第1 資料の性質と本記事の使い方
厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(平成28年4月)について」は,平成28年3月29日に政策統括官付社会保障担当参事官室が公表した一覧である。
同年4月に実施される変更のうち国民生活に影響を与える事項として,年金,医療,子ども・子育て,福祉,援護,雇用・労働,各種手当・手数料及びその他の8分野にわたり,20項目を掲げている。
本記事は,令和8年10月4日に同ページ及びリンク先の資料を確認し,各項目の当時の内容と,同日時点の現行の金額・条文とを対照するものである。
この一覧は10年前の資料であり,金額,対象範囲及び条番号の多くはその後に改められている。
他方で,過去の一定期間の保険料や給付額を計算し直す場面,例えば社会保険の資格を遡って精算する場合,平成28年度から平成29年度にかけての損害額を算定する場合又は当時の行政の取扱いが争点になる場合には,当時の額と基準を使う必要がある。
そこで本記事では,①当時の値,②現行の値,③両者の間で変わった根拠の順に整理する。
金額は,原則として,令和8年10月4日にe-Gov法令検索,厚生労働省・こども家庭庁等の公表資料で確認したものである。
元の一覧からリンクされた資料には,消えたもの,同じURLのまま現行の内容に差し替えられたもの及び当時の内容のまま残るものが混在している。
例えば,平成28年度の年金額改定の報道発表ページと後期高齢者医療の保険料率の報道発表ページは確認日には表示されなかった。
戦傷病者等の妻に対する特別給付金のページは,同じURLで令和8年の給付金の案内に差し替えられていた。
リンク先の記載を当時の資料として引用する前に,その資料の作成日を確認する必要がある。
本記事の姉妹記事として,令和8年4月の厚生労働省制度変更及び令和7年10月の厚生労働省制度変更がある。
第2 20項目の当時と現在
1 一覧表
次の表は,元の一覧の20項目について,当時の変更内容と令和8年10月時点の内容を並べたものである。
金額は1か月当たり又は1食当たり等の単位が項目ごとに異なるので,各節の説明と併せて読む必要がある。
| 項目 | 平成28年4月の変更 | 令和8年10月時点 |
|---|---|---|
| 国民年金保険料 | 月額1万6260円 | 令和8年度は月額1万7920円,令和9年度は月額1万8290円 |
| 年金額 | 前年度から据置き。老齢基礎年金の満額は月額6万5008円 | 令和8年度は月額7万608円(昭和31年4月1日以前生まれは7万408円) |
| 診療報酬改定 | 本体0.49%の引上げ | 令和8年度改定は3.09%の引上げ(令和8・9年度の平均)。令和8年6月施行 |
| 紹介状なしの大病院受診 | 特定機能病院と一般病床500床以上の地域医療支援病院で,初診5000円以上・再診2500円以上の徴収を責務化 | 令和4年10月から一般病床200床以上の地域医療支援病院等に拡大。初診7000円以上・再診3000円以上(医科) |
| 患者申出療養 | 創設 | 健康保険法63条2項4号の保険外併用療養として存続 |
| 入院時の食費 | 1食260円から360円へ。平成30年4月から460円 | 令和8年6月1日から1食550円(一般) |
| 標準報酬月額の上限 | 健康保険は第47級121万円から第50級139万円へ。標準賞与額の年間上限は540万円から573万円へ | 健康保険は第50級139万円・年間573万円のまま。厚生年金は第32級65万円で,令和9年9月から段階的に引上げ予定 |
| 後期高齢者医療の保険料率 | 広域連合ごとに2年ごとに改定 | 令和8・9年度の医療分の全国平均は月額7989円の見込み |
| 国民健康保険の賦課限度額 | 85万円から89万円へ | 令和8年度は合計113万円(子ども・子育て支援納付金分3万円を含む) |
| 認可外保育施設の届出 | 1日に保育する乳幼児が6人以上から1人以上へ | 児童福祉法59条の2。届出不要の施設は同法施行規則49条の2に列挙 |
| 社会福祉法人制度改革 | 地域における公益的な取組の責務,特別の利益供与の禁止,閲覧対象の拡大等 | 社会福祉法24条2項,27条,45条の32第4項等 |
| 社会福祉施設職員等退職手当共済 | 支給乗率の見直し,合算できる期間を2年以内から3年以内へ等 | 社会福祉施設職員等退職手当共済法11条8項の「三年以内」 |
| 戦傷病者等の妻に対する特別給付金 | 平成28年4月1日時点の妻が対象。請求期間は平成31年4月15日まで | 令和8年の戦傷病者等妻給付金の請求期間は令和9年2月28日まで |
| 雇用保険料率 | 失業等給付の料率を1.0%から0.8%へ。一般の事業の合計は11/1000 | 令和8年度の一般の事業は合計13.5/1000(労働者負担5/1000) |
| 障害者雇用促進法 | 差別禁止と合理的配慮の提供義務の施行 | 同法34条~36条の3。民間企業の法定雇用率は令和8年7月から2.7% |
| キャリアコンサルタント | 登録制度の創設 | 職業能力開発促進法30条の19。登録は5年ごとの更新制 |
| 女性活躍推進法 | 全面施行。常時雇用301人以上の事業主に行動計画の策定・届出・情報公表を義務付け | 令和4年4月から101人以上に拡大。令和8年4月から101人以上にも男女間賃金差異と女性管理職比率の公表義務。法の期限は令和18年3月31日 |
| 労災保険の介護(補償)給付 | 常時介護の最高限度額10万4950円・最低保障額5万7030円等 | 常時介護の最高限度額18万6050円・最低保障額9万790円等 |
| 児童扶養手当等 | 前年比0.8%の引上げ。児童扶養手当(全部支給)は月額4万2330円 | 令和8年4月からの見込額で月額4万8050円(全部支給) |
| 旅館業法施行令 | 簡易宿所の客室延床面積の基準に,宿泊者10人未満の場合の特例を新設 | 現在は同令1条2項1号に規定 |
第3 年金・医療保険の保険料と上限額
1 国民年金保険料と老齢基礎年金の額
平成28年度の国民年金保険料は月額1万6260円であった。
元の一覧は,法律に定める平成28年度の保険料額1万6660円に,物価と賃金の変動を反映した率0.976を乗じた額と説明している。
厚生労働省が平成28年1月29日に公表した資料にも,同年度の保険料額1万6260円と老齢基礎年金の満額の月額6万5008円が記載されている。
国民年金法87条3項は,表に定める額に保険料改定率を乗じて保険料額を定める仕組みであり,同項の表の最後の区分は令和元年度以後の月分の1万7000円である。
厚生労働省「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」によれば,令和8年度の保険料は月額1万7920円,令和9年度は月額1万8290円である。
同資料によれば,令和8年度の老齢基礎年金の満額(1人分)は月額7万608円であり,昭和31年4月1日以前生まれの者は月額7万408円である。
基礎年金は前年度比1.9%の引上げとされている。
平成28年度に据え置かれた年金額は,その後の改定を経て,令和8年度には月額で5600円高くなっている。
もっとも,実際の受給額は納付済期間等によって異なるので,満額を個人の受給額として扱ってはならない。
2 標準報酬月額と標準賞与額の上限
平成28年4月,健康保険と船員保険の標準報酬月額の上限は,第47級121万円から第50級139万円に引き上げられ,標準賞与額の年間上限は540万円から573万円に引き上げられた。
これは,平成27年の国民健康保険法等の改正によるものである。
健康保険法40条1項の等級表は,現在も第50級(報酬月額135万5000円以上)の139万円を最高等級としている。
同法45条1項も,年度(4月1日から翌年3月31日まで)の標準賞与額の累計額の上限を573万円としている。
したがって,健康保険の上限は平成28年4月から変わっていない。
これに対し,厚生年金保険の上限は健康保険と別に定められている。
厚生年金保険法20条1項の表は第31級62万円までであり,同条2項に基づく政令で第32級65万円が加えられている。
厚生労働省「厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて」によれば,令和7年の改正により,上限は令和9年9月に68万円,令和10年9月に71万円,令和11年9月に75万円へ段階的に引き上げられる予定である。
高額の役員報酬を受ける者の社会保険料を検討するときは,健康保険と厚生年金保険の上限を分けて確認する必要がある。
保険料の計算と資格取得の手続は,社会保険の加入・保険料・資格取得喪失と士業の適用で説明している。
3 国民健康保険の賦課限度額と後期高齢者医療の保険料
平成28年度分の国民健康保険料(税)の賦課限度額は,85万円から89万円に引き上げられた。
元の一覧からリンクされた資料によれば,基礎賦課分が52万円から54万円へ,後期高齢者支援金等分が17万円から19万円へ引き上げられ,介護納付金分は16万円に据え置かれた。
現行の国民健康保険法施行令29条の7は,基礎賦課額を67万円,後期高齢者支援金等賦課額を26万円,介護納付金賦課額を17万円,子ども・子育て支援納付金賦課額を3万円までとしている。
合計は113万円であり,平成28年度より24万円高い。
子ども・子育て支援納付金分は令和8年度に新設された区分であり,平成28年当時の区分と単純に比べることはできない。
保険料(税)の具体的な額は市町村の条例等で定まるので,賦課限度額だけから個別の保険料を決めることはできない。
後期高齢者医療の保険料率は,各都道府県の後期高齢者医療広域連合が2年ごとに改定する。
厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について」によれば,令和8・9年度の医療分の被保険者一人当たり平均保険料額は,全国平均で月額7989円となる見込みであり,令和6・7年度の7411円から578円増加した。
第4 医療の給付と受診の仕組み
1 紹介状なしの大病院受診時の定額負担
平成28年4月,特定機能病院と一般病床500床以上の地域医療支援病院は,紹介状を持たずに受診した患者から定額の負担を徴収することが責務とされた。
最低金額は,初診で5000円(歯科は3000円),再診で2500円(歯科は1500円)であり,各医療機関がそれ以上の額を設定するものとされた。
その後,令和4年10月1日から,対象は特定機能病院,一般病床200床以上の地域医療支援病院及び一般病床200床以上の紹介受診重点医療機関に広がった。
現行の保険医療機関及び保険医療養担当規則5条3項も,地域医療支援病院について「一般病床の数が二百未満であるものを除く」と定めている。
厚生労働省の令和4年10月からの見直しの資料によれば,最低金額は,初診で医科7000円・歯科5000円,再診で医科3000円・歯科1900円に引き上げられ,保険給付の範囲から一定額(例えば医科の初診では2000円)を控除する仕組みが加わった。
健康保険法70条3項は,特定機能病院等に,他の保険医療機関への紹介その他の機能分担と連携のための措置を講ずることを求めている。
同規則5条3項2号は,金額の支払を求める措置から「厚生労働大臣の定める場合」を除いているので,紹介状がなくても徴収されない場合がある。
交通事故の被害者が大病院を受診した場合の費用を損害として請求するときは,受診時期と,紹介状の有無及び受診の必要性を確認する必要がある。
2 入院時の食費
入院時の食費の自己負担(食事療養標準負担額)は,平成28年3月までは1食260円であった。
厚生労働省のリーフレットによれば,平成28年4月から調理費相当額の負担が段階的に加わり,一般の者は平成28年4月から360円,平成30年4月から460円とされ,住民税非課税世帯等は据え置かれた。
その後の改定を経て,食事療養標準負担額を定める告示は,令和8年6月1日から,一般の者を1食550円としている。
住民税非課税世帯の者は,入院日数が90日以下なら270円,90日を超えるなら220円であり,所得が一定基準に満たない者等は130円である。
指定難病や小児慢性特定疾病の患者等は330円である。
入院時食事療養費の根拠は健康保険法85条であり,負担額は同条2項に基づく告示で定められる。
損害賠償で入院中の食費を扱う場合,入院雑費と別に食費を請求するか,健康保険を使ったか,入院がどの期間にわたるかによって,使う額が異なる。
平成28年4月から平成30年3月までの入院なら1食360円,令和8年6月以降の入院なら1食550円というように,入院した期間ごとに確認する必要がある。
3 患者申出療養と診療報酬改定
平成28年4月には,国内で未承認の医薬品等を使いたいという患者の申出を起点とする保険外併用療養として,患者申出療養が創設された。
現行の健康保険法63条2項4号は,高度の医療技術を用いた療養であって,患者の申出に基づき評価を行うことが必要なものを「患者申出療養」と定めている。
同条4項は,申出に臨床研究中核病院の開設者の意見書等を添えることを求めている。
平成28年度の診療報酬改定は,本体0.49%の引上げであった。
令和8年度の診療報酬改定に関する厚生労働省の資料によれば,令和8年度改定は令和8・9年度の平均で3.09%の引上げであり,令和8年6月施行とされている。
診療報酬は改定のたびに点数と施設基準が変わるので,過去の診療行為の報酬を検討するときは,その診療日に適用された告示を確認する必要がある。
第5 雇用・労働
1 雇用保険料率
元の一覧は,平成28年4月から失業等給付の雇用保険料率を1.0%から0.8%に引き下げるとしている。
滋賀労働局等の案内によれば,平成28年度の一般の事業の雇用保険料率は合計11/1000であり,労働者負担は4/1000,事業主負担は7/1000であった。
雇用保険二事業の料率も0.5/1000引き下げられた。
令和8年度の一般の事業の雇用保険料率は合計13.5/1000であり,労働者負担は5/1000,事業主負担は8.5/1000である。
この料率は,平成28年4月の引下げ前である平成27年度の一般の事業の料率と同じ水準である。
もっとも,その後,育児休業給付に充てる料率が失業等給付の料率と区分されたため,内訳まで平成27年度と同じというわけではない。
未払賃金や給与計算の誤りを過去に遡って精算するときは,対象期間の年度ごとの料率を使う必要がある。
令和8年度の料率の詳細は,労働保険の加入・保険料・労災給付・雇用保険の手続で説明している。
2 障害者雇用促進法の差別禁止と合理的配慮
平成28年4月,平成25年に改正された障害者雇用促進法のうち,雇用の分野における障害者に対する差別の禁止と合理的配慮の提供義務が施行された。
現行の同法34条は募集・採用における均等な機会の付与を,35条は賃金の決定,教育訓練の実施その他の待遇についての不当な差別的取扱いの禁止を定めている。
同法36条の2は募集・採用時の,36条の3は採用後の合理的配慮を定め,いずれも事業主に過重な負担を及ぼすときは除外している。
令和6年4月1日からは,障害者差別解消法8条2項により,事業者一般についても合理的配慮の提供が義務となった。
もっとも,同法13条は,事業主として労働者に対して行う措置については障害者雇用促進法の定めるところによるとしている。
そのため,労働者との関係では障害者雇用促進法の条文と指針を確認し,顧客や利用者との関係では障害者差別解消法を確認する,という使い分けが必要である。
障害者の雇用の促進等に関する法律施行令9条は,民間企業の障害者雇用率を100分の2.7としている。
この率が適用されるのは令和8年7月1日からであり,同年6月30日までは附則の読替えにより100分の2.5であった。
算定方法は,令和8年7月の障害者法定雇用率2.7%への引上げで説明している。
3 女性活躍推進法
平成28年4月1日,女性活躍推進法が全面施行された。
当時は,常時雇用する労働者が301人以上の一般事業主に行動計画の策定・届出と情報公表が義務付けられ,300人以下の事業主は努力義務とされた。
現行の同法8条1項は,常時雇用する労働者の数が「百人を超える」一般事業主に行動計画の策定と届出を義務付けている。
この範囲の拡大は令和4年4月1日に施行された。
さらに,令和8年4月1日からは,同法20条2項により,101人以上300人以下の事業主にも男女間賃金差異と女性管理職比率の公表が義務付けられた。
同法附則2条は,同法が令和18年3月31日限りで効力を失うと定めている。
制定時の同条は平成38年3月31日限りで失効すると定めていたが,令和7年法律第63号により,令和7年6月11日から現在の期限に改められた。
公表項目と算定方法は,令和8年4月施行の改正女性活躍推進法で説明している。
4 キャリアコンサルタントの登録制度
平成28年4月,職業能力開発促進法の改正により,キャリアコンサルタントの登録制度が創設された。
現行の同法30条の19第1項は,キャリアコンサルタント試験に合格した者が名簿に登録を受けてキャリアコンサルタントとなることができると定め,同条3項は,登録は5年ごとに更新を受けなければ効力を失うと定めている。
登録の有無と更新の時期は,社内の相談窓口やキャリア面談の担当者を選ぶ際の確認事項になる。
5 労災保険の介護(補償)給付
平成28年4月,労災保険の介護(補償)給付の最高限度額と最低保障額が,平成27年度の人事院勧告に合わせて0.36%引き上げられた。
元の一覧からリンクされた省令案の概要の表によれば,平成28年4月からの額は次のとおりである。
①常時介護を要する者は,最高限度額10万4950円,最低保障額5万7030円
②随時介護を要する者は,最高限度額5万2480円,最低保障額2万8520円
元の一覧の本文は,最高限度額を「月額104,950円、57,030円」,最低保障額を「月額52,480円、28,520円」と記載している。
これは,表の常時介護の行を最高限度額,随時介護の行を最低保障額として読んだ形になっており,表の数値とは対応しない。
当時の額を引用するときは,一覧の本文ではなく,省令案の概要の表と改正省令によるべきである。
現行の労働者災害補償保険法施行規則18条の3の4は,常時介護を要する場合の上限を18万6050円,親族等の介護を受けた場合等の額を9万790円とし,随時介護を要する場合はそれぞれ9万2980円,4万5400円と読み替えている。
交通事故や労災事故の将来介護費と労災保険の介護給付との調整は,交通事故の将来介護費と公的給付で扱っている。
労災保険の給付全体は,労災保険の給付内容で説明している。
第6 子育て・福祉・援護・手当・旅館業
1 認可外保育施設の届出
平成28年4月から,認可外保育施設やいわゆるベビーシッター事業について,届出の対象が1日に保育する乳幼児の数が6人以上の場合から1人以上の場合に広げられた。
現行の児童福祉法59条の2第1項は,認可を受けていない保育施設の設置者に,事業開始の日から1月以内に都道府県知事への届出を義務付けている。
届出を要しない施設は,同法施行規則49条の2が定めており,顧客の乳幼児だけを保育する店舗等の施設,設置者の4親等内の親族である乳幼児だけを保育する施設,半年を限度として臨時に設置される施設等が挙げられている。
2 社会福祉法人と退職手当共済
平成28年4月,社会福祉法等の一部を改正する法律のうち,社会福祉法人の地域における公益的な取組を実施する責務,役員等関係者への特別の利益供与の禁止及び閲覧対象書類の拡大等が施行された。
現行の社会福祉法では,24条2項が無料又は低額な料金で福祉サービスを積極的に提供する努力義務を,27条が関係者に対する特別の利益供与の禁止を定めている。
特別の利益供与の禁止は,社会福祉法等の一部を改正する法律(平成28年法律第21号)の1条により26条の2として平成28年4月1日に施行され,同法2条により平成29年4月1日から27条に移された。
同法45条の32第4項は,評議員及び債権者以外の者も,社会福祉法人の業務時間内に計算書類等の閲覧を請求できると定めている。
評議員会の必置等の機関設計の見直しは,翌年の平成29年4月に施行された。
社会福祉施設職員等退職手当共済法についても,平成28年4月に支給乗率の見直し,前後の共済加入期間を合算できる期間の2年以内から3年以内への延長及び障害者総合支援法に関する施設・事業に対する公費助成の廃止が施行された。
現行の同法11条8項は,退職した日から起算して「三年以内」に退職手当金を請求しないで再び被共済職員となった場合等に,前後の期間を合算すると定めている。
3 戦傷病者等の妻に対する特別給付金
元の一覧は,平成28年4月1日における戦傷病者等の妻に特別給付金を支給し,請求期間を平成28年4月15日から平成31年4月15日までとしている。
元の一覧からリンクされた厚生労働省のページは,確認日には令和8年の戦傷病者等妻給付金の案内に差し替えられており,その請求期間は令和8年4月7日から令和9年2月28日までとされていた。
平成28年の給付と令和8年の給付は,基準日,対象者,金額及び請求期間が異なる別の給付であるから,ページのURLが同じであることから同一の給付と扱ってはならない。
令和8年の給付の内容は,令和8年4月の厚生労働省制度変更で扱っている。
4 児童扶養手当等
平成28年4月から平成29年3月までの児童扶養手当,特別児童扶養手当等の額は,平成27年4月と比べて0.8%引き上げられた。
元の一覧からリンクされた資料によれば,児童扶養手当(全部支給)は月額4万2000円から4万2330円となった。
こども家庭庁「児童扶養手当について」に掲載された「児童扶養手当制度の概要」(令和8年4月8日更新)は,令和8年4月からの見込額として,全部支給を月額4万8050円,第2子以降の加算額(全部支給)を1人につき1万1350円としている。
婚姻費用や養育費の算定で公的給付の額を確認するときは,対象となる月の年度の額を使う必要がある。
5 簡易宿所の客室延床面積
平成28年4月,旅館業法施行令が改正され,簡易宿所営業の客室の延床面積の基準が,一律の33平方メートル以上から,宿泊者の数を10人未満とする場合には3.3平方メートルに宿泊者の数を乗じた面積以上でよいとされた。
元の一覧は,この基準を同令1条3項1号の規定として説明している。
現行の旅館業法施行令では,同じ基準は1条2項1号に置かれている。
平成30年6月15日に旅館営業とホテル営業が旅館・ホテル営業に統合された際,平成30年政令第21号により同令1条の項の構成が改められたためである。
現在の同令1条3項は下宿営業の基準である。
平成28年当時の資料の条番号をそのまま引用すると,別の営業の基準を指すことになる。
第7 古い制度変更一覧を使うときの注意
今回の確認から,10年前の制度変更一覧を実務で使う場合の注意点として,次の5つを挙げることができる。
①一覧の本文は要約であり,誤記があり得る。
労災保険の介護給付の額のように,リンク先の表と食い違う場合は表と改正省令を優先する。
②条番号は,後の改正で動く。
旅館業法施行令1条3項が1条2項に,社会福祉法26条の2が27条になったように,当時の条番号は現行のe-Gov法令検索で照合し直す。
③「平成30年4月から」のように一覧に将来の予定として書かれた額は,その後に実施されたかを別の資料で確認する。
入院時の食費の460円は,当時のリーフレットにも記載がある。
④リンク先は消え,又は同じURLで現行の内容に差し替えられる。
引用する資料の作成日を確認し,消えた資料は国立国会図書館インターネット資料収集保存事業(WARP)等の保存版を探す。
⑤保険料・給付額は,対象となる月,診療日,入院日,支給事由の発生日等,制度ごとの基準日で適用される額を選ぶ。
第8 別セッションで掘り下げるテーマと未検討点
①平成28年4月から現在までの国民年金保険料,年金額,雇用保険料率,入院時の食費等の年度別の推移表は,本記事では作成していない。
過去の期間の精算に使う場合は,年度ごとの告示・公表資料で確認する必要がある。
②紹介状なしの大病院受診時の定額負担について,徴収を求めない「厚生労働大臣の定める場合」の具体的な範囲と,交通事故の損害賠償で費用が認められた裁判例は検討していない。
③社会福祉法人の特別の利益供与の禁止に違反した場合の効果と,所轄庁の指導監督の運用は検討していない。
④戦傷病者等の妻に対する平成28年の特別給付金の金額と根拠条文は,当時の資料を確認できなかったので記載していない。
⑤令和8年度の診療報酬改定の医科・歯科・調剤別の改定率と薬価改定率は,原資料で確認していない。
第9 出典
①厚生労働省「厚生労働省関係の主な制度変更(平成28年4月)について」(平成28年3月29日)
②厚生労働省「平成28年度の年金額改定についてお知らせします」(平成28年1月29日)及び同「令和8年度の年金額改定についてお知らせします」(令和8年1月23日)
③厚生労働省「診療報酬改定について」(令和7年12月24日の予算大臣折衝を踏まえたもの)
④厚生労働省の令和4年10月1日からの「特別の料金」の見直しに関する説明資料
⑤厚生労働省「平成28年4月1日から入院時の食費の負担額が変わり,新たに調理費の負担が追加されます」
⑥入院時食事療養費に係る食事療養及び入院時生活療養費に係る生活療養の費用の額の算定に関する基準(平成8年厚生省告示第203号)
⑦厚生労働省「国保保険料(税)賦課(課税)限度額の見直し」(平成28年)
⑧厚生労働省「後期高齢者医療制度の令和8・9年度の保険料率について」
⑨厚生労働省「厚生年金等の標準報酬月額の上限の段階的引上げについて」
⑩厚生労働省・滋賀労働局「平成28年度『雇用保険料率』の改定について」
⑪厚生労働省「労働者災害補償保険法施行規則及び炭鉱災害による一酸化炭素中毒症に関する特別措置法施行規則の一部を改正する省令案の概要」(平成28年)
⑫厚生労働省「児童扶養手当等の手当額について」(平成28年)及びこども家庭庁「児童扶養手当制度の概要」(令和8年4月8日更新)
⑬厚生労働省「『戦傷病者等妻給付金』の支給について」
⑭衆議院「社会福祉法等の一部を改正する法律(平成28年法律第21号)」
⑮e-Gov法令検索(令和8年10月4日確認):国民年金法87条,健康保険法40条・45条・63条・70条・85条,厚生年金保険法20条,国民健康保険法施行令29条の7,保険医療機関及び保険医療養担当規則5条,障害者の雇用の促進等に関する法律34条・35条・36条の2・36条の3,同法施行令9条・附則,障害を理由とする差別の解消の推進に関する法律8条・13条,女性の職業生活における活躍の推進に関する法律8条・20条・附則2条,職業能力開発促進法30条の19,労働者災害補償保険法施行規則18条の3の4,児童福祉法59条の2,同法施行規則49条の2,社会福祉法24条・27条・45条の32,社会福祉施設職員等退職手当共済法11条,旅館業法施行令1条
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④平成29年10月の厚生労働省制度変更
⑤平成30年4月の厚生労働省制度変更
⑥令和5年4月の厚生労働省制度変更
⑦令和5年10月の厚生労働省制度変更
⑧令和6年4月の厚生労働省制度変更
⑨令和6年10月の厚生労働省制度変更
⑩令和7年4月の厚生労働省制度変更
⑪令和7年10月の厚生労働省制度変更
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