。
3年間従事する見込みがある場合は,同条2項により努力義務ではなく義務となる。
また,派遣元事業主は,段階的かつ体系的な教育訓練を実施しなければならない(同法30条の2第1項)。
4 その後の改正
平成30年改正により,派遣元事業主は,派遣先均等・均衡方式又は労使協定方式のいずれかによって派遣労働者の待遇を確保することになり,この改正は令和2年4月1日に施行された。
さらに,厚生労働省は,雇入れ時・派遣時の明示事項に待遇の相違の内容及び理由等について説明を求めることができる旨を加えること等の改正が,令和8年10月1日に施行・適用されると案内している。
平成27年当時の解説資料を使うときは,これらの改正後の規定と照合する必要がある。
派遣法の基本構造は,労働者派遣法の基本-禁止業務,期間制限,派遣契約及び違法派遣で説明している。
第4 労働契約申込みみなし制度
1 平成27年10月1日施行の民事的な効果
労働契約申込みみなし制度は,平成24年法律第27号2条により新設された労働者派遣法40条の6の制度である。
一覧は施行日を平成27年10月1日とし,大阪高裁令和3年11月4日判決(後記)も,同条が平成24年法律第27号2条(平成27年10月1日施行)により新設されたと述べている。
同条1項は,労働者派遣の役務の提供を受ける者が同項各号の行為を行った場合には,「その時点において」,派遣労働者に対し,「その時点における当該派遣労働者に係る労働条件と同一の労働条件を内容とする労働契約の申込みをしたものとみなす。」と定めている。
行政上の指導や罰則と異なり,派遣先との労働契約の成立という私法上の効果を生じさせる点に特色がある。
2 対象となる5つの行為と善意無過失
労働者派遣法40条の6第1項各号の行為は,次のとおりである。
①派遣禁止業務(港湾運送業務,建設業務,警備業務等)に派遣労働者を従事させること(1号)
②許可を受けていない者から労働者派遣の役務の提供を受けること(2号)
③事業所単位の期間制限(40条の2第1項)に違反して役務の提供を受けること(3号)
④個人単位の期間制限(40条の3)に違反して役務の提供を受けること(4号)
⑤労働者派遣法等の規定の適用を免れる目的で,請負その他労働者派遣以外の名目で契約を締結し,労働者派遣契約で定めるべき事項を定めずに労働者派遣の役務の提供を受けること(5号)
ただし,派遣先が,その行為が各号に該当することを知らず,かつ,知らなかったことについて過失がなかったときは,申込みはみなされない(同項ただし書)。
3号には,意見聴取の手続のうち厚生労働省令で定めるものが行われないことにより違反となった場合を除く旨の括弧書がある。
国と地方公共団体の機関は40条の6の対象から除かれ,40条の7により,採用その他の適切な措置を講ずる義務を負う。
3 承諾の期間と労働条件
みなされた申込みは,同項の行為が終了した日から1年を経過する日までの間は撤回できない(労働者派遣法40条の6第2項)。
その期間内に承諾する旨又は承諾しない旨の意思表示を受けなかったときは,申込みは効力を失う(同条3項)。
派遣元事業主は,派遣先から求めがあれば,申込みがみなされた時点の労働条件の内容を通知しなければならない(同条4項)。
また,厚生労働大臣は,派遣労働者が承諾したのに派遣先が就労させない場合,助言,指導又は勧告をすることができ,勧告に従わないときはその旨を公表することができる(40条の8第2項・3項)。
厚生労働省の通達(平成27年9月30日職発0930第13号)は,指揮命令等を行い偽装請負等の状態となったことのみをもって「偽装請負等の目的」を推定するものではないとしている(同通達4頁)。
また,違法行為の前にあらかじめ派遣労働者が「承諾をしない」ことを意思表示した場合であっても,その合意は公序良俗に反し無効と解されるとし,承諾できる申込みは最新の申込みに限られないとしている(同通達5頁)。
実務では,①違法行為の類型と終了日,②承諾の意思表示の時期と方法,③みなされた時点の労働条件(賃金,就労時間,期間の定めの有無を含む)を,それぞれ証拠で確かめる必要がある。
4 裁判例
(1) 偽装請負等の目的を推認した大阪高裁令和3年11月4日判決
大阪高裁令和3年11月4日判決(令和2年(ネ)第973号,裁判所HP掲載。いわゆる東リ事件)は,請負契約の下で工場の工程に従事していた労働者について,労働者派遣法40条の6第1項5号の行為があったとして,発注者との労働契約の成立を認め,請求を棄却した原判決を取り消した。
同判決は,偽装請負等の目的という主観的要件が付加された趣旨から,「偽装請負等の状態が発生したというだけで,直ちに偽装請負等の目的があったことを推認することは相当ではない。」とした(判決書37頁)。
その上で,「日常的かつ継続的に偽装請負等の状態を続けていたことが認められる場合には,特段の事情がない限り」,法人の代表者又は契約締結権限を有する者は,「組織的に偽装請負等の目的で当該役務の提供を受けていたものと推認するのが相当である。」とした(同頁)。
また,偽装請負等の目的が認められる以上,40条の6第1項ただし書の善意無過失が認められる余地はないとし,違法行為がされている日ごとに労働契約の申込みをしたとみなされるとした(判決書39頁)。
期間の定めのない労働契約を派遣元と締結していた労働者が期間内に承諾した場合には,派遣先との間でも期間の定めのない労働契約が成立し,その後の派遣元による整理解雇はその効力に影響しないとした(判決書43頁)。
同判決は,承諾の意思表示を発した日に労働契約が成立したと認めたが,これは平成29年法律第44号による改正前の民法526条によったものである(判決書42頁)。
現行の民法97条1項は,意思表示は「その通知が相手方に到達した時からその効力を生ずる。」としているので,現在の事案では承諾の通知が派遣先に到達した日を確かめる必要がある。
上告審の判断は,裁判所HPと判例秘書で確認できなかったため,この記事では扱わない。
(2) 承諾の意思表示がないとされた名古屋地裁令和2年7月20日判決
名古屋地裁令和2年7月20日判決(平成29年(ワ)第5158号,判例秘書の判例番号 L07550523)は,業務委託契約の下で就労していた労働者らについて,被告が労働者派遣法等の適用を免れる目的で業務委託契約を締結して役務の提供を受けたとして,40条の6第1項5号に該当する行為を認めた。
しかし,労働組合を通じた直接雇用の要求は,今後の直接雇用の対象者,移籍時期,労働条件等について協議することを予定したものであり,みなし申込みを受けて新たに労働契約を締結させるためにされた「承諾の意思表示と評価することはできない。」とし,請求を棄却した。
判例秘書の判示事項は,同判決が,みなし申込みの存在を知らせなかった被告の対応によっても,40条の6第2項の期間の経過を主張することが信義則に反するとはいえないとしたと整理している。
この判決からは,偽装請負等の目的が認められても,1年の期間内に,みなし申込みに対する承諾であることが分かる形で意思表示をしなければ,労働契約は成立しないことが分かる。
控訴審の判断は,この記事では確認していない。
(3) 労働者側と派遣先・発注者側の確認事項
労働者側では,請負・業務委託の名目で働いていても,発注者の具体的な指揮命令の有無を,作業指示,配置,勤怠管理,人員管理の記録で確かめる。
違法状態の終了日から1年以内に,「40条の6によるみなし申込みを承諾する」旨を明示した書面を,到達の証拠が残る方法で送ることが重要である。
発注者側では,業務委託・請負の契約書だけでなく,現場の指示系統が昭和61年労働省告示第37号(労働者派遣事業と請負により行われる事業との区分に関する基準)に沿っているかを点検し,違法状態を把握したら速やかに是正する必要がある。
大阪高裁令和3年11月4日判決は,偽装請負の可能性を意識しながら状態を解消しなかった事情を,目的の推認に用いている(判決書38頁)。
第5 医療関係の3項目
1 医療事故調査制度
平成27年10月1日に施行された医療事故調査制度では,病院,診療所又は助産所の管理者は,医療事故が発生した場合,遅滞なく医療事故調査・支援センターに報告しなければならない(医療法6条の10第1項)。
ここでいう医療事故は,「当該病院等に勤務する医療従事者が提供した医療に起因し、又は起因すると疑われる死亡又は死産であつて、当該管理者が当該死亡又は死産を予期しなかつたもの」として厚生労働省令で定めるものである。
医療法施行規則1条の10の2の2第1項は,医療の提供前に死亡等が予期されることを本人・家族に説明していた場合,診療録等に記録していた場合,又は事情の聴取等を経て管理者が予期していたと認めた場合のいずれにも当たらないものに限っている。
管理者は,報告の前に遺族へ説明し(医療法6条の10第2項),医療事故調査を行い(6条の11第1項),結果をセンターへ報告する前にも遺族へ説明しなければならない(同条5項)。
センターは,管理者又は遺族から依頼があったときは調査を行うことができ(6条の17第1項),結果を管理者と遺族に報告する(同条5項)。
平成28年6月の医療法施行規則の改正(平成28年厚生労働省令第117号)では,管理者が死亡・死産を確実に把握する体制を確保すること,支援団体が協議会を組織できること等が定められ,センターは遺族等の求めに応じて相談の内容等を管理者に伝達することとされた。
医療事故調査・支援センターの令和8年9月9日の現況報告によれば,同年8月末時点の医療事故報告は累計3,907件,院内調査結果報告は累計3,483件,センター調査の調査対象は累計342件(遺族からの依頼270件,医療機関からの依頼72件)である。
また,令和8年厚生労働省令第27号(同年3月19日公布)により,病院等の管理者等が医療事故に係る適切な対応に関する研修を受講する仕組みが設けられた。
医療事故調査は責任追及を目的とする制度ではないが,遺族側の代理人にとっては,報告の有無,院内調査報告書の内容,センター調査の依頼の可否が,事実関係を知る手掛かりになる。
制度の対象かどうかと,医師法21条の届出や過失の有無は別の問題である。
生命維持治療の終了後の死亡との関係は,生命維持治療を終了した後の死亡と医師法21条・医療事故調査制度―病院の院内手順に書くべき事項で,病理解剖との関係は,病理解剖(剖検)とは―遺族の同意、費用、結果及び医療事故調査制度との関係で説明している。
2 看護師等の届出制度
一覧の「看護師等免許保持者の届出制度」は,看護師等の人材確保の促進に関する法律の規定である。
確認日現在の同法16条の3第1項は,看護師等が病院等を離職した場合等に,住所,氏名等を都道府県ナースセンターに届け出るよう「努めなければならない」と定めている。
義務ではなく努力義務であり,届出をしないことに罰則はない。
厚生労働省は,届出サイト「とどけるん」からのインターネットによる届出を案内しており,病院等の開設者による代行届出もできるとしている。
3 特定行為研修
保健師助産師看護師法37条の2第1項は,「特定行為を手順書により行う看護師は、指定研修機関において、当該特定行為の特定行為区分に係る特定行為研修を受けなければならない。」と定めている。
特定行為は,診療の補助のうち,手順書により行う場合に高度かつ専門的な知識及び技能が特に必要とされるものとして省令で定めるものである(同条2項1号)。
厚生労働省の資料によれば,令和8年3月現在,指定研修機関は505機関,特定行為研修の修了者は14,266名である。
令和元年(2019年)からは,領域ごとに実施頻度が高い特定行為をまとめた領域別パッケージ研修も始まっている。
厚生労働省のQ&Aは,領域別パッケージ研修で研修を免除された特定行為については,研修を受講していないため実施することはできないとしている。
医療過誤の事案では,看護師が手順書により特定行為をした場合,手順書の内容,医師の指示の範囲及び研修の修了の有無を確認することになる。
第6 その他の4項目
1 特定配偶者等支援金
一覧の特定配偶者等支援金は,ハンセン病問題の解決の促進に関する法律15条2項に基づき,ハンセン病療養所退所者給与金の支給を受けていた退所者の死亡当時に生計を共にし,扶養されていた配偶者又は一親等の尊属に支給される。
同条5項は,給与金等を標準として租税その他の公課を課することができないとしている。
厚生労働省が現在も掲載している制度の概要資料は,支給額を全国一律で月額12万8千円とし,支給対象者の収入状況に応じて減額されることがあるとしている。
ただし,この資料は制度開始時のものとみられ,確認日現在の月額は確認できなかった。
その後,ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律(令和元年11月22日施行)により,元患者の家族に対する補償金(同居の配偶者・親・子等は180万円,兄弟姉妹等は130万円)が設けられた。
同法の請求期限は,令和6年法律第57号により5年延長され,令和11年11月21日までとなっている。
厚生労働省の集計では,令和元年11月22日から令和8年9月4日までの認定件数は9,101件である。
2 最低賃金
一覧は,平成27年度の地域別最低賃金が全ての都道府県で時間額16円から20円引き上げられ,全国加重平均額が798円になったと説明している。
厚生労働省の令和8年9月3日の報道発表によれば,令和8年度の地域別最低賃金の改定額の全国加重平均額は1,177円(昨年度1,121円)で,全ての都道府県で54円~65円引き上げられ,令和8年10月1日から同年12月2日までの間に順次発効される。
最高額は東京都の1,280円,最低額は宮崎県の1,085円である。
発効日は都道府県ごとに異なり,確認日現在でまだ発効していない地域がある。
地域別最低賃金の改正の決定は,公示の日から起算して30日を経過した日(決定で後の日を定めた場合はその日)から効力を生ずる(最低賃金法14条2項)。
過去の未払賃金を計算するときは,当時の地域別最低賃金と発効日を確かめ,発効日の前後で期間を分ける。
最低賃金と固定残業代の関係は,最低賃金の引上げと固定残業代―最低賃金の計算から除かれる賃金,基本給への振替と不利益変更で説明している。
3 若者雇用促進法とユースエール認定
青少年の雇用の促進等に関する法律15条は,常時雇用する労働者が300人以下の事業主について,青少年の募集・採用,職業能力の開発・向上及び職場定着の取組の実施状況が優良であること等の基準に適合する旨を厚生労働大臣が認定できるとしている。
この認定が「ユースエール認定」と呼ばれており,認定事業主は厚生労働大臣の定める表示を商品等に付することができる(同法16条1項)。
また,新卒者等の募集・求人では,応募者等から求めがあれば青少年雇用情報を提供しなければならない(同法13条2項,14条2項)。
厚生労働省の案内は,主な認定要件として,直近3事業年度に新卒者等として正社員で就職した者の離職率が20%以下であること,前事業年度の正社員の月平均所定外労働時間が20時間以下で,かつ月平均の法定時間外労働が60時間以上の正社員が1人もいないこと,正社員の有給休暇の取得率が平均70%以上又は年間取得日数が平均10日以上であること等を挙げている。
大分労働局の令和8年6月の発表は,全国の認定企業を1,984社(令和8年3月末現在)としている。
4 ジョブ・カード
職業能力開発促進法15条の4第1項は,国が「職務経歴等記録書」の様式を定め,その普及に努めなければならないと定めている。
法文上の名称は職務経歴等記録書であり,ジョブ・カードはその通称である。
厚生労働省は,令和4年10月26日にウェブサイト「マイジョブ・カード」を公開し,令和6年4月16日にその運用を再開した。
ジョブ・カードは,様式1(キャリア・プランシート),様式2(職務経歴シート)及び様式3(職業能力証明シート)で構成されている。
一覧が当時案内していた担当部署や,平成31年3月31日で終了したジョブ・カード講習は,現在の手続には当てはまらない。
第7 確認資料と別セッションで掘り下げるテーマ
1 確認した資料
この記事は,提供された厚生労働省の一覧と,各項目の現行の条文,厚生労働省等の公式資料を照合して作成した。
条文は確認日にe-Gov法令検索で取得し,平成24年法律第27号,平成24年法律第63号,平成26年法律第64号及び平成27年法律第73号は,被改正法に収録された附則で確かめた。
大阪高裁令和3年11月4日判決は裁判所HPの判決全文と判例秘書で,名古屋地裁令和2年7月20日判決は判例秘書の判決全文で確認した。
各制度の現況は,日本年金機構,医療事故調査・支援センター,厚生労働省及び都道府県労働局の公表資料で確認した。
一覧の「リンク」列のリンク先のうち,保険料額表,後納制度,医療事故調査制度及び最低賃金の報道発表は確認日現在で表示されず,現行の案内ページで確かめた。
特定配偶者等支援金の現行の月額,ジョブ・カードの様式の令和4年以降の改正内容及び領域別パッケージ研修の根拠となる省令の規定は確認していない。
2 別セッションで掘り下げるテーマと未検討点
①労働契約申込みみなし制度の裁判例は,この記事では大阪高裁令和3年11月4日判決と名古屋地裁令和2年7月20日判決の2件だけを検討した。
大阪高裁判決の上告審,名古屋地裁判決の控訴審,偽装請負等の目的を否定した裁判例及び二重派遣にみなし規定を適用しなかった裁判例は,判決文で確認していない。
②医療事故調査制度について,院内調査報告書の遺族への交付,証拠保全や文書提出命令との関係,センター調査の結果の訴訟での使い方は検討していない。
③被用者年金一元化に伴う経過措置(旧共済年金の職域加算,一元化前後の離婚時年金分割の手続)は,個別の制度ごとに確認していない。
第8 出典
1 厚生労働省資料
①厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(平成27年10月)について」,平成27年9月30日
②厚生労働省職業安定局長「労働契約申込みみなし制度について」,平成27年9月30日職発0930第13号
③厚生労働省・都道府県労働局「平成27年労働者派遣法改正法施行から3年を迎えるにあたっての確認事項【派遣先の皆様へ】」
④厚生労働省・都道府県労働局「平成30年労働者派遣法改正の概要<同一労働同一賃金>」
⑤厚生労働省「派遣労働者の同一労働同一賃金について」
⑥日本年金機構「厚生年金保険料額表」
⑦日本年金機構「国民年金保険料の後納制度(平成30年9月30日をもって終了しました。)」
⑧日本年金機構「国民年金保険料の追納制度」
⑨日本年金機構「被用者の年金制度の一元化」
⑩厚生労働省「年金制度の仕組みと考え方 第2 公的年金制度の体系(被保険者,保険料)」
⑪医療事故調査・支援センター「医療事故調査制度の現況報告(8月)」,令和8年9月9日
⑫厚生労働省医政局長「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行について」,平成28年6月24日医政発0624第3号
⑬厚生労働省医政局総務課長「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う留意事項等について」,平成28年6月24日医政総発0624第1号
⑭厚生労働省医政局地域医療計画課長「医療法施行規則の一部を改正する省令の施行に伴う留意事項等について」,令和8年3月31日医政地発0331第1号
⑮厚生労働省「看護師等免許保持者の届出制度」
⑯厚生労働省「特定行為研修を行う指定研修機関の状況(令和8年3月現在)」
⑰厚生労働省「特定行為区分別の特定行為研修を修了した看護師数(令和8年3月現在)」
⑱厚生労働省「特定行為に係る看護師の研修制度」リーフレット,同Q&A
⑲厚生労働省「特定配偶者等支援金制度について」
⑳厚生労働省「ハンセン病元患者家族に対する補償金について」,同「ハンセン病元患者家族補償金支給の認定件数について」(令和8年9月11日更新)
㉑参議院「ハンセン病元患者家族に対する補償金の支給等に関する法律の一部を改正する法律案」議案審議情報
㉒厚生労働省報道発表「全ての都道府県で地域別最低賃金の改定額が答申されました」,令和8年9月3日
㉓厚生労働省「地域別最低賃金の全国一覧」
㉔厚生労働省「ユースエール認定制度」,大分労働局「「株式会社 冨士設計」ユースエール認定通知書交付式を実施します!!」
㉕厚生労働省「ジョブ・カード制度」,マイジョブ・カード「ジョブ・カードを知る」
2 法令
①労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律(e-Gov法令検索)2条,30条,30条の2,40条の2,40条の3,40条の6~40条の8,平成24年法律第27号附則1条,平成27年法律第73号附則1条・6条・9条
②厚生年金保険法(e-Gov法令検索)81条,平成24年法律第63号附則1条
③国民年金法(e-Gov法令検索)94条,平成26年法律第64号附則1条・10条
④医療法(e-Gov法令検索)6条の10,6条の11,6条の15~6条の17
⑤医療法施行規則(e-Gov法令検索)1条の10の2の2~1条の10の4
⑥保健師助産師看護師法(e-Gov法令検索)37条の2
⑦看護師等の人材確保の促進に関する法律(e-Gov法令検索)16条の3
⑧ハンセン病問題の解決の促進に関する法律(e-Gov法令検索)15条
⑨青少年の雇用の促進等に関する法律(e-Gov法令検索)13条~16条
⑩職業能力開発促進法(e-Gov法令検索)15条の4
⑪最低賃金法(e-Gov法令検索)9条,14条
⑫民法(e-Gov法令検索)97条
3 裁判例
①大阪高裁令和3年11月4日判決(令和2年(ネ)第973号),判決書37頁~39頁,42頁~45頁
②名古屋地裁令和2年7月20日判決(平成29年(ワ)第5158号,判例秘書の判例番号 L07550523)(裁判所HP未掲載。判例秘書で全文を確認した)
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